雑記

時間があるときに細胞検査士の筆記試験の過去問を解いています

平成26年度 胸腹水・その他 筆記試験 過去問

1. 浸潤性乳管癌の治療について、正しいものはどれですか。
A. HER 2 遺伝子検査の結果、Her 2 / CEP 17 シグナル比が1.0であった場合、ハーセプチンの投与対象となる。
B. HER2免疫染色の結果がスコア1 +の場合、ハーセプチンの投与対象となる。
C. 手術術式は拡大乳房切断術が最も多い。
D. HER2スコア0、ER / PgR免疫染色の結果がいずれも陰性の場合、化学療法が第一選択となる。
E. 術中迅速でセンチネルリンパ節転移がある場合、腋窩リンパ節郭清を行う。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:5

解説:

A. 誤り。

FISHの判定方法は、あらかじめHE標本を参照し、切片上の壊死のない癌細胞の多い部分を選んで計測する。判定は細胞同定能力を有する観察者が行う。可能であれば複数の観察者で行い、不一致の場合はすみやかに再計測 することが望ましい。また、組織形態をベースとした検査であるので、判定は日本病理学会認定病理専門医とのダブルチェックを行うことが推奨される。 20個の癌細胞でのHER2(オレンジ蛍光シグナル)、CEP17(グリーン蛍光シグナル)各々の蛍光シグナル数を蛍光顕微鏡で計数し、癌細胞20個のCEP17シグナル総数に対するHER2シグナル総数の比率を算出する。HER2/CEP17比が2.2 を超えるものを増幅陽性(FISH法陽性)、1.8未満を増幅陰性(FISH法陰性)、1.8 ~2.2をequivocal と定義する。Equivocalと判定された場合は、FISH法 で細胞数を増やしてカウント(もしくは再検査)を行い、同様に判定を行う。再度 equivocalと判定された場合は、従来どおり2.0以上をFISH法陽性、2.0未満を FISH法陰性とする。浸潤部分で判定し、非浸潤性の部分では計測しない。核が重なった部分での計測は避ける。シグナルが近接している場合や、シグナルの大小などの計測に関する問題については添付文書を参照する。

B. 誤り。

IHC法の診断基準を以下に示す。

判定 スコア 陽性パターン
陽性 3+ 強い完全な細胞膜の陽性染色がある癌細胞>30%
equivocal 2+ ①弱~中程度の完全な細胞膜の陽性染色がある癌細胞≧10%
②強い完全な細胞膜の陽性染色がある癌細胞≧10%~≦30%
陰性 1+ ほとんど識別できないほどかすかな細胞膜の染色がある癌細胞≧10%
癌細胞は細胞膜のみが部分的に染色されている
0 細胞膜に陽性染色なし、あるいは細胞膜の陽性染色がある癌細胞<10%(細胞膜に限局する陽性染色は判定対象外)

C. 誤り。この術式は現在はあまり行われていないようです。
D. 正しい。

Triple Negative Breast Cancer(TNBC)とは、ER、PgR、およびHER2タンパクのいずれもが発現していない乳癌と定義される。TNBCは、乳癌手術症例の約10% を占める。この比率は、米国黒人ではやや高く15%程度であり、若干人種差があるようである。ホルモン療法やトラスツズマブの投与では効果が現れないので、薬物療法は細胞毒性抗癌剤を選択することになる。

E. 正しい。センチネルリンパ節に転移があったとき腋下リンパ節廓清の必要性について議論されているようですが、今のところ推奨されているみたいです。

センチネルリンパ節(SLN)に転移を認めなければ腋窩リンパ節郭清(ALND)は省略可能である。SLN転移陽性ならばALNDが勧められているが、SLN転移陽性乳癌の約半数は非SLN転移を有していない。ACOSOG Z0011の結果が報告されて以来、SLNに転移を認めた場合のALNDの必要性が議論の対象となっている。


 
2. 正しいものはどれですか。
A. バーキットリンパ腫はCD10陽性である。
B. 形質細胞骨髄腫はCD5陽性である。
C. 古典的ホジキンリンパ腫のホジキン細胞はCD20陽性である。
D. 濾胞性リンパ腫では11番染色体と14番染色体の転座が認められるものが多い。
E. 血管免疫芽球性T細胞リンパ腫では淡明細胞が出現する。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:

A. 正しい。

バーキットリンパ腫はB細胞性腫瘍で、中等大の円形細胞のびまん性増殖を示し、混在するマクロファージによりしばしばstarry sky(星空)像を呈する。アフリカ大陸の小児悪性リンパ腫の大多数を占めるアフリカ型では、先行するエプステインバー(Epstain Barr:EB)ウイルス感染ののち、下顎骨あるいは腹部腫瘤を認める。アフリカ以外でみられる非アフリカ型は、EBウイルスとの関連性はそれほど高くない。増殖期にある細胞が多く、免疫染色でKi-67(MIB-1)陽性細胞はほぼ100%に近い。腫瘍細胞はCD20陽性、CD79a陽性、CD10陽性、CD5陰性、Bcl-2陰性である。

B. 誤り。
C. 誤り。

結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫における特異細胞は通常CD20、CD45、epithelial membranous antigen(EMA)を発現するが、CD15、CD30は発現しない。古典型ホジキンリンパ腫の特異細胞は通常、CD15、CD30を発現し、ときにCD20の発現を伴う。

D. 誤り。

濾胞性リンパ腫follicular lymphomaの腫瘍細胞はリンパ濾胞胚中心細胞由来の腫瘍とみなされている。腫瘍細胞は濾胞性結節を形成しながら増殖し、腫瘍細胞の大きさと割合によってgrade 1~3に分けられる。濾胞性リンパ腫はしばしばt(14;18)(q32;q21)転座の染色体異常に基づくbcl-2タンパクの過剰発現がみられる。このbcl-2タンパクはアポトーシスを制御する機能を有していることから、濾胞性リンパ腫の発生に関与していると考えられている。免疫表現型ではB細胞性マーカーのほかにCD10陽性を示すことが多い。しばしば末梢血液や骨髄中に腫瘍細胞が出現する。

E. 正しい。

血管免疫芽球性T細胞リンパ腫angioimmunoblastic T-cell lymphoma(AITL)の病理組織学的特徴は、リンパ節は既存の構造を失い、好中球、好酸球、組織球、免疫芽球、形質細胞など多彩な炎症細胞の増生からなる。また、腫大核をもつ内皮細胞からなる高内皮細静脈(high endothelial venule;HEV)の樹枝状発達が目立つ。そのなかに少数の免疫芽球や、明るい細胞質を有する腫瘍性T細胞(淡明細胞、pale cellないしはclear cell)の集簇を認める。


 
3. 膀胱内薬物注入療法(BCG 療法)による腫瘍細胞の変化(変性)はどれですか。
A. 多核化
B. 核の濃縮
C. 細胞質の変性空
D. 細胞質の角化
E. 核小体の明瞭化

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:3

解説:

A. 誤り。

近年よく用いられる薬物注入療法は、尿路上皮内癌に対するBCG療法である。このBCG療法により、上皮内癌細胞の核は濃縮し、細胞質は変性空胞を有するようになり、癌細胞であったらしいということはうかがえるが、断定できないようになる。一方、しばしば淡い染色を示す棍棒状核と線維状の細胞質を有する類上皮細胞が小集塊として認められる。後者は類上皮細胞という良性細胞であり、BCG治療を示す形態的所見である。前者は異型細胞であるが、癌細胞と診断できないことが多く、このような場合は無理に変性癌細胞と診断せず、境界領域群(ClassⅢa~Ⅲb)として、観察継続の指標の一つとした方がいいかと思われる。

B. 正しい。
C. 正しい。
D. 誤り。
E. 誤り。


 
4. 誤っているものはどれですか。
A. 骨肉腫の好発年齢は10 歳代である。
B. 骨肉腫の好発部位は骨幹端である。
C. 軟骨肉腫では類円形の細胞が主体である。
D. 軟骨肉腫の好発年齢は10 歳代である。
E. 滑膜肉腫の組織像は単相性である。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:5

解説:

A. 正しい。

骨肉腫osteosarcomaは10代の大腿骨、脛骨、上腕骨に好発する。老人の骨肉腫はまれである。血行性に肺転移を起こしやすい。本腫瘍は骨原発の腫瘍で、類骨osteoid形成が診断の決め手となる。

B. 正しい。
C. 正しい。
D. 誤り。

軟骨肉腫chondrosarcomaは軟骨形成性の悪性腫瘍で、中高齢者の骨盤、大腿骨、上腕骨、肩甲骨に好発する。骨肉腫と比較して発育は緩徐で、局所再発は多いが、遠隔転移は稀である。X線所見では骨破壊性に軟骨基質が点状石灰化像および軟骨辺縁の骨化によるO型リング状陰影がみられる。

