雑記

時間があるときに細胞検査士の筆記試験の過去問を解いています

平成24年度 消化器 筆記試験 過去問

1. 口腔内病変について正しいものはどれか。
A. 細胞採取は綿棒が良い。
B. 扁平苔癬は慢性炎症性病変でしばしばBリンパ球浸潤を認める。
C. 白板症は前癌病変で喫煙との関連が強い。
D. 天疱蒼は自己免疫性疾患でIgGの沈着が認められる。
E. 乳頭腫はヒトパピローマウイルスとの関連がある。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:5

解説:
A. 誤り。ブラシ採取のほうがよいらしいですね。
B. 誤り。

扁平苔癬lichen planusは皮膚・粘膜に発生する炎症性角化病変で、口腔では頬粘膜・舌・口蓋・口唇に多い。皮膚では多角で扁平な赤紫色の丘疹を生じ、発疹部に白色の線条(Wickham線条)を認める。粘膜では白の斑状、環状、レース状様を呈す。一般に女性に多い。病因は不明であるが、外傷性刺激、薬物・金属アレルギー、遺伝、ストレスなどが考えられており、病態形成に細胞性免疫の関与(T細胞、ランゲルハンス細胞)が示唆される。組織像では錯角化の亢進、棘細胞層の肥厚、基底細胞層の水腫変性とともに、上皮直下の帯状・層状の炎症性細胞(リンパ球)浸潤が特徴的である。

C. 正しい。

白板症leukoplakiaは口腔粘膜に好発する非炎症性の角化病変で前癌病変の1つとされる。頬粘膜、口角部、歯肉、舌に多く発生し、肉眼的に白色の斑状病変として出現する。紅色の斑状病変は紅板症erythroplakiaと呼ばれる。喫煙、アルコール、機械的刺激などとの関連が指摘されているほか、人種差、地域差があるとされる。組織学的には角質層の形成が著明な過角化症、肥厚した角質層の細胞に核が存在する過錯角化症、ケラトヒアリン顆粒の出現、棘細胞層の肥厚などがみられる。

D. 正しい。

尋常性天疱瘡pemphigus vulgarisは自己免疫性水疱性疾患で、50歳前後の成人の皮膚、粘膜上皮層に大小の水疱形成をみる。水疱部は破れ、充血性びらんを生じ、非水疱部は剥離しやすい(Nikolsky現象)。扁平上皮傍基底細胞の中には、大型化し核小体が明瞭化したTzanck細胞が出現する。全身性に拡がると予後不良となる。自己抗体(IgG抗体)としてデスモゾーム構成タンパクであるデスモグレインに対する抗体が検出される。組織像の特徴は粘膜上皮細胞間水腫および棘細胞融解acantholysisで、基底膜に異常はない(類天疱瘡との鑑別点)

E. 正しい。
 


2. 口腔上皮内腫瘍について正しいものはどれか。
A. サイトケラチン13の免疫染色は陰性である。
B. サイトケラチン17の免疫染色は陽性である。
C. 口腔上皮性異形成に相当する病変である。
D. 表層分化型では基底細胞様の細胞が全層性に認められる。
E. Tis癌に相当する病変である。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:2

解説:用語の解釈はむずかしいですね。解説が間違っているかもしれません。
A. 正しい。

免疫組織化学的染色ではcytokeratin13はDysplasiaから陽性細胞の発現率が減少し、Cancerではほとんど陽性細胞を認めず、一方cytokeratin17はDysplasiaから陽性細胞の発現率が増加しNormalではほとんど陽性細胞を認めなかった。cytokeratin13および17を併せて評価することが上皮性異形成の癌化能を診断する一助になると考えられ、cytokeratin13および17の発現変化は切除断端に見られる上皮性異形成の処置方針の決定に有用であると考えられた。

B. 正しい。
C. 誤り。口腔上皮内腫瘍は上皮内癌を意味します。口腔上皮異形成は境界病変という位置づけなので、Cの文章は間違いだと考えます。

口腔上皮異形成 oral epithelial dysplasia (OED)は上皮内腫瘍を疑うが反応性異型病変との鑑別が困難な境界病変である。5年以上の経過観察が必要。

D. 誤り。

口腔上皮内病変oral intraepithelial neoplasia (OIN)/上皮内癌(CIS)とは、口腔癌が上皮内にとどまり基底膜を越える浸潤が認められない状態のことである。
・全層置換型:基底細胞様の癌細胞が全層性あるいは、ほぼ全層性に認められる状態。肉眼的にはerosiveな紅斑像を呈する。半年以内に浸潤癌に進展することが多い。
・表層分化型:角質層や有棘層に異型はないが基底層側に高度の異型細胞が見られる状態。肉眼的には軽度肥厚した白斑像を呈する。5年以内に浸潤癌に進展することが多い。

E. 正しい。

Tis癌(Tis carcinoma)はUICC分類における上皮内癌の用語である。

 


3. 唾液腺腫瘍について正しいものはどれか。
A. 多形腺腫―Ⅳ型コラーゲン
B. ワルチン腫瘍―リンパ腫細胞
C. 腺房細胞癌―小児
D. 腺様嚢胞癌―硝子球
E. 唾液腺導管癌―壊死

