雑記

時間があるときに細胞検査士の筆記試験の過去問を解いています

平成26年度 消化器 筆記試験 過去問

(2015/9/3)18の正解を1→4に訂正しました。



1. 口腔領域疾患について正しいものはどれですか。
A. ヘルペスウイルス感染は口腔癌のリスクファクターである。
B. 白板症では基底細胞が高頻度に出現する。
C. 苔癬では強い炎症性背景を伴う。
D. 腫瘍の大半が舌から発生する扁平上皮癌である。
E. 扁平上皮癌は低分化型が多い。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:4

解説:

A. 誤り。
B. 誤り。

典型的な白板症(いわゆるleukoplakia without dysplasia)は炎症や異型が乏しく、過角化細胞の無核細胞集団が特徴的である。多様な角化異常細胞集団ではなく、無核細胞集団、ケラトヒアリン顆粒のみられる薄いOGあるいはLGの表層細胞が主体である。通常光輝性の目立つ表層角化細胞集団はない。またLG好性表層細胞にも異型は乏しい、しかし白板症は、組織学的には種々の程度の異型を伴う。剥離した細胞の中にも核腫大を伴った角化細胞がみられることがあるが、無核細胞が少なく、多様性のある角化細胞集団parakeratosisが優位な白色病変では低悪性度上皮内腫瘍病変の可能性を考えるべきである。またこの場合は長期の経過観察をせずに、疑陽性として報告、精査を行う必要がある。

C. 正しい。

扁平苔癬lichen planusは皮膚・粘膜に発生する炎症性角化病変で、口腔では頬粘膜・舌・口蓋・口唇に多い。皮膚では多角で扁平な赤紫色の丘疹を生じ、発疹部に白色の線条(Wickham線条)を認める。粘膜では白の斑状、環状、レース状様を呈す。一般に女性に多い。病因は不明であるが、外傷性刺激、薬物・金属アレルギー、遺伝、ストレスなどが考えられており、病態形成に細胞性免疫の関与(T細胞、ランゲルハンス細胞)が示唆される。組織像では錯角化の亢進、棘細胞層の肥厚、基底細胞層の水腫変性とともに、上皮直下の帯状・層状の炎症性細胞(リンパ球)浸潤が特徴的である。

D. 正しい。

口腔領域に発生する悪性腫瘍の約90%が口腔粘膜由来の扁平上皮癌である。部位としては舌が約50%で最も頻度が高く、上顎洞、下顎歯肉、口腔底、頬粘膜、上顎歯肉の順に多い。組織学的には角化傾向を示す高分化型が多い。

E. 誤り。


 
2. 口腔病変の細胞像の特徴について正しい組み合わせはどれですか。
A. 歯根嚢胞―導管上皮と筋上皮
B. 扁平上皮乳頭腫―異角化細胞
C. エナメル上皮腫―棘細胞と円柱状細胞
D. 悪性黒色腫―Giemsa染色で異染性(緑色)顆粒
E. 疣贅性癌―コイロサイトーシス

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:4

解説:

A. 誤り。

歯根嚢胞radicular cystは根尖部歯周組織の炎症に続発して発生する。顎骨内嚢胞の45~60%と最も頻度が高い。組織学的に嚢胞壁内層は非角化性重層扁平上皮で覆われ、しばしば粘液細胞、線毛細胞への化生がみられる。上皮層の下にはリンパ球、形質細胞、マクロファージの浸潤を伴う肉芽層がみられ、その外層は線維性結合織よりなる線維層で覆われる。

B. 誤り。
C. 正しい。

エナメル上皮腫ameloblastomaは代表的な歯原性腫瘍で、腫瘍の実質が歯胚の上皮成分であるエナメル器や歯堤に類似した構造を示す。腫瘍は嚢胞性または充実性増殖を示し、全体として膨張性に発育する。腫瘍の増大に伴い顎骨は吸収されて膨隆を来たす。発生起源細胞として外エナメル上皮が推定されているが、成因は不明である。頻度に人種差が推定され、白人より有色人種に多い。日本では口腔腫瘍の14%であるのに対し、欧米では1%と低い。組織像は分化の程度により異なるが、実質がエナメル器に類似し、中心部はエナメル髄様の星状網様細胞、周辺部にはエナメル芽細胞に似た立方形~円柱形細胞よりなるものが多い。WHO分類では濾胞型、叢状型、棘細胞型、基底細胞型、顆粒細胞型に分けられる。長期にわたり再発を繰り返したのち、稀に悪性化することがあり、悪性エナメル上皮腫と呼ばれる。好発年齢は20~30代で幼児は少ない。下顎大臼歯部から下顎枝にかけて好発し(80%)、埋伏歯を伴うことが多い。顎骨内の多胞性または単胞性のX線透過像を示す。稀に同一の組織像を示す腫瘍像が長管骨に発生する。

D. 正しい。

酵素抗体法を用いてMelanoma(悪性黒色腫)関連抗原を検出する際に問題となるのは、発色基質として一般的に使用されている3、3'-diaminobenzidine(DAB)の発色と色調が似ているメラニン色素 Melanin pigmentとの鑑別である。その対策としては、 1)いわゆる「脱メラニン」処理を事前に行う(過酸化水素水に1時間以上浸漬しておくだけでも効果はある)、 2)発色基質(あるいは標識酵素を含めて)を替えて異なる色調で発色させる という方法が一般的には用いられているが、DAB発色を選択せざるを得ない場合などには、3)DABまたはメラニンの色調を後から変換するという方法もあり、中でもメチレンブルー、トルイジンブルーあるいはギムザ液などで後染色するとメタクロマジーによってメラニン色素が青味がかった緑色に、 PAS(過ヨウ素酸-シップ反応)ではピンク~赤紫色になることが知られている。