E. 誤り。

滑膜肉腫synovial sarcomaは、線維肉腫様の紡錘形腫瘍細胞が主体をなす単相型と、これに上皮様配列を示す類円形細胞の混在した二相型の2型に分類される。二相型を示す定型例ではヒアルロン酸が証明される。組織学的特徴は、短紡錘形~紡錘形細胞束が小さな結び目のような配列knotをとることである。細胞像としては紡錘形細胞が束状に縦走ないし不規則に配列し、集塊状および孤立散在性に出現する(単相型)。短紡錘形細胞と上皮様配列の円形細胞が混在して出現する二相型がある。細胞診断上、本腫瘍が推定可能なものは二相型の滑膜肉腫である。


 
5. 誤っているものはどれですか。
A. Pilocytic astrocytomaはRosenthal fiberの出現が特徴である。
B. Oligodendroglioma はchickin wire様の血管網が特徴である。
C. Astrocytomaは核周囲の明庭が特徴である.
D. Meningiomaには遺伝子異常はみられない.
E. AIDS 患者の中枢神経原発のリンパ腫はEpstein-Barr ウイルスによって誘発される。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:4

解説:今後、脳腫瘍は英語表記で出題される可能性が無きにしもあらず……。

A. 正しい。

限局型グリオーマの代表格として毛様細胞性星細胞腫pilocytic astrocytomaがあげられる。これは若年者の小脳、脳幹、視神経、視床下部に好発し、境界明瞭な嚢胞性腫瘤を形成する。増殖は緩徐で、WHO gradeⅠである。細胞学的には双極性の細長く伸びた繊細な突起が特徴で、核は小型で比較的均一であり、背景にRosenthal fiberやeosinophilic granular body等の変性構造物を伴う。

B. 正しい。chicken wireで検索すれば画像が出てきますが、蜂の巣状の金網のことです。

乏突起膠腫oligodendrogliomaは突起の乏しい小型の細胞が増殖した腫瘍である。成人の大脳半球、特に前頭葉が好発部位で、組織学的には円形の核と明るい細胞質をもつ類円形の腫瘍細胞が比較的密に増殖している。核周囲にハローがあるようにみえる像は乏突起膠腫に特徴的な所見であり、蜂の巣構造honey-comb structureあるいは目玉焼き像fried-egg appearanceと呼ばれている。免疫組織化学的に腫瘍細胞はOlig2が陽性である。腫瘍細胞に異型性が現れたものが退形成性乏突起膠腫anaplastic oligodendrogliomaである。

C. 誤り。
D. 誤り。

2013年に。髄膜腫meningiomaのプロファイル解析が行われ、従来知られてきたNF2変異のある髄膜腫は大脳・小脳半球に生じGradeⅡであり、NF2に変異のないnon-NF2型の髄膜腫は、GradeⅠの腫瘍として頭蓋底に生じると報告された。non-NF2型ではユビキチンリガーゼであるTRIM7(tripartite motif containing 7)の変異が生じており、加えてKLF7(Krüppel-like factor4)の変異(K409Q)型またはAKTの変異(E17K)型に分類されるという。

E. 正しい。

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)や他の免疫不全に関連して発症する脳のリンパ腫は、リンパ腫細胞のほとんどがEBウイルスに感染し、そのがんの発生に関与している。免疫不全と関連のない脳のリンパ腫の場合は、メトトレキサート大量療法が治療の中心になる。しかし、免疫不全の患者では、抗がん剤を使うことで全身の抵抗力がさらに低下することが予想されるので、副腎皮質ステロイドホルモンと全脳照射による放射線治療が中心になる。


 
6. 体腔液細胞診で誤っているものはどれですか。
A. 遺伝子検査の対象となる。
B. 癌の早期発見に有用である。
C. 濾出液には腫瘍細胞が多く含まれる。
D. 患者の体位変換後に採取するとよい。
E. 腹腔洗浄細胞診は胃癌の進行度分類に関与する。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:3

解説:

A. 正しい。
B. 誤り。
C. 誤り。

滲出液と濾出液の特徴を以下に挙げる。

滲出液 濾出液
外観 混濁傾向 透明~淡黄色
比重 1.018以上 1.015以下
蛋白量 4%(g/dl)以上 3%(g/dl)以下
Rivalta反応 陽性 陰性
細胞 マクロファージ、リンパ球、中皮細胞 マクロファージ、中皮細胞を少数

癌の場合、最初は濾出液が貯留し、後に滲出液となることが多い。癌細胞の出現は滲出液に多い。

D. 正しい。

胸水、腹水は直接穿刺あるいはドレナージによって採取される。穿刺は18ゲージの穿刺針で行われるが、長期間の仰臥位の患者では胸腹水中の癌細胞の多くが背側に沈降しているため、穿刺前に可能な限り患者の体位変換を行う必要がある。最終検体量が少ないと十分な細胞成分が得られないため、通常は100~200ml程度必要である。