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:3

解説:
A. 正しい。
B. 誤り。

ワルチン腫瘍warthin tumorは耳下腺に好発し、小唾液腺が発生するのはまれである。10数%は両側性で、片側性でも多発する傾向にある。嚢胞を形成し、穿針にて泥状分泌物を吸引することが多い。その組織像は、二層性配列を示す上皮細胞とリンパ組織からなる。細胞像は成熟リンパ球を背景にオンコサイト(膨大細胞)がみられる。膨大細胞はシート状集塊ないし散在性に出現する。細胞質は豊富で好酸性の顆粒状物質を含む。核は小型類円形で、N/C比は低い。時に、壊死性や炎症性背景がみられ、まれに扁平上皮化生細胞、コレステリン結晶などをみる。

C. 誤り。

腺房細胞癌acinar cell carcinomaは漿液性腺房細胞類似の細胞よりなる比較的稀な腫瘍で、40歳以降の耳下腺、頬粘膜・口唇の小唾液腺に発生する。女性の発生率が男性より高い(2:1)。組織学的に細胞異型が乏しい場合でも浸潤、再発あるいは転移がみられる。

D. 正しい。

硝子様物質は硝子様に均一に染まる物質の総称で、ライトグリーン好性である。硝子様物質が背景にみられた場合の鑑別診断としては、基底膜様物質、アミロイド、類澱粉小体などが挙げられる。基底膜様物質は腺様嚢胞癌、基底細胞腺癌、上皮筋上皮癌、多形腺腫などにみられ、診断的に貴重な所見であり、ギムザ染色で異染性を示す。

E. 正しい。

唾液腺導管癌は、背景に著明な壊死と強い細胞異型を特徴とする腫瘍で、結合性の良い大小集塊、シート状もしくは乳頭状集塊が出現する。転移性癌、高異型度粘表皮癌などが鑑別にあがるが、最近では細胞異型の弱い篩状構造を特徴とする導管癌の報告もある。

 


4. 唾液腺について正しいものはどれか。
A. 耳下腺は内胚葉由来である。
B. 口唇腺は外胚葉由来である。
C. 唾液腺は大唾液腺と小唾液腺に大別される。
D. 大唾液腺には耳下腺、顎下腺、舌下腺がある。
E. 唾液腺は分泌物の性状により漿液腺と粘液腺に区別される。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:4

解説:
A. 誤り。

口腔は外胚葉由来の口腔原基と内胚葉由来の前腸頭側端が融合して形成され、外胚葉部分は口唇、頬、歯肉粘膜となり、内胚葉部分は舌、口腔底、咽頭粘膜となる。唾液腺においては、耳下腺、口唇腺、頬腺および口蓋腺は外胚葉、また顎下腺、舌下腺および舌腺は内胚葉由来とされる。

B. 正しい。
C. 正しい。

唾液腺は大唾液腺と小唾液腺に大別される。大唾液腺には耳下腺parotid gland、顎下腺submandibular gland、舌下腺sublingual glandがあり、小唾液腺は口腔粘液に散在し、口唇腺、頬腺、臼歯腺、口蓋腺および舌腺などがある。分泌物の性状により漿液腺、粘液腺、混合腺に区別される。耳下腺は漿液腺のみからなり、顎下腺と舌下腺は混合腺で、顎下腺は漿液腺優位、舌下腺は粘液腺優位である。一方、小唾液腺では口蓋および舌底腺のみが粘液腺で他は混合腺である。

D. 正しい。
E. 誤り。
 


5. 食道について正しいものはどれか。
A. 扁平上皮乳頭腫の多くは癌化する。
B. 上部食道には横紋筋がある。
C. 上皮内癌はヨード染色に不染である。
D. 食道癌は胸部中部食道が好発部位である。
E. バレット食道からは未分化癌の発生が多い。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:4

解説:
A. 誤り。
B. 正しい。

固有筋層は内輪外縦の2層からなるが、食道上部では横紋筋線維、下部では平滑筋線維からなり、中部では両者が混在している。

C. 正しい。

ルゴール散布による不染帯(グリコーゲンの欠如)が病変の粘膜内病変の局在診断に有効であり、生検の標的となることが多い。これらにはびらん、再生上皮、異所性胃粘膜、上皮内癌を含む上皮内腫瘍がある。逆に、糖原性表皮肥厚症ではルゴール過染性となる。

D. 正しい。

発生部位としては胸部中部食道(Mt)に最も多く、約50%を占める。次いで胸部下部食道(Lt)が約20%、腹部食道(Ae)が約10%である。

E. 誤り。

バレット食道は食道下部粘膜が、全周性かつ胃から連続性に少なくとも3cm以上が腺上皮により置換された状態である。3cm未満や非全周囲の病変はshort segment Barrett esophagus(SSBE)と呼ばれる。構成する細胞は萎縮した胃底腺および噴門部および腸上皮化生腺管である。上皮はしばしば再生性変化を示す。異形成dysplasiaと呼ばれる腺腫や、腺癌が発生することがあり、その頻度はバレット食道患者の約10%である。なお、バレット食道腺癌は食道癌全体の約4%を占めている。

 


