雑記

時間があるときに細胞検査士の筆記試験の過去問を解いています

平成26年度 技術 筆記試験 過去問

1. 正しいものはどれですか。
A. 血性胸水を対象とした抗凝固剤の使用は細胞変性を防ぐ作用がある。
B. 一般に捺印法は穿刺吸引法と比較し、細胞採取量が少ない。
C. セルブロック法で標本を作成する場合、薄切作業は不要である。
D. コロジオンバッグ法は液状検体に有用である。
E. 細胞転写法は、Papanicolaou染色と同一細胞の免疫染色(免疫細胞化学染色)が可能である。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:5

解説:

A. 誤り。
B. 誤り。
C. 誤り。

セルブロック法は体腔液、尿中の沈渣あるいは喀痰、甲状腺穿刺液、子宮内膜吸引材料などの細胞成分を20%ホルマリン液などで直接固定あるいはゼラチンで固化した後にホルマリンで固定し、通常のパラフィン包埋、薄切、染色する方法であり、細胞集塊の立体的構造を組織学的に検討するのに有用である。さらに、体腔液などで組織材料が採取できない病変や塗抹用の沈渣の残りから標本が作製できる利点がある。切片は組織標本と同様にHE染色が行われるが、PAS染色、アルシアン青染色を行うことにより細胞診標本と比較検討が可能である。目的に応じて特殊染色や免疫組織化学染色も可能である。

D. 正しい。

コロジオンとは、ピロキシリンという硝化度の低い(窒素量10.5~12.2%)ニトロセルローズをエーテルエタノールの混合液に溶かしたものであり、我が国ではコロジオンあるいはセロイジンと呼ばれている。コロジオンは液状、板状、繊維状などの状態で市販されており、適当な濃度に希釈して液状として使用する。液状コロジオンは溶媒の蒸発とともに透明で水に溶けない半透明膜になる。遠心管内壁にこの膜を作れば、遠心操作後に沈渣をそのまま包んで取り出せる袋状の構造(コロジオンバッグ)となる。

E. 正しい。

細胞転写法とは、スライドガラス上に塗抹された材料をマリノールなどで硬め、1枚のシートとして剝離し、免疫染色など種々の染色を行うために、標本上の検体を分離して別のスライドガラス上へと再貼付する方法である。


 
2. 湿固定前に乾燥した標本について正しいものはどれですか。
A. 腺細胞は収縮する。
B. 細胞質がライトグリーンに濃染しやすくなる。
C. 再水和法では生理食塩水を用いる。
D. 乾燥後アルコール固定した標本は、再水和法が無効である。
E. 再水和法は1週間以内に処理を行えばよい。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:4

解説:

A. 誤り。

パパニコロウ染色用の標本が湿固定の前に乾燥した場合、本来の形態的特徴をとどめずに次のような変化を示す。
・細胞、核が膨化する。
・異型の指標として最も重要な核クロマチンの観察が困難となる。
・染色性も変化し、本来ライトグリーンに染まる細胞質が薄いピンク色やオレンジ色に染まる。

B. 誤り。
C. 正しい。

固定前に乾燥した場合は、再水和処理した後に固定すると、細胞質および核の染色性が良好になって判定しやすくなる。ただし、乾燥後アルコール固定した標本では、再水和処理を行っても染色性の改善は望めない。塗抹後乾燥してから再水和処理を施す時間が早いほど、良好な染色性が得られる。遅くても2日以内に再水和処理を行う。なお、細胞成分が非常に少ない標本では効果が少ない。方法は以下の通りである。
1)未固定で乾燥した標本の上に生理食塩水、または血清を満載し30秒~5分間おく。
2)軽く水洗した後、95%アルコールで30分以上固定し、染色する。

D. 正しい。
E. 誤り。


 
3. 穿刺吸引細胞診における検体採取および処理について正しいものはどれですか。
A. 穿刺吸引後に患者から針を抜く際はシリンジを引いた状態で抜く。
B. ガラスに吹付ける際は、一度注射筒から針を外し空気を入れ直し行う。
C. Papanicolaou染色用の検体は、ガラスに吹付けた後95%エタノールに素早く浸す。
D. 採取量が多い場合は2枚のスライドガラスで上下左右に均一化しすり合わせる。
E. 検体処理後は注射針を精製水で洗浄後、標本を作製する。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:3

