雑記

時間があるときに細胞検査士の筆記試験の過去問を解いています

平成25年度 総論 筆記試験 過去問

総論の過去問です。各論と被っている問題がけっこう出題されます。



1. 欧米に比ベアジアに多い疾患はどれですか。(3)
A. 悪性黒色腫
B. 節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型
C. 肝細胞癌
D. 絨毛癌
E. 前立腺癌


正解:BCD

解説:

悪性黒色腫罹患率の国際比較では、オーストラリアのクイーンズランドが最も高く、南欧より北欧が高く、日本は低い傾向にある。また人種差が大きく、白人では罹患率が極めて高い傾向がある。

悪性黒色腫は白人系に多い悪性腫瘍です。よってAは×。

悪性リンパ腫malignant lymphomaの中で鼻腔や副鼻腔に好発するのがNK/T細胞リンパ腫NK/T cell lymphomaである。進行性の壊死を伴う組織破壊がみられるため、以前は壊死性正中肉芽腫lethal midline granulomaとも呼ばれていた。アジアやラテンアメリカに多く、EBウイルス感染との関連が注目されている。組織学的には種々の形態を示す異型リンパ球がびまん性に増殖し、血管壁の破壊や広範な壊死をみる。他の臓器やリンパ節でよくみられるびまん性大細胞型リンパ腫diffuse large B-cell lymphomaも鼻腔に好発する。

よってBは○。

肝細胞癌の発生頻度には著しい地域差がみられ、日本を含めアジア、アフリカでは高頻度にみられるのに対し、欧米では少なく発生頻度はアジア、アフリカの1/10前後である。また、狭い日本国内においても差がみられ、北日本に比べ九州では発生頻度がより高い。

よってCは○。

胞状奇胎の発生は東南アジアなどの開発途上国に多く、白人に少ない。わが国での発生頻度は両者の中間である。近年減少しつつある。

アジアでの胞状奇胎の発生頻度は高いので絨毛癌も同様にアジアで多い疾患になります。よってDは○。

前立腺癌prostate cancerは欧米諸国では男性悪性腫瘍の中で最も頻度の高いものの1つである。米国黒人に特に多く、北米やスイスでも多い。日本では癌死亡の部位別順位では10位前後であるが、その発生頻度は急増しており、最近の25年間で約6倍の伸びをみせている。典型的な高齢者型癌で、50歳以降になると加齢とともに罹患率は著しく上昇し、80歳以上では人口10万人あたり200人を超える。発生部位にも特徴があり、約70%は辺縁域より発生し、移行域からは約25%、中心域からは約5%程度である。

前立腺癌は欧米で多い悪性腫瘍です。よってEは×。



2. 正しい組み合わせでどれですか。(3)
A. 皮膚癌―紫外線
B. 甲状腺癌―放射線
C. 胃癌―ベンゼン
D. 喉頭癌―ニコチン
E. 肺癌―クロム


正解:ABE

解説:

紫外線も放射線と同様にDNAの損傷による突然変異を誘発し、発癌の要因となる。皮膚の癌は、紫外線に暴露される顔面や上肢に好発する。遺伝子変異の除去修復に異常がある色素性乾皮症では皮膚癌のリスクが高い。

よってAは○。

放射線曝露による発癌は、放射線技師や医師などの職業曝露、放射線治療や放射性造影剤による医療被曝チェルノブイリなどの事故による被曝、そして広島・長崎における原子爆弾による被曝において、多くの事例や情報が集められてきた。原爆や事故による急性の暴露においては特に白血病甲状腺癌の発生率の増加が報告されている。慢性の暴露では、長期の皮膚への暴露により皮膚癌が、放射性造影剤の肝への蓄積により肝内胆管癌および肝血管肉腫が発生する。

よってBは○。

特定の職業に従事しているものに特定の癌が発生する。特定の集団における特定の物質への暴露と癌の発生を疫学的に調査し、さらに実験的に検証することで、ヒト癌の発生過程が明らかになってきた。発癌物質への暴露量と癌発生との間に用量反応関係がみられ、曝露量が少ない場合には癌発生までの潜伏期が長い傾向がみられる。

化学物質 癌の発生臓器
ベンチジン 膀胱
β-ナフチラミン 膀胱
4-アミノビフェニール 膀胱
マスタードガス
塩化ビニール 肝血管肉腫
ヒ素 肺、皮膚
ベンゼン 白血病
ベリリウム 肺肉芽腫
クロム
ニッケル 副鼻腔
アスベスト 中皮腫、肺

よってEは○。
ベンゼン白血病の原因になります。よってCは×。

芳香族炭化水素であるbenzopyrene、dibenzanthraceneは、コールタールから分離された発癌物質として有名である。タバコの煙や自動車の排気ガスにも含まれており、環境発癌物質の1つにもなっている。

ニコチンは発癌物質ではありません。ベンゾピレンやベンズアントラセンなどの芳香族炭化水素発癌性があります。よってDは×。



3. ゴルジ装置について正しいものはどれですか。(3)
A. ゴルジ小胞を有する。
B. メラノソームを形成する。
C. 分泌物の濃縮を行う。
D. リポフスチンを形成する。
E. 一般的に分化の低い細胞で良く発達する。


正解:ABC

解説:

上皮細胞では、一般に核上部のゴルジ野Golgi areaとよばれる部分に存在し、平滑な膜で作られた小胞構造の集合体で、層状に配列する。細胞がその産生物を活発に作っているとき、ゴルジ体(装置)Golgi body(apparatus)は大きくなり、物質産生の場と考えられている。このゴルジ体で作られた物質は、膜に包まれたままゴルジ体から切り離され、小さな袋状の構造物「小胞」を作る。この小胞は、大きなものは空胞vacuole、小さなものは小胞(ベジクル)vesicleとよばれる。この物質は、この小胞に包まれたまま細胞内を移動し、細胞外へ分泌される。

よってAとCは○。

メラニンはまず、ゴルジ装置に由来する膜に包まれたプレメラノソームpremelanosomeに貯蔵される。メラニンチロシンチロシナーゼによって、3、 4-ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)に酸化することにより作られる。このDOPAがメラニンに変換されて、メラノソームmelanosomeの中に蓄積され、これが成熟したメラニン顆粒としてメラノサイトの細胞突起に沿って分布する。ケラチノサイトは、放出されたこの不溶性の暗調なメラニン顆粒を取り込む。

よってBは○。

ライソソーム(水解小体)lysosomeはゴルジ体から分離した小胞で、加水分解酵素を含んでいる。この酵素蛋白は粗面小胞体で合成され、ゴルジ体に送られ、一次ライソソームを形成する。ライソソームは、通常の染色では光学顕微鏡で見ることは困難だが、酸性ホスファターゼを組織化学的に照明する方法を用いれば光顕的に観察することができる。細胞外から取り込んだ異物や、細胞内の異物(変性に陥った小胞体や糸粒体)が、一次ライソソームと融合してできたものを二次ライソソームとよぶ。加水分解酵素により、その内容は分解され利用される。消化されない異物は残渣小体(レジュアルボディー)residual bodyとよばれる。その代表的なものは消耗色素(リポフスチン)lipofustinである。

