雑記

時間があるときに細胞検査士の筆記試験の過去問を解いています

平成24年度 呼吸器 筆記試験 過去問

1. Ⅰ型肺胞上皮細胞の特徴について正しいものはどれか。
A. 肺胞表面の大部分を占めている。
B. 遊離縁に微絨毛がある。
C. 細胞質内にオスミウム好性の封入体を有している。
D. 扁平肺胞細胞とも呼ばれる。
E. 細胞質でガス交換を行う。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:3

解説:
A. 正しい。

肺胞alveolusを構成している上皮は2種類ある。肺胞表面の大部分(約95%)はⅠ型肺胞上皮細胞(扁平肺胞細胞)とよばれ、小型で扁平な細胞で細胞質が極めて薄くのびて肺胞内腔を覆っている。他方、Ⅱ型肺胞上皮細胞(大肺胞細胞)は分泌細胞ともよばれ、細胞質は泡沫状、大型で円形の核と明瞭な核小体をもっている。Ⅰ型肺胞上皮細胞はガス交換作用に関与し、Ⅱ型肺胞上皮細胞は表面活性物質を分泌し、肺胞内の表面張力を減じさせる作用に関与している。

B. 誤り。
C. 誤り。

Ⅱ型肺胞細胞の自由表面には、短い微絨毛がある。細胞質には電子密度の高い限界膜をもった層板小体lamellar bodyがあり、肺サーファクタントを含む分泌顆粒である。

D. 正しい。
E. 正しい。


 
2. 次の感染症のうち、原因微生物がPapanicolaou染色で推定可能なものはどれか。
A. Mycobacterium tuberculosis
B. Aspergillus
C. Pneumocystis jirovecii
D. Cryptococcus
E. Legionella

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:4

解説:Pap染色だと形態学的に特徴がある真菌類が推定しやすいのではないかと考えます。
A. 誤り。

結核は肉芽腫性炎症で結節性病巣を形成する。中心部に乾酪壊死を生じ、周辺部にはリンパ球、形質細胞の浸潤と線維芽細胞が存在する。線維芽細胞が上皮様変化をした類上皮細胞epithelioid cellと、これらが融合してできた多核巨細胞(ラングハンス巨細胞Langhans giant cell)が認められる。細胞診では、壊死物質(乾酪壊死物質)を背景にリンパ球、類上皮細胞、ラングハンス巨細胞が見られれば診断できる。類上皮細胞は、紡錘形ないし不定形の淡く豊富な細胞質に、長楕円形の核を有する。核縁は菲薄で、核クロマチンは細顆粒状で均等分布を示す。ラングハンス巨細胞では、核は細胞質の辺縁に配列することが多い。なお、サルコイドーシスにおいて類上皮細胞やラングハンス巨細胞がみられるが、背景に壊死物質は見られない。

B. 正しい。

アスペルギルス症aspergillosisは自然界に普遍的に存在する麹カビの仲間で、組織内では糸状菌としてみられる。侵襲臓器としては肺が最も多く、病型としては、結核性空洞や拡張気管支内に、真菌塊がみられる真菌球型(fungus ballないしaspergillomaという)。喘息症状と好酸球浸潤を特徴とするアレルギー型、好中球減少患者に起こる組織内侵襲が目立つ侵襲型がある。組織学的には、放射状に伸びる大きさのそろった3~6μm径の菌糸で、中隔を有し、鋭角状(Y字形)に分岐する。

C. 正しい。

ニューモシスチスイロヴェチPneumocystis jiroveciは、白血病などの悪性腫瘍に対する化学療法やAIDSなどの免疫低下時に発症する日和見感染症である。病原体は喀痰中に出現しにくく、気管支洗浄液や直接採取材料が適している。パパニコロウ染色では同定困難であり、グロコット染色、トルイジン・ブルー染色、メセナミン銀染色などにより証明される。病原体の大きさは5μmで、形は円形~三日月状である。グロコット染色では黒褐色に、トルイジン・ブルー染色ではメタクロマジーにより赤紫色に染まる。

D. 正しい。

肺クリプトコッカス症pulmonary cryptococcosisは土壌やハトの糞などに存在するCryptococcus neoformansの経気道的な感染により起こる。免疫抑制患者に発症する続発性では日和見感染症の形をとり、菌は毛細血管内や粘液内、組織球内に認められる。また健常者に発症する原発性では、健診時に胸部X線検査で偶然に単発性の境界明瞭なcoin lesionとして発見され、臨床的に肺癌との鑑別が問題となる。直径5~10μm の大きさで円形を示す菌体は多数の組織球や異物型多核巨細胞に貪食され、クリプトコッカス肉芽腫を形成する。アルシアン・ブルー染色やムチカルミン染色などの粘液染色では、莢膜が濃く染まるため菌体を確認しやすくなる。播種が起こると中枢神経への親和性が高いため、脳や髄膜に病巣を作りやすい。

E. 誤り。

レジオネラ菌グラム染色ではほとんど染色されないため、ヒメネス染色や組織の染色には鍍銀染色(Dietele)を行う。


 
3. 肺癌について正しいものはどれか。
A. 腺癌では、分化度の低い癌ほど核小体が目立つ。
B. 小細胞癌は、結合性の弱い小集団を作って出現することが多い。
C. 早期扁平上皮癌細胞は、孤立散在性に出現することは少ない。
D. 喀痰中に出現する腺癌細胞は、直接採取法に比べて平面的な配列を示す。
E. 新鮮材料の核クロマチン分布は、微細であることが多い。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:2

