雑記

時間があるときに細胞検査士の筆記試験の過去問を解いています

平成26年度 呼吸器 筆記試験 過去問

1. 正しいものどれですか。
A. Ⅰ型肺胞上皮はガス交換に関与する。
B. 呼吸細気管支には杯細胞が分布する。
C. 生理的には肺胞腔内には細胞が存在しない。
D. 気管支粘膜にみられる気管支腺は粘液腺である。
E. 呼吸細気管支には線毛は存在しない。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:

A. 正しい。

肺胞alveolusを構成している上皮は2種類ある。肺胞表面の大部分(約95%)はⅠ型肺胞上皮細胞(扁平肺胞細胞)とよばれ、小型で扁平な細胞で細胞質が極めて薄くのびて肺胞内腔を覆っている。他方、Ⅱ型肺胞上皮細胞(大肺胞細胞)は分泌細胞ともよばれ、細胞質は泡沫状、大型で円形の核と明瞭な核小体をもっている。Ⅰ型肺胞上皮細胞はガス交換作用に関与し、Ⅱ型肺胞上皮細胞は表面活性物質を分泌し、肺胞内の表面張力を減じさせる作用に関与している。

B. 誤り。

細気管支は直径約1mm以下の気道で終末細気管支、呼吸細気管支、肺胞管、肺胞嚢を経て肺胞に続く。細気管支の粘膜上皮は、気管支までとは異なり単層線毛円柱上皮であるが、終末、呼吸細気管支に向かうにしたがって丈が低くなり、単層立方上皮となる。また杯細胞も少なくなり、終末細気管支以下は認められず、線毛細胞が多くを占め、しだいに線毛のない円柱細胞を認めるようになる。

C. 消去法で誤り。
D. 誤り。

気管支bronchusは、気管から二分し主気管支となり、葉(第一次)気管支、区域(第二次)気管支、亜区域(第三次)気管支となり、細気管支に至る。気管支上皮は基本的には気管と同様に多列線毛上皮であるが、葉気管支から亜区域気管支に向かうにつれて上皮細胞の丈が低くなり、杯細胞も少なくなる。葉気管支には、気管支腺とよく似た2種類の腺が存在する。区域、亜区域気管支では、粘液・漿液の混合腺だけが存在し、後者に向かうにつれその腺が減少していく。

E. 消去法で正しい。本によっては呼吸細気管支に線毛が存在すると書かれているものもありますし、存在しないと書かれているものもあります。


 
2. 肺病巣から採取した細胞診で、正しいものはどれですか。
A. 細胞検体を用いて遺伝子検査をすることは困難である。
B. 肺癌の細胞診においては小細胞癌か非小細胞かの判断に加え、腺癌か扁平上皮癌かの判断も求められる。
C. 腺癌か扁平上皮癌か判断に迷う場合には、非小細胞癌との判断にとどめるのが妥当である。
D. 腺癌細胞の場合、肺原発と他臓器からの転移との鑑別には、CEA の免疫染色が有用である。
E. 偶然発見された若年者の境界明瞭な腫瘤性病変は、カルチノイドであることが多い。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:3

解説:

A. 誤り。

細胞診断用の検体が、上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異検査をはじめとする肺癌遺伝子異常検査(特にPCRベース高感度検査など)に利用できる。

B. 正しい。

肺癌の治療方法や予後は組織型により差異があるため、細胞形態から、できる限り組織型の推定を行う必要がある。特に小細胞癌と非小細胞癌の鑑別診断は治療方針の決定に重要である。また、昨今、化学療法の薬剤選択にあたり、非小細胞癌の中で、扁平上皮癌か腺癌(あるいは非扁平上皮癌)かの判断も求められる。

C. 正しい。
D. 誤り。

CEAは大腸癌、肺癌、乳癌、肝癌、膵癌をはじめ、ほとんどの腺癌組織で陽性になる。

E. 消去法で誤り。


 
3. 肺癌の組織型と細胞型について正しいものはどれですか。
A. 腺扁平上皮癌は扁平上皮癌成分10%以上、腺癌成分5%以上を含むものである。
B. 肺芽腫には時に骨肉腫が混在する。
C. 定型的カルチノイドでは壊死はみられない。
D. 粘表皮癌では角化を認める。
E. 小細胞癌では細胞境界は明瞭である。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:3

解説:

A. 誤り。

腺扁平上皮癌は扁平上皮癌と腺癌成分の両者から構成される癌で、そのいずれかの成分が少なくとも腫瘍全体の10%以上を占めている場合である。扁平上皮癌と腺癌成分の組織学的多様性は連続的なものであるので、それぞれの成分が10%以上とする基準は便宜的なものである。