ライソソームで消化されない残渣小体のことをリポフスチンといいます。よってDは×。
Eの選択肢に関する文献は探せませんでしたが、ゴルジ装置の多い細胞の代表として形質細胞があります。これはB細胞が分化してたどり着く最終地点です。つまり高分化な細胞でゴルジ装置はよく発達しています。よって5は×と考えます。



4. 正しいものはどれですか。(3)
A. 細胞質内小腺腔は乳腺小葉癌の特徴の1つである。
B. 卵巣卵黄嚢腫瘍における球状硝子体の出現は特徴の1つである。
C. リンパ球背景はセミノーマの特徴の1つである。
D. 卵巣粘液性腺癌では石灰化小体の出現は特徴の1つである。
E. 甲状腺未分化癌ではアミロイド沈着の確認が重要である。


正解:ABC

解説:

胞質内小腺腔とは細胞質内に見られる境界明瞭な3~12μm大の空胞Hecter’s holeである。空胞の接した部の細胞質がやや濃く染色されているのが特徴であり、電顕的に微絨毛が内腔面に存在することに起因する。小腺腔内には濃縮した粘液が滴状物として観察される。この滴状物はパパニコロウ染色ではオレンジG、エオジン、ギムザ染色にて異染性を示すことからマジェンタ小体magenta bodyと呼ばれている。細胞質内小腺腔は細胞質の非定型的な分化を意味し、腺由来の悪性腫瘍を示唆する重要な所見である。特に乳腺の小葉癌や硬癌では効率に観察される。

よってAは○。

卵黄嚢腫瘍yolk sac tumorは10~20代に好発する悪性腫瘍で、α-フェトプロテインを産生する。このほか、CEA、CA-125も陽性となる。組織学的には糸球体類似構造(Schiller-Duval小体)や特有な網状構造などを示す。好酸性の硝子化小体hyaline body(globule)が認められ、α-フェトプロテイン免疫染色で陽性を示す。予後は極めて不良である。

よってBは○。

セミノーマseminomaの腫瘍細胞は精上皮に類似している。細胞質は淡明で特徴的である。核縁は薄く、クロマチンは微細で透明感があり、核小体は腫大したものが1、2個みられる。核内は核小体だけが目立つ感じを受ける。腫瘍細胞は孤立散在性に出現し、結合性はない。以上のような腫瘍細胞がリンパ球とtwo cell patternを示して出現する。かなり特徴的な細胞所見を有するため、細胞判定は比較的容易である、また腫瘍細胞は機械的刺激に弱く、標本作製過程で裸核になったり、引きのばされたりすることが多い。間質部分に肉芽腫反応が出現することがあり、それに由来した細胞をみることがある。卵巣の未分化胚細胞腫と同一の腫瘍細胞である。

よってCは○。

漿液性腺腫は卵管上皮に類似する。単層シート状の細胞集塊として出現する。腺癌は小型腺癌細胞が乳頭状の細胞集塊で出現する場合が多いが、細胞異型が目立ち明細胞腺癌と鑑別を要する場合もある。石粒小体を伴うことが多い。PAS反応は基本的には陰性である。腺腫、腺癌ともに細胞質辺縁に微絨毛様の構造がみられることがある。

砂粒小体は漿液性腺癌でみられることがあります。よってDは×。

髄様癌medullary carcinomaは、充実性、髄様増生と、間質のアミロイド沈着を組織学的特色とする甲状腺の神経内分泌腫瘍である。肉眼的には神経内分泌腫瘍の特色である拡大増生(一般に被膜は作らないが境界は明瞭)、割面は帯黄色、充実性である。甲状腺C細胞(傍濾胞細胞)由来腫瘍であり、カルシトニンを産生する。カルシトニンとCEA(癌胎児抗原)が腫瘍マーカーであり、診断と再発の検出に血中カルシトニンとCEAの測定が用いられる。

アミロイド沈着は甲状腺髄様癌における特徴的な所見です。よってEは×。



5. 正しい組み合わせはどれですか。 (3)
A. バーキットリンパ腫―EBV(エプスタイン・バーウイルス)
B. 菊池(壊死性リンパ節炎)―CMV (サイトメガロウイルス
C. 猫ひっかき病―HIV(ヒト免疫不全ウイルス)
D. ヒトT細胞性白血病HTLV-1(ヒトTリンパ球向性ウイルス)
E. カポジ肉腫―HHV-8(ヒトヘルペスウイルス8型)


正解:ADE

解説:

バーキットリンパ腫burkitt lymphomaは赤道アフリカに多発する小児の高悪性度リンパ腫で、1958年Burkittによって初めて臨床学的な報告がなされた。本リンパ腫は赤道アフリカ、ニューギニアに多発するendemic型と欧米、日本などにみられるsporadic型、免疫不全関連型とに分けられる。これらには臨床病態、EBウイルスの感染頻度、染色体の切断点に相違がみられる。EBウイルス感染頻度はendemic型で95%、sporadic型で10~20%、免疫不全関連型で25~40%である。染色体異常は症例の80%にt(8;14)、5%にt(2;8)、15%にt(8;22)がみられる。

よってAは○。

組織球性壊死性リンパ節炎histiocytic necrotizing lymphadenitisは、菊池・藤本病とも呼ばれ原因不明の反応性リンパ節疾患である。臨床的には不明熱とリンパ節腫脹を主張とする。大型リンパ球様細胞の多くはT細胞であり、また細胞壊死はT細胞のアポトーシスと考えられている。組織学的には傍皮質から皮質にかけて限局性巣状あるいは融合性病変をみる。病変部では大型リンパ球様細胞、形質細胞様単球および組織球が増殖し、アポトーシスとみなされる細胞壊死核崩壊物がみられる。組織球の一部は、核崩壊物や赤血球を貪食している。症例によっては病巣内の壊死が強いもの、多数の泡沫細胞を伴うものがある。本病変では好中球の浸潤がみられないことも組織学的特徴の1つである。大型リンパ球様細胞の増殖が著しい場合は悪性リンパ腫との鑑別が必要である。

壊死性リンパ節炎は原因不明の反応性リンパ節炎です。よってBは×。

ネコひっかき病cat scratch diseaseはネコにひっかかれた後、発熱とともに急激に腋下リンパ節が腫大する。腋下のほか、頸部や鼠径部のリンパ節に病変を来たすことがある。原因菌はグラム陰性桿菌のBartonella henselaeである。病変の中心に膿瘍、壊死巣がみられ、その周囲にラングハンス型巨細胞を含む類上皮細胞からなる肉芽腫が形成される。類上皮細胞は柵状に配列する。ときに単球様B細胞monocytoid B cellの集簇巣がみられるが、トキソプラズマ症とは異なり、リンパ濾胞内に類上皮細胞の肉芽腫をみることはない。