解説:
A. 正しい。

高分化型腺癌細胞は小型で、大きさや形が均質であるが、核形不整が目立つ。分化度が低くなるにつれて、癌細胞は、大型で、大小不同が目立ち、形も多彩(円柱状、立方状、類円形)になり、核にも大小不同や多核形成のような多形性が目立つようになる。腺癌の特徴的所見(柵状配列、腺腔形成、乳頭状集塊など)を示さない充実性集塊形成や孤立散在性の分布がみられる場合には低分化型腺癌が示唆される。

B. 正しい。

典型的な小細胞癌の細胞像を以下に示す。
・背景に壊死物質を伴うことが多い。
・細胞結合性が緩く、小集団として認められることが多い。
・細胞が相互に圧排するような特徴的配列(鋳型様配列)を示す。
・ロゼット様配列を示すことがある。
・腫瘍細胞の大きさは小型で小型リンパ球の1.5~2倍程度(リンパ球よりもやや大型)である。
・N/C比が非常に高い。細胞質は狭小であるが、裸核様の場合もある。
・核は類円形~短紡錘形で、濃染性で示す。
クロマチンは微細顆粒状で、核内に密に充満している。
・核小体は認められないことが多いが、あっても目立たない。
・核が挫滅して引き延ばされた像である核線を認めることが多い。

C. 誤り。

上皮内癌および早期浸潤癌においては、得られる異型細胞数が少なく、核は類円形で小型のものが多い。クロマチンの増量も軽度で比較的均一に分布することが多く、癌と断定できないことも少なくない。しかし、明るく輝く細胞質や、2核の細胞が多くみられたり、全体像として染色性、細胞の形、クロマチンパターンなどに多様性がみられ、早期癌を推定しうる場合が少なくない。

D. 誤り。

腺癌は、針穿刺やブラシ擦過などの直接採取法と喀痰などの剥離材料とで細胞所見の相違が最も目立つ組織型である。両者の相違は、癌細胞の出現様式と核所見に現れる。つまり、直接採取法では、集塊は平面的、核クロマチンは微細で、核縁の肥厚は目立たない。他方、喀痰では、集塊は著明な不規則重積性を示し、核クロマチンは粗糙で、核縁の肥厚が目立つ。

E. 正しい。


 
4. 肺の異型腺腫様過形成について正しいものはどれか。
A. 核の切れ込みが認められることがある。
B. 核は類円形で核内封入体をしばしば認める。
C. 高分化型腺癌、とくに細気管支肺胞上皮癌との鑑別は容易である。
D. 細胞集塊は小型で、配列は平面的、細胞質は一様に濃い。
E. 異型腺腫様過形成の病巣から細胞が採取される機会は少ない。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:2

解説:Eの選択肢がいじわるですね。
A. 正しい。

異型腺腫様過形成は胸部CTにより5mm程度の淡い陰影の小型病変が発見され、経皮肺生検あるいは術中迅速診断により異型腺腫様過形成と診断される症例がみられるようになった。出現細胞数が少なく、小型の集団で平面的配列、細胞の結合は疎、核は類円形で大小不同に乏しく、クロマチンの増量は少ない。核の切れ込みは稀である。2核細胞や核内封入体が目立つ。

B. 正しい。
C. 誤り。
D. 誤り。
E. 正しい。

異型腺腫様過形成(AAH)は病変が小型であるため、術前診断されることはほとんどない。摘出腫瘤の捺印細胞診が対象となるが、AAH病巣から細胞が採取される機会は少ない。高分化型腺癌、とくに細気管支肺胞上皮癌との鑑別が困難な細胞像を呈する。集塊は小型で、配列は平面的、細胞質は一様に淡い。核は類円形で核内封入体を認める。クロマチンは顆粒状で腺癌に比べて増量に乏しく、2核細胞の出現が目立つ。


 
5. 転移性肺腫瘍について正しいものはどれか。
A. 頻度が最も高いのは乳癌である。
B. 原発性か転移性かを推定する上で、Napsin Aの免疫染色は有用である。
C. 多発性肺腫瘍は、転移性の可能性が高い。
D. 肺腫瘍の組織型が扁平上皮癌の場合、細胞診では原発との区別がつかない。
E. 転移性肺腫瘍は、手術適応がない。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:4

解説:
A. 誤りだと思います。悪性腫瘍の中で胃癌と大腸癌の罹患率が高いので、転移性肺腫瘍もおそらくこの順位で高いと考えます。
B. 正しい。

Napsin AはペプチダーゼA1ファミリーに属するペプシンアスパラギン酸プロテアーゼで、肺サーファクタントBの成熟に関与している。肺では、Ⅱ型肺胞上皮および肺胞腔内マクロファージに発現する。腎臓においては近位尿細管に発現する。肺原発腺癌の80~90%で陽性となり、TTF-1よりも感度が高い。肺原発扁平上皮癌、小細胞癌、および胸膜中皮腫では陰性。Whithausらは、Napsin Aとp63の組み合わせにより感度94%、特異度96%で肺腺癌と肺扁平上皮癌を鑑別できると報告している。また、乳腺、大腸、胃、膵臓、肝臓、卵巣、子宮内膜の腺癌329例において、Napsin Aはいずれも陰性であったと報告されており、他のマーカーと組み合わせることで原発不明腺癌の原発巣検索にも有用である。