解説:

A. 誤り。

穿刺吸引には21~23ゲージの注射針と10mlの注射器が使用される。針先が病変に達したら、内筒を引き注射器内を陰圧にし、針先を前後に数回移動させて細胞を吸引する。検体が吸引されたら内筒を戻して陰圧を解除した状態で病変から針を抜き、針をはずした状態で注射器内に空気を吸い込み、空気により吸引した材料をスライドガラス上に吹き出し、針先で引き延ばした後、速やかに固定する。

B. 正しい。
C. 正しい。
D. 誤り。

吹き出した量が多い時はそのまま固定すると厚みがありすぎて個々の細胞形態の観察が困難になるので、もう1枚のスライドガラスを重ねて材料をガラスに広げる。この時2枚のガラスをすり合わせたり、末梢血塗抹のように引きガラスを用いて引くのは勧められない。細胞変性が起こることがあるので、2枚のガラスは重ねてからそのまま引き離すのがよいとされる。

E. 誤り。


 
4. Papanicolaou染色について正しいものはどれですか。
A. オレンジGやエオジンY、ライトグリーンは酸性色素であり、正に荷電する。
B. エオジンY、ライトグリーンは非水溶性である。
C. Gill(ギル)のヘマトキシリンには酸化剤として過ヨウ素酸が含まれる。
D. 分子量の大きさはオレンジG<エオジンY<ライトグリーンの順である。
E. OG-6やEA-50にはリンタングステン酸が含まれる。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:5

解説:

A. 誤り。

分子量の異なる3種類の色素(オレンジG、エオジンY、ライト緑SF)の細胞への拡散度の相違によって染め分けられる。いずれも酸性色素である3種類の色素のなかで最も分子量の小さいオレンジGが、構築が密で間隙の狭い細胞質(扁平上皮細胞の表層細胞、扁平上皮癌の角化細胞など)に入り込み染める。オレンジGの染まりの強さは角質化の程度を示す。大きな分子量のライト緑は、細胞質密度の疎の部分へ入り込み強く結合する(扁平上皮細胞の深層細胞、非角化型扁平上皮癌細胞など)。分子の大きさが中間のエオジンYは中間のものを染める(角化程度の弱い中層型に近い表層型扁平上皮細胞など)。細胞質構築の疎な部位には小分子のオレンジGも入り込むが、分子活動が活発なため疎な部分とは安定した結合が生じにくい。

B. 誤り。
C. 誤り。ギルヘマトキシリンの組成はヘマトキシリン、蒸留水、硫酸アルミニウム、ヨウ素酸ナトリウム、エチレングリコール氷酢酸です。
D. 正しい。
E. 正しい。


 
5. Giemsa染色について正しいものはどれですか。
A. 塗抹後、温風で急速乾燥させる。
B. Giemsa液の組成はアズールⅡ、エオジン、メタノールである。
C. 基底膜物質や間質性粘液が異染性を示してくる。
D. 染めすぎた時は塩酸水で脱色するとよい。
E. May-Giemsa 染色と比べて、細胞質内の顆粒観察に適している。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:3

解説:

A. 誤り。冷風で乾燥させます。
B. 正しい。

メチレンブルーからできるアズールBにメチレンブルーを等量混合させたものをアズールⅡといい、これにエオシンを加えメタノール溶液としたものがギムザ液である。
アズールⅡ・エオシン-0.6g
アズールⅡ-0.16g
グリセリン-40ml
メタノール-50ml

C. 正しい。

細胞診におけるギムザ染色は、①核クロマチン増量の観察に優れているため多くの臓器での悪性細胞の推定に用いられる。特に核網構造の染色性は、悪性リンパ腫を代表とする造血器腫瘍の診断とその他の悪性細胞の鑑別に必須である。また、②パパニコロウ染色で観察困難な基底膜物質や間質性粘液は異染色性(メタクロマジー)を示し同定が容易である。③乾燥標本のため高い細胞保持率を有し体腔液や脳脊髄液など液状検体には第一の染色法となる。さらに、④簡便な染色法である迅速ギムザ染色法としてはヘマカラー染色、ディフクイック染色法があり、迅速診断として威力を発揮する。