ネコひっかき病はBartonella henselaeという細菌が原因です。よってCは×。

ヒトTリンパ球向性ウイルスhuman T-lymphotropic virusにはHTLV-1、-2があり、西日本、特に九州・沖縄に多い成人T細胞白血病adult T-cell leukemia/lymphoma(ATL)を起こすHTLV-1が重要である。ATLの多くは母乳によって感染し、40歳以上で発症する。ATLでは、腫瘍細胞の浸潤を伴う皮疹やリンパ節腫脹がみられ、末梢血にはクビレの目立つ花弁状細胞が出現する。稀に、痙性脊髄麻痺(HTLV-1関連脊髄症HTLV-1 associated myelopathy:HAM)を起こす。

よってDは○。

HHV-6、-7は乳幼児の突発性発疹の原因ウイルスで、HHV-8はAIDS患者に多いカポジ肉腫Kaposi sarcomaや原発性滲出液リンパ腫primary effusion lymphoma(PEL)と関連している。

よってEは○。



6. 正常リンパ節について正しいものはどれですか。(3)
A. 胚中心には高内皮小静脈がみられる。
B. 副皮質にはtingible body macrophageが認められる。
C. 皮質はB細胞の領域である。
D. 二次リンパ濾胞は胚中心と暗殻と辺縁帯からなる。
E. 副皮質はT細胞の領域である。


正解:CDE

解説:

リンパ節実質は皮質cortex、傍皮質paracortexおよび髄質medullaに分けられる。皮質はリンパ洞と接し、リンパ濾胞の周囲に位置する濾胞辺縁帯marginal zoneとリンパ濾胞lynph follicleを含むB細胞に富む領域である。リンパ濾胞はBリンパ球が密な集簇をしている領域で、一次濾胞primary follicleと二次濾胞secondary follicleとに区別される。一次濾胞は胚中心germinal centerを欠き、小型リンパ球のみからなる濾胞である。二次濾胞は胚中心と呼ばれる明るい部分と、それを取り込む小型リンパ球の集簇層(マントル層mantle zone)からなり、さらにその外側には濾胞辺縁帯がみられる。濾胞辺縁帯は主としてBリンパ球からなる領域である。濾胞辺縁帯のBリンパ球はマントル層の小型リンパ球よりやや大型な細胞で、記憶B細胞の性格を有している。傍皮質はTリンパ球が密に集まっている領域で、その領域には内皮細胞の丈の高い血管(高内皮細静脈high endothelial venule:HEV)が存在する。HEVは後毛細血管静脈postcapillary venule(PCV)とも呼ばれ、リンパ管から静脈に入ったリンパ球が血液中からここを介して再びリンパ節内に遊出するというリンパ球再循環の経路となっている。髄質はリンパ節門部を主体とする部分で髄索と髄洞からなる。髄索には多数の形質細胞がみられ、リンパ節における主な抗体産生部位である。

よってCとDとEは○。
高内皮小静脈は傍皮質にみられます。よってAは×。
Bの選択肢に関する文献は探せませんでした。よってBは△。



7. 正しいものはどれですか。(3)
A. 皮膚筋炎は内臓悪性腫瘍を合併しやすい。
B. 骨髄腫ではベンスジョーンズ蛋白による腎障害を起こす。
C. 前立腺癌の骨転移は溶骨性が多い。
D. 肺癌による高カルシウム血症は癌細胞によるACTH分泌が原因となる。
E. 甲状腺髄様癌は多発性内分泌性腫瘍症候群(MEN)2型でみられやすい。


正解:ABE

解説:

全身の横紋筋のびまん性炎症性病変を来たす疾患で、皮膚病変を認める場合には皮膚筋炎dermatomyositis(DM)、認めない場合に多発性筋炎polymyositis(PM)と呼んでいる。男女比は1:2~3で40歳以上に好発する。DMでは悪性腫瘍を、PMでは血管炎を合併しやすい。抗核抗体が高頻度に検出され(40~60%)、そのうち本症に特異的とされる抗Jo-1抗体は10~25%に陽性である。

よってAは○。

多発性骨髄腫では産生される免疫グロブリン由来の異常タンパクが尿細管を障害し骨髄腫腎myeloma kidneyと呼ばれる。免疫グロブリン軽鎖由来の異常タンパクは尿中に出現し、ときにはベンズ・ジョーンズBence Jonesタンパクとしてみられる。これらの異常タンパクは尿細管上皮細胞を障害し、尿細管上皮の萎縮あるいは壊死、脱落を来たすほか、異物反応を示し多核巨細胞の出現を認める。

よってBは○。

骨に転移しやすい腫瘍の大部分は癌腫で、原発臓器としては肺、乳腺、前立腺、腎、甲状腺、消化器(胃、大腸)である。小児では神経芽細胞腫がよく骨に転移する。X線上、溶骨性、造骨性、混合性に分けられるが、大部分は溶骨性である。前立腺、カルチノイド腫瘍、乳腺では造骨性が多くみられる。骨形成、骨融解は骨芽細胞と破骨細胞による作用であり、腫瘍細胞が直接骨の新生や吸収を行っていない。転移は頭蓋骨、脊椎骨、骨盤骨に多くみられ、大腿骨や上腕骨などの長管骨が続き、手足の管状骨への転移は稀である。

乳腺癌、前立腺癌、カルチノイド腫瘍が骨転移をすると造骨性を示します。よってCは×。

全肺癌患者の10%以下で腫瘍からホルモン様物質を産生する腫瘍随伴症候群paraneoplastic syndromeがみられる。小細胞癌で最も頻度が高く、ACTHの分泌によるクッシング症候群、カルシトニンの分泌による低カルシウム血症、ADHの分泌による低ナトリウム血症がある。扁平上皮癌ではPTHの分泌による高カルシウム血症を起こす。カルチノイドではセロトニン分泌によるカルチノイド症候群を起こす。

肺扁平上皮癌はPTHを分泌して高カルシウム血症を起こします。よってDは×。

多発性内分泌腫瘍症1型(MEN type 1、Wermer症候群)は下垂体腺腫、副甲状腺機能亢進症、膵内分泌腫瘍を合併する。その他にカルチノイドや副腎皮質腺腫を合併することがある。Wermerにより報告され、常染色体優性の遺伝性疾患であることが指摘された。原因遺伝子は第11番染色体MEN1遺伝子であることが、その後明らかにされた。発症年齢が低く、腫瘍が臓器内に多発することと、前駆病変がみられることが特色である。頻度の高い合併病変は副甲状腺機能亢進症であり、副甲状腺機能亢進症がきっかけとなり、MENが発見されることが多い。
多発性内分泌腫瘍症2型(MEN type 2、Sipple症候群)は甲状腺髄様(C細胞)癌、副甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫を合併する遺伝性腫瘍症のことをいう。その他に、消化管神経節神経腫ganglioneuroma、消化管の機能異常(イレウス、巨大結腸症)、骨格異常(マルファン様体型)などを合併する。その他の合併症のないものをMEN 2A、その他の合併症のあるものをMEN 2Bと区別する。