C. 正しい。
D. 正しいと思います。過去問でよくみる選択肢ですが、扁平上皮癌は原発か転移かは区別がつかないみたいですね。
E. 誤り。

転移性肺腫瘍に対する外科治療の条件は
・耐術性に問題がないこと
原発巣がコントロールされていること
・胸郭外転移病巣を認めないこと
・転移病巣が片側であること
以上4項目が転移性肺腫瘍に対する外科治療を適応する最低の条件と述べている。これが有名なThomfordの基準と呼ばれているものである。


 
6. 肺の扁平上皮癌について誤っているものはどれか。
A. 食道癌など他の扁平上皮癌との鑑別においてSCC抗原が有用である。
B. 腫瘍マーカーSLX(シアリルLe X-i抗原)は診断に有用である。
C. 腫瘍マーカーCYFRA(サイトケラチン19フラグメント)が有用である。
D. 細胞形態は多稜形を示し、細胞質重厚感を有し、核中心性である。
E. 細胞出現形式は軽度結合性を示し、立体的配列が特徴的である。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:2

解説:
A. 誤り。
B. 誤り。

シアリルSSEA-1(sialyl stage-specific antigen-1)抗原は、SSEA-1抗原の類縁抗原の一つであり、シアル酸によって修飾された抗原である。SSEA-1抗原は、はじめマウスの着床前の初期胚に発見された抗原であり、胚発生の一定の時期に特異的に出現するため発育時期に特異的な胎児性抗原の第1号(SSEA-1)と名づけられた。SSEA-1系統の抗原は胎児性の糖鎖抗原であり、そのため癌細胞に高頻度に出現すると考えられている。本抗原の本体は、末端にシアリルLexハプテンの構造を有する一連の糖鎖抗原である。本抗原は癌細胞と血管内皮細胞の接着(ELAM-I)を媒介することから、癌細胞の血行性転移と関連しており、肺腺癌、卵巣癌、膵癌および癌の転移能の評価や経過観察に有用である。SSE-1抗原は胎児期に形成される気管支腺細胞で陽性になり、出生後も持続的に陽性を示すことからびまん性汎細気管支炎、肺線維症、気管支拡張症、重症肺結核でときに偽陽性を示す。

C. 正しい。

CYFRA21-1は扁平上皮癌で60~80%ほどの確率で高値を示す。SCCよりも陽性率が高く、正確である。

D. 正しいと思います。多稜形という表現は引っかかりますが……。

扁平上皮癌細胞は喀痰標本では、壊死細胞が目立ち、細胞間結合が緩く、孤立散在性に出現する癌細胞が多い。角化型のものでは、多形性に富み、奇妙な形のものが混じり、大小不同が著しい。細胞質は豊富で重厚感があり深青緑色、黄褐色、桃赤色、光輝性橙黄色など、多彩な染色性を呈し、ときに同心円状層状構造を伴う。N/C比は他の組織型に対して小さく、核の位置は中心性である。核縁が粗剛で、クロマチンは豊富で粗い顆粒が混じり、核小体は小さく目立たないものが多い。非角化型ではライトグリーン好染性類円形細胞が主体をなす。擦過材料では、平面的な細胞集団で敷石状配列、あるいは立体的重積性集団を呈する。細胞質は淡青緑色で、クロマチンはむしろ細かい顆粒状の非角化型細胞が多い。

E. 誤り。


 
7. 肺癌について正しいものはどれか。
A. 組織型により治療方法が異なるため、治療前に組織型を確定することが重要である。
B. 喀痰では細胞質に変性空胞をみることがある。
C. 気管支洗浄液は、核クロマチンが融解状になりにくい。
D. 直接採取法は喀痰より組織型判定が容易である。
E. 喀痰は肺門部早期癌の診断には有用ではない。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:1

解説:
A. 正しい。

肺癌の治療方法や予後は組織型により差異があるため、細胞形態から、できる限り組織型の推定を行う必要がある。特に小細胞癌と非小細胞癌の鑑別診断は治療方針の決定に重要である。また、昨今、化学療法の薬剤選択にあたり、非小細胞癌の中で、扁平上皮癌か腺癌(あるいは非扁平上皮癌)かの判断も求められる。

B. 正しい。
C. 誤り。

採取法や検体の種類、細胞保存液の使用により、異なった細胞像を呈する。例えば、体腔液などの液体中では,細胞集塊は球状化しやすい。また、生理食塩水による洗浄液では、核は膨化傾向を示し、クロマチンはすりガラス様(融解状)となる。細胞保存液を使用した場合は一般的に、核小体が明瞭になる傾向がある。

D. 誤り。
E. 誤り。

喀痰細胞診は、非侵襲的で簡便に行える中心型早期肺癌の唯一のスクリーニング法である。肺癌症例における喀痰細胞診の検出感度は36~40%にすぎないが、喀痰細胞診で発見されたX線陰性肺癌は長期生存例の割合が高いことも報告されている。また、喀痰細胞診を胸部X線写真に追加するスクリーニング法の有効性を検討したランダム化比較試験であるJohns Hopkins StudyとMemorial Sloan-Kettering Studyでは、喀痰細胞診を追加するグループにおいて早期癌の割合、切除率、5年生存率が上昇することが示された。肺癌死亡率の減少効果に関しても、両studyを長期追跡した混合解析の結果、有意差はないものの死亡率を12%低下させる傾向が認められた。