6. Helicobacter Pylori感染について正しいものはどれか。
A. ウレアーゼ活性を示す。
B. 萎縮粘膜から検出されることが多い。
C. らせん状のグラム陽性桿菌である。
D. 健常成人の血清陽性率は低い。
E. 胃潰瘍患者は健常者よりも感染率が高い。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:2

解説:
A. 正しい。

Helicobacter pylori感染症は萎縮性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、MALT型リンパ腫、胃癌の原因となり、40歳以上の日本人の7割が保菌者といわれている。H.pyloriにはウレアーゼ活性があり、胃液中の尿素アンモニアに変えることによって胃酸を中和するため胃液中でも死滅しない。菌体は胃表層上皮ないしは陰窩の粘液層にみられ、一般に好中球を伴う高度の炎症細胞浸潤を伴っている。菌はHE染色でも観察可能であるが、同定にはギムザ染色Giemsa stainやワルチン・スターリー染色Warthin-Starry stain、抗H.pylori抗体を用いた免疫染色が行われる。

B. 正しい。

Hpは慢性消化性潰瘍の発生に関与している。慢性消化性潰瘍の胃粘膜には高率にHpが見出され、また、Hpを除菌することにより潰瘍再発率が劇的に低下する。

C. 誤り。

Helicobacter piloriはグラム陰性のらせん状ないしS状細菌である。単極に数本の鞭毛があり、活発に運動する。微好気性条件で発育する。

D. 誤り。リンク先を参考にしてください。
病気と検査 ヘリコバクター・ピロリ
E. 正しい。
 


7. 大腸の病変について正しいものはどれか。
A. 過形成性ポリープは良性腫瘍である。
B. 鋸歯状腺腫は非腫瘍性病変である。
C. 腺腫で最も頻度が高いのは管状腺腫である。
D. 絨毛腺腫は癌化率が高い。
E. 大腸腺腫症の多くは遺伝性であり、癌化と関係がある。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:3、5

解説:
A. 正しい。

過形成性ポリープhyperplastic polypは異型のない上皮の過形成により生じるポリープで、一般に5mm以下の小さな扁平隆起を示し、色調は蒼白である。組織学的には、異型のない既存の腺管が延長し、管腔の拡大や鋸歯状を呈するのが特徴である。高齢者では最も頻度の高いポリープで下部大腸に好発する。癌化の危険率は基本的に低い。

B. 誤り。

鋸歯状を呈する病変を鋸歯状病変serrated lesionと総称し、異型のないものを過形成性ポリープ、異型のあるものを鋸歯状腺腫serrated adenomaと呼ぶとされていたが、最近は広基性鋸歯状腺腫/ポリープ(sessile serrated adenoma/polyp:SSA/P)という病変が遺伝子異常の観点から注目されている。WHO分類では新たにserrated neoplasia pathwayという概念が導入され、形態的には腫瘍性異型のない過形成性ポリープの亜型であるが、癌合併率が高いことから注目されている。組織学的には、陰窩の拡張、陰窩における水平方向への不規則分岐(逆T字・L字型、錨型陰窩)などが特徴とされている。

C. 正しい。

大腸の腺腫adenomaは、管状tubular、管状絨毛tubulovillous、絨毛腺腫villousの3型に分類される。管状(絨毛成分が25%以下)、管状絨毛(中間)、絨毛腺腫(絨毛成分が75%以上)が目安となる。頻度は管状腺腫が最も多く(90%)、管状絨毛腺腫が次に多く (5~10%)、絨毛腺腫はまれである。

D. 正しい。

大腸腺腫の癌化については諸説あるが、例えば、管状腺腫の癌化率は20%程度、管状絨毛腺腫と絨毛腺腫が70~80%程度、という報告がある。

E. 正しい。

家族性大腸腺腫症familial adenomatousis coliは消化管、特に大腸全域に腺腫がびまん性に発生する遺伝性のポリポーシスで、放置すれば100%癌化する。従来は、家族性大腸ポリポーシスfamilial adenomatous polyposis(FAP)と呼ばれていた疾患でGardner症候群(骨・軟部腫瘍の合併)と呼ばれていたものも含まれる。常染色体優性遺伝形式をとり、第5染色体長碗に局在するadenomatous polyposis coli(APC)遺伝子が原因遺伝子である。

 


8. 虫垂腫瘍について正しいものはどれか。
A. 粘液瘤には粘液嚢胞腺腫と粘液嚢胞腺癌も含まれる。
B. 粘液嚢胞腺腫は腹膜偽粘液腫の起源となる。
C. カルチノイド腫瘍は急性虫垂炎の診断での切除例が多い。
D. カルチノイド腫瘍は根部側に好発する。
E. 乳頭腺管癌の頻度が最も高い。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:1

解説:
A. 正しい。

虫垂の内腔に粘液が貯留し嚢胞状に腫大した状態を粘液瘤mucoceleという。その原因として粘膜の過形成から悪性腫瘍まですべてが含まれ、ひとつの疾患単位を指してはいない。組織学的に次のように分類される。
・過形成mucosal hyperplasia
・粘液嚢胞腺腫mucinous cystadenoma
・粘液嚢胞腺癌mucinous cystadenocarcinoma