B. 正しい。

肺芽腫は二相性の腫瘍であり、高分化胎児型腺癌に似るprimitiveな上皮成分とprimitiveな間葉性間質からなり、ときに骨肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫の像が混在する。上皮性成分は明瞭なprimitiveな性格を示し、しばしば高分化胎児型腺癌に似る。扁平上皮様のmorulaは、二相性腫瘍では稀である。定型的な肺芽腫は主として成人に生じる。一方、胸膜肺芽腫はほとんど例外なく、診断時6歳以下の小児に生じる。

C. 正しい。

定型的カルチノイドは2mm2(10高倍視野)あたり核分裂像が2個未満で、壊死を欠くカルチノイドである。細胞異型や高細胞密度、リンパ管侵襲をみることもある。非定型的カルチノイドは2mm2(10高倍視野)あたり2個から10個の核分裂像を呈するか、あるいは壊死巣を有するカルチノイドである。

D. 誤り。

粘表皮癌は扁平上皮細胞、粘液産生細胞および両者の中間型の細胞から構成された悪性上皮性腫瘍であり、同名の唾液腺腫瘍と同様の組織学的特徴を示す。悪性度の高い粘表皮癌と腺扁平上皮癌の鑑別は可能である。粘表皮癌の特徴としては、粘液産生細胞と扁平上皮細胞が混在していること、中枢側の太い気管支に存在すること、分化した典型的な粘表皮癌との移行部分を認めることが挙げられるが、腺扁平上皮癌に認められる角化や癌真珠の形成もしくは上皮内癌の所見は認められない。

E. 誤り。

小細胞癌は小型の細胞からなる悪性上皮性腫瘍である。腫瘍細胞は、円形、卵円形、または紡錘形などの形態を示し、細胞質は乏しく、細胞境界は不明瞭である。核は微細顆粒状のクロマチンを有し、核小体はないか、あっても目立たない。核は相互圧排像が著明で、核分裂像が多い。


 
4. 多形癌として正しいものはどれですか。
A. 異所性成分を含む肉腫成分を有する。
B. 紡錘細胞が腫瘍全体の20% 以上を占める。
C. 小細胞癌の成分を有するものもある。
D. 紡錘細胞と巨細胞からなる腫瘍もある。
E. 低分化な非小細胞癌である。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:5

解説:

A. 誤り。

多形癌は低分化な非小細胞癌であり、紡錘細胞あるいは巨細胞を含む扁平上皮癌、腺癌あるいは大細胞癌等との混在を示す癌腫、あるいは紡錘形細胞と巨細胞のみからなる腫瘍である。多形、肉腫様あるいは肉腫成分を含む癌に含まれる。紡錘細胞あるいは巨細胞が少なくとも腫瘍の10%以上を占めるものをさす。免疫組織化学的検討により、サイトケラチンや上皮膜抗原(EMA)等の上皮性マーカーにより紡錘細胞成分の癌腫への分化を確認することが重要であるが、上皮性マーカーが陰性も場合でも多形癌を否定することができない。癌肉腫の診断には、異所性成分の存在が必要である。

B. 誤り。
C. 誤り。
D. 正しい。
E. 正しい。


 
5. 肺扁平上皮癌について正しいものはどれですか。
A. 非角化型の核質は微細顆粒状である。
B. 細胞相互封入所見が見られることは稀である。
C. ゴースト細胞では核クロマチンは微細顆粒状である。
D. 角化型の核は、大小不同が著しく核縁は不均等に肥厚する。
E. 核クロマチンは粗顆粒状の他にしばしば濃縮状を呈する。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:5

解説:

A. 誤り。

原発性の扁平上皮癌の細胞像の特徴は、基本的には他臓器と同様に角化異常を示すことである。扁平上皮癌squamous cell carcinomaの細胞学的特徴は
・背景に壊死物質がみられる。
・オレンジGに強染する多彩な形状の角化異常細胞が出現する。
・相互封入像cannibalismや癌真珠cancer pearlがみられることがある。
・核は大小不同や核形不整などの異型が目立つ。
クロマチンは粗顆粒状ないし濃縮状である。
・ライトグリーン好性の細胞質を有する癌細胞には、細胞間橋様構造や細胞質に層状構造がみられる。

B. 誤り。
C. 誤り。
D. 正しい。
E. 正しい。


 
6. 原発性肺腺癌の細胞で陰性となることの多い抗体はどれですか。
A. Napsin A
B. CK 7
C. CDX-2
D. CK 20
E. TTF-1

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:4

解説:

A. 誤り。

Napsin AはペプチダーゼA1ファミリーに属するペプシンアスパラギン酸プロテアーゼで、肺サーファクタントBの成熟に関与している。肺では、Ⅱ型肺胞上皮および肺胞腔内マクロファージに発現する。腎臓においては近位尿細管に発現する。肺原発腺癌の80~90%で陽性となり、TTF-1よりも感度が高い。肺原発扁平上皮癌、小細胞癌、および胸膜中皮腫では陰性である。

B. 誤り。

原発性肺腺癌に特異性が高いマーカーとしてthyroid transcription factor-1(TTF-1)が挙げられる。TTF-1は肺と甲状腺で特異的に発現する転写因子である。このため、甲状腺癌を除く他臓器由来の腺癌に発現しないので、原発性か転移性かの鑑別に有用である。surfactant apoproteinは、Ⅱ型肺胞上皮とクララ細胞で産生される肺に特異的な蛋白質で、肺腺癌の一部で陽性となる。また、肺腺癌はcytokeratin7が陽性、cytokeratin20が陰性であるのに対し、大腸癌はcytokeratin7が陰性、cytokeratin20が陽性となり、またCDX-2はほとんどの大腸癌で陽性であるのに対し、原発性肺腫瘍には発現しないため、肺原発か大腸由来かの鑑別に有用である。

C. 正しい。
D. 正しい。
E. 誤り。


 
7. 転移性肺腫瘍について正しいものはどれですか。
A. 大腸癌の肺転移はしばしば壊死が目立つ。
B. 最も頻度が高いのはリンパ行性転移である。
C. CK 5/6を用いて肺癌と転移性肺腫瘍を鑑別出来る。
D. p 40を用いて肺癌と転移性肺腫瘍を鑑別出来る。
E. 肺リンパ管症は胃癌、乳癌に多い。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:

A. 正しい。

大腸癌の高分化型腺癌の肺転移では背景に壊死物質を伴い、高円柱状の悪性細胞が結合性の強い大型集塊として出現する。集塊内には柵状配列や管腔様配列が目立つ。核偏在性を示し、核は濃染性で、クロマチンは細~粗顆粒状を示し、核小体は目立つことが多い。以上は大腸癌に特徴的な所見であり、判定は容易である。

B. 誤り。

肺はリンパ節の次に転移の頻度が高い。多臓器原発のものでは、胃癌、大腸癌、甲状腺癌、乳癌、腎癌、唾液腺由来の悪性腫瘍、膵癌、子宮頸癌、舌癌、肉腫などがある。血行性転移では胃癌、大腸癌、膵癌などは経門脈性の、直腸癌や腎癌は門脈を通らず直接下大静脈を経由して肺転移を起こす。またリンパ行性では肺癌の肺内転移、胃癌、乳癌などが代表的である。肺癌や胃癌、乳癌は肺の間質である小葉間結合組織や気管支血管周囲に分布するリンパ管に充満し、癌性リンパ管症を起こす。

C. 誤り。

CK5/6は腺癌細胞で陰性であることから、低分化型扁平上皮癌と腺癌、上皮型中皮腫と肺腺癌の鑑別に有用である。

D. 誤り。
E. 正しい。


 
8. 肺サーファクタントについて誤っているものはどれですか。
A. おもにリン脂質からなる。
B. 生後より分泌が開始される。
C. 肺胞の表面張力を維持させるためのものである。
D. 未熟な肺ではサーファクタントが欠乏している。
E. サーファクタントはⅡ型肺胞上皮でつくられる。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:3

解説:

A. 正しい。

Ⅰ型肺胞上皮細胞は肺胞腔と毛細血管との間でガス交換、Ⅱ型肺胞上皮細胞は界面活性剤(サーファクタント)surfactantの産生に関与している。肺胞上皮細胞が障害を受けるとⅡ型肺胞上皮細胞が再生し、その一部がⅠ型肺胞上皮細胞へ成熟する。サーファクタントの90%はリン脂質からなり、主成分はジパルミトイルレシチンdipalmitoyl lecithinである。また4種の表面活性物質関連タンパクsurfactant protein(SP)があり、SP-AとSP-Dは糖タンパク、SP-BとSP-Cは脂質親和性タンパクである。

B. 誤り。

肺胞内腔面には表面活性剤が存在し、肺胞の表面張力を著しく低下させて肺胞の虚脱collapseを防いでいる。Ⅱ型肺胞上皮細胞中の層状封入体(サーファクタント前駆体)は20週で出現し始め、同時に胎児の肺胞液や羊水中にリン脂質が証明されるようになる。その後、封入体数とⅡ型肺胞上皮細胞数の増加に伴い、サーファクタント量は35週以降で最大となる。サーファクタントの欠乏は新生児呼吸窮迫症候群の原因となる。