 
8. 呼吸器細胞診について正しいものはどれか。
A. 判定区分は陰性、疑陽性、陽性からなる。
B. 喀痰標本で組織球が認められない場合「判定不能材料」とする。
C. 陰性の場合、良性病変が推定されても記述しない。
D. 疑陽性の場合、細胞型が疑われても記述しない。
E. 陽性の場合、必ず細胞型を記述しなければならない。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:1

解説:
A. 正しい。

次の3つの区分によって判定し、パパニコロウのclass分類は使用しない。
陰性(negative):悪性腫瘍あるいは良性悪性の境界病変に由来する異型細胞を認めない。
疑陽性(suspicious):悪性腫瘍の疑われる異型細胞あるいは良性悪性境界病変に由来する異型細胞を認める。
陽性(positive):悪性腫瘍細胞を認める。

B. 正しい。

喀痰では、標本上に組織球が認められない場合は、唾液や鼻汁であると考えられるので、判定不能材料(insufficient material)として取り扱う。また、その他の検体で標本が乾燥している、細胞成分がない、赤血球のみ、などの場合も判定不能材料として取り扱う。

C. 誤り。

陽性あるいは疑陽性と判定された場合、肺癌細胞型分類表に基づき、その細胞型を把握し、細胞診断名あるいは疑われる病変について記述する。細胞分類型分類表以外の細胞型についても、カルチノイド、腺様嚢胞癌、粘表皮癌、肉腫など、推定可能な場合は記述していく。陰性と判定された場合でも、真菌症、ウイルス感染症結核症など、悪性疾患以外の病変を推定し得る時には、当該診断名を記述する。

D. 誤り。
E. 誤り。


 
9. 粘液産生性の細気管支肺胞上皮型腺癌について正しいものはどれか。
A. 大型で平面的なシート状集団で出現する。
B. 細胞配列は規則的で極性を認める。
C. 核の切れ込みないし「しわ」はまれである。
D. 細胞境界は不明瞭である。
E. クロマチンの増量が目立つ。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:1

解説:
A. 正しい。

細胞異型軽度の高分化乳頭型腺癌の定型的な症例は、主としていわゆるクララ細胞型ないしⅡ型肺胞上皮細胞型とされているものである。平面的でシート状ないし軽度に重積した乳頭状の集団を形成し、細胞質内に粘液は認めない。核は類円形で独特の切れ込みないし「しわ」を有することが多い。クロマチンは軽度に増量し、細顆粒状でやや不均等に分布するが、核異型に乏しい。ときに核内封入体がみられる。

B. 正しい。
C. 誤り。
D. 誤り。
E. 誤り。


 
10. 肺の大細胞神経内分泌癌について正しいものはどれか。
A. 神経内分泌分化を示唆する組織学的特徴をもつ大細胞癌である。
B. 神経内分泌マーカーが陰性の場合、神経内分泌形態を持つ大細胞癌とする。
C. 非定型カルチノイドとの鑑別においては核分裂像の数は指標とならない。
D. 神経内分泌分化は免疫組織化学的染色によってのみ確認される。
E. 混合型大細胞神経内分泌癌は、その成分として小細胞癌を含むことがある。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:1

解説:
A. 正しい。

大細胞神経内分泌癌は、類器官構造organoid nesting、索状trabecular、ロゼット様rosette-like、柵状配列palisadingなど、神経内分泌分化を示唆する組織学的特徴をもつ大細胞癌である。その分化は、免疫組織化学的染色あるいは電子顕微鏡的観察で確認される。一般に腫瘍細胞は大きく、中等量から豊かな細胞質を有し、核クロマチンは淡明から微細顆粒状のものまである。核小体はしばしばみられ、ときに目立ち、その存在で小細胞癌との区別できることがある。しかし、核小体を欠く細胞からなる集団でも、細胞の大きさや細胞質の豊富さなどの他の形態学的特徴で、非小細胞癌の基準を満たすものがある。壊死を伴わない腫瘍部分の2mm2(高倍視野)中11個以上の核分裂像が存在することを基準とするが、平均では2mm2中75個の分裂像をみる。広い範囲の壊死巣をみるのが普通である。同様の組織像でも、神経内分泌マーカーが陰性の場合は神経内分泌形態をもつ大細胞癌large cell carcinoma with neuroendocrine morphologyとする。

B. 正しい。
C. 誤り。

定型的カルチノイドは2mm2(10高倍視野)あたり核分裂像が2個未満で、壊死を欠くカルチノイドである。細胞異型や高細胞密度、リンパ管侵襲をみることもある。非定型的カルチノイドは2mm2(10高倍視野)あたり2個から10個の核分裂像を呈するか、あるいは壊死巣を有するカルチノイドである。