B. 正しい。
C. 正しい。

カルチノイドに特異的な症状はなく、多くは急性虫垂炎と診断されて虫垂切除が行われ、その病理学的検索からカルチノイドと診断される。カルチノイド症候群を呈することはない。多くが1cm以下であり術前に診断することは極めて困難である。切除した虫垂の肉眼的・組織学的検索が必要である。

D. 誤り。

虫垂カルチノイドは虫垂先端に1cm以下の硬い灰白色から黄色調の被膜を有さない小腫瘤として認められることが多い。2cm以上の大きさのものは少ない。

E. 消去法で誤り。
 


9. 高分化肝細胞癌の細胞所見について正しいものはどれか。
A. 正常肝細胞より小型
B. N/Cの増大
C. 細胞接着性の低下
D. 多核化
E. 脂肪化

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:1

解説:
A. 正しい。

原発性肝癌取扱い規約第5版では早期肝細胞癌を以下の様に定義しているが最新の国際基準と同様の内容である。
「細胞密度の増大に加え、腺房様あるいは偽腺管構造、索状配列の断裂、不規則化などの構造異型が領域性をもってみられるもの、あるいは間質への浸潤を有するもので、細胞個々の異型は乏しいが、一般に細胞は小型化して、核胞体(N/C)比が増大する。細胞質では好酸性ないし好塩基性が増強する。通常、細胞密度の増大は周囲肝組織の約2 倍以上である。しばしば脂肪化、淡明細胞化を伴う。癌細胞は膨張性に増殖するにいたっていないため、周囲肝組織との境界で癌細胞は隣接する肝細胞を置換するように増殖し、境界は不明瞭なことが多い。肉眼的には、小結節境界不明瞭型に相当する」

B. 正しい。

肝細胞癌hepatocellular carcinomaは、組織学的分化度により4型に分かれる。その細胞所見を以下に示す。
・高分化型:正常肝細胞に類似し細胞異型が軽度なため、良性病変、特に肝硬変との鑑別が困難な場合がある。細胞質に好酸性顆粒やマロリーMallory body(PAS染色陰性)、脂肪変性がみられることが多い。
・中分化型:高分化型と比較して核腫大やクロマチンの濃染傾向が強くなるが、N/C比はあまり高くない。細胞集塊内に偽腺管様配列や個々の細胞に胆汁色素や核内細胞質封入体がみられることが多い。
・低分化型:中分化型より核異型が強く、巨細胞、多核細胞が混じる。
・未分化型:肝細胞の特徴を欠く。細胞は小型で類円~紡錘形を示す。N/C比は高く、胆管細胞癌や転移性腺癌との鑑別が難しい。
 なお、球状硝子体globular hyaline body(PAS染色陽性~陰性)は高分化~低分化型にみられ、特に低分化型によく見られるとされている。

C. 誤り。
D. 誤り。
E. 正しい。
 


10. 肝臓の病変について正しい組み合わせはどれか。
A. C型肝炎ウイルス―DNAウイルス
B. 限局性結節性過形成(FNH)―異常血管
C. 肝硬変―大型再生結節
D. 高度異型結節―細胞密度の上昇
E. 肝内胆管癌―胆汁産生

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:4

解説:
A. 誤り。

肝細胞向性ウイルスで、A・B・C・D・E型の5種類の肝炎ウイルスが知られている。B型のみがDNAウイルスで、他はRNAウイルスである。A・E型は経口感染、B・C型は血液・体液を介した感染、D型はB型肝炎の患者のみ感染する。

B. 正しい。

限局性結節性過形成focal nodular hyperplasia(FNH)は、かつては剖検時や開腹手術に際し、偶然発見されるような稀な病変であった。しかし、最近の画像診断法の進歩、普及により、しばしば経験されるようになり、画像診断上、また病理形態学的にも肝癌の鑑別疾患にあげられる。FNHは1cm前後から数cmに及ぶ結節性病変で、肝被膜近くにみられることが多く、肝細胞の限局性の過形成、結節の中心部から放射状に伸びる線維帯(中心瘢痕)、多数の異常血管の介在などより特徴づけられる。

C. 正しい。

肝硬変liver cirrhosisは慢性肝病変の終局像といえるものである。病理形態的には、肉眼的にびまん性に結節形成があり、組織学的には、肝細胞の壊死、再生の繰り返しによる肝全体にわたる線維化の進行の結果、線維性の隔壁で囲まれた種々の大きさの再生結節(偽小葉)の形成(小葉の改変)で特徴づけられる。わが国の肝硬変の多くは、C型あるいはB型肝炎ウイルスによるとみなされる。形態的分類としては、再生結節の大きさによるWHO分類が最も一般的であり、
・大結節性macro-nodular type:大部分の再生結節が大きく、3mm以上
・小結節性micro-nodular type:再生結節の大部分が3mm以下で、均一で小さい
・混合結節型mixed nodular type:小結節と大結節の再生結節がほぼ均等に混在する
の3型に分類される。