E. 正しい。

癌の手術では、開胸時、開腹時に腹腔を生理的食塩水で洗浄し、その洗浄液を回収したものが細胞診の対象となる。卵巣癌、胃癌では進行期を決めるために必須となっている。また、洗浄液中に腺癌細胞が認められた場合には、術式の変更が行われる場合がある。


 
7. 誤っているものはどれですか。
A. 乳管癌と小葉癌の鑑別にCD10染色が有用である。
B. 非浸潤性乳管癌と浸潤性乳管癌の鑑別にp63染色が有用である。
C. 筋上皮細胞は乳管内乳頭腫と非浸潤性乳管癌の鑑別に有用ではない。
D. 石灰化は乳腺の良性病変でも認められることがある。
E. 乳腺線維腺腫は閉経後の女性に好発する。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:

A. 誤り。

E-cadherinはカルシウム依存性の上皮細胞の接着分子であり、様々な上皮の構築維持に関与している。乳腺における乳管癌と小葉癌との鑑別に用いることができる。すなわち、乳管癌は一部の症例を除き細胞膜に陽性所見を示すが、小葉癌では常に陰性である。

B. 正しい。

p63は基底細胞、筋上皮のマーカーである。乳腺では病巣が筋上皮に囲まれているかにより、浸潤癌かそうでないかの診断を行う。以前より用いられてきたαSMAは間質の筋線維芽細胞に陽性となる欠点があり、より特異性の高いp63が診断に応用されるようになった。

C. 正しい。
D. 正しい。

石灰化物質はヘマトキシリンに染まる結晶様物質である。同心円状に層状の構造がみられる場合に砂粒小体とよぶ。器質的疾患を疑わせるものではあるが、有無や形態から病変の良悪性を区別できない。

E. 誤り。

線維腺腫は良性腫瘍中では最も頻度が高く、好発年齢は20~45歳であり、乳腺外側上部4分域に好発する。好発部位は乳癌と同様である。臨床的には乳腺内に可動性球形腫瘤として触知される。肉眼的には境界明瞭で、組織学的には二相構造を保つ上皮成分(乳管)と、線維成分の増生とからなる。


 
8. 誤っているものはどれですか。
A. 日本人の悪性リンパ腫の中で最も多い組織型は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。
B. バーキットリンパ腫の腫瘍細胞は多核のものが多い。
C. ホジキンリンパ腫はリンパ節外に発生することが多い。
D. 組織球性壊死性リンパ節炎(菊池・藤本病)では大型の異型を伴うリンパ球が見られる。
E. 伝染性単核球症はEpstein-Barr ウイルス感染症である。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:3

解説:

A. 正しい。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫diffuse large B-cell lymphomaは非ホジキンリンパ腫の中では最も頻度の高い組織型で、成人の非ホジキンリンパ腫の40~50%を占める。腫瘍細胞は小型リンパ球の2倍以上の大きさの核、あるいは組織球の核と同等大ないしそれ以上の核を有する。中等度悪性リンパ腫で、予後は比較的不良である。びまん性大細胞型Bリンパ腫には、腫瘍細胞が血管内に増殖する血管内大細胞型B細胞リンパ腫intravascular large B-cell lymphomaがある。

B. 誤り。

バーキットリンパ腫Burkitt lymphomaの腫瘍細胞は単調かつびまん性に増殖し、多数の核分裂像を伴う。核片を貪食したマクロファージが多数散在性にみられ、これはstarry sky(星空)像と呼ばれる。腫瘍細胞はほぼ均一な中型細胞からなり、細胞質は狭く、好塩基性を呈する核は類円形で数個の好塩基性の小さな核小体を有する。スタンプ標本では腫瘍細胞の細胞質内に脂肪空胞がみられる。

C. 誤り。

ホジキンリンパ腫Hodgkin lymphomaは小型リンパ球・好酸球などの非腫瘍性免疫細胞を背景に、単核ないしは多核の腫瘍性巨細胞を認めるリンパ腫である。以前はリンパ球由来の腫瘍かどうか未確定であったため、ホジキン病Hodgkin diseaseと呼称されてきたが、近年の分子生物学的な解析により巨細胞がB細胞由来であることが示され、ホジキンリンパ腫という名称が与えられた。リンパ節もしくは縦隔に発生する。節外臓器から発生することはほとんどない。