D. 誤り。
E. 誤り。

混合型大細胞神経内分泌癌は腺癌、扁平上皮癌、巨細胞癌あるいは紡錘細胞癌が混在する大細胞神経内分泌癌である。小細胞癌と同様に、大細胞神経内分泌癌は組織像が均一でないことがある。大細胞神経内分泌癌と小細胞癌は、臨床的、疫学的、予後、神経内分泌性格の点で多くが類似しており、将来の研究によって混合型の生物学的態度がより十分に解明されるまでは、このような腫瘍を混合型としておく。ただし、大細胞神経内分泌癌と小細胞癌の混合型は「混合型小細胞癌」とする。


 
11. 次のうち正しいものはどれか。
A. 巨細胞癌は大細胞癌の特殊型である。
B. 基底細胞癌に似た構造をとる大細胞癌を類基底細胞癌とする。
C. 肺の淡明細胞癌は大細胞癌に分類される。
D. リンパ上皮腫様癌はEBウイルス感染を伴わないものとする。
E. 大細胞癌の形態に腺癌が混在する場合はコメントとして付記する。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:3

解説:
A. 誤り。

多形、肉腫様あるいは肉腫成分を含む癌は紡錘細胞あるいは巨細胞を含む癌、癌肉腫、肺芽腫、その他に分類される。さらに紡錘細胞あるいは巨細胞を含む癌は多形癌、紡錘細胞癌、巨細胞癌に分類される。

B. 正しい。

類基底細胞癌は基底細胞癌に似た構造をとる大細胞癌で、小葉状、策状、柵状の増殖様式をとり、比較的小型で均一の立方状ないし紡錘状の細胞からなる。核は中等度の染色性を示し、細顆粒状で、核小体はみられないかごく一部にみられるのみである。細胞質は乏しく、核分裂像は多い。細胞間橋、細胞単位の角化はみられない。面皰様(comedo-type)壊死はよくみられる。ロゼットも1/3の症例でみられる。神経内分泌マーカーは免疫組織化学的染色で陰性であり、電子顕微鏡的観察でも神経内分泌顆粒はみられない。この組織像をもつ腫瘍の約半数は純型であり、これを大細胞癌の特殊型として類基底細胞癌とする。その他の例は、50%未満の割合で扁平上皮癌、腺癌などの組織像を含むので、それぞれ扁平上皮癌(類基底細胞型)、あるいは腺癌に入れる。半数ほどの症例では上皮内癌を伴う。これらの多くは太い気管支に発生し、しばしば気管支内腔性の成分をもつ。この癌は低分化扁平上皮癌よりも予後は悪いとされる。

C. 正しい。

大細胞癌の特殊型は大細胞神経内分泌癌、類基底細胞癌、リンパ上皮腫様癌、淡明細胞癌、ラブドイド形質を伴う大細胞癌に分類される。

D. 誤り。

リンパ上皮腫様癌は鼻咽頭のリンパ上皮腫に似た組織像を示す大細胞癌であり、リンパ球の多い間質に大型の悪性細胞が胞巣をつくる。欧米諸国では稀である。東南アジアに多く、しばしばEBウイルス感染を伴う。

E. 誤り。


 
12. 肺癌の細胞採取法の説明で誤っているものはどれか。
A. 気管支生検で陰性、擦過細胞診が陽性となることはない。
B. CTガイド下経皮的穿刺吸引法は末梢病変に対して行う。
C. 気管・気管支壁外病変を採取する場合に、経気管支的穿刺吸引細胞診は有用である。
D. 細胞診のみが施行された場合、細胞診結果が術前の最終診断になりうる。
E. 気管支鏡検査では常に生検材料と細胞診材料が採取可能である。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:
A. 誤り。
B. 正しい。

経皮的肺穿刺吸引とは、肺の末梢あるいは胸膜直下の病変で喀痰細胞診や気管支擦過法による診断が困難な病変に対して行う。X線で透視あるいはCTガイド下で病変部位を確認しながら、肋間の胸壁の皮膚から穿刺針を穿刺吸引し、検体を採取する。

C. 正しい。

経気管支的採取法は気管支鏡下でブラシ、生検針、鋭匙、鉗子を用いて直接病巣から細胞を採取する。病巣が肺末梢の場合にはX線透視下にてテレビコントロールで擦過または穿刺を行う方法がある。

D. 正しい。

病理組織診断のための生検や試験切除が容易に行える臓器と異なり、肺における病理組織検査は、限られた範囲内での生検として、あるいは腹腔鏡下や開胸下という条件のもとに行われ、この点、侵襲の少ない細胞診断は、臨床検査の中で、肺癌の形態学的な最終診断となる場合がある。

E. 誤り。


 
13. 異型扁平上皮細胞として誤っているものはどれか。
A. 軽度異型扁平上皮細胞には癌を疑う所見はない。
B. 中等度異型扁平上皮細胞の場合、追加検査と追跡が行われる。
C. 高度異型扁平上皮細胞の判定区分はDである。
D. 高度異型扁平上皮細胞が見られた場合、進行癌を推定する。
E. 高度異型扁平上皮細胞に多核細胞はみられるが封入像はみられない。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:5

解説:
A. 正しい。

軽度異型扁平上皮細胞(集検区分B)は扁平上皮癌を疑う所見はなく、臨床的にも病的意義はないと考えられる異型扁平上皮細群である、細胞判定は陰性で、ClassⅡに相当する。結合性がやや緩くなった多辺形(多角形)細胞と類円形細胞が混在して、平面的な小集塊形成・敷石状配列・孤立散在性の分布を示す。細胞質はライトグリーン・エオシン・オレンジGに淡染する。核は類円形で、軽度の大小不同がある。クロマチンは均等に分布し、やや濃染傾向を示す。N/C比は低い。多核細胞はほとんどみられないが、同大の2核細胞がまれにみられる。