D. 正しい。

異型結節dysplastic nodule(DN)は、腺腫様過形成adenomatous hyperplasiaと従来呼ばれていた病変で、肝硬変において1cm前後の際立った結節としてみられ、組織学的に周囲の再生結節(偽小葉)と比べ、細胞密度の増大、肝細胞の索状配列の明瞭化など肝細胞の過形成像が明らかなものをいう。切除された肝癌の近傍にDNがしばしばみられることや、DNの結節内に高分化な癌組織を内包するもの、あるいは高分化肝癌との鑑別が困難なものの存在、さらに針生検で確認されたDNの臨床的な長期観察により、癌化するものが少なくないことなどから、肝癌の前癌病変としての可能性が強く示唆されている。

E. 誤り。
 


11. 胆汁中の再生異型上皮に相当する細胞像について正しいものはどれか。
A. 核は腫大し核形不整が強い。
B. 核小体は目立つが核縁は平滑である。
C. 集塊辺縁の細胞質が均一にみられる。
D. 核間距離が均等でシート状~軽度重積を示す集塊として出現する。
E. 不規則な重積を示す細胞集塊が形成されやすい。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:4

解説:
A. 誤り。

膵臓では慢性膵炎、胆嚢・胆道系では胆嚢炎、胆石症などの際に異型細胞が出現する。これらは、ときに癌細胞との鑑別を要する。その場合、以下の所見が鑑別点となる。
1)シート状細胞集塊で出現または重積性がみられても配列は規則正しい。
2)細胞密度は疎。
3)細胞の極性が保たれている。
4)細胞集塊辺縁の細胞の細胞質が保たれている。
5)個々の細胞の細胞質は保たれている。
6)核の染まりに不同がない。
7)核形に不整がない。
8)核縁が均等な厚さで、薄い。
9)クロマチンは疎で均等な分布を示す。

B. 正しい。
C. 正しい。
D. 正しい。
E. 誤り。
 


12. 胆嚢について正しいものはどれか。
A. 胆嚢壁には粘膜筋板がある。
B. 急性胆嚢炎は胆石を伴うことが多い。
C. 胆汁中には扁平上皮細胞がみられる。
D. Rokitansky-Ashoff洞は胆嚢上皮の深いくぼみとして認められる。
E. コレステロールポリープでは粘膜固有層に好中球の集族がみられる。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:4

解説:
A. 誤り。

胆管や胆嚢は単層の高円柱上皮でおおわれる。粘膜筋板を欠くので、粘膜下層は存在しない。粘膜固有層の間質を介して、薄い固有筋層をみる。粘膜では粘膜層の憩室様嵌入であるRokitansky-Aschoff洞(RAS)がみられる。

B. 正しい。

急性胆嚢炎acute chomecystitisの大部分は胆石症によるものである。胆石が胆嚢頸部に嵌頓して胆嚢管が閉塞し胆汁うっ滞を来たす結果、胆汁中の化学物質や胆石の機械的刺激により発症する。高熱、右季肋部痛、悪寒戦慄などで発症することが多い。

C. 正しい。

胆汁、膵液中には扁平上皮化生細胞がみられやすい。

D. 正しい。
E. 誤り。

コレステロールポリープcholesterol polypは胆嚢ポリープの中で最も頻度が高く、粘膜固有層内の泡沫状の組織球の限局性集積によりポリープ状に隆起する。多くの場合、数mm大で黄白色調、桑の実状を呈し、多発する。ポリープは泡沫状の組織球で占められ、粘膜上皮で覆われている。

 


13. 膵臓細胞診について正しいものはどれか。
A. 粘液性嚢胞腺腫の病変推定に膵液材料が有用である。
B. 超音波内視鏡検査ガイド下穿刺吸引法は腫瘤形成病変に有用である。
C. 内分泌腫瘍は割面捺印材料での悪性判定が困難である。
D. 浸潤性膵管癌の病変推定には胆汁材料が有用である。
E. 擦過材料は膵管内乳頭粘液性腺腫(IPMA)と膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)の鑑別に有用である。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:1

解説:
A. 正しい。
B. 正しい。

EUS-FNAの適応病変は、①膵・膵周囲腫瘤性病変、②消化管粘膜下腫瘍、③消化管周囲のリンパ節、④後縦隔腫瘤性病変、⑤EUSでしか描出されない少量の腹水や胸水、⑥消化管の上皮性腫瘍でありながら粘膜下の要素が強く通常の内視鏡下生検では診断が困難な病変、⑧副腎病変(褐色細胞腫に注意)、⑨EUSで描出される肝左葉の占拠性病変、⑩経大腸的な観察が可能な骨盤内腫瘤、などである。適応疾患に関しては本手技の普及と相まって拡大の傾向にある。

C. 正しい。膵内分泌腫瘍は病理組織学的に悪性度を判定することは困難です。分子生物学的方法などを用いて悪性度を判定します。
D. 誤りだと思います。なぜ胆汁なんでしょうか...。
E. 誤り。「PanINとは、IPMNを除く膵管内の円柱上皮由来の異型上皮病変全般を上皮内癌を含め進行性の腫瘍性病変ととらえたもので、……IPMNとの鑑別は、第一に膵管拡張の程度・形状により、第二に組織学的増殖形態により行う」とあるので、擦過材料だけでは両者を鑑別できません。