D. 誤り。

染めすぎたときはゆっくり水で脱色する。急ぐときはメタノールで脱色するが、染め直しの結果がやや悪くなる。薄い酢酸水を使っての脱色はよくない。

E. 誤り。

メイ・グリュンワルトギムザ染色はギムザ染色とほぼ同様の染色結果を示すが、細胞質内の微細顆粒の染色性において優れている。


 
6. キシレンについて正しいものはどれですか。
A. 胎児への悪影響を起こすことがある。
B. 特定化学物質に指定されている。
C. 直接手指で触れても経皮吸収されにくい。
D. 作業環境測定は1年に1回実施する必要がある。
E. 健康診断の際は尿中のメチル馬尿酸量の検査が必要である。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:

A. 正しい。

シレンの健康に対する有害性
発がん性 区分外
生殖毒性 区分1B(生殖能又は胎児への悪影響のおそれ)

職場のあんぜんサイト:化学物質: キシレン

B. 誤り。
C. 誤り。

シレンは揮発性、脂溶性に富むため、吸入だけでなく皮膚接触により容易に体内に吸収され、両手を15分間キシレンに浸したときの吸収量は100ppmの経気道曝露に相当する。体内に吸収されたキシレンの約5%は未変化体として呼気に排泄され、90%以上はメチルベンジルアルコールを経てメチル安息香酸に代謝され、さらにグリシン抱合を受けてメチル馬尿酸となって尿中に排泄される。残りの2%以下は、キシレノールに代謝され、硫酸またはグルクロン酸抱合を受けて尿中に排泄される。メチル馬尿酸の生物学的半減期は3.6時間と短いので、曝露後に時間が経過している場合は尿中代謝物が検出されないこともある。

D. 誤り。

有機溶剤(第1種有機溶剤または第2種有機溶剤)を製造し、または取り扱う一定の業務を行う屋内作業場は、当該有機溶剤の濃度を6月以内ごとに1回測定し、記録は3年間保存しなければならない。

E. 正しい。


 
7. ホルマリンを取り扱う環境について正しいものはどれですか。
A. 作業主任者は特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習を修了する必要がある。
B. ホルマリンを扱う部屋の管理濃度は0.01ppm以下である。
C. 6ヶ月に一度、作業主任者による作業環境測定が必要である。
D. 換気装置が設置されている場所では呼吸用保護具を備える必要はない。
E. ホルマリンは酸化中和処理を行えば下水に廃棄して良い。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:ホルマリンやキシレンに関する問題は年々難解になっているような気がします。

A. 正しい。
B. 誤り。ホルムアルデヒドの管理濃度は0.1ppm以下です。
C. 誤り。作業主任者ではなく、作業環境測定士です。
D. 誤り。
E. 正しい。

酸化法は大量の水を加えて希薄な水溶液(2%以下)にした後、次亜塩素酸塩水溶液を加えて分解した後、廃棄する。又は、水酸化ナトリウム水溶液等を加えアルカリ性とし、過酸化水素水で分解した後、大量の水で希釈して処理する。


 
8. Papanicolaou 染色について誤っているものはどれですか。
A. ヘマトキシリンの染色時間は液の使用頻度や室温によって異なることがある。
B. 核染色後のヘマトキシリンは3%アンモニア・アルコールで脱色する。
C. Gill(ギル)のヘマトキシリンには酸化第二水銀が含まれる。
D. EA に含まれるビスマルクブラウンは類脂肪を染め、 細胞質染色には関与しない。
E. 細胞の透過性がよい点が特徴である。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:3

解説:

A. 正しい。
B. 誤り。
C. 誤り。
D. 正しい。

EAに含まれるビスマルクブラウンBismarck brownは類脂質を染め、細胞質染色には関与しない。

E. 正しい。

本法の特色は細胞の透明度がよく、細胞が重なっていても観察可能で、核構造も見分けることができる。


 
9. 特殊染色について誤っているものはどれですか。
A. PAS 反応の酸化にはヨウ素酸ナトリウムを用いる。
B. Schiff 試薬には塩基性フクシンが含まれる。
C. Alcian Blue は正に荷電し、負に荷電しているカルボキシル基と反応する。
D. Schiff 試薬の劣化はホルマリンに滴下して確認する。
E. Sudan(ズダン)Ⅲ染色ではアルコール固定が推奨される。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:

A. 誤り。

糖質を過ヨウ素酸で酸化して、生じたアルデヒド基をシッフ(Schiff)試薬で検出することに基づいている。したがって、本法の染色過程は過ヨウ素酸による酸化反応とシッフ試薬による呈色反応の2つの反応からなっている。シッフ試薬による呈色反応は、シッフ試薬がアルデヒト基と共有結合することに基づいている。最終反応産物の構造は、アルキルスルホネイト誘導体が生成されるという説が有力である。

B. 正しい。

シッフ試薬の調製は塩基性フクシンを沸騰した蒸留水に徐々に溶かし、加熱沸騰させる。完全に溶解したら50℃まで冷却し、濾過後1N塩酸を加える。さらに流水で25℃前後まで冷却して重亜硫酸ナトリウムを加え、冷暗所に保存する。

C. 正しい。

アルシアン青色素は構造分子の中心に銅イオンを配位した塩基性色素で、組織中の陰性荷電と静電結合をする。ただし、この静電結合は銅イオンと組織中の陰性荷電との結合ではなく、分子構造の外側に4個存在するオニウム(グアニジニウム基)のN+との結合である。pH2.5に調整された染色液ではカルボキシル基と硫酸基の両者、pH1.0に調整された染色液では硫酸基のみと静電結合する。

D. 正しい。

シッフ試薬は繰り返し使用できるが、使用回数を重ねるうちに染色力が低下する。シッフ試薬の効力の確認は、対照切片を染色するか、適当量のホルマリン原液にシッフ試薬を滴下してみる。瞬時に赤紫色に呈すれば使用可能と判断できる。厳密な組織化学反応を検討する場合は新調するのが無難である。

E. 誤り。


 
10. FISH法について誤っているものはどれですか。
A. 細胞周期のM期のみ判定できる。
B. ゲノムにおけるある特定の遺伝子の欠失を確認できない。
C. 二本鎖DNAを一本鎖DNAに解離させることを熱変性(Denature)と呼ぶ。
D. 染色後、 -20℃で保存することで、蛍光は一定期間保たれる。
E. 蛍光観察は暗室や自然光を遮る措置が必要である。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:1

解説:

A. 誤り。

FISH(fluorescence in situ hybridization)法は、間期および分裂期における染色体上の特定遺伝子の存在を視覚的に決定することにより、細胞遺伝子的観察を可能にする方法である。この方法はDNA鎖に相補的に結合するプローブに蛍光色素を標識し、細胞核内DNA鎖とハイブリダイズさせ、蛍光顕微鏡で観察する方法である。

B. 誤り。

FISH法はおもにDNAプローブを用い、DNAをターゲットとし、遺伝子マッピングや遺伝子異常(染色体異数性、増幅、欠失、転座等)の検出に優れている。

C. 正しい。
D. 消去法で正しい。
E. 正しい。

FISH法の細胞像を観察するときは暗室で行わなければいけないため、シグナル遺伝子は蛍光を発して見やすいが、背景の細胞形態は暗くわかりづらい。また、鏡検に蛍光顕微鏡を使用しなくてはならない点や、退色という宿命を背負っているが、陽性部位の識別が容易なことや二重染色(マルチカラー)が簡単に行えるなどの利点を有している。


 
11. 顕微鏡について誤っているものはどれですか。
A. 微分干渉顕微鏡は無色透明であるが屈折率が異なる試料の観察に用いる。
B. 位相差顕微鏡は無色透明な細胞や金属表面の段差などを観察に用いる。
C. 偏光顕微鏡は岩石の結晶や生物試料中に含まれる結晶物質の観察に用いる。
D. 共焦点レーザー顕微鏡はDNA マイクロアレイの測定に用いる。
E. 実体顕微鏡は対象をそのまま観察する。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:1