B. 正しい。

中等度異型扁平上皮細胞(集検区分C)は扁平上皮癌を疑う所見はなく細胞判定は陰性でClassⅡに相当する。癌細胞を誤判定する可能性を少なくするために追加検査・追跡・保存検体の再塗抹などの方策がすすめられるような異型扁平上皮細胞である。類円形細胞が主体をなし、孤立散在性に分布する。細胞質には厚みがありエオシンやオレンジGに好染するものが多い。核は類円形のものと不整形のものとが混在する。クロマチンは濃染傾向が強く、一部に不均等分布を示すものが散見される。N/C比はライトグリーン好性細胞で1/2程度、エオシン・オレンジG好性細胞で1/3程度の径比にとどまる。多核細胞は時々出現する。

C. 正しい。

高度異型扁平上皮細胞(集検区分D)は扁平上皮癌を疑うが、非癌性病変の可能性もあり、癌と判定できない所見を呈する異型扁平上皮細胞群である。細胞判定は疑陽性でClassⅢに相当する。気管支鏡を含めた精密検査は必須であり、このような所見から癌が発見される場合は、早期癌、特に上皮内癌であることが多い。類円形ないし不整形の細胞が孤立散在性に分布している。細胞質は厚みを増し、オレンジGに輝くように好染する。N/C比は中等度異型扁平上皮細胞より高いことが多い。核は不整形を有するものが多く、大小不同性が増し、クロマチンも不均等に増量している。核小体がみられることも多い。2核ないし多核細胞や相互封入像がみられることがある。

D. 誤り。
E. 誤り。


 
14. 肺のカルチノイド腫瘍について誤っているものはどれか。
A. 中枢発生の場合はポリープ状を示す。
B. 末梢発生の場合は被膜形成を伴わないことが多い。
C. 組織学的に定型的、非定型的、混合型がある。
D. いずれの型も核分裂像は乏しい。
E. 電子顕微鏡的に細胞質内に神経内分泌顆粒を認める。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:4

解説:
A. 消去法で正しい。
B. 消去法で正しい。
C. 誤り。

定型的カルチノイドは2mm2(10高倍視野)あたり核分裂像が2個未満で、壊死を欠くカルチノイドである。細胞異型や高細胞密度、リンパ管侵襲をみることもある。非定型的カルチノイドは2mm2(10高倍視野)あたり2個から10個の核分裂像を呈するか、あるいは壊死巣を有するカルチノイドである。

D. 誤り。
E. 正しい。

免疫組織化学では神経内分泌マーカーであるchromogranin、synaptophysin、NCAM(CD56)が陽性である。電子顕微鏡では細胞質に神経内分泌顆粒がみられる。


 
15. 縦隔の胚細胞腫瘍について誤っているものはどれか。
A. 成人の縦隔胚細胞腫瘍は、男性に多い。
B. 小児の縦隔胚細胞腫瘍は、奇形腫と卵黄嚢腫瘍が大半を占める。
C. 縦隔の胚細胞腫瘍では、未熟奇形腫が多い。
D. 縦隔の精上皮腫は、性腺原発のものと異なり予後不良である。
E. 縦隔の絨毛癌は20歳代の男性に好発する。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:4

解説:縦隔の胚細胞腫瘍は過去にもあまり出題されていないような気がします。細胞診の本にもあまり載ってませんからね。あらためて調べてみると勉強になります。
A. 正しい。

胚細胞由来の腫瘍は全縦隔腫瘍の約2.5%を占め、好発年齢は10~30代、80%以上が男性である。予後を決める一番の因子は組織型であり、セミノーマと成熟型奇形腫は予後が良いが、これ以外のものの予後はあまりよくない。

B. 正しい。

縦隔は性腺外の胚細胞腫瘍中最もよくみられる発生部位である。成熟奇形腫以外は悪性腫瘍が多い。セミノーマseminomaは男性に発生する。小児の胚細胞腫瘍では、奇形腫と卵黄嚢腫瘍yolk sac tumorが好発するが、卵黄嚢腫瘍は女性に多い。未熟奇形腫immature teratomaの縦隔発生は稀である。卵黄嚢腫瘍は小児では単独に、成人では混合型胚細胞腫瘍mixed germ cell tumorの一部にみられることが多い。

C. 誤り
D. 誤り。
E. 正しい。

絨毛癌Choriocarcinomaは高度に出血性で血腫様に見え、灰白色の腫瘍組織が肉眼的に認められることは少ない。合胞性および細胞性栄養膜細胞類似の2種類の細胞成分からなる。20歳代の男性に好発し、女性化乳房をしばしば合併する。血清中のhCGが上昇する。非常に悪性度が高く予後不良である点は性腺原発腫瘍と変わりない。縦隔の絨毛癌は他の悪性胚細胞腫瘍よりも高い確率で精巣の微小原発巣からの転移であることが多い。このことは治療上の問題とはならない。