E. 誤り。

疣状癌verrucous carcinomaは高分化型扁平上皮癌の亜型の一つとして分類され、最初にAckermanにより報告されたことから、Akerman’s tumorとも呼ばれる。臨床病理学的に特徴的な腫瘍で、外方性疣贅状に緩やかな増殖を示し、転移傾向が乏しく比較的予後良好である。疣状癌の75%は口腔に発生し、頬粘膜や下顎歯肉に好発する。また、高齢者の男性に多い。組織学的に、腫瘍は上皮の乳頭状ないしは疣贅状増殖からなり、棘細胞層の肥厚と角化亢進が認められる。また、幅の広い上皮突起を形成し、粘膜固有層を圧排して陥入するように増殖する。


 
3. 唾液腺腫瘍について正しいものはどれですか。
A. オンコサイトーマはリンパ球性間質を伴う。
B. 基底細胞腺腫は細胞集塊が基底膜様物質に縁取られている。
C. 粘表皮癌は粘液産生細胞、扁平上皮細胞、中間型細胞で構成される。
D. 腺房細胞癌では壊死を伴うことが多い。
E. 腺様嚢胞癌では大型でクロマチンの増量した細胞が見られる。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:3

解説:

A. 誤り。

オンコサイトーマoncocytomaはワルチン腫瘍のリンパ球成分を欠いた細胞像を呈する。

B. 正しい。

基底細胞腺腫の発生頻度は全唾液腺腫瘍の約5%で、唾液腺良性腫瘍の中では多形腺腫、Warthin腫瘍に次いで高い。大多数の症例は耳下腺に発生し、臨床的に多形腺腫として摘出されることが多い。細胞像は大小さまざまな大きさからなる結合性の良い上皮細胞集塊が認められる。集塊は球状や立体的な分枝状・棍棒状構造あるいは索状配列を示す。この索状細胞集塊の最外側の細胞は柵状に配列する。集塊は周囲との境界が明瞭で、通常Giemza染色で異染性を示す厚い基底膜様物質で縁取られている。また、管状構造が散見される。頻度的には低いが、粘液球を取り囲むように腫瘍細胞が配列する像をみることもある。腫瘍細胞は、比較的均一、小型で細胞質に乏しく、卵円形の核を有し、核クロマチンは微細顆粒状である。核小体は小さい。

C. 正しい。

粘表皮癌mucoepidermoid carcinomaは扁平上皮(化生)様細胞、粘液産生性細胞、両者の中間型細胞が出現し、それらの異型度が腫瘍の生物学的態度と比例する。つまり、核異型が軽度なものは悪性度が低く、核異型の高度なものは悪性度が高い。また、細胞診では中間型細胞の存在が診断のポイントとなる。中間型細胞は多辺形で厚い扁平上皮化生様の細胞質をもつが、細胞質に粘液をもつ。N/C比は低く、核は小型類円形である。

D. 誤り。

腺房細胞癌は全唾液腺腫瘍の約4%を占める低悪性度腫瘍で、特に耳下腺に好発する。好発年齢は50歳代であるがあらゆる年齢層に幅広く分布する。漿液性腺房細胞の特徴を有する腫瘍細胞と腺房様配列を示す細胞集塊を見出すことが診断の基本となる。一般には細胞成分に富み、間質成分に乏しい。腫瘍細胞は卵円形~円形の核を有し、細胞質は顆粒状あるいは微小空胞状でN/C比は低い。細胞質の性状はPap染色よりもGiemza染色の方がわかりやすく、顆粒は異染性を呈する。また、細胞質内顆粒はPAS陽性である。褐色顆粒(ヘモジデリン)を含有していることもある。核は比較的均一で異型性は軽度である。腫瘍細胞の細胞集塊は、一部で腺房構造を示すが、その他、シート状、乳頭状、濾胞状、あるいは腺管様等、種々の出現様式をとる。背景には裸核細胞が目立つ。砂粒体が時にみられ、多数のリンパ球を背景に伴うこともある。壊死はほとんどみられない。

E. 誤り。

腺様嚢胞癌adenoid cystic carcinomaは口腔腺や耳下腺に発生する頻度が比較的高い。耳下腺にも稀に発生する。基底細胞類似の小型の腫瘍細胞が多くの嚢胞様腔を囲む胞巣状を呈して増殖する。典型例では篩状構造cribriform structureを示し、充実性増殖部を占める比率が高いほど悪性度が高いとされる。間質性偽嚢胞は腫瘍細胞の基底面で囲まれ、酸性ムコ多糖を含む。真の腺腔も存在し、上皮性ムチンを含む。好んで末梢神経周囲の浸潤を示すのが特徴的である。


 
4. 食道疾患について正しいものはどれですか。
A. 胃食道逆流症はバレット食道の原因となる。
B. 顆粒細胞腫は角化傾向を示す。
C. リンパ節転移のある食道癌は進行癌と定義される。
D. Epstein-Barr(EB)ウイルス感染は乳頭腫の原因となる。
E. 異所性胃粘膜は腺癌の発生母地となる。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:

A. 正しい。

バレット上皮Barrett epitheliumとは、食道粘膜(扁平上皮)が円柱上皮に置換された状態をいう。先天性と後天性があり、後者の発生は逆流性食道炎などに起因する。バレット上皮は食道腺癌の発生母地として注目されている。

B. 誤り。

顆粒細胞腫granular cell tumorは好酸性顆粒を有する大型細胞の増殖からなる腫瘍で、免疫組織化学的所見、電子顕微鏡所見などから神経鞘細胞Schwann細胞由来と考えられている。好発部位は皮膚、舌、乳房などで、消化管では食道が最も多く、次いで大腸、胃の報告があるが比較的まれである。発生部位は食道下部が多い。内視鏡初見では、黄色調で10mm程度までの粘膜下腫瘍として捉えられ、臼歯様、大臼歯様と表現される腫瘍頂部の陥凹を示すことが多い。本邦では中高年の男性に好発し、ほとんどが単発例である。大半は良性腫瘍内視鏡切除など局所切除で治療されるが、まれに悪性例の報告がある。腫瘍を被覆する扁平上皮がしばしば増殖傾向を示す偽上皮腫性過形成pseudoepitheliomatous hyperplasiaをきたすことが知られており、生検などでは、表層のみの採取の場合、扁平上皮癌との鑑別が問題になることがある。