膵管内の異形上皮および癌、とくに通常型膵癌の前駆病変に関しては、従来より用語・組織学的基準に混乱があり、これを統一する目的で、2001 年にPancreatic intraepithelial neoplasia(PanIN)/膵上皮内腫瘍性病変の概念が提唱された(Am J Surg Pathol 25:579-586、 2001)。PanIN とは、IPMN を除く膵管内の円柱上皮由来の異型上皮病変全般を上皮内癌を含め進行性の腫瘍性病変ととらえたもので、異型度によりPanIN-1、-2、-3 に分類される。PanIN は、はじめ、細径分枝膵管における上皮変化が適応の対象とされたが、その後(2004)、主膵管・太い分枝膵管にも適応されることになった(Am J Surg Pathol 28:977-987、 2004)。異型上皮および上皮内癌 atypical epithelium (AE) and carcinoma in situ(CIS)は膵管内に限局し、原則として膵管拡張が無いかあっても軽度の膵管上皮系病変である。膵管拡張の程度は、一般には径数mm (5mm)までとするが、病変部近位の狭窄により、病変部の一部が拡張した膵管に存在する場合もある。従って、本病変の診断は、異型病変の拡がりの状態(樹枝状進展など)から総合判断する必要がある。なお、組織学的には、上皮は低乳頭増殖low-papillary growth あるいは完全平坦増殖completely flat growth を示し、これらの変化は、とくに上皮内癌の診断には必須である。従って、上記のIPMN との鑑別は、第一に膵管拡張の程度・形状により、第二に組織学的増殖形態により行う。異型の程度により異型上皮および上皮内癌に分類する。

 


14. 膵腫瘍について正しいものはどれか。
A. 粘液性嚢胞腺腫は漿液性嚢胞腺腫より癌化のリスクが高い。
B. 浸潤性膵管癌は充実性髄様の増殖を示す。
C. 粘液性嚢胞腫瘍は膵頭部に多く発生する。
D. 膵管内乳頭粘液性腫瘍は浸潤性膵管癌と比較し予後が良い。
E. インスリノーマの大半は良性である。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:3

解説:
A. 正しい。

漿液性嚢胞腫瘍は粘液性嚢胞腫瘍とともに代表的な嚢胞性腫瘍であるが、小型で多房性の嚢胞性膵病変を形成し、嚢胞内容は漿液である点で区別される。無症候性に経過し、偶発的に発見されることが多い。良性経過をとる漿液性嚢胞腺腫serous cyst adenomaと、悪性経過をとる漿液性嚢胞腺癌が存在するとされるが、現実的にはほとんどすべてが良性経過を示す。

B. 消去法で誤り。
C. 誤り。

粘液性嚢胞腫瘍mucinous cystic tumorは中年女性の膵尾部に好発し、男性例はきわめて稀である。膵内および膵外性に発育し比較的厚い線維性結合織で囲まれた多房性・大嚢胞性病変を形成し、内容物として粘稠性のある粘液(ムコ多糖類)を満たす。厚い線維状被膜で形成される嚢胞壁内に間葉細胞が密に配列し、卵巣間質に類似した所見が認められるのが、本腫瘍の組織学的特徴とされている。

D. 正しい。

膵管内腫瘍intraductal tumor of pancreasは主膵管や大型の分枝膵管上皮から発生し、主に膵管内に発育する上皮性腫瘍で、病理総論的には腺腫と腺癌が含まれる。組織学的に乳頭状を呈するものは粘液産生が盛んであるので膵管内乳頭粘液性腫瘍と、また管状構造を呈するものを膵管内管状腫瘍に分類する。組織学的には病変は膵管内に限局し、また同一腫瘍性病変内に過形成、腺腫や腺癌病変が連続的に認められる。さらに微小な浸潤像を伴う症例も少なくないが、その予後は総じて期待できる。膵管外への浸潤量が膵管内腫瘍由来の浸潤癌と診断され、その予後は浸潤性膵管癌と同様となり、期待できない。

E. 正しい。

膵内分泌腫瘍の症候性腫瘍のうち、インスリノーマは80~90%が良性といわれているが、他の症候性腫瘍は半数以上が悪性といわれている。また、無症候性腫瘍に関しては良性、悪性の比率が同程度といわれている。

 


15. 膵管内乳頭粘液性腫瘍について正しいものはどれか。
A. 日本においては超音波内視鏡検査ガイド下穿刺吸引法の対象とされている。
B. 膵管内進展や膵管との交通を認めないことが多い。
C. 主膵管型は分枝膵管型より悪性度が高い。
D. 腸型は胃型より悪性度が高い。
E. 同一腫瘍内に良性から悪性の移行像がみられる。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:5

解説:
A. 誤り。

禁忌としては、EUSにて病変が明瞭に描出できない場合、穿刺経路上に癌や血管が介在する場合、EUS-FNAにより強く合併症の発生が危惧される場合、などである。癌の播種の可能性のある病変とは膵体尾部に位置する膵管内乳頭腫瘍や粘液性嚢胞腫瘍であり、嚢胞内の圧の関係と経胃的穿刺によりseedingのリスクが高いと考えられているが、欧米では嚢胞性病変にはむしろ積極的に実施されており、播種の報告はほとんどない。