 
16. EGFR遺伝子について正しいものを1つ選べ。
1. 検査のためのパラフィン切片は、厚さ2程度がよい。
2. 検査には長時間ホルマリン固定したものを使用する。
3. 検査のために提出された細胞診検体は冷蔵または冷凍保存しておく。
4. 肺癌細胞でのEGFR遺伝子変異の頻度について日本人は欧米人より低い。
5. 癌のEGFR過剰発現は予後良好の指標である。


正解:3

解説:
1. 誤り。

生検組織のパラフィン切片は5枚作製、そのうちの1枚をHE染色し腫瘍細胞の存在を確認することが望まれる。特に経気管支肺生検(TBLB) 標本では、病理診断の後に再薄切して作成した標本では組織自体がほとんどなくなったり、腫瘍細胞がなくなってしまうことがあるので注意を要する。あらかじめEGFR 変異検査を行う予定の場合は標本作製時に未染標本を余分に作ってもらうことも有用である。また、病理診断報告書で腫瘍細胞があるといっても、その含有量は様々であり病理医にどの程度の腫瘍細胞があるか診断書に記載するように依頼しておくのもよい。検査会社によっては、厚めの切片(10μm)を要求される場合もあるが、5μm 程度で可能なことが多い。

2. 誤り。

手術検体のパラフィン切片は連続切片を5枚作製、そのうちの1枚をHE染色して腫瘍細胞の存在を確認。DNAは固定の影響を受けやすく、長時間(1週間以上)ホルマリンに浸漬していた検体ではDNAは断片化されてしまい、検出不能である。手術検体は各施設により固定方法、時間等がまちまちであるのに対し、生検材料では固定時間は1昼夜が一般的なので、腫瘍細胞の量は少ないながらも、DNA品質が保たれていることが多い。高感度法での生検標本を用いることも考慮したい。

3. 正しい。

擦過ブラシや穿刺針、喀痰を生食やPBSでよくサスペンドしたのち半分に分け、一方を細胞診検査に提出し、残りを遺伝子検査用に冷蔵・冷凍保存する場合と、遠心して細胞成分を含む遠心沈渣にタンパク質変性剤を含むバッファー液を加えて混和し室温保存する場合がある。喀痰は検体自体がすでに変性している可能性があるので、タンパク質変性剤を含むバッファー液を加えて混和し室温保存することが望ましい。検体間の腫瘍細胞量の差が著しいため、上記のような検体格差をなくす操作とともに高感度法を用いる必要がある。

4. 誤り。

第二相試験の段階からEGFR-TKI の臨床効果は女性、非喫煙者、腺癌、東洋人に高いということが知られていたが、EGFR の遺伝子変異も肺癌の患者としては特異なこれらの集団に頻度が高い。これまでに報告された2880 例を対象とした13 の研究におけるEGFR 遺伝子変異の頻度は、東洋人(32%)、非東洋人(7%)、男性(10%)、女性(38%)、非喫煙者(47%)、喫煙者(7%)、腺癌(30%)、非腺癌(2%)など臨床背景に強く関連していることがわかる。

5. 誤り。

組織型や臨床病期との関連性については、組織型と過剰発現との間に関連性は認められなかったものの、腺癌に比し扁平上皮癌では腫瘍細胞の細胞膜に明瞭な陽性所見を認めること、またリンパ節転移がある例、病期が進行した例と蛋白過剰発現は相関していることを報告している。Hirshらは、非小細胞癌の中でも扁平上皮癌や細気管支肺胞上皮癌の形態を示す例では、EGFR遺伝子コピー数の増加と蛋白過剰発現との関連性が高く、さらにはコピー数の増加している症例の予後が悪い傾向であることも報告している。


 
17. 喀痰細胞診において、結合性がやや緩くなった多辺形の細胞で軽度の大小不同性を呈し、ライトグリーン好性の細胞質を持つ異型扁平上皮細胞を認めた。もっとも適切な判定はどれか。
1. 軽度異型扁平上皮細胞
2. 中等度異型扁平上皮細胞
3. 高度異型扁平上皮細胞
4. 上皮内癌
5. 扁平上皮癌


正解:1

解説:
1. 正しい。

軽度異型扁平上皮細胞(集検区分B)は扁平上皮癌を疑う所見はなく、臨床的にも病的意義はないと考えられる異型扁平上皮細群である、細胞判定は陰性で、ClassⅡに相当する。結合性がやや緩くなった多辺形(多角形)細胞と類円形細胞が混在して、平面的な小集塊形成・敷石状配列・孤立散在性の分布を示す。細胞質はライトグリーン・エオシン・オレンジGに淡染する。核は類円形で、軽度の大小不同がある。クロマチンは均等に分布し、やや濃染傾向を示す。N/C比は低い。多核細胞はほとんどみられないが、同大の2核細胞がまれにみられる。

2. 誤り。
3. 誤り。
4. 誤り。
5. 誤り。


 
18. 肺小細胞癌について正しいものを1つ選べ。
1. 腫瘍細胞は小型でリンパ球と同程度の大きさである。
2. 細胞の形は円形、類円形、紡錐形細胞である。
3. 裸核状の細胞からなり、細胞質を有することはない。
4. 腫大した核小体を認める。
5. 核縁の肥厚を認める。