解説:

A. 誤り。

微分干渉観察法(DIC:Differential Interference Contrast microscopy)は微小段差を立体的に可視化できる観察方法である。照明光が標本を通過する際に、標本の勾配のある部分で生じる位相差を利用して、透明な標本の像に明暗のコントラストを付けて観察する。観察にあたっては、微分干渉プリズムと偏光板を装着して観察する。微分干渉観察では、あたかも物体の斜め上方から光を当てたように物体の輪郭に影が付き、立体的に見える。ただし、物体の勾配の方向によっては見えにくい部分があることや、実際の標本は観察されているような立体的な形状ではないということも覚えておく必要がある。

B. 誤り。

位相差観察法(PC、PH:Phase Contrast microscopy)は無色透明の標本や生きている細胞などの観察に適した観察方法である。照明光が標本を通過する際に、標本によって回折した光路と、照明の直接光との光路の差を利用して、透明な標本の像に明暗のコントラストを付けて観察する。顕微鏡に、位相差観察用の対物レンズとコンデンサを装着して観察する。明るい背景の視野に標本が暗く見える観察方法(ポジティブコントラスト)と、暗い背景の視野に標本が明るく見える観察方法(ネガティブコントラスト)がある。像の境界に独特の「ハロー」と呼ばれる明るい縁取りができる。

C. 正しい。

偏光観察法(P、PL:Polarized Light microscopy)は岩石、鉱物の結晶の観察や、物質の複屈折性(入射した光が2つの屈折光に分かれる性質)の検出、測定を行うのに適した観察方法である。顕微鏡に2枚の偏光板を装着し、偏光の干渉を利用して複屈折性の存在する部分を明暗や色のコントラストに置換えて観察する。回転ステージを用いて標本を回転させると、複屈折性のある部分が45°ごとに暗く見えたり(消光位)、明るく見えたり(対角位)する。

D. 正しい。

共焦点レーザー顕微鏡は光源としてガスレーザー、半導体レーザー、そして白色光源も光源として用いられる。レーザーを対物レンズから走査し、励起された試料から放出された蛍光(ないしは試料から反射した光)をピンホールを通した後に検出装置を用いて検出、コンピュータ上にて画像を再構成する。走査方式は、試料を固定した状態でレーザーをミラーや回転ディスクにより走査するビーム走査型と、光ビームは固定して試料(スライドガラス)を縦横に走査する試料走査型がある。後者はDNAマイクロアレイの測定などに使用されている。

E. 正しい。

実体顕微鏡Stereo microscopeとは、比較的低倍率(2~30倍程度)で、観察対象を薄切標本などにせず、そのままの状態で観察するための顕微鏡である。双眼実体顕微鏡ともいう。


 
12. 引きガラスを用いた標本作製法について正しいものはどれですか。
1. 引きはじめに大きな細胞が集まりやすい。
2. 引きガラスを引く速度が速いと長く引ける。
3. 引きガラスの角度を小さくすると長く引ける。
4. 検体が粘稠性の場合は引きガラスを引く速度を早くする。
5. 血液成分が多い場合は検体塗布量を多くする。


正解:3

解説:

1. 誤り。

引きガラス法(Wedge 法)はスライドガラスの一端に適量を落し、引きガラスで塗抹する。引きガラス法では大型細胞集塊が引き終わりに集まりやすい。沈渣の性状と量によりスライドガラスと引きガラスの角度、スピードを調整する。細胞が多い検体や粘稠度ある検体では角度を低く、ゆっくり引く。粘稠度のない検体では、角度を高く早く引く。塗抹が厚すぎたり、赤血球が多い塗抹標本では染色中に塗抹した細胞が剥離しやすいため、塗抹は「薄すぎず厚すぎず」が鉄則である。

2. 誤り。
3. 正しい。
4. 誤り。
5. 誤り。


 
13. 顕微鏡について誤っているものはどれですか。
1. 40倍の対物レンズのカラーコードはJIS規格にて青色と規定されている。
2. 対物レンズの開口数の75%程度に開口絞りを調整する。
3. 開口絞りを絞ると、コントラストが増す。
4. 対物レンズの倍率が高いと実視野は小さくなる。
5. 対物レンズの開口数が大きいほど焦点深度は深くなる。