C. 誤り。

早期食道癌は、原発巣の壁深達度が粘膜層にとどまり、リンパ節転移有無を問わない、と定義されている。粘膜筋板を越えない癌と換言できる。以前は胃癌と同様、粘膜下層に浸潤する癌(表在癌)を包括していたが、粘膜下浸潤癌の5年生存率は70%前後と不良であった。現行の定義では、5年生存率が早期胃癌と同様、90%以上となる。内視鏡切除術の適応病変である。なお、早期食道癌は多発し、その頻度は10~30%と報告されている。

D. 誤り。

EBVは伝染性単核症などの急性感染症を惹起するウイルスである反面、様々な腫瘍の原因となる。
・B細胞リンパ腫
  バーキットリンパ腫
  膿胸関連リンパ腫
  日和見リンパ腫
    ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染
    臓器移植後
  加齢性EBV関連B細胞リンパ増殖異常症
 メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患
・TおよびNK細胞リンパ腫
 鼻性NK/T細胞性リンパ腫
 劇症型NK細胞白血病
 EBV関連細胞障害性T細胞リンパ腫
 慢性活動性EBV感染症関連リンパ増殖性疾患
・ホジキンリンパ腫
・胃癌
・上咽頭がん

E. 正しい。

異所性胃粘膜ectopic gastric mucosaは内視鏡検査では約10%の症例で見出される病変で、食道上部から中部に0.2~5cmの境界明瞭な発赤病変を形成する。組織学的には胃噴門腺領域の粘膜に類似するが、胃底腺が見出されることもある。潰瘍や腺癌の発生母組織として重要である。


 
5. 消化器細胞診検体で感染症法に基づく届出が必要な病原体はどれですか。
A. カンジダ
B. ヘルペス
C. ジアルジアランブル鞭毛虫
D. アメーバ赤痢
E. 肝吸虫

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:4

解説:全部は覚えられないので、細胞診で関係ありそうな感染症だけ整理しておけばいいと思います。

A. 誤り。

感染症法 対象疾患一覧

感染症類型 疾病名
1 エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱
2 急性灰白髄炎結核ジフテリア重症急性呼吸器症候群(病原体がベータコロナウイルスSARSコロナウイルスであるものに限る。)、中東呼吸器症候群(病原体がベータコロナウイルス属MERSコロナウイルスであるものに限る。)、鳥インフルエンザ(H5N1)、鳥インフルエンザ(H7N9)
3 コレラ、細菌性赤痢腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス
4 E型肝炎、ウエストナイル熱(ウエストナイル脳炎を含む。)、A型肝炎エキノコックス症、黄熱、オウム病、オムスク出血熱、回帰熱、キャサヌル森林病、Q熱、狂犬病、コクシジオイデス症、サル痘、重症熱性血小板減少症候群(病原体がフレボウイルス属SFTSウイルスであるものに限る。)、腎症候性出血熱、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、炭疽チクングニア熱、つつが虫病、デング熱、東部ウマ脳炎、鳥インフルエンザ(H5N1及びH7N9を除く。)、ニパウイルス感染症日本紅斑熱日本脳炎ハンタウイルス肺症候群、Bウイルス病、鼻疽、ブルセラ症ベネズエラウマ脳炎、ヘンドラウイルス感染症、発しんチフス、ボツリヌス症、マラリア、野兎病、ライム病、リッサウイルス感染症、リフトバレー熱、類鼻疽、レジオネラ症、レプトスピラ症、ロッキー山紅斑熱
5 アメーバ赤痢、ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く。)、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症、急性脳炎(ウエストナイル脳炎、西部ウマ、脳炎、ダニ媒介脳炎、東部ウマ脳炎、日本脳炎ベネズエラウマ脳炎及びリフトバレー熱を除く。)、クリプトスポリジウム症、クロイツフェルト・ヤコブ病、劇症型溶血性レンサ球菌感染症、後天性免疫不全症候群、ジアルジア症、侵襲性インフルエンザ菌感染症、侵襲性髄膜炎菌感染症、侵襲性肺炎球菌感染症、水痘(患者が入院を要すると認められるものに限る。)、先天性風しん症候群、梅毒、播種性クリプトコックス症、破傷風バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症バンコマイシン耐性腸球菌感染症、風しん、麻しん、薬剤耐性アシネトバクター感染症、インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)、RSウイルス感染症咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、感染性胃腸炎、水痘、手足口病、伝染性紅斑、突発性発しん、百日咳、ヘルパンギーナ流行性耳下腺炎、急性出血性結膜炎、流行性角結膜炎クラミジア肺炎(オウム病を除く。)、細菌性髄膜炎(インフルエンザ菌、髄膜炎菌、肺炎球菌を原因として同定された場合を除く。)、マイコプラズマ肺炎、無菌性髄膜炎、感染性胃腸炎(病原体がロタウイルスであるものに限る。)、性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症ペニシリン耐性肺炎球菌感染症、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症、薬剤耐性緑膿菌感染症

B. 誤り。性器ヘルペスであれば届出が必要です。
C. 正しい。
D. 正しい。
E. 誤り。


 
6. 肝胆膵疾患において正しいものはどれですか。
A. 肝内胆管癌の多くは肝硬変症を合併している。
B. 肝外胆管癌は十二指腸乳頭部癌より予後が良好である。
C. 胆嚢癌における術中腹腔洗浄細胞診陽性は遠隔転移ありと判定される。
D. 胆管拡張を伴わない膵・胆管合流異常症は胆嚢癌の危険因子である。
E. 糖尿病は膵癌の危険因子である。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:5