正解:2

解説:
1. 誤り。

典型的な小細胞癌の細胞像を以下に示す。
・背景に壊死物質を伴うことが多い。
・細胞結合性が緩く、小集団として認められることが多い。
・細胞が相互に圧排するような特徴的配列(鋳型様配列)を示す。
・ロゼット様配列を示すことがある。
・腫瘍細胞の大きさは小型で小型リンパ球の1.5~2倍程度(リンパ球よりもやや大型)である。
・N/C比が非常に高い。細胞質は狭小であるが、裸核様の場合もある。
・核は類円形~短紡錘形で、濃染性で示す。
クロマチンは微細顆粒状で、核内に密に充満している。
・核小体は認められないことが多いが、あっても目立たない。
・核が挫滅して引き延ばされた像である核線を認めることが多い。

2. 正しい。紡錘形と表現されると迷いますが、取扱い規約の定義に明記されてあります。

小細胞癌は小型の細胞からなる悪性上皮性腫瘍である。腫瘍細胞は、円形、卵円形、または紡錘形などの形態を示し、細胞質は乏しく、細胞境界は不明瞭である。核は微細顆粒状のクロマチンを有し、核小体はないか、あっても目立たない。核は相互圧排像が著明で、核分裂像が多い。

3. 誤り。
4. 誤り。
5. 誤り。


 
19. 集団検診における喀痰細胞診の説明で誤っているものを1つ選べ。
1. 判定区分Aでは、正常上皮細胞や線毛円柱上皮細胞が認められる。
2. 判定区分Bでは、基底細胞増生や軽度異型扁平上皮細胞も含まれる。
3. 判定区分Cでは、中等度異型扁平上皮細胞も含まれる。
4. 判定区分Dでは、高度異型扁平上皮細胞または悪性腫瘍の疑いのある細胞を認める。
5. 判定区分Eでは、悪性腫瘍細胞を認める。


正解:1

解説:
1. 誤り。

日本肺癌学会では、集団検診における喀痰細胞診の判定基準、指導区分を決めている。この判定区分の特徴は、異型を有する、ないし癌と紛らわしい異型扁平上皮細胞が細区分され、重要視されていることである。

判定区分 細胞所見 指導区分
A 喀痰中に組織球を認めない 材料不適、再検査
B 正常上皮細胞のみ、基底細胞増生、軽度異型扁平上皮細胞、線毛円柱上皮細胞 現在異常を認めない、次回定期検査
C 中等度異型扁平上皮細胞、核の増大や濃染を伴う円柱上皮細胞 程度に応じて6か月以内の追加検査と追跡
D 高度(境界)異型扁平上皮細胞または悪性腫瘍の疑いのある細胞を認める ただちに精密検査
E 悪性腫瘍細胞を認める ただちに精密検査

2. 正しい。
3. 正しい。
4. 正しい。
5. 正しい。



20. 肺の腺癌について誤っているものを1つ選べ。
1. 高分化胎児型腺癌は、moruleを形成することが多い。
2. 高分化胎児性腺癌の腫瘍細胞は、グリコーゲン空胞がみられる。
3. ほとんどの腺癌は、混合型である。
4. 小型腺癌とは、腫瘍の直径が3cm以下のものをいう。
5. 肺腺癌の中には、印環細胞や淡明細胞の形態を取るものも存在する。


正解:4

解説:
1. 正しい。

腺癌は稀に胎児肺の腺管によく似た構造を示す(高分化胎児型腺癌)。この腫瘍は、胎児肺にみるようにグリコーゲンに富み、線毛を欠く上皮細胞からなる管状構造を示し、腫瘍細胞は核下あるいは核上にグリコーゲン空胞をもち、子宮内膜様にみえる。豊富な好酸性微細顆粒状細胞質をもつ多角形細胞からなる円形の“morula”(桑実胚)を形成することが多い。淡明細胞を主体とすることもある。稀に高分化胎児型腺癌と通常型腺癌亜型が混在することがある。また、高分化胎児型腺癌の像は、上皮および間質の二相性を示す肺芽腫において、上皮成分としてもみられることがある。したがって、小さな生検検体では、高分化胎児型腺癌のパターンを認めても、二相性肺芽腫を除外することはできない。これまで、肺芽腫という診断名は高分化胎児型腺癌と二相性肺芽腫の両方を包括していた。これらは胸膜肺芽腫とは異なる。しかし高分化胎児型腺癌は上皮成分のみからなり予後はより良好で、p53遺伝子異常を欠く点で後者と異なることから、肺芽腫には分類せず、腺癌の特殊型とする。

2. 正しい。
3. 正しい。

腺癌は腺管への分化あるいは粘液産生がみられる悪性上皮性腫瘍である。組織学的には、腺房型、乳頭型、細気管支肺胞上皮型、粘液産生性充実型、あるいはこれらの混合型の形態をとる。通常業務において最も頻繁に遭遇する腺癌は混合型である。通常、腺房型、乳頭型、粘液産生性充実型、あるいは細気管支肺胞上皮型が混在することが多いが、これらのうちひとつのみからなる例がある。

4. 誤り。

小型の腺癌(直径2cm以下)は、しばしば単一細胞からなり、ひとつの組織型を呈する。

5. 正しい。

腺癌の特殊型には高分化胎児型腺癌、膠様(コロイド)腺癌、粘液嚢胞腺癌、印環細胞癌、淡明細胞腺癌がある。