正解:5

解説:

1. 正しい。

カラーコードは赤4倍、黄10倍、青40倍、白100倍と規定されている(JIS規格)。

2. 正しい。

コンデンサー開口絞りの調整は対物レンズと照明系の開口数を合わせることによって解像力とコントラストを上げる重要な操作である。顕微鏡標本は一般にコントラストが低いので、実際には対物レンズの開口数の70~80%に開口絞りを調整するとよい。対物レンズによって開口数は異なるので、特に写真撮影の場合はそのつど調整する必要がある。

3. 正しい。
4. 正しい。

顕微鏡で拡大されてみえる範囲は接眼レンズの視野絞りの直径(mm)で決まる。この数字を接眼レンズの視野数field numberという。視野数は接眼レンズの種類によって決まっている。実際に観察している標本上の直径(mm)で表した数字が実視野である。両者の関係は
実視野(mm)=(接眼レンズ視野数)÷(対物レンズ倍率)
で求められる。例えば、視野数20の接眼レンズと10倍の対物レンズを用いた場合、実際には標本上の直径2mmの円の部分を観察していることになる。当然、対物レンズの倍率が高いと実視野は小さくなる。

5. 誤り。

ピントを標本上の点に合わせたとき、上下方向でピントが合って見える範囲(深さ)を焦点深度という。焦点深度は開口数と総合倍率に反比例する。焦点深度はコンデンサーの開口絞り(NA絞り)でも調節される。


 
14. 顕微鏡のトラブル対処方法として誤っている組み合わせはどれですか。
1. 黄色色調を呈している―フィルターを調整
2. ギラつき―視野絞りを調整
3. 高倍率でのピントがあまい―対物レンズ補正環を調整
4. 視野の一部が欠ける―光軸確認
5. 視野が一つにみえない―眼幅調整と視度調整


正解:2

解説:

1. 正しい。
2. 誤り。細胞像がギラつく場合、開口絞りの調整が必要です。
3. 正しい。

通常カバーガラスの厚さは0.17mmに規定されているが、多少の誤差があり、この誤差によって像の劣化が起こる。この誤差を補正するのが補正環である。補正環は、NA0.65以上の高性能乾燥系高倍率レンズ(通常40倍以上)に装備されている。補正環部分に記載されている数値範囲(通常0.11~0.23mm)の補正が可能である。実際にはカバーガラスにさほどの差はないので、補正環の数値0.17(カバーガラスの規定値)を中心に前後1~3目盛り動かして、最も鮮明に見える部で観察する。

4. 正しい。
5. 正しい。


 
15. 誤っているものはどれですか。
1. 子宮頸部スメアでは扁平上皮・円柱上皮境界部(SCJ)を中心に採取する。
2. 喀痰は起床直後の採取が適切である。
3. 自然尿は起床直後の採取が適切である。
4. 胸水・腹水では採取後直ちに抗凝固剤入り容器に入れて混和する。
5. 脳脊髄液は蛋白含有量が少なく、細胞の膨化や濃縮、剥離などを起こしやすい。


正解:3

解説:

1. 正しい。

子宮頸部擦過は綿球、綿棒あるいはブラシを用いて外子宮口周囲を擦過して塗抹する。異形成(CIN)、癌の発生が最も多い扁平上皮・円柱上皮境界部(SCJ)を中心とした広い範囲の粘膜から細胞が採取されるので、子宮頸部のスクリーニングに適している。

2. 正しい。

新鮮喀痰は起床直後に採取する。食物残渣などを取り除くため口を水でゆすいだ後にシャーレに採取る。痰が出にくいときはネブライザーで生理食塩水を吸引させ、気管支を刺激する方法がある。