解説:

A. 誤り。

胆管細胞癌cholangiocellular carcinomaは肝細胞癌のような性差はなく、男女ほぼ同頻度に発生し、好発年齢は60~70代である。肝硬変を合併するものは少ない。病変は特定されたものではないが、肝内胆石症や肝吸虫症との関連が示唆されるものもある。肝細胞癌におけるAFPのような特定の腫瘍マーカーはないが、癌胎児性抗原carcinoembryonic antigen(CEA)が陽性のことが多い。組織学的には大小の不規則な腺管と間質の豊富な線維性結合織よりなる管状腺癌の像を呈する。癌細胞は種々の程度の粘液産生を伴う。肝外転移は肝細胞癌とは逆に血行性転移は少なく、リンパ行性転移が主体を占める。

B. 誤り。乳頭部癌は閉塞性黄疸など自覚症状が出やすく、早期に発見して切除できれば予後は比較的良好です。
C. 消去法で誤り。
D. 正しい。

胆管拡張型の膵・胆管合流異常や原発性硬化性胆管炎(PSC)は胆管癌のリスクファクターである。膵・胆管合流異常のうち、特に胆管拡張をともなわない膵・胆管合流異常は胆嚢癌のリスクファクターである。

E. 正しい。

わが国の膵癌登録報告 によると、膵癌患者の既往歴では糖尿病が25.9%と最も頻度が高く、糖尿病における膵癌リスクは約2倍である。膵癌の発症は糖尿病の発症1~3年以内で最も高く、糖尿病の新規発症は膵癌発見のマーカーとなり得る。肥満は糖尿病における膵癌リスクを増加させる。糖尿病における膵癌の発生には高インスリン血症、インスリン抵抗性、insulin-like growth factor(IGF)の遺伝子多型が関与しているとの報告がある。糖尿病の治療としてインスリンアナログやインスリン分泌促進薬は膵癌リスクを増加させるが、メトフォルミンは膵癌の発生と死亡率を低下させる。


 
7. 胆嚢について正しいものはどれですか。
A. 固有筋層に相当する部分は線維筋層と呼ばれる。
B. 上皮は単層円柱上皮からなる。
C. 広基性のポリープは癌の頻度が高い。
D. コレステロールポリープは粘膜固有層にリンパ球の集簇をみとめる。
E. 胆嚢癌は閉塞性黄疸で発見されることが多い。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:1、3

解説:

A. 正しい。
B. 正しい。
C. 正しい。と考えますがエビデンスレベルⅤなので、誤りにしたほうがいいのかもしれません……。

胆嚢癌の発生母地病変として腺腫や異型上皮、腸上皮化生が関与する可能性が報告されている。胆嚢ポリープでも径が10 mm以上のものに癌が多く、画像上増大傾向を認める場合や形状が広基性の場合も胆嚢癌の頻度が高いことが報告されている(レベルⅤ)。

D. 誤り。

コレステロールポリープcholesterol polypは胆嚢ポリープの中で最も頻度が高く、粘膜固有層内の泡沫状の組織球の限局性集積によりポリープ状に隆起する。多くの場合、数mm大で黄白色調、桑の実状を呈し、多発する。ポリープは泡沫状の組織球で占められ、粘膜上皮で覆われている。

E. 誤り。


 
8. 膵腫瘍で女性に好発するものはどれですか。
A. 漿液性嚢胞腫瘍
B. Solid-pseudopapillary neoplasm
C. 膵管内乳頭粘液性腫瘍
D. 浸潤性膵管癌
E. 膵芽腫

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:1

解説:

A. 正しい。

漿液性嚢胞腫瘍serous cystic tumorsは中年女性の膵体尾部に好発する被膜の薄い凹凸した類球系腫瘍で、壁の薄い径数mmまでの小嚢胞からなる多房性腫瘍microcystic typeと大きな嚢胞主体macrocystic typeのものもある。

B. 正しい。

膵solid-pseudopapillary neoplasmの95%以上は女性例で、その大多数は10数歳~30代に発症している。術後経過はきわめて良好で、まず再発をみることは少ない。男性例や悪性例も稀に認められるが、その頻度は数%以下である。高齢者や石灰化を伴う症例に悪性例を認める傾向がある。

C. 誤り。

膵管内乳頭粘液性腫瘍は、臨床的腫瘍概念であるいわゆる粘液産生癌としてよく知られている。すなわち高齢の男性に好発し、原発性膵腫瘍としては予後がきわめて良好である。産生された大量の粘液は膵管内に貯留あるいは十二指腸乳頭から分泌される。なお粘液産生が微量あるいはない症例も稀に存在する。本腫瘍は、同一病変内に腺腫と腺癌が混在して認められることも多く、両者が連続した病変(adenoma-carcinoma sequence)であることが示唆される。分子生物学的にも、腺腫の段階でK-ras遺伝子の点突然変異がすでに存在し、腺癌になるとさらに変異p53の出現が認められる事実からも、多段階的に癌化に至る腫瘍であることが示唆される。

D. 誤り。
E. 誤り。

膵芽腫pancreatoblastomaは小児に発生する悪性膵腫瘍で、しばしば血清AFP値の上昇を伴い、組織学的には膵外分泌組織や内分泌組織などへの多方向性分化を示す。きわめて稀な膵悪性腫瘍で、10歳以下(平均4歳)の小児、特に男児(男女比は2:1)に多く発症している。現在30数例の報告があり、日本人や韓国人など、黄色人種に好発する傾向がある。また新生児例ではBeckwith-Wiedemann症候群に合併した報告がある。無症候性あるいは上腹部痛を伴う腫瘤として発見され、画像診断にて充実性あるいは偽嚢胞性病変として認められる。60%以上の症例で血清AFP値の上昇を伴う。通常の膵癌に比較し術後経過はやや良好で、1年生存率は2/3前後である。