多発性内分泌腫瘍症2型(MEN type 2、Sipple症候群)では甲状腺髄様癌、副甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫を合併します。よってEは○。



8. 誤っているものはどれですか。(3)
A. 気管支上皮には粘液空胞を有する杯細胞が存在する。
B. 副鼻腔粘膜は重層扁平上皮からなる。
C. 子宮頸管上皮には粘液空胞を有する杯細胞が存在する。
D. 尿道遠位部の上皮は尿路上皮からなる。
E. 肝内胆管上皮は単層円柱上皮からなる。


正解:BCD

解説:

気管支bronchusは、気管から二分し主気管支となり、葉(第一次)気管支、区域(第二次)気管支、亜区域(第三次)気管支となり、細気管支に至る。気管支上皮は基本的には気管と同様に多列線毛上皮であるが、葉気管支から亜区域気管支に向かうにつれて上皮細胞の丈が低くなり、杯細胞も少なくなる。葉気管支には、気管支腺とよく似た2種類の腺が存在する。区域、亜区域気管支では、粘液・漿液の混合腺だけが存在し、後者に向かうにつれその腺が減少していく。

よってAは○。

副鼻腔paranasalsinusは前頭洞、蝶形骨洞、前後篩骨洞に分けられ、鼻前庭より続いている多列線毛円柱上皮で覆われているが、細胞の丈が低いこと、杯細胞の数が少ないことが異なる点である。

副鼻腔は多列線毛上皮で覆われています。よってBは×。

子宮頸部uterine cercixは、子宮の下1/3の部分で、下部は子宮膣部となり膣内に突出し重層扁平上皮で覆われている。その上部の子宮頸部は頸管内膜で覆われており、主に粘液産生性の円柱上皮細胞により、また一部は線毛円柱上皮により構成されている。

子宮頸部は円柱上皮細胞で覆われています。よってCは×。

尿路は腎盂、尿管、膀胱および尿道からなる。腎盂、尿管、膀胱および近位尿道の一部は尿路上皮によって被覆されている。

尿道遠位部は扁平上皮細胞で覆われています。よってDは×。
肝内胆管は丈の低い円柱上皮細胞で覆われています。よってEは○。



9. 線毛を持たないものはどれですか。(2)
A. 卵管上皮
B. 卵巣漿液性嚢胞腺腫
C. 膵管上皮
D. 悪性中皮腫
E. 気管支上皮


正解:CD

解説:

卵管fallopian tubeは、長さ10cm前後の管で、一端は子宮腔へ開き、対側(子宮より遠位側)は腹腔に開くが先端は乳頭状突起が卵管采を形成している。粘膜は卵管腔内に乳頭状に突出し、表面は単層円柱上皮によって覆われている。この上皮は線毛細胞と分泌細胞からなる。線毛細胞は卵管采と膨大部に多く、分泌細胞は峡部から子宮口に近づくほど多くなる。

卵管上皮は線毛上皮と分泌細胞からなります。よってAは×。

漿液性嚢胞腺腫serous cystadenomaは卵巣の表層上皮から発生する代表的な良性腫瘍である。1個ないし複数個の嚢胞形成を認める。構成細胞には内腔側に線毛を認めることがある。嚢胞形成は、肉眼的に十分に確認できるほどの大きさである。概観すると表面は平滑で緊満感があり、透光性である。嚢胞腺腫の内溶液は淡黄色漿液性である。症例によっては軽度に混濁している。腫瘍の内腔面は平滑であるが、時に内腔に向かって乳頭状増殖がみられることもある。腫瘍細胞は、基本的には1層の配列を示す。充満した内容物による圧迫萎縮のために扁平化したり、あるいは部分的に剥離していることもある。

卵巣漿液性嚢胞腺腫では線毛を認める細胞がみられることがあります。よってBは×。

浄法や擦過法で得られる細胞は、ほとんどが膵管由来の立方~円柱上皮である。膵炎や膵石症などで核腫大、核濃染を伴う膵管上皮をみることがある。また穿刺吸引材料には、上記の細胞以外に腺房細胞(チモーゲン顆粒を含む)やランゲルハンス(Langerhans)島を構成する内分泌細胞が出現する。しかし、これらの細胞は細胞診では容易に識別できない。

よってCは○。
悪性中皮腫は線毛ではなく微絨毛をもっています。よってDは○。

気管支bronchusは、気管から二分し主気管支となり、葉(第一次)気管支、区域(第二次)気管支、亜区域(第三次)気管支となり、細気管支に至る。気管支上皮は基本的には気管と同様に多列線毛上皮であるが、葉気管支から亜区域気管支に向かうにつれて上皮細胞の丈が低くなり、杯細胞も少なくなる。葉気管支には、気管支腺とよく似た2種類の腺が存在する。区域、亜区域気管支では、粘液・漿液の混合腺だけが存在し、後者に向かうにつれその腺が減少していく。

気管支上皮は線毛円柱上皮、杯細胞、基底細胞、好銀細胞からなります。よってEは×。



10. 正しいものはどれですか。(2)
A. 細胞周期のうち、DNA複製はM期で行われる。
B. cyclinファミリー分子は細胞周期の回転を抑制する。
C. cyclin D1の発現はG2期で上昇する。
D. 網膜芽細胞腫遺伝子蛋白(Rb蛋白)は細胞周期に対して抑制的に働く。
E. p21はサイクリン依存性キナーゼ(Cdk)抑制因子である。


正解:DE

解説:細胞周期について深く聞かれるとちょっとしんどいですね(笑)

細胞が分裂を開始し、完了してからまた次に分裂が始まるまでの間を細胞周期cell cycleという。細胞分裂が完了してから次の分裂が開始されるまでの期間を間期interphaseと呼ぶ。間期は、DNA合成準備期(G1期)、DNA合成期(synthetic phase:S期)、分裂準備期(G2期)に分けられる。有糸分裂の進行が観察できる分裂期は、M期(M phase)と呼ばれる。

DNAの複製はS期に行われます。よってAは×。

細胞分裂していない休止期の細胞はG0期にあるとされ、G0期の細胞は増殖刺激を受けると再びG1期に移行すると考えられる。細胞周期は周期的に発現レベルの変化するサイクリンcyclinという物質群(cyclin A、B、C、D)とcdk(cyclin-dependent kinase)というキナーゼ群(cdk2、4、6など)によって制御されている。cdkはサイクリンと複合体とを形成し、下流の基質をリン酸化することにより細胞周期を進行させる。またサイクリン、cdkのほかに、p16、p21、p27などのcdkインヒビタがあって、細胞周期の進行を負に制御している。

よってEは○。
cyclinファミリー分子は細胞周期の回転を促進します。よってBは×。
cyclin D1の発現はG1期で上昇します。よってCは×。
Rbは癌抑制遺伝子の1つです。細胞周期ではRb蛋白はcyclin D1からリン酸化を受けてE2F1を解離し、このE2F1がS期に必要な分子の転写を誘導します。よってDは○。