3. 誤り。

早朝尿は膀胱内の停留時間が長く細胞の変性が強いため、起床時の尿は細胞診には不適切であり、早朝排尿後3~4時間程度経過してからの尿が適している。

4. 正しい。
5. 正しい。

脳脊髄液は、採取後直ちに800~1000回転で5分間遠沈し、沈渣をスライドガラスに塗抹する。検体の液量が少なすぎて遠沈できない場合は、生理的食塩水を加えて遠沈する。また、脳脊髄液は腹水あるいは胸水よりも細胞成分が乏しいため、遠沈法では診断に必要な細胞数が塗抹されないことが多く、この場合にはオートスメア法や膜濾過法を行う。さらに脳脊髄液は蛋白含有量が少なく、細胞の膨化あるいは濃縮、固定液中で細胞がガラスから剝離する可能性があり、これらを防ぐために、少量のウシアルブミンやウシ胎児血清を加えることがある。


 
16. 染色法で誤っている組み合わせはどれですか。
1. PAS反応―アメーバ
2. Alcian blue染色―酸性ムコ多糖類
3. Berlin blue染色―アスベスト小体
4. Fontana-Masson染色―pneumocystis jirovecii
5. Grimelius染色―カルチノイド腫瘍


正解:4

解説:

1. 正しい。

PAS反応陽性物質は赤紫色を呈する。陽性物質には、グリコーゲン、糖タンパク質(シアロムチン、スルホムチンなど)、糖脂質、不飽和脂肪あるいは一部のリン脂質等が含まれる。その他、真菌、赤痢アメーバ、ある種の細菌類糖や、混入したデンプン粒あるいは食物残渣としてのセルロール等も陽性を示す。

2. 正しい。

アルシアンブルーは、酸性粘液多糖類中のカルボキシル基ないし硫酸基と結合する。この結合はpHの影響を受け、pH1.0以下では硫酸基のみと結合し、カルボキシル基とは結合しない。

3. 正しい。
4. 誤り。

フォンタナ・マッソン染色は銀親和性細胞(物質)を検出する。カルチノイド腫瘍のような内分泌細胞の検索にも用いられるが、メラニンやリポフスチンなどの証明法として用いられることが多い。クリプトコッカスはジフェノールオキシダーゼによってメラニンを形成することが知られており、他の酵母様真菌との鑑別に有用とされている。細胞が取り込んだアンモニア銀液中の銀イオンを細胞自身の有する還元力を利用して反応させる。

5. 正しい。

Grimeliusらにより膵臓のα細胞の染色のための染色法として報告され、現在では膵ランゲルハンス島のα細胞以外にも細胞内神経分泌顆粒の有無の検索のために広く用いられている。弱酸性(pH5.6)の硝酸銀水溶液中の銀イオンを細胞内に取り込ませて反応させ、還元能力をもたない細胞に亜硫酸ナトリウムを含む還元液を加えることにより銀顆粒を暗黒色として可視化させる。


 
17. 免疫染色について誤っているものはどれですか。
1. 内因性ペルオキシダーゼ活性の阻害に、過酸化水素メタノールを用いる。
2. アルコール固定標本における抗原賦活法としては、蛋白分解酵素処理が推奨される。
3. 高分子ポリマー法で行う場合、内因性ビオチンの影響は考慮しなくて良い。
4. 長期間アルコール固定した標本は、偽陰性となる場合がある。
5. 一次抗体と二次抗体は異なる動物の抗体を使う。


正解:2

解説:

1. 正しい。

好中球、好酸球、赤血球の有する内因性ペルオキシダーゼ活性は、抗原抗体反応による特異的なDAB産物の観察の邪魔になる。通常、0.3%H2O2加メタノール液や3%H2O2液が用いられるが、0.5%過ヨウ素酸(室温10分)でもよい。ただし、過ヨウ素酸は、踏査が抗原決定基であるモノクローナル抗体CA19-9CA125LCA、EMA等)には禁忌である。DAB液に加える10mMアジ化ナトリウム(NaN3)も内因性ペルオキシダーゼ阻害に働く。

2. 誤り。

一般に95%エタノール湿固定された細胞診材料は、ホルマリン固定材料ほどの強い抗原賦活処理は不要なことが多く、賦活なしでも染色可能な場合が多い。ただし、核内抗原などは賦活処理を行うと良好な染色結果が得られる場合があるので、用いる抗体ごとに賦活の必要性を検討する必要がある。細胞診材料では、抗原賦活処理は主に熱処理が行われ、タンパク分解酵素による消化法は用いない。