 
9. 膵管内乳頭粘液性腫瘍について正しいものはどれですか。
A. 浸潤癌も含まれる。
B. び漫性平坦状には増殖しない。
C. 主膵管非拡張像はみられない。
D. 好酸性の細胞が増殖することはない。
E. 腸型と胃型の鑑別にMUC 2 免疫染色が有用である。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:

A. 正しい。

膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMNs)は粘液貯留による膵管拡張を特徴とする臨床的な名称の側面もある膵管上皮系腫瘍で、病変の主座が主膵管にあるものは主膵管型、分枝にあるものは分枝型、両方にまたがるものは混合型とする。主膵管の拡張が目立つ場合は粘液高産生性とし、主膵管の拡張がないかあっても軽度な場合は粘液非高産生性とする。Peutz-Jeghers症候群に合併することがある。組織学的には、高乳頭増殖、低乳頭増殖、完全平坦増殖を示すものがあり、非乳頭増殖を示すものも含まれる。構成細胞は粘液性あるいは非粘液性高円柱状(胃型、腸型、膵胆道型、好酸性型)を呈し、胃型粘液MUC5AC、腸型粘液MUC2、胆道型粘液MUC1、好酸性型ではMUC1、MUC6が陽性となる。胃型以外のIPMNsは、異型度が高く、また悪性の頻度が高いため、MUC2やMUC1の発現を予後不良因子とする傾向にある。上皮の構造異型、および細胞異型の程度により腺腫あるいは腺癌(非浸潤、浸潤)に分類する。

B. 誤り。
C. 誤り。
D. 誤り。
E. 正しい。


 
10. ワルチン腫瘍について誤っているものはどれですか。
A. 顎下腺に最も多く発生する。
B. 多形腺腫よりも発生頻度が低い。
C. 肉眼的に境界明瞭である。
D. 細胞診では背景にリンパ球が多い。
E. 細胞診では壊死性背景を認めることはない。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:

A. 誤り。

ワルチン腫瘍Warthin tumorは50歳以上の男性の耳下腺、顎下腺に好発し、小唾液腺に発生するのはまれである。両側性に発生することがあり、また片側性でも多発する傾向にある。腫瘤の大きさは2~5cm大のものが多く、きわめて軟らかい。嚢胞形成を示し、穿刺にて茶褐色の泥状分泌物を吸引することが多い。

B. 正しい。

組織学的に発生の多い順からあげると、良性上皮性腫瘍として多形腺腫、Warthin腫瘍そして基底細胞腺腫、悪性では腺房細胞癌、粘表皮癌、腺様嚢胞癌そして多形腺腫由来癌などで、これら以外はきわめて発生頻度は少ない。

C. 正しい。

腫瘍は被膜を有し、上皮細胞とリンパ組織からなる。上皮細胞の配列は2層性を示し、核の2層性配列がみられる。腺管の内腔は高円柱状で線毛(cilia)を有さず、外側は立方状に、また嚢胞の部分では乳頭状増殖を示す。上皮細胞に接し胚中心形成を伴う多数のリンパ組織を認める。

D. 正しい。

漿液性、粘液性および壊死性背景に多数のリンパ球(成熟リンパ球主体で、時に未熟リンパ球)と広い細胞質を有する好酸性上皮細胞集塊(Oncocyte)を認め、その細胞は細胞質内に好酸性顆粒(mitochondria)をもつ。そのほか扁平上皮化生細胞、杯細胞、組織球およびコレステリン結晶などをみることがある。

E. 誤り。


 
11. 胃の細胞診について誤っているものはどれですか。
A. Helicobacter pyloriの観察にはGiemsa染色が適している。
B. 壁細胞にはミトコンドリアが豊富である。
C. 腸上皮化生と印環細胞癌との鑑別は困難である。
D. 胃癌の術中腹腔洗浄細胞診で疑陽性の場合はCY1と記載する。
E. GISTに対するEUS-FNA(内視鏡超音波下穿刺吸引細胞診)は禁忌である。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:5

解説:

A. 正しい。

Helicobacter pylori感染症は萎縮性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、MALT型リンパ腫、胃癌の原因となり、40歳以上の日本人の7割が保菌者といわれている。H.pyloriにはウレアーゼ活性があり、胃液中の尿素アンモニアに変えることによって胃酸を中和するため胃液中でも死滅しない。菌体は胃表層上皮ないしは陰窩の粘液層にみられ、一般に好中球を伴う高度の炎症細胞浸潤を伴っている。菌はHE染色でも観察可能であるが、同定にはギムザ染色Giemsa stainやワルチン・スターリー染色Warthin-Starry stain、抗H.pylori抗体を用いた免疫染色が行われる。

B. 正しい。
C. 正しい。
D. 誤り。

胃癌取扱い規約では、CYが癌の進行度(stage)分類、根治度の指標として組み込まれている。その記載方法は
CY0(陰性):癌細胞を認めない
CY1(陽性):癌細胞を認める
CYX(実施せず):CYを行っていない
と3つに分けられる。CY1症例はstageⅣに分類する。Suspicious malignancyはCY0とする。

E. 誤り。

EUS-FNAの適応病変は、①膵・膵周囲腫瘤性病変、②消化管粘膜下腫瘍、③消化管周囲のリンパ節、④後縦隔腫瘤性病変、⑤EUSでしか描出されない少量の腹水や胸水、⑥消化管の上皮性腫瘍でありながら粘膜下の要素が強く通常の内視鏡下生検では診断が困難な病変、⑧副腎病変(褐色細胞腫に注意)、⑨EUSで描出される肝左葉の占拠性病変、⑩経大腸的な観察が可能な骨盤内腫瘤、などである。適応疾患に関しては本手技の普及と相まって拡大の傾向にある。禁忌としては、EUSにて病変が明瞭に描出できない場合、穿刺経路上に癌や血管が介在する場合、EUS-FNAにより強く合併症の発生が危惧される場合、などである。癌の播種の可能性のある病変とは膵体尾部に位置する膵管内乳頭腫瘍や粘液性嚢胞腫瘍であり、嚢胞内の圧の関係と経胃的穿刺によりseedingのリスクが高いと考えられているが、欧米では嚢胞性病変にはむしろ積極的に実施されており、播種の報告はほとんどない。