C. 誤り。
D. 正しい。
E. 正しい。


 
9. ニューモシスチス肺炎の組織像として、誤っているものはどれですか。
A. 肺胞腔内の好酸性、無細胞性物質
B. 肺胞腔内の泡沫状滲出物
C. 肺胞腔内のコレステロールクレフト
D. 肺胞腔内の好中球浸潤
E. 肺胞中隔のリンパ球、形質細胞浸潤

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:4

解説:

A. 正しい。

以前はPneumocystis cariniiと呼ばれ原虫に分類されていたが、現在ではP.jiroveciに改名され、真菌として取り扱われている。肺胞上皮の存在下で増殖するため感染臓器は肺に限られ、ニューモシスチス肺炎と呼ばれる間質性肺炎を起こす。ほとんどは免疫力減弱宿主の日和見感染で、サイトメガロウイルスとの混合感染も稀でない。組織像は特徴的で、肺胞腔内に好酸性・泡沫状の滲出物frothy exudateがみられる。菌の同定はHE染色ではむずかしいが、グロコット染色で多数の円形ないし三日月状の菌体を確認できる。

B. 正しい。
C. 誤り。肺胞蛋白症のことだと思います。
D. 誤り。肺結核のような気がします。詳しい文献はなかったのでよくわかりません。
E. 正しい。


 
10. 気管支擦過細胞診で線毛円柱上皮に混在して核クロマチンの増量した結合性の強い細胞集塊が認められた、細胞質も観察され、核の異型も乏しかった。最も考えられる細胞はどれですか。
1. リンパ球
2. 小細胞癌
3. 扁平上皮癌
4. 基底細胞増生
5. 軽度異型扁平上皮細胞


正解:4

解説:結合性があるので上皮系、核異型が乏しいので良性、線毛円柱上皮に混在していることから杯細胞増生のような気がしますが、選択肢にありません。なので、一番当てはまっている4が正解と考えます。

1. 誤り。
2. 誤り。
3. 誤り。
4. 正しい。
5. 誤り。


 
11. 肺癌で扁平上皮癌よりも腺癌に認められる所見として正しいものはどれですか。
1. 壊死性背景
2. 核縁の切れ込み
3. 核、細胞の大小不同
4. 細胞質の同心円状層構造
5. 核クロマチンの粗大凝集


正解:2

解説:

1. 誤り。

原発性の扁平上皮癌の細胞像の特徴は、基本的には他臓器と同様に角化異常を示すことである。扁平上皮癌squamous cell carcinomaの細胞学的特徴は
・背景に壊死物質がみられる。
・オレンジGに強染する多彩な形状の角化異常細胞が出現する。
・相互封入像cannibalismや癌真珠cancer pearlがみられることがある。
・核は大小不同や核形不整などの異型が目立つ。
クロマチンは粗顆粒状ないし濃縮状である。
・ライトグリーン好性の細胞質を有する癌細胞には、細胞間橋様構造や細胞質に層状構造がみられる。

2. 正しい。

肺腺癌の細胞像の特徴は、基本的には他臓器と同様である。肺腺癌の細胞学的特徴を以下に示す。
・癌細胞は集塊を形成する。その集塊内には癌細胞の配列の乱れ、極性の乱れ、不規則重積が認められる。
・腺腔様配列がみられることがある。
・癌細胞は円柱状・立方状・類円形を示す。
・細胞質は淡青緑色を示す。レース状に一様に染色されることもあれば、泡沫状で小型空胞が多数認められることがある。
・細胞質内に粘液ないし粘液様空胞が認められることもある。
・核は類円形で偏在し、淡染性を示すことが多い。核形不整が目立つことが多い。
クロマチン粒子は微細であることが多い。
・核小体は目立つことが多く、大型類円形で、核の中心にみられることが多い。

3. 誤り。
4. 誤り。
5. 誤り。


 
12. 大細胞神経内分泌癌について正しいものはどれですか。
1. 通常壊死はみられない。
2. 小細胞癌との鑑別は容易である。
3. 通常ロゼット様配列はみられない。
4. 核分裂像は2 mm2中に11個以上みられる。
5. 核クロマチンは微細顆粒状のパターンを示す。


正解:4

解説:

1. 誤り。

大細胞神経内分泌癌は、類器官構造organoid nesting、索状trabecular、ロゼット様rosette-like、柵状配列palisadingなど、神経内分泌分化を示唆する組織学的特徴をもつ大細胞癌である。その分化は、免疫組織化学的染色あるいは電子顕微鏡的観察で確認される。一般に腫瘍細胞は大きく、中等量から豊かな細胞質を有し、核クロマチンは淡明から微細顆粒状のものまである。核小体はしばしばみられ、ときに目立ち、その存在で小細胞癌との区別できることがある。しかし、核小体を欠く細胞からなる集団でも、細胞の大きさや細胞質の豊富さなどの他の形態学的特徴で、非小細胞癌の基準を満たすものがある。壊死を伴わない腫瘍部分の2mm2(高倍視野)中11個以上の核分裂像が存在することを基準とするが、平均では2mm2中75個の分裂像をみる。広い範囲の壊死巣をみるのが普通である。同様の組織像でも、神経内分泌マーカーが陰性の場合は神経内分泌形態をもつ大細胞癌large cell carcinoma with neuroendocrine morphologyとする。

2. 誤り。
3. 誤り。
4. 正しい。
5. 誤り。


 
13. 誤っているものはどれですか。
1. 石灰化小体は、PAS 反応陽性である。
2. 組織球は、含鉄小体を貪食することができない。
3. 喀痰中の石綿繊維には、蛋白質が付着していることが多い。
4. 食物残渣に由来する細胞は、シート状で結合が強い。
5. シャルコー・ライデン結晶は、好酸球の崩壊物質由来である。


正解:3

解説:

1. 正しい。

砂粒体(石灰化小体psammmoma body)は同心円状の層状構造物で、石灰化を腫瘍細胞が取り囲むように配列した像が特徴的な所見である。石灰化小体はPap染色で透明感のある褐色、黄金色からヘマトキシリン好染性の紫色物質として認められる。DQ染色では無染色性を呈し、PAS反応で陽性を呈する。

2. 正しい。

石綿ばく露で肺内に吸入された比較的長い石綿繊維は、マクロファージ等の貪食によるクリアランス機能が働かず、そのまま長期間肺内に滞留している。そのうちの一部は、多数のマクロファージの作用で亜鈴(あれい)のような形をしたいわゆる石綿小体(Asbestos Body)を形成する。石綿繊維の表面に鉄質蛋白(フェリチンやヘモシデリンなど)が付着して亜鈴状になったものである。肺内に石綿小体があれば石綿小体を形成していない通常の石綿繊維も何倍か存在している。石綿小体は、位相差顕微鏡でも見やすいので石綿ばく露の良い指標として扱われている。

3. 誤り。
4. 正しい。

食物残渣は多種の細胞がみられるが、主にシート状で結合がしっかりしている。細胞質は二重になっており、内側は顆粒状で外側はセルロース様の透明な細胞壁が存在する。

5. 正しい。

シャルコー・ライデン結晶Charcot-Leyden crystalは菱形八面体の結晶物質でオレンジG、エオシンに染まるが、まれにライトグリーンにも染まる。好酸球の細胞質内顆粒が再結晶したものである。喘息、肺吸虫症(肺ジストマ症)などでみられる。


 
14. 誤っているものはどれですか。
1. 真菌症では肺に類上皮細胞肉芽腫が形成される。
2. 結核菌の証明にはpolymerase chain reaction(PCR)が必須とされる。
3. CCP(ciliocytophthoria)細胞はウイルス感染でみられる。
4. サイトメガロウイルス感染では核内封入体がみられる。
5. Aspergillus fumigatus の証明にはGrocott 染色が有用である。


正解:2

解説:

1. 正しい。

肉芽腫とはマクロファージ系の細胞を中心とし、他の炎症細胞も集積して形成される境界が明らかな慢性炎症病巣である。通常は生体内に長期間消化されずに存在する外来性異物に対する反応である。肉芽腫の中で類上皮細胞より形成されるものを類上皮細胞肉芽腫と呼ぶ。結核症、真菌症、サルコイドーシス、ベリリウム症などが類上皮細胞肉芽腫を形成する疾患である。その形成機序については諸説がある。結核症においては結果として菌の囲い込みに有利な形式であり、高度な生体防御機構の発動といえる。

2. 誤り。核酸増幅法はPCR法以外にもいろいろありますし、PCR法は必須ではないと考えます。
3. 正しい。

CCP(Ciliocytophthoria)細胞は変性円柱上皮細胞とも呼ばれる。線毛円柱上皮細胞にウイルスが感染し変性をきたす。核濃縮、好酸性細胞質封入体などがみられる。