11. 正しい組み合わせはどれですか。(2)
A. 担空胞細胞― 軟骨肉腫
B. 合胞体形成―髄膜腫
C. 軟骨基質―肺過誤腫
D. ごま塩状クロマチン甲状腺濾胞癌
E. スリガラス状核―サイトメガロウイルス感染細胞


正解:BC

解説:

脊索腫chordomaは胎生期の脊索の残存組織に由来する悪性腫瘍で、40歳以上の頭蓋底部の斜台と仙骨部に好発する。緩徐に発育するが、発生部位と大きさのため完全に切除できず局所再発を繰り返すことが多く、末期には肺転移を来す。組織学的には好酸性細胞質を有する細胞が、豊富な粘液状基質の中に索状配列を示す。細胞質が空胞状となった細胞を担空胞細胞physaliferous cellと呼ぶ。細胞質内に豊富なグリコーゲン顆粒を含み、免疫染色ではビメンチン、S100タンパク、サイトケラチン、epithelial membrane antigenが陽性を示す。

担空胞細胞(フィサリフォラス細胞)は脊索腫でみられます。よってAは×。

髄膜腫meningiomaは髄膜に発生する良性腫瘍で、頭蓋内腫瘍としては膠腫に次いで多くみられ、脊髄でもシュワン細胞腫と並んで頻度が高い。中年もしくはそれ以後に発生し、大脳鎌、傍矢状部、大脳円蓋部などに好発する。腫瘍は淡赤色で半球状の硬い結節を作り、硬膜内面に強く癒着する。組織学的に髄膜皮型、線維型、移行型、砂粒腫型など多数の亜型に分類されている。髄膜皮型は境界不明瞭な細胞の合胞状、充実性の細胞巣からなり、線維型は細長い紡錘形細胞が主体をなす。移行型は前2者の混在したもので、毛細血管の周囲に同心円状の渦巻を形成する傾向がある。砂粒小体psammoma bodyの出現が著明にみられるものは砂粒腫型と呼ばれている。

よってBは○。

過誤腫hamartomaは肺の良性腫瘤形成性病変の中で最も多く、主に末梢に発生する。肺の正常構成成分である上皮性成分と間質性成分、特に軟骨組織が不均一な割合で混合した腫瘍で、軟骨性過誤腫が最も多い。針穿刺吸引細胞診が診断対象となる。

よってCは○。

甲状腺濾胞癌は中~小型の濾胞状集団で多数の濾胞上皮細胞が出現する。しばしば集団の中央部にオレンジGに濃染するコロイドを認める。核は円~類円形を示すことが多い。クロマチンは顆粒状密に分布し、乳頭癌より濃くみえる場合が多い。集団の不規則重積、結合性の低下、顆粒状クロマチンの所見がそろってみられた場合は、細胞診で濾胞癌を推定することは可能であるが、濾胞腺腫との鑑別が困難な症例が多い。

ごま塩状クロマチンはカルチノイド腫瘍でみられる核所見です。甲状腺濾胞癌は顆粒状で密なクロマチンがみられますが、特に濾胞癌に限った核所見ではなく一般的に悪性といわれる細胞によくみられる核所見です。よってDは×。

サイトメガロウイルス感染細胞は20~40μmと大型で、核内にはhaloで囲まれた封入体(Cowdry A型)がみられる。この封入体は、丸く大きくなるため、一見フクロウの目(owl-eye)様にみえる。このため巨細胞封入体症ともいわれる。日和見感染、AIDSでみられる全身感染の一部分症として肺にみられる。P.carinni(jiroveci)などの混合感染であることが多く、肺胞上皮、気管支上皮、血管内皮細胞に封入体がみられる。

サイトメガロウイルス感染細胞は核内にhaloで囲まれた大きな封入体がみられます。よってEは×。



12. 神経内分泌腫瘍(NET)について正しいものはどれですか。(2)
A. 細胞形態による診断は容易である。
B. 消化管からは発生しない。
C. CD56(NCAM) は腫瘍細胞の核に一致する陽性反応を示す。
D. Ki-67/MIB-1の標識率は高分化型神経内分泌腫瘍と神経内分泌癌との鑑別の指標の一つとなる。
E. Somatostatin receptor type2の免疫染色が治療法の選択に有用である。


正解:DE

解説:

ある腫瘍を病理組織学的に神経内分泌腫瘍と診断するに際しては腫瘍細胞の神経内分泌への分化を確実に把握することが必要である。病理形態学的にある程度神経内分泌への分化を示唆する所見は確かにあるが、一番確実なのは神経内分泌マーカーを免疫組織化学的に検討してみることである。現時点ではG1、G2 のNET では感度は高いが副腎皮質の網状層細胞などで発現がみられるように特異性は必ずしも高くないシナプトフィジンか特異性は高いものの感度は必ずしも高くないクロモグラニンAのどちらかが免疫組織化学的に陽性になり、その割合が腫瘍細胞全体の70%を超える症例を神経内分泌腫瘍と規定する。G3 あるいはNEC の場合には必ずしもこれらの神経内分泌マーカーが全例で陽性になるとは限らないことから、NCAM、NSE などの陽性所見と形態学的特徴を総合的に考慮して診断を進める必要がある。従来、神経内分泌への分化を規範するのに用いられていたグリメリウス染色などは、診断に際しては参考程度にとどめるものと規定されている。

神経内分泌腫瘍は細胞形態より免疫組織学化学的に診断するほうが確実です。よってAは×。
神経内分泌腫瘍の一つであるカルチノイド腫瘍は消化管によく発生します。よってBは×。
CD分類は細胞表面抗原分子に対応しています。つまり細胞膜に一致する陽性反応を示します。よってCは×。

2010 年にWHO の組織分類が新たに提唱され、このなかで消化器に発生するNET(gastroenteropancreatic NET:GEP-NET)については、Ki67 indexまたは細胞分裂数の2因子のみから構成されるきわめて簡便な分類方法によって、G1(Ki67 index≦2%)、G2(2%<Ki67 index≦20%) およびG3(20%<Ki67 index)に分類されることとなった。また同分類では、内分泌腫瘍成分と外分泌腫瘍成分が混在する腫瘍のうち、後者が全体の30%以上70%以下認められる症例については、mixed adenoneuroendocrine carcinoma(MANEC)とされた。とくに従来その概念が明確ではなかったカルチノイド腫瘍という病名を使用しないようにしたことは重要である。しかし最近になってG1、G2 をNET としてG3をNEC(neuroendocrine carcinoma)と規定し、これらを包括しNEN(neuroendocrine neoplasm)という概念が提唱され、やや混乱がみられるのも事実である。

よってDは○。

神経内分泌腫瘍の診断において、クロモグラニンA、シナプトフィジン、NCAMのみではなくて、今後治療に有用と思われる、SSTR2aや、SSTR5も有用な神経内分泌マーカーと考えられる。SSTR2aは酢酸オクトレオチドの分子標的であり、SSTR2a陽性となる神経内分泌腫瘍において、オクトレオチドの効果が期待される。SSTR2aの免疫染色は、乳癌のHER2の検査やGISTにおけるc-kitの発現を確認するのと同様で、神経内分泌腫瘍の病理診断と治療法の決定に重要な役割を果たすと考えられる。