B. 誤り。粘液性嚢胞腫瘍は膵管との交通がないことが多いそうです。

粘液性嚢胞腫瘍mucinous cystic tumorは中高年の女性の膵尾部に好発する点を除くと、予後が比較的良好であるなどの臨床的類似性、大型の膵管上皮に由来すること、同一病変内に腺腫部分と腺癌部分が混在するなど、病理形態学的に膵管内乳頭腫瘍と重なり合うところが少なくない。膵管との交通がないことが両者の鑑別点とされているが、限局性の膵管内乳頭腫瘍との鑑別が難しい症例も存在する。

C. 正しい。

IPMNは主膵管の拡張を主体とする主膵管型、膵管分枝の拡張を主体とする。分枝型とそれぞれを併せ持つ混合型に亜分類される。悪性度を主膵管型と分枝型で比較すると、主膵管型に悪性のものが多く約80%は悪性である。一方、分枝型の悪性の頻度は約20%である。

D. 正しい。

IPMN では、細胞の異型度に加えて4つの亜型(胃型 gastric type、腸型 intestinal type、膵胆道型 pancreatobiliary type、好酸性細胞型 oncocytic type)を理解しておくことが大切である。4つの亜型のうち、基本となるのは胃型と腸型の2つで、腸型は胃型よりも生物学的なmalignant potential が高く、その意味からも腸型を示唆する細胞の同定が重要といえる。

E. 正しい。

組織学的には病変は膵管内に限局し、また同一腫瘍性病変内に過形成、腺腫や腺癌病変が連続的に認められる。

 


16. 唾液腺腫瘍についてギムザ染色で異染性を示すものはどれか。
A. 基底細胞腺腫
B. 多形腺腫
C. 粘表皮癌
D. 腺房細胞癌
E. 唾液腺導管癌

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:1

解説:
A. 正しい。

メタクロマジーは細胞や組織を染色したとき、染色された組織や細胞が、色素の本来の色とは異なる色に染まる現象をいう。細胞診検査ではパパニコロウ染色の他にギムザ染色が併用され、ときには細胞診断に有用な情報が得られることも多い。メタクロマジーは粘液様物質(間質性粘液、基底膜様物質など)の鑑別に役立つ。間質に基底膜成分が形成される腫瘍は唾液腺の多形腺腫、筋上皮腫、腺様嚢胞癌などが代表的で、まれに基底細胞腺腫や基底細胞癌、上皮筋上皮癌などで認められる。

B. 正しい。Aの解説で多形腺腫、筋上皮腫、腺様嚢胞癌、基底細胞腺腫や基底細胞癌、上皮筋上皮癌でメタクロマジーを認めると書かれています。おそらく唾液腺腫瘍のnon-luminal cellを含むタイプにはメタクロマジーがみられると考えてよさそうです。

正常の唾液腺を構成する上皮細胞には、大きく分けて管腔を形成する細胞(luminal cell)と管腔を形成しない細胞 (non-luminal cell)があり、前者には腺房細胞と導管上皮細胞、後者には筋上皮細胞と基底細胞がある。唾液腺の上皮性腫瘍はこの2種類の細胞のどちらか一つからなるものと両方が混在するものとに3つに分けることができる。
Type A(管腔細胞型)
・ワルチン腫瘍
・好酸性細胞腫(オンコサイトーマ)
・腺房細胞癌
・粘表皮癌
・唾液腺導管癌
Type B(管腔細胞型+非管腔細胞型)
・多形腺腫  
・基底細胞腺腫
・上皮筋上皮癌
・基底細胞腺癌
・腺様嚢胞癌
Type C(非管腔細胞型)
・筋上皮腫
・悪性筋上皮腫

C. 誤り。
D. 誤り。
E. 誤り。
 


17. 胆汁材料について正しいものはどれか。
A. 経皮経肝ドレナージ(PTCD)は、逆行性胆管膵管造影(ERCP)に比べ新鮮な細胞が多い。
B. 染色性が増強した豊富な細胞質を呈する肥大細胞は反応性良性変化に多い。
C. 背景の豊富な粘液成分は粘液産生腫瘍が推測される。
D. 大型の核小体は悪性細胞でみられる。
E. 扁平上皮癌細胞がみられた場合は転移性癌が推測される。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:3

解説:
A. 誤りだと思います。経皮経肝胆道ドレナージは閉塞性黄疸で肝内に溜まった胆汁を抜くために行われるものなので、それから得られた細胞は胆汁中に浮遊している時間が長く、かなり変性を伴っていると考えられます。
B. 正しい。
C. 正しい。
D. 誤り。
E. 誤り。

胆嚢と肝外胆管(胆道)の原発悪性腫瘍は腺癌adenocarcinomaの割合が高く、管状腺癌と乳頭状腺癌が多い。腺扁平上皮癌adenosquamous carcinomaや扁平上皮癌squamous cell carcinomaの発生が約10%と他の消化管に比べて比較的多い。

 


18. 食道について誤っているものはどれか。
A. 固有食道腺は粘膜内にみられる。
B. 逆流性食道炎はCandida感染と関係が深い。
C. バレット食道では粘膜筋板の二重構造がみられる。
D. 食道潰瘍では核小体の著明な深層細胞が出現する。
E. 喫煙は食道癌の危険因子である。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:1