4. 正しい。

サイトメガロウイルスcytomegalovirusは癌や白血病の治療による免疫不全やニューモシスチス肺炎に合併してみられることが多い。感染細胞は単核大型細胞として出現し、核内や細胞質内の好酸性ないし塩基性封入体が特徴的である。

5. 正しい。

メセナミン銀を用いたグロコット染色は、菌の生死にかかわらず多種の真菌を染め出すことが可能で、検出されにくい放射菌、ノカルジアの菌糸、ニューモシスチス・イロベチーやムコールの菌体の証明に優れた染色法である。真菌に含まれる多糖をクロム酸で酸化し遊離したアルデヒド基にメセナミン銀を反応させて菌体を染め出す。


 
15. 集団検診における喀痰細胞診判定に関して、誤っているものはどれですか。
1. 集団検診における判定区分Cに相当する異型扁平上皮の細胞判定は陰性である。
2. 肺癌検診の喀痰細胞診は中枢型の扁平上皮癌がターゲットとなる。
3. 肺癌検診では3日間、蓄痰法で行う。
4. 喀痰標本に塵埃細胞がみられない場合は、材料不適と判断する。
5. 喀痰細胞判定は全標本中の最も優勢な部分によって判定する。


正解:5

解説:

1. 正しい。

中等度異型扁平上皮細胞(集検区分C)は扁平上皮癌を疑う所見はなく細胞判定は陰性でClassⅡに相当する。癌細胞を誤判定する可能性を少なくするために追加検査・追跡・保存検体の再塗抹などの方策がすすめられるような異型扁平上皮細胞である。類円形細胞が主体をなし、孤立散在性に分布する。細胞質には厚みがありエオシンやオレンジGに好染するものが多い。核は類円形のものと不整形のものとが混在する。クロマチンは濃染傾向が強く、一部に不均等分布を示すものが散見される。N/C比はライトグリーン好性細胞で1/2程度、エオシン・オレンジG好性細胞で1/3程度の径比にとどまる。多核細胞は時々出現する。

2. 正しい。

集団検診における喀痰細胞診の最大のねらいは肺門部早期肺癌の検出である。

3. 正しい。

肺癌検診では3日間の蓄痰法で行う。保存液として、2%カーボワックス(1540)・50%エタノール液(サコマノ法)、30~50%エタノールに粘液溶解剤を加えた保存液(喀痰溶解法)、0.5%チモール・2%カーボワックス・50%エタノール液(ポストチューブ法)などを用いる。また喀痰採取の説明書を添付する。提出時には、容器やビニール袋などの密封に注意させ、液漏れを防ぎ、日付や氏名などの記入を忘れないようにさせる。

4. 正しい。

喀痰では、標本上に組織球が認められない場合は、唾液や鼻汁であると考えられるので、判定不能材料(insufficient material)として取り扱う。また、その他の検体で標本が乾燥している、細胞成分がない、赤血球のみ、などの場合も判定不能材料として取り扱う。

5. 誤り。もっともらしい文章ですが、この内容だと塗抹面の大部分が正常な扁平上皮細胞(最も優勢な部分)で癌細胞が1箇所だけ出現していても、細胞判定は陰性ということになります。

原則として異型の最も強いところによってB、C、DあるいはEに区分される。しかし、個々の細胞の異型度のみならず、全標本に出現した異型細胞のバリエーションや数も含め総合判定が重要である。


 
16. 扁平上皮化生細胞について誤っているものはどれですか。
1. 高度喫煙者に多く見られる。
2. 非可逆的反応により出現する。
3. 口腔内の扁平上皮細胞より小さく、基底細胞よりも大きい。
4. 早期の扁平上皮癌と異型扁平上皮との鑑別が困難なことがある。
5. 扁平上皮化生を発生母地とする肺癌の頻度は低いと考えられている。


正解:2

解説:

1. 正しい
2. 誤り。
3. 正しい。
4. 正しい。

早期癌由来の扁平上皮癌細胞と、異型扁平上皮化生あるいは異形成上皮などに由来する異型細胞との鑑別は、しばしば困難なことがある。

5. 正しい。


 
17. 誤っているものはどれですか。
1. 軽度異型扁平上皮では2核細胞は認められない。
2. 中等度異型扁平上皮では多核細胞が時々みられる。
3. 高度異型扁平上皮では多核細胞が高頻度で認められる。
4. 軽度異型扁平上皮には病的意義はないと考えられている。
5. 高度異型扁平上皮には癌が含まれる。


正解:1

解説:

1. 誤り。

軽度異型扁平上皮細胞(集検区分B)は扁平上皮癌を疑う所見はなく、臨床的にも病的意義はないと考えられる異型扁平上皮細群である、細胞判定は陰性で、ClassⅡに相当する。結合性がやや緩くなった多辺形(多角形)細胞と類円形細胞が混在して、平面的な小集塊形成・敷石状配列・孤立散在性の分布を示す。細胞質はライトグリーン・エオシン・オレンジGに淡染する。核は類円形で、軽度の大小不同がある。クロマチンは均等に分布し、やや濃染傾向を示す。N/C比は低い。多核細胞はほとんどみられないが、同大の2核細胞がまれにみられる。

2. 正しい。

中等度異型扁平上皮細胞(集検区分C)は扁平上皮癌を疑う所見はなく細胞判定は陰性でClassⅡに相当する。癌細胞を誤判定する可能性を少なくするために追加検査・追跡・保存検体の再塗抹などの方策がすすめられるような異型扁平上皮細胞である。類円形細胞が主体をなし、孤立散在性に分布する。細胞質には厚みがありエオシンやオレンジGに好染するものが多い。核は類円形のものと不整形のものとが混在する。クロマチンは濃染傾向が強く、一部に不均等分布を示すものが散見される。N/C比はライトグリーン好性細胞で1/2程度、エオシン・オレンジG好性細胞で1/3程度の径比にとどまる。多核細胞は時々出現する。

3. 正しい。

高度異型扁平上皮細胞(集検区分D)は扁平上皮癌を疑うが、非癌性病変の可能性もあり、癌と判定できない所見を呈する異型扁平上皮細胞群である。細胞判定は疑陽性でClassⅢに相当する。気管支鏡を含めた精密検査は必須であり、このような所見から癌が発見される場合は、早期癌、特に上皮内癌であることが多い。類円形ないし不整形の細胞が孤立散在性に分布している。細胞質は厚みを増し、オレンジGに輝くように好染する。N/C比は中等度異型扁平上皮細胞より高いことが多い。核は不整形を有するものが多く、大小不同性が増し、クロマチンも不均等に増量している。核小体がみられることも多い。2核ないし多核細胞や相互封入像がみられることがある。

4. 正しい。
5. 正しい。


 
18. 誤っているものはどれですか。
1. EGFR遺伝子の突然変異がみられる肺癌の大半は腺癌である。
2. EGFR遺伝子の突然変異がみられる腺癌はチロシンキナーゼ阻害薬が奏功することが多い。
3. ALK遺伝子の異常は、日本人の肺腺癌の約20%に認められる。
4. ALK遺伝子の異常がみられる腺癌はALK 阻害薬が奏功することが多い。
5. k-RAS遺伝子の突然変異がみられる頻度は、粘液腺癌のほうが非粘液腺癌より高い。


正解:3

解説:

1. 正しい。

第二相試験の段階からEGFR-TKI の臨床効果は女性、非喫煙者、腺癌、東洋人に高いということが知られていたが、EGFR の遺伝子変異も肺癌の患者としては特異なこれらの集団に頻度が高い。これまでに報告された2880 例を対象とした13の研究におけるEGFR 遺伝子変異の頻度は、東洋人(32%)、非東洋人(7%)、男性(10%)、女性(38%)、非喫煙者(47%)、喫煙者(7%)、腺癌(30%)、非腺癌(2%)など臨床背景に強く関連していることがわかる。

2. 正しい。

上皮成長因子受容体(EGFR)はチロシンキナーゼ受容体ファミリーの一つで、細胞膜に存在する。一般にEGFR遺伝子変異がおこると EGFRはリガンドの結合なしにリン酸化されて活性化され、 がん細胞はその増殖や生存がこの経路に依存した状態となる(oncogene addiction)。それに加え、 EGFR-TKIのEGFRへの親和性が ATPのEGFRへの親和性を大きく上回り、 EGFR-TKIが競合阻害作用を発揮する原因となっている。

3. 誤り。

ALK転座肺癌は非小細胞肺癌全体では2~5%程度である。組織型では圧倒的に腺癌に多く、腺癌での頻度は4~5%程度であり、他の組織型では例外的である。最初に報告された症例は喫煙者であったが、一般には非喫煙者に多いとされる。また、EGFR 遺伝子変異にみられるような人種差はないようである。年齢では若年者に多い傾向にあり ALK 肺癌の平均年齢は50代半ばとするものが多く、ALKを有しない肺癌より10才程度若年である。性差は明らかではないが、非喫煙者の数を反映してかやや女性に多い。

4. 正しい。
5. 正しい。解説は呼吸器腫瘍の新WHO分類の話です。まだ、日本の取扱い規約は変わってないので、細気管支肺胞上皮癌という用語は廃止になっていません。