酢酸オクトレオチドは人工的に作製されたソマトスタチン製剤のことです。ソマトスタチンは内分泌腫瘍細胞のホルモン分泌抑制や増殖抑制に関与しています。よってEは○。



13. 正しいものはどれですか。(2)
A. ニューモシスチス肺炎ではβ-Dグルカン高値を示す。
B. サルコイドーシスは肉芽腫内に乾酪壊死を伴う。
C. 化膿性炎において浸潤を示す細胞はリンパ球が主体となる。
D. 気管支喘息好酸球から枚出されるヒスタミンにより引き起こされる。
E. 肉芽腫は慢性増殖性炎である。


正解:AE

解説:

β-Dグルカンは、キチンやマンナンと共に真菌の細胞壁を構成する多糖体である。深在性真菌症では起因真菌由来のβ-Dグルカンが血中に出現することから、β-Dグルカン測定は深在性真菌症の診断、治療効果判定および経過観察に用いられる。β-Dグルカンはムコールなどの接合菌類には認められない。クリプトコッカス症では、通常β-Dグルカンの上昇は認められない。

よってAは○。

サルコイドーシスsarcoidosisは原因不明の全身性の肉芽腫症で、胚やリンパ節は特に侵されやすい。類上皮細胞性の肉芽腫で一般に結核結節のような乾酪壊死は伴わない。Langhans型巨細胞の胞体内に星芒体(アステロイド小体asteroid body)やシャウマン小体をみることがある。

サルコイドーシスでは乾酪壊死はみられません。よってBは×。

多数の好中球が血管から遊走して滲出液に混ざったものを漿液化膿性炎seropurulent inflammationといい、好中球の特に多いものを化膿性炎purulent inflammationという。大部分はブドウ球菌、連鎖球菌などの細菌(化膿菌)感染によって起こる。

化膿性炎では好中球が主体です。よってCは×。

肥満細胞や好塩基球のFcレセプタに結合した(主に)IgEに、多価抗原(アレルゲンallergen)が結合すると、FcεRIのbridgingが起こり、それがシグナルとなって細胞質内にある顆粒からヒスタミン、ロイコトリエンC4、D4などのSRS-A、ECF-A、血小板活性化因子(PAF)などが放出される。これらのケミカルメディエーターは血管透過性の亢進、平滑筋収縮、外分泌腺の過分泌、好酸球の遊走を引き起こす。気管支喘息、薬剤投与によるアナフェラキシーショック、花粉などによるアレルギー性鼻炎などがある。

ヒスタミンは好塩基球から放出されます。よってDは×。

急性炎症の組織反応の特徴が滲出炎であるのに対して、慢性炎症では増殖炎proliferative inflammationが特徴的である。一般的にみられる慢性増殖炎と、特殊な病態でみられる肉芽腫性炎に分類される。

よってEは○。



14. 誤っている組み合わせはどれですか。(2)
A. Call-Exner body―卵巣漿液性腺癌
B. Yellow body―硝子化索状腺腫
C. Auer body―前骨髄性白血病
D. Russell body―形質細胞腫
E. Schiller-Duval body―絨毛癌


正解:

解説:AE

顆粒膜細胞腫granulosa cellは顆粒膜由来の腫瘍で、境界悪性ないし悪性腫瘍である。エストロゲンやアンドロゲンを産生するものがある。成人型と若年型に分けられる。成人型の定型例では充実性腫瘍巣内にCall-Exner小体と呼ばれる小腔を形成する。

コールエクスナー小体は顆粒膜細胞腫でみられます。よってAは×。

硝子化索状腫瘍は組織学的には、境界明瞭な充実性腫瘍で、薄い被膜を有することもある。腫瘍細胞は多角形、あるいは紡錘形で、明るい比較的豊富な細胞質を有し、核内細胞質封入体が目立つ。細胞質には明暈を伴った淡染性滴状物(yellow body)が散見される。腫瘍細胞は索状ないし島状の充実性増殖を示し、胞巣間および個々の腫瘍細胞間にPAS陽性の硝子様間質がみられる。免疫組織化学的には、通常乳頭癌に陽性を示すサイトケラチン19が陰性で、Ki-67(MIB-1)が細胞膜および細胞質に陽性局在を示すことが特徴的である。硝子物はラミニンあるいは4型コラーゲンに陽性である。

よってBは○。

急性前骨髄球性白血病acute promyelocytic leukemia(APL)は、白血病細胞のほとんどが前骨髄球様で、アウエル小体が複数あってfagot cellとなっているものもある。核は大きな湾入がある。10%程度は光顕でアズール顆粒が明瞭には認められず、異型(M3V)とされる。播種性血管内凝固(DIC)を発症しやすい。

よってCは○。

ライトグリーンに染まる均一で硝子様の滴状構造物は硝子滴とよばれる。時に、肝細胞癌や腺癌の細胞質内に観察されるが、他の多くの腫瘍でもみられ特異的ではない。その成分は産生する細胞の種類により異なる。肉腫にみられる場合は肉腫小体sarcoma body、形質細胞腫にみられる場合はラッセル小体Russell bodyとよばれる。

よってDは○。

卵黄嚢腫瘍yolk sac tumorは10~20代に好発する悪性腫瘍で、α-フェトプロテインを産生する。このほか、CEA、CA-125も陽性となる。組織学的には糸球体類似構造(Schiller-Duval小体)や特有な網状構造などを示す。好酸性の硝子化小体hyaline body(globule)が認められ、α-フェトプロテイン免疫染色で陽性を示す。予後は極めて不良である。

シラーデュバル小体は卵黄嚢腫瘍でみられます。よってEは×。



15. 誤っているものはどれですか。(2)
A. 個体発生は卵子精子の受精によって始まる。
B. 発生の第0週から2週の間を胎芽期と呼ぶ。
C. 外胚葉から骨、骨格筋、心臓、血管などができる。
D. 心臓は胎芽期に形成される。
E. 栄養膜から羊膜腔と卵黄嚢が形成される。


正解:BC

解説:発生についても深く聞かれるとしんどいですね。
Aは正しいですね。

受精から着床までの0~2週までの期間を胚芽期germinal periodという。この期間に急速に分割・分化が進み、脳の形成などが始まる。3~8週までの期間を胎芽期embryonic periodといい、この期間の終わりにはヒトに類似した形態になっている。心臓や眼、四肢はこの期間に形成される。9週~出生までの期間を胎児期fetus periodという。12週までは器官形成が続き、20週までに主な臓器の微細構造が完成する。それ以降は胎児および臓器の量的増大が主となる。肺胞形成は妊娠23週頃であり、これが胎児生育限界となっている。