解説:
A. 誤り。

粘膜下の管状房状腺submucosal tubuloacinar gland(固有食道腺)は、粘膜筋下直下の粘膜下組織でみられ、単一管につながる小葉からできている。腺房は、2種類の分泌細胞、すなわち粘液腺細胞と漿液腺細胞からなり、後者の分泌顆粒にはリゾチームが含まれる。

B. 誤り。

逆流性食道炎は噴門括約筋の機能異常、食道裂孔ヘルニア、胃切除などにより胆汁を混じた胃液が食道内に逆流することに起因する。急性期にはびらんや潰瘍が形成され、炎症性細胞が浸潤している。慢性期にはリンパ球や形質細胞浸潤、上皮欠損、結合織の増生があり、食道壁の線維化による狭窄を来たす。

C. 正しい。

バレット食道では円柱上皮粘膜領域内の食道固有腺、円柱上皮内の扁平上皮島、粘膜筋板の二重構造、のいずれかの所見が認められる。

D. 正しい。

細胞診で悪性との鑑別を要する疾患は、食道潰瘍である。ときに、核腫大、核濃染、核小体腫大した深層型扁平上皮細胞(再生上皮様)が出現し、癌との鑑別を要する。両者の鑑別点として、核形不整がみられない、クロマチンは均等分布を示し、著しい増量がみられないことがあげられる。

E. 正しい。

食道癌esophageal cancerの高死亡率地域とされる中国北部、カスピ海沿岸、南アフリカ南東部における食道癌発生の危険因子は、穀物主体の貧しい食生活と慢性的低栄養状態と果物や野菜の摂取量の不足が明らかとなっており、男女差はない。他方、中等度の死亡率を示すのはフランスなどの先進国で、男性が圧倒的に多い。飲酒と喫煙が危険因子であり、危険率は喫煙者(タバコ1日20本以上)で5倍、飲酒者(日本酒3合以上)では18倍、喫煙+飲酒では44.4倍とされている。なお、最近ではヒト乳頭腫ウイルスpapilloma virusとの関連が指摘されている。わが国は先進国グループに属し、年間約1万人が死亡し、全癌死の約3.5%を占めている。男女比は6:1で、60~70代にピークがある。食道癌は予後不良な難治癌の1つであり、進行食道癌の5年生生存率は20~30%程度である。食道には漿膜がなく気管や縦隔に浸潤しやすく、多発症例なども治療を困難にしている要因である。

 


19. 早期肝細胞癌について正しいものを1つ選びなさい。
l. 画像上は異型結節と鑑別が容易である。
2. 中分化の癌成分を含むことはない。
3. 境界明瞭な2cm以下の結節も含まれる。
4. 腫瘍内に門脈域の成分を有する。
5. 色調は癌周囲の組織と明瞭に異なる。


正解:4

解説:
1. 誤り。
2. 誤り。

早期肝細胞癌は比較的扱いやすい高分化腫瘍から、悪性度を増すごとに中分化、低分化と変化していく。高分化の腫瘍の内部に中分化腫瘍が発現し、悪性度の高いものから成長していくため、さらに内部に低分化した腫瘍が発現する。この段階を経ることによってモザイク構造ができあがると考えられる。

3. 誤り。

早期肝細胞癌とは、直径 2cm以下の高分化型肝細胞癌を指す。画像上はあまり特徴のない腫瘤を呈し、動脈相での濃染は見られず、通常型の肝細胞癌は比較的境界が明瞭であるのに対し、境界が不明瞭という特徴をもつ。境界が不明瞭になる理由の一つに、腫瘍と周辺正常部とでは基本的に構造が変わらず、細胞のみが変化している、いわゆる置換型発育をしていることが挙げられる。

4. 正しい。

早期肝細胞癌は初期の高分化肝細胞癌hypovascular tumorで、古典的肝癌とは異なって、動脈と門脈の両者から血液の供給を受け、腫瘍径の増大とともに古典的肝癌の血管像を呈する。血管構築の特徴は、結節内に門脈域が残存すること、動脈性腫瘍血管が未発達であることなどである。

5. 誤り。
 


20. 胃癌の術中腹腔洗浄細胞診について誤っているものを1つ選びなさい。
1. 開腹直後に生食10~20を腹腔内に注入する。
2. 細胞が剥離しやすいためコーティングスライドガラスを用いる。
3. 通常の腹水細胞診と比較して核内が繊細にみえる。
4. 粘液染色の併用が望ましい。
5. 陽性症例は陰性症例よりも予後不良である。


正解:1

解説:
1. 誤り。

開腹直後に生食100~200mlを腹腔内に注入し、ダクラス窩より洗浄液を採取する。

2. 正しい。

細胞剥離予防法としてすりガラスやシランコートされたスライドグラスを使用する。

3. 正しい。

腹腔洗浄細胞診では腹水細胞診と異なり、細胞がやや膨化し核所見は繊細にみえる。

4. 正しい。

染色方法はPap染色、May-Giemsa染色を基本とし、粘液染色の併用が望ましい。

5. 正しい。

胃癌における術中腹腔洗浄細胞診陽性症例(CY1)は陰性症例(CY0)より予後不良である。