細気管支肺胞上皮癌という用語の廃止に伴い、粘調痰、 胸部X線上での肺炎様陰影、粘液産生性杯細胞の肺胞上皮置換性増殖を特徴とした腺癌は、浸潤性粘液癌としてまとめられた。その根拠としては、これら臨床的な違いに加えて、CK20を発現し、KRAS変異が高頻度に認められるなどの生物学的な違いも確認されたためである。


 
19. 縦隔腫瘍について誤っているものはどれですか。
1. 神経原性腫瘍は後縦隔に好発する。
2. 胚細胞腫瘍は前縦隔に好発する。
3. 小児において頻度の高いものは、悪性リンパ腫と胚細胞腫瘍である。
4. B3型胸腺腫は低悪性度腫瘍に相当する。
5. A型胸腺腫ではリンパ球は少ない。


正解:4

解説:

1. 正しい。

縦隔は、情報を胸郭入口部、下方を横隔膜、前方を胸骨、後方を胸椎、側方を胸膜に囲まれた領域で、臨床的に、上、前、中、後の4領域に亜分類される。各領域において好発する腫瘍が異なるため、腫瘍の存在する領域を同定することにより、縦隔腫瘍の画像診断に有用な情報がもたらされる。例えば、胸腺腫thymomaは上縦隔および前縦隔に、胚細胞腫瘍germ cell tumorは前縦隔に、神経原性腫瘍neurogenic tumorは後縦隔に好発する。

2. 正しい。
3. 正しい。

幼児や小児(7歳くらいまで)に発生する縦隔悪性胚細胞腫瘍はほぼ全例が卵黄嚢腫瘍で女性優位である。他の胚細胞腫瘍が混在することはまずない。思春期以降に発生する卵黄脳腫瘍は単独型であることは少なく、混合型胚細胞腫瘍の成分として認められることのほうが圧倒的に多い。成人に発生する場合は男性にほぼ限られる。
T細胞性リンパ芽球型リンパ腫Precursor T-lymphoblastic lymphomaは未熟なT細胞(リンパ芽球)の腫瘍で急性リンパ性白血病と同じ腫瘍と考えられている。初発時は白血化しているか、あるいは腫瘤を形成するかで白血病とリンパ腫を鑑別する。この腫瘍は主に小児後期に発生する。臨床的には大きな縦隔腫瘤による圧迫症状を呈することが多い。

4. 誤り。

現在の胸腺腫の組織分類は、予後との相関性が高い。A型の胸腺腫では、10年生存率がほぼ100%に近く、良性腫瘍に近い予後を示す。AB型、B1型の胸腺腫では、10年生存率が90%前後であり、低悪性度腫瘍に相当する。一方、B2型の胸腺腫では、A、AB、B1型と比較して生存率が相当低下する。B3型はさらに生存率が低く、胸腺癌thymic carcinomaに近い予後を示す。

5. 正しい。

A型胸腺腫は紡錘形~卵円形の細胞の集塊として、あるいは散在性に出現する。集塊として出現する場合、その細胞密度は高いことが多い。個々の細胞は異型に乏しい核を有する。すなわち、大小不同の目立たない小型類円~卵円形の比較的均一な核で、クロマチンは細顆粒状である。核小体は目立たない。胞体はライトグリーン淡染性である。多角形ないし類円形の上皮性細胞はほとんど認められない。また、リンパ球は少数認められるのみである。


 
20. 小細胞癌について誤っているものはどれですか。
1. 細胞間結合が弱い。
2. 背景に壊死を伴う。
3. 核縁の肥厚がみられる。
4. ロゼット様配列を認める。
5. 対細胞形成がみられる。


正解:3

解説:

1. 正しい。

典型的な小細胞癌の細胞像を以下に示す。
・背景に壊死物質を伴うことが多い。
・細胞結合性が緩く、小集団として認められることが多い。
・細胞が相互に圧排するような特徴的配列(鋳型様配列)を示す。
・ロゼット様配列を示すことがある。
・腫瘍細胞の大きさは小型で小型リンパ球の1.5~2倍程度(リンパ球よりもやや大型)である。
・N/C比が非常に高い。細胞質は狭小であるが、裸核様の場合もある。
・核は類円形~短紡錘形で、濃染性で示す。
クロマチンは微細顆粒状で、核内に密に充満している。
・核小体は認められないことが多いが、あっても目立たない。
・核が挫滅して引き延ばされた像である核線を認めることが多い。

2. 正しい。
3. 誤り。
4. 正しい。
5. 正しい。