よってDは○。
発生の第0週から2週の間は胚芽期とよばれます。よってBは×。

外胚葉系は体表に存在する表皮とその付属感覚器が主要をなし、発生の初期に外側に存在した神経系もこれに相当する。内胚葉は消化・呼吸器系(肺、肝、胃、膵など)の上皮細胞であり、中胚葉は骨格や間質系の大部分と心臓、血管、副腎皮質などがある。
外胚葉の表層外胚葉からは表皮、毛髪、爪、皮膚腺、乳腺、下垂体前葉、歯エナメル質、内耳、水晶体、神経外胚葉からは脳神経、知覚神経節と神経、副腎髄質、色素細胞、中枢神経系、網膜、松果体、下垂体後葉が発生する。中胚葉からは軟骨、骨、結合組織、内臓筋肉(平滑筋)、胴体の筋肉(横紋筋)、心臓、脈管、リンパ系脾臓、腎臓、表皮の真皮、生殖腺、生殖管、心膜、胸膜、腹膜の漿膜(中皮)、副腎皮質が発生する。内胚葉からは、呼吸器の上皮、消化管の上皮、肝臓・脾臓の実質、膀胱、尿道の上皮、咽頭甲状腺、扁桃腺、上皮小体・鼓室・耳管の上皮が発生する。

骨、骨格筋、心臓、血管は中胚葉から発生します。よってCは×。

胚盤胞の栄養膜合胞体層が、活発に子宮内膜支質を浸食する結果、胚盤胞は子宮内膜の中へ深く沈んでいく。内細胞塊(胚結節)と栄養膜細胞層の間に空隙ができる(羊膜腔の原基)。栄養膜細胞層に由来する薄板状の羊膜芽細胞 aminoblast が、この空隙の内面を覆い羊膜を形成する。 羊膜は、胚盤葉上層に接続して、全体として羊膜腔を囲む。上記の過程で、内細胞塊(胚結節)そのものにも変化が生じる。すなわち胚盤 embryonic disc という。2層の細胞層からなる円形の板を形成する。2層の細胞層とは次のことをいう。
① 胚盤葉上層(上胚盤葉 epiblast):羊膜腔に面した高円柱上皮
② 胚盤葉下層(下胚盤葉 hypoblast):胚盤胞腔に面した立方上皮
胚盤葉下層の細胞が移動して胚外体腔膜 exocoelomic membrane を形成する。胚盤葉下層と胚外体腔膜は、一次卵黄嚢 primary yolk sac(原始卵黄嚢 primitive yolk sac)となる。胚盤葉下層の細胞が移動して羊膜と一次卵黄嚢の外周を埋める(胚外中胚葉 extraembryonic mesoderm)。胚外中胚葉の中に空隙が生じ、これらは合して一つの大きな空隙となる(胚外体腔 extraembryonic coelom)。胚外体腔の形成に伴い、一次卵黄嚢は縮小して二次卵黄嚢 secondary yolk sac となる。

羊膜腔は栄養膜細胞層に由来する羊膜芽細胞から、卵黄嚢は胚外中胚葉から形成されます。胚外中胚葉は内細胞塊付近の栄養膜細胞由来です。よってEは○。



16. 男性に多く発生する腫瘍を1つ選びなさい。(1)
1. 膵粘液性嚢胞腺腫
2. 胆嚢癌
3. 髄膜腫
4. 食道癌
5. 甲状腺乳頭癌


正解:4

解説:

粘液性嚢胞腫瘍mucinous cystic tumorは中高年女性の膵尾部に好発し、男性例はきわめて稀である。膵内および膵外性に発育し比較的厚い線維性結合織で囲まれた多房性・大嚢胞性病変を形成し、内容物として粘稠性のある粘液(ムコ多糖類)を満たす。組織学的に線維性結合織により周囲膵組織と明瞭に境界される。嚢胞内側は粘液を産生する単層の高円柱状または立方状の上皮性腫瘍細胞で覆われている。増殖が盛んな部位では、腫瘍細胞は乳頭状を呈し偽重層化することもある。嚢胞腺腫に比べ、嚢胞腺癌では核や細胞の異型が目立つ。腫瘍病変は嚢胞内に限局するが、悪性例では嚢胞内に限局するが、悪性例では嚢胞壁浸潤や壁外への浸潤・転移を伴う。厚い線維状被膜で形成される嚢胞壁内に間葉細胞が密に配列し、卵巣間質に類似した所見が認められるのが、本腫瘍の組織学的特徴とされている。

膵粘液性嚢胞腺腫は女性に多いです。よって1は×。

胆嚢癌carcinoma of the gall bladderは60~70代に好発し、女性の発生率が男性の2~3倍である。女性に多いこと、また60~90%に胆石を合併していることから、胆石と胆嚢癌発生に密接な関連性があるという説もあるが、議論が多い。胆嚢体部から底部にかけて好発し、肉眼的には肝外胆管癌と同様、乳頭型、結節型、平坦型に分けられ、リンパ節転移の有無にかかわらず、粘膜内、または固有筋層内にとどまるものを早期胆嚢癌と定義している。組織学的には90%前後は腺癌であり乳頭状腺癌、あるいは管状腺癌が多くを占める。高度の粘液産生を示す粘液癌、腺扁平上皮癌、未分化癌などが稀にみられる。

胆嚢癌も女性に多いです。よって2は×。

髄膜腫meningiomaは髄膜皮細胞meningothelial cellから発生する腫瘍である。全頭蓋内腫瘍の26.8%を占め、成人女性に多い。硬膜のある部分に発生し、傍矢状洞、大脳円蓋部、蝶形骨縁、大脳鎌、鞍結節、臭溝などが好発部位である。稀に側脳室脈絡叢からも発生する。

髄膜腫も女性に多いです。よって3は×。

食道癌esophageal cancerの高死亡率地域とされる中国北部、カスピ海沿岸、南アフリカ南東部における食道癌発生の危険因子は、穀物主体の貧しい食生活と慢性的低栄養状態と果物や野菜の摂取量の不足が明らかとなっており、男女差はない。他方、中等度の死亡率を示すのはフランスなどの先進国で、男性が圧倒的に多い。飲酒と喫煙が危険因子であり、危険率は喫煙者(タバコ1日20本以上)で5倍、飲酒者(日本酒3合以上)では18倍、喫煙+飲酒では44.4倍とされている。なお、最近ではヒト乳頭腫ウイルスpapilloma virusとの関連が指摘されている。わが国は先進国グループに属し、年間約1万人が死亡し、全癌死の約3.5%を占めている。男女比は6:1で、60~70代にピークがある。食道癌は予後不良な難治癌の1つであり、進行食道癌の5年生生存率は20~30%程度である。食道には漿膜がなく気管や縦隔に浸潤しやすく、多発症例なども治療を困難にしている要因である。

食道癌は先進国グループにおいては男性に多いです。よって4は○。

甲状腺乳頭癌は中年以上の女性に多い悪性腫瘍で、原発甲状腺癌の80%ないしそれ以上を占める。予後良好で、術後10年生存率でも80%台を示す。リンパ行性転移を起こしやすく、甲状腺外への広がりとしてはまず頸部リンパ節転移が生じることが多い。組織診断上、乳頭癌に特有な所見としてはスリガラス状核、核内細胞質封入体、核の縦溝、砂粒小体の診断的値は高い。