 
12. 胃のMALT リンパ腫で誤っているものはどれですか。
A. B 細胞性リンパ腫である。
B. Helicobacter pylori と関連がある。
C. 腺管内への破壊性増殖がみられる。
D. 高悪性度のものが多い。
E. 治療の第一選択は胃切除術である。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:5

解説:

A. 正しい。

濾胞辺縁帯リンパ腫marginal zone lymphomaは濾胞辺縁帯B細胞由来の腫瘍とみなされる。リンパ節に発生する濾胞辺縁帯リンパ腫nodal marginal zone lymphomaと節外臓器に発生する濾胞辺縁帯リンパ腫extranodal marginal zone lymphoma of mucosa associated lymphoid tissue(MALT)typeに分けられる。MALTリンパ腫は消化管、特に胃に好発するが、唾液腺、甲状腺、眼、肺、胸腺、皮膚などにも認められる。胃のMALTリンパ腫の発生にはH.pylori感染が関与しているとされる。唾液腺のMALTリンパ腫はシェーグレン症候群に、甲状腺のMALTリンパ腫は橋本病を背景として発生する。

B. 正しい。
C. 正しい。

MALTリンパ腫は胃悪性リンパ腫の50~70%を占める。組織学的には、①反応性リンパ濾胞の混在とこれを囲むCCL(centrocyto-like cell)の増殖、②粘膜上皮への異型リンパ球浸潤(リンパ上皮病変lymphoepithelial lesion)、③大型リンパ球、免疫芽球、形質細胞などを混ずる多彩な細胞構成、④非腫瘍性リンパ濾胞がリンパ腫細胞で置換されるfollicular colonizationが特徴的である。

D. 誤り。
E. 誤り。

胃MALTリンパ腫において除菌対象となるのは、病変が胃のみの限局期症例である(Lugano 分類のⅠ期およびⅡ1期)。限局期 MALT リンパ腫においては、現在は、H. pyrori 除菌療法が第一選択として標準的治療である。除菌療法による奏効率は、わが国では70~80%前後である。しかし、除菌療法後、MALTリンパ腫が消失するまでの期間は 2~3カ月から数年と差を認め、内視鏡検査の間隔、除菌療法後に残存する場合の salvage治療のコンセンサスは得られていない。


 
13. 大腸疾患について誤っているものはどれですか。
A. 偽膜性大腸炎の原因として抗生物質が挙げられる。
B. 潰瘍性大腸炎は癌化する可能性がある。
C. クローン病では非乾酪性肉芽腫を認める。
D. 虚血性大腸炎は直腸に好発する。
E. リンパ節転移のある結腸癌はDukes分類のAに相当する。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:5

解説:

A. 正しい。

偽膜性大腸炎pseudomembranous colitisとは、Clostridium difficileは腸の常在菌であるが、抗生物質に比較的抵抗性があるため、抗生物質投与時の菌交代現象で大量に増殖する場合がある。放出された外毒素が大腸粘膜(小腸は稀)を破壊し、特徴的な偽膜を形成する。肉眼的には、1cm大までの類円形・黄白色調の白苔(偽膜)で覆われた隆起性病変が散在性にみられ、進行とともに病変は融合・増大する。病変間には正常粘膜が介在する。組織学的には、粘膜表面に好中球・核破砕物・フィブリンからなる好酸性滲出物がみられる。この滲出物は噴火状erupting volcanoないしキノコ状mushroom-likeと形容され、summit legionと呼ばれる。

B. 正しい。

潰瘍性大腸炎の長期罹患例(10年以上)では癌化を伴うことが知られており、特に全大腸炎型に多いとされている。癌化の頻度は3%であるが、直腸に好発し、肉眼的に平坦、扁平隆起型、多発傾向、組織型では低分化型が多く背景にDALMs(dysplasia associated lesion or mass:領域性のある腫瘍病変)を伴うなどの点で通常の大腸癌とは形態を異にする。

C. 正しい。

クローン病Crohn disease(CD)の肉眼所見は、クローン病診断基準で示されるように、縦走潰瘍および、敷石像が切除標本の特徴である。この場合、病変は非連続性、区域性である。小腸では縦走潰瘍を示す疾患の多くはクローン病であり、さらに縦走潰瘍が腸間膜上にあることが他の疾患との鑑別点であるとされている。縦走潰瘍が腸間膜反対側に存在すれば虚血性腸炎ベーチェット病や単純性潰瘍である。大腸では敷石像がクローン病の特徴である。敷石像cobblestone appearanceは小潰瘍によって囲まれた残存正常粘膜が隆起して生じる。小潰瘍が縦列すれば縦走潰瘍になる。肉眼像は大小さまざまな半球状の粘膜隆起が、区域性の石を敷き詰めたように密集して認められる。初期像としてアフタ様潰瘍とその縦走配列があげられる。手術による切除標本所見によれば、
① 非乾酪性類上皮細胞肉芽腫epithelioid granuloma
② 全層性炎症
③ 裂溝
④ 潰瘍
の4つが、また生検組織所見では、非乾酪性類上皮細胞肉芽腫のみが診断根拠となる。しかし、結核結節でも乾酪を伴わない類上皮肉芽腫が病気によっては出現することがあり、また、クローン病でも結核結節様の中心壊死を伴った肉芽腫が出現することも経験されており、このような場合は肉眼所見、臨床像をふまえて診断することが重要である。全層性炎症についてはリンパ球を主とする集簇像が全層性に認められることが重要で、単に炎症が全層にあることを意味しない。また、炎症が粘膜固有層よりも粘膜下層さらにつよく出現する特異な病理組織像が認められれば、生検診断の有力な鍵となる。また、痔瘻や慢性裂肛などの肛門部病変を合併する(75%)。