3. 正しい。
4. 正しい。

細胞診検体では95%エタノールを固定液として用いるが、経時的に抗原性が低下する傾向があり注意が必要である。固定後数日中に染色か、染色できない場合はPapanicolaou染色を施し封入した状態で保存して、必要時にカバーガラスを剝がし免疫染色を行うほうが長期間安定的に保存可能である。

5. 正しい。


 
18. 免疫染色における抗原の局在について、誤っている組み合わせはどれですか。
1. p63―核
2. CD5―細胞膜
3. CD56(NCAM)―細胞膜
4. TTF-1(Thyroid transcription factor-1)―核
5. ER(Estrogen receptor)―細胞膜


正解:5

解説:

1. 正しい。
2. 正しい。
3. 正しい。
4. 正しい。

TTF-1は甲状腺および末梢肺において上皮細胞の核に出現する核転写タンパクである。正常では甲状腺濾胞上皮、肺胞上皮、一部の気管支上皮の核などに発現し、甲状腺では濾胞上皮を由来とする腫瘍(乳頭癌、濾胞癌など)や髄様癌にも高率に陽性となる。用途で最も多いのは肺原発の腫瘍であることの確認である。

5. 誤り。

ステロイドホルモンであるEstrogenには乳腺や子宮内膜など特定の標的細胞に作用してその増殖を促進させる働きがあり、こうしたEstrogenの標的となる臓器に発生した癌の中にはEstrogenがその発育に深く関与しているものがある。そのようなEstrogen依存性増殖をする癌細胞の核内には核内受容体スーパーファミリーの一つであるEstrogenレセプター(ER)が強く発現している。


 
19. 液状化細胞診(liquid-based cytology:LBC)について誤っているものはどれですか。
1. 不適標本の減少に有効な手法である。
2. 専用の固定保存液を使用する。
3. 尿検体には使用できない。
4. 固定保存液より再度標本を作製できる。
5. 転写法や荷電法を用いて均一な標本を作製する。


正解:3

解説:

1. 正しい。

直接塗抹標本、特に子宮頸部を主体とした婦人科細胞診では、綿球あるいはブラシで細胞を採取し、直接スライドガラスへ塗抹する方法が一般的であるが、直接塗抹標本では、塗抹の手技によっては乾燥による固定不良、不均一な塗抹などの鏡検に不適切な検体があったが、液状化細胞診では、ブラシなどで細胞を採取後、ブラシの先端ごと液状固定液バイアル中で固定し、thinlayer標本を作製するため、検体採取、塗抹時が原因となる不適切標本を減らすことができる。

2. 正しい。

液状化細胞診liquid-based cytology(LBC法)では、採取した細胞を専用の保存液中に浮遊させた後、細胞を単層mononlayerあるいは薄層thinlayer状態で塗抹した標本を作製する方法であり、thinlayer法ともよばれる。

3. 誤り。
4. 正しい。

液状化細胞診では同一の検体からの複数枚のスライドガラスが作製できるため、追加の特殊染色、免疫染色に加え、in situ hybridization、FISH、CISHなどの遺伝子学的検索もできる。さらに、液状固定細胞検体DNAあるいはRNAを抽出し、PCR法も可能であるため、形態診断に加えた分子生物学的検討も行える。

5. 正しい。


 
20. Papanicolaou染色におけるトラブル対処方法として誤っている組み合わせはどれですか。
1. コーンフレーク状人工産物―脱水を十分に行う
2. 細胞の剥離―コーティングスライドグラスの使用
3. 核染色の細胞質への共染―核染色の分別を十分に行う
4. 脱水・透徹不良―モレキュラーシーブ使用
5. 細胞や菌などの混入―固定液・染色液の濾過や交換


正解:1

解説:

1. 誤り。封入前に乾燥すると茶褐色のツブツブ(コーンフレーク状人工産物)が細胞の上に乗っかることがあります。
2. 正しい。
3. 正しい。
4. 正しい。モレキュラーシーブはエタノール等の缶の中に入っている白くて丸いやつです。
5. 正しい。