甲状腺乳頭癌も女性に多いです。よって5は×。



17. マイクロフイラメント(微細線維)を1つ選びなさい。(1)
1. ケラチン
2. デスミン
3. glial fibrillary acidic protein(GFAP)
4. ビメンチン
5. アクチン


正解:5

解説:

細胞内には、光学顕微鏡的には見ることのできない細い線維状の構造物が多数存在する。これらの線維の役割は、細胞の形を整えたり(細胞の骨組みの意味で、細胞骨格cytoskeltonとよばれている)、細胞の運動、物質や小器官の細胞内での移動、分泌にはたらいていると考えられている。収縮性蛋白であるアクチンactinとミオシンmyosinでできているものをマイクロフィラメントmicrofilamentとよび、それより太いもの(70~100Å)は中間径フィラメントとよばれ、ケラチン、ビメンチン、デスミン、神経線維、グリアフィラメントなどが知られている。

よって5は○。
ケラチン、デスミン、GFAP、アクチンは中間径フィラメントです。よって1と2と3と4は×。



18. アスペルギルスの特徴でないものを1つ選びなさい。(1)
1. Y字型の分岐
2. 偽菌糸
3. 分生子頭
4. 隔壁
5. 経気道感染


正解:2

解説:

アスペルギルス症pulmonary aspergillosはカンジダ症と同様発生率の高い日和見感染症を起こす深在性真菌症である。通常空中に浮遊する菌の吸引による経気道的な感染が起こる。代表的なものにアスペルギローマ、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、侵襲性アスペルギルス症の3型があげられる。アスペルギローマでは肺結核症などの遺残空洞や気管支拡張腔で発育して菌球fungus ballを作る。アレルギー性気管支肺アスペルギルス症では気管支内で発育する菌に対するⅠ型過敏反応により喘息症状を認める。侵襲性アスペルギルス症は稀であるが急激に発症し、血管壁を侵襲し血管の壊死や肺梗塞を認めるため最も重篤である。組織学的に菌糸は直径2~5μmの隔壁を有し、Y字型の二分岐で分岐角は45度である。

よって1と4と5は○。

Aspergillusの菌糸は無色で隔壁を有し、45度に分岐する。菌糸側壁より分生子柄(conidiophore)が気中に向かって伸び、その先端はフラスコ状・亜球状・球状に肥大し、頂嚢(vesicle)となる。分生子柄の基部は逆T字あるいはL字型で、菌糸に組み込まれた部分を足細胞(foot cell)という。頂嚢の表面にはフィアライド(phialide)と呼ばれるフラスコ形の分生子形態細胞がぎっしりと並び、これが単列性のものと複列性のものがある。すなわち、菌種によっては、まず頂嚢表面にメツラ(metula)と呼ばれる円筒形の細胞が生じ、その上にフィアライドの層が並び2列となるものがある。フィアライドの先端からは次々と分生子が産出され連鎖を形成する。なお、分生子柄の先端は全体として分生子頭(conidial head)と呼ばれ、この形態は各菌種によりそれぞれ特徴がある。

よって3は○。
偽菌糸は仮性菌糸といわれているものでカンジダでみられます。アスペルギルスは真性菌糸をもってます。よって2は×。



19. 進行性病変として誤っているものを1つ選びなさい。(1)
1. 変性
2. 過形成
3. 再生
4. 化生
5. 肥大


正解:1

解説:

細胞、組織、臓器が何からの障害を受けた後にどのような形で適応していくかは、①進行性病変としての増生、②退行性病変としての萎縮に大別される。一般に、プラス方向には肥大、過形成といった現象が生じ、マイナス方向には退行性の適応現象になり、変性、壊死、萎縮を生じる。

よって2と3と4と5は○。
変性は退行性病変に分けられます。よって1は×。



20. 誤っているものを1つ選びなさい。(1)
1. 出血とは、全血液成分が血管内より血管外に出た状態をいう。
2. うっ血とは、血液の還流障害により静脈血液量の増加を来たした状態である。
3. 浮腫とは、血管に過剰な量の水分が蓄積することをいう。
4. 播種性血管内凝固症候群(DIC)での微小血栓は腎の糸球体でよくみられる。
5. 塞栓とは血流に乗って運ばれてきた物質が血管内腔を閉塞することによる。


正解:3

解説:

出血bleedingとは血管壁の破綻によって血液が血管外へ出た状態をいう。血液と言っても赤血球が指標であり、白血球や血漿成分のみの場合は出血とはいわない。血管壁の破綻による出血を破綻性出血、明らかな破綻がない場合を濾出性出血という。

よって1は○。

うっ血congestionとは局所の循環血液量が増加した状態をいう。血液還流の障害から全身性あるいは局所性にうっ血が起こる。その時、静脈圧の上昇、緩徐な血流が起こり、臓器内の血液量が増加する。心不全とは心臓のポンプ機能が低下した時であるが、全身性のうっ血が起こる。そしてうっ血による全身的な影響はというと、①循環血液量の増加、②低酸素血症、③チアノーゼ(青色症)cyanosis、④水腫である。

よって2は○。

水腫edemaとは細胞間あるいは体腔、肺胞などの腔内に異常な量の水が蓄積した状態をいう。全身性のものと局所性なものがある。浮腫とは通常皮下の水腫状態をいう。アナザルカanasarcaとは強い全身性の水腫のことをいう。

浮腫は血管外に過剰な水分が蓄積した状態のことです。よって3は×。

播種性血管内凝固症候群(DIC)の病理像は諸臓器おける多数の微小血栓、多発する小梗塞巣、また種々の出血によって特徴づけられる。微小血栓はフィブリン血栓からなり、腎臓、副腎、脳、心筋、肺、消化管の細動脈から毛細血管内に出現の頻度が高い。腎糸球体内の微小血栓はしばしば広範で、腎皮質の微小梗塞から腎皮質壊死を合併することもある。副腎壊死が強いとWaterhouse Friderichsen症候群、下垂体壊死ではSheehan症候群を合併することになる。出血は皮膚、体腔の漿膜面、心内膜、肺、膀胱などにみられる。

よって4は○。

発生した部位から離れて、血流により運ばれた血管内の固形、液体あるいは気体からなる閉塞物のことを栓子embolusといい、閉塞している状態を塞栓症embolismという。動脈性、静脈性、リンパ管性のいずれにも起こる。塞栓症の起こりやすい臓器は静脈性の場合、肺と肝で、動脈性の場合、脳、心、腎、脾などである。

よって5は○。



これで平成25年度の細胞検査士資格認定試験の筆記試験は全部解き終わりました。自分が調べることができる範囲で解答・解説を作ってみましたが、合っているかどうかは保障できません(´・ω・`)
平成24年度の過去問は気が向いたらやろうと思います。