D. 誤り。

虚血性腸炎ischemic disease of intestineは、講義には血流障害が主因となって腸管に虚血性病変が生じる疾患の総称である。狭義の虚血性腸炎は、主幹動脈の明らかな基質的閉塞を伴わない腸管粘膜の血流障害に起因する腸管の区域性炎症で、原因不明(特発性)のものであり、(特発性)虚血性大腸炎と(特発性)虚血性小腸炎がある。虚血性大腸炎は下行結腸とS状結腸に好発し、大半は急性の経過をたどる。当初、虚血性大腸炎は重症度により一過性型、狭窄型、壊疽型に分類されたが、後に不可逆的虚血性変化を呈する壊疽型は別の疾患カテゴリーとして分類から除外された。虚血性小腸炎は回腸に好発し、一過性型はまれで、多くは慢性の経過をたどり、狭窄型を呈する。

E. 誤り。

大腸がんの進行度分類には、国際的には、TNM 分類に加え、Dukes(デュークス)分類も用いられている。 いずれの分類も進行度は がんの大きさではなく、大腸壁にがんがどの程度深く入っているか(深達度)と、 リンパ節および遠隔転移の有無によって規定される。

Dukes A がんが大腸壁内にとどまるもの
Dukes B がんが大腸壁を貫くがリンパ節転移のないもの
Dukes C リンパ節転移のあるもの
Dukes D 腹膜、肝、肺などへの遠隔転移のあるもの

Dukes AはI期に、Dukes BはII期に、Dukes CはIII期に、Dukes DはIV期に相当する。


 
14. 高分化型肝細胞癌の細胞診所見で頻度の低いものはどれですか。
A. 脂肪化
B. 多核化
C. 核の大小不同
D. 偽腺管構造
E. 細胞密度の増加

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:3

解説:

A. 誤り。

原発性肝癌取扱い規約第5 版では早期肝細胞癌を以下の様に定義しているが最新の国際基準と同様の内容である。「細胞密度の増大に加え、腺房様あるいは偽腺管構造、索状配列の断裂、不規則化などの構造異型が領域性をもってみられるもの、あるいは間質への浸潤を有するもので、細胞個々の異型は乏しいが、一般に細胞は小型化して、核胞体(N/C)比が増大する。細胞質では好酸性ないし好塩基性が増強する。通常、細胞密度の増大は周囲肝組織の約2 倍以上である。しばしば脂肪化、淡明細胞化を伴う。癌細胞は膨張性に増殖するにいたっていないため、周囲肝組織との境界で癌細胞は隣接する肝細胞を置換するように増殖し、境界は不明瞭なことが多い。肉眼的には、小結節境界不明瞭型に相当する」

B. 正しい。
C. 正しい。
D. 誤り。
E. 誤り。


 
15. 肝臓腫瘍で誤っているものはどれですか。
A. 血管腫の穿刺吸引細胞診では肝細胞由来の腫瘍細胞がみられる。
B. 血管筋脂肪腫肝細胞癌の鑑別にHMB 45 免疫染色は有用である。
C. 高度異型結節と早期肝細胞癌の細胞学的鑑別は困難である。
D. 転移性肝癌(大腸癌)の穿刺吸引細胞診では高円柱状の腫瘍細胞がしばしばみられる。
E. 肝内胆管癌では胆汁産生を伴う。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:

A. 誤り。

海綿状血管腫cavernous hemangiomaは肝に発生する非上皮性腫瘍のうち、最も頻度が高い。肝表面近くにみられることが多く、数mm大から肝の右葉あるいは左葉全体を占めるような巨大なものまでさまざまである。組織学的には、1層の内皮細胞で覆われた大小さまざまの血液を入れた管腔構造を示す。しばしば線維化を来たし、瘢痕状となることがある。

B. 正しい。

肝血管筋脂肪腫angiomyolipoma(AML)はperivascular epithelioid cell由来腫瘍(PEComa)の一種で、平滑筋・脂肪分化ならびにメラニン産生を示す良性腫瘍である。ほとんどが無症状の肝腫瘤として偶然指摘されるが、脂肪化を示す肝細胞癌等との画像的な鑑別が難しいことがある。しばしば肝生検での診断が求められることもあり、脂肪成分がなく上皮様成分のみからなる場合は誤診されることもある。免疫染色でHMB-45やMelan-Aが陽性となることが確認できれば診断は容易である。α-smooth muscle actin(αSMA)も平滑筋分化を確認する際に有用である。

C. 正しい。
D. 正しい。
E. 誤り。


 
16. 膵液細胞診で腫瘍細胞が採取されにくいものはどれですか。
A. 膵管内乳頭粘液性腫瘍
B. 膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)
C. 粘液性嚢胞腫瘍
D. 神経内分泌腫瘍(G1)
E. 浸潤性膵管癌

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:4

解説:腫瘍が膵管と交通があるかで分類すると、CとDが仲間外れになります。

A. 正しい。
B. 正しい。
C. 誤り。
D. 誤り。
E. 正しい。


 
17. 膵神経内分泌腫瘍について誤っているものはどれですか。
A. 機能性腫瘍が多い。
B. 細胞診によるSolid-pseudopapillary neoplasm との鑑別は困難である。
C. 内視鏡的超音波下穿刺吸引細胞診は診断に有用である。
D. 細胞像では索状やリボン状配列がみられる。
E. Grade分類は核分裂像と核異型で評価する。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:

A. 誤り。

内分泌膵腫瘍endocrine pancreatic tumorは内分泌細胞への分化を示す腫瘍で、膵島腫瘍、広義にインスリノーマinsulinomaと呼ぶこともある。多くは良性腫瘍であるが、悪性例も稀でない。内分泌膵腫瘍の発生頻度は比較的稀であり、全膵腫瘍の1割程度を占めると考えられている。多くは無症候性で、いわゆる非機能性腫瘍であるが、産生された膵関連ホルモンに原因する臨床症状を伴う機能性腫瘍として発見されることもある。

B. 正しい。
C. 正しい。
D. 正しい。
E. 誤り。核分裂像とKi67 indexで評価します。

2010 年にWHO の組織分類が新たに提唱され、このなかで消化器に発生するNET(gastroenteropancreatic NET:GEP-NET)については、Ki67 indexまたは細胞分裂数の2因子のみから構成されるきわめて簡便な分類方法によって、G1(Ki67 index≦2%)、G2(3%<Ki67 index≦20%) およびG3(20%<Ki67 index)に分類されることとなった。また同分類では、内分泌腫瘍成分と外分泌腫瘍成分が混在する腫瘍のうち、後者が全体の30%以上70%以下認められる症例については、mixed adenoneuroendocrine carcinoma(MANEC)とされた。とくに従来その概念が明確ではなかったカルチノイド腫瘍という病名を使用しないようにしたことは重要である。しかし最近になってG1、G2 をNET としてG3をNEC(neuroendocrine carcinoma)と規定し、これらを包括しNEN(neuroendocrine neoplasm)という概念が提唱され、やや混乱がみられるのも事実である。


 
18. 篩状パターンを特徴とする唾液腺腫瘍について正しいものはどれですか。
1. 筋上皮癌
2. 粘表皮癌
3. 腺房細胞癌
4. 唾液腺導管癌
5. オンコサイト癌


正解:4

解説:

1. 誤り。
2. 誤り。
3. 誤り。
4. 正しい。

唾液腺導管癌は、背景に著明な壊死と強い細胞異型を特徴とする腫瘍で、結合性の良い大小集塊、シート状もしくは乳頭状集塊が出現する。転移性癌、高異型度粘表皮癌などが鑑別にあがるが、最近では細胞異型の弱い篩状構造を特徴とする導管癌の報告もある。

5. 誤り。


 
19. 大腸ポリープについて正しいものはどれですか。
1. 過形成性ポリープは腫瘍である。
2. 若年性ポリープは成人に発生しない。
3. 炎症性ポリポーシスは癌化しやすい。
4. 管状腺腫は絨毛腺腫より癌化しやすい。
5. 家族性大腸腺腫症(FAP)ではAPC 遺伝子変異がみられる。


正解:5

解説:

1. 誤り。過形成性ポリープが腫瘍であるかは、URL先の表を参考にすると非腫瘍性に分類されるそうです。

大腸の非腫瘍性ポリープ

2. 誤り。

孤発性若年性ポリープjuvenile polypは過誤腫性ポリープに分類される。幼少期の直腸もしくはS状結腸に好発するが、成人例もある。肉眼的には有茎性で表面は平滑で発赤が強いことが多い。びらん形成もみられる。ポリープ頭部が脱落して肛門から脱出して発見されることが多い。癌化例の報告はない。若年性ポリポーシスは、常染色体優性遺伝で、直腸に好発する。50~200個のポリープを形成し、10歳代までに発症することが多い。若年性ポリポーシスの家系の一部ではSMAD4遺伝子変異が原因として報告されている。癌の合併頻度が高く、約10%の症例に発生する。

3. 誤り。
4. 誤り。

大腸の腺腫adenomaは、管状tubular、管状絨毛tubulovillous、絨毛腺腫villousの3型に分類される。管状(絨毛成分が25%以下)、管状絨毛(中間)、絨毛腺腫(絨毛成分が75%以上)が目安となる。頻度は管状腺腫が最も多く(90%)、管状絨毛腺腫が次に多く (5~10%)、絨毛腺腫はまれである。

5. 正しい。

家族性大腸腺腫症familial adenomatousis coliは消化管、特に大腸全域に腺腫がびまん性に発生する遺伝性のポリポーシスで、放置すれば100%癌化する。従来は、家族性大腸ポリポーシスfamilial adenomatous polyposis(FAP)と呼ばれていた疾患でGardner症候群(骨・軟部腫瘍の合併)と呼ばれていたものも含まれる。常染色体優性遺伝形式をとり、第5染色体長碗に局在するadenomatous polyposis coli(APC)遺伝子が原因遺伝子である。


 
20. 胆汁細胞診で良悪性の鑑別に有用でないものはどれですか。
1. 核形不整
2. 大型核小体
3. 核の配列不整
4. 核クロマチンの増量
5. 集塊辺縁の凹凸不整


正解:2

解説:

1. 正しい。

貯留胆汁細胞診の細胞判定基準を以下に示す。
A. 細胞集塊の判定基準
 1. 不規則な重積性
 2. 核の配列不整
 3. 集塊辺縁の凹凸不整
B. 個々の細胞の判定基準
 1. 核の腫大
 2. 核形不整
 3. クロマチンの異常
C. その他重視される所見
 1. 壊死性背景
 2. 多彩な細胞集塊(単個~集塊)の出現
D. 注意すべき点
 1. 1ヵ所の異常のみをとりあげないこと
 2. 核内構造の判定:長時間放置などによる細胞形態変化があっても核内構造がみえれば判定することは可能
 3. 良性細胞集塊の参考所見:核間距離均一、集塊辺縁の周囲に細胞質がみられる
Aの3項目あるいはBの3項目を満たした細胞は腺癌細胞と判定する。CおよびDは参考所見として重視される項目である。

2. 誤り。
3. 正しい。
4. 正しい。
5. 正しい。


 
消化器は毎年難しいですが、過去問をやっていれば答えを導き出せる問題が多いような気がします。