D. 正しい。

亜急性壊死性リンパ節炎は組織球性壊死性リンパ節炎histiocytic necrotizing lymphadenitis(別名:菊池・藤本病)と呼ばれ、わが国に比較的多くみられるリンパ節炎で、10~30代までの比較的若い人に好発し、やや女性に多い。本症は感冒様症状で始まり、発熱後比較的急速にリンパ節の腫大をみる。リンパ節の腫大は一般に限局性で頸部にみられることが多い。白血球減少がみられることも本症の特徴の1つで、4000/mm3以下を示すことが多い。その他LDHの上昇をみる。病変部では大型リンパ球様細胞、形質細胞様単球および組織球が増殖し、アポトーシスとみなされる細胞壊死核崩壊物がみられる。組織球の一部は、核崩壊物や赤血球を貪食している。本病変では好中球の浸潤がみられないことが組織学的特徴の1つである。大型リンパ球様細胞の増殖が著しい場合は悪性リンパ腫との鑑別が必要である。

E. 正しい。

伝染性単核球症infectious mononucleosisはEpstein-Barr virus(EBV)感染による急性疾患で、15~25歳の若年者に好発する。発熱とリンパ節腫脹、脾腫を主症状とし、末梢血中に異型リンパ球の出現をみる。異型リンパ球の大部分は細胞障害性T細胞cytotoxic T cellである。


 
9. 誤っているものはどれですか。
A. 急性前骨髄性白血病は播種性血管内凝固を合併しにくい。
B. アウエル小体が複数の束になっているものをファゴット細胞という。
C. 急性前骨髄性白血病は融合遺伝子PML / RARαが確認される。
D. 慢性骨髄性白血病の臨床像は慢性期、移行期、急性転化の3病期に分けられる。
E. 慢性骨髄性白血病はETV6-NTRK3融合遺伝子と関連している。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:

A. 誤り。

急性前骨髄球性白血病acute promyelocytic leukemia(APL)は、白血病細胞のほとんどが前骨髄球様で、アウエル小体が複数あってfagot cellとなっているものもある。核は大きな湾入がある。10%程度は光顕でアズール顆粒が明瞭には認められず、異型(M3V)とされる。播種性血管内凝固(DIC)を発症しやすい。

B. 正しい。
C. 正しい。

t(15;17)(q22q;12);PML-RARAを伴う急性骨髄急性白血病はFAB分類の急性前骨髄球性白血病acute promyelocytic leukemia(APL)の像を示す。15番染色体上のPML遺伝子と17番染色体上のレチノイン酸受容体(RARA)遺伝子の遺伝子転座を示す白血病である。中年に好発し、全AMLの5~10%を占める。

D. 正しい。

慢性骨髄性白血病chronic myelogenous leukemia(CML)は、慢性期、移行期、急性転化期の3期がある。慢性期には著明な白血球増多、特に成熟しつつある好中球が主体であるが好塩基球、好酸球も数多くみられる。血小板も増加して、100万/μlを超えることもある。骨髄材料では、著明に細胞密度が上昇し、骨髄全体が骨髄球やその前駆細胞により占められている。巨核球は集簇し、異常な形態を示す細胞がみられる。移行期には末梢血や骨髄に10~20%の芽球がみられる。急性転化期は、最終段階であり、20%を超える芽球が骨髄に出現し、皮膚、リンパ節、脾臓、骨、中枢神経系などの髄外臓器における芽球の増生、骨髄生検では芽球の集簇像がみられる。

E. 消去法で誤り。


 
10. T 細胞系造血器腫瘍はどれですか。
1. 濾胞性リンパ腫
2. マントル細胞リンパ腫
3. 有毛細胞白血病
4. 菌状息肉症
5. バーキットリンパ腫


正解:4

解説:

1. 正しい。

濾胞性リンパ腫follicular lymphomaの腫瘍細胞はリンパ濾胞胚中心細胞由来の腫瘍とみなされている。腫瘍細胞は濾胞性結節を形成しながら増殖し、腫瘍細胞の大きさと割合によってgrade 1~3に分けられる。濾胞性リンパ腫はしばしばt(14;18)(q32;q21)転座の染色体異常に基づくbcl-2タンパクの過剰発現がみられる。このbcl-2タンパクはアポトーシスを制御する機能を有していることから、濾胞性リンパ腫の発生に関与していると考えられている。免疫表現型ではB細胞性マーカーのほかにCD10陽性を示すことが多い。しばしば末梢血液や骨髄中に腫瘍細胞が出現する。

2. 正しい。

マントル細胞リンパ腫mantle cell lymphomaはリンパ濾胞のマントル層B細胞由来の腫瘍とみなされ、中型の腫瘍細胞がびまん性あるいは結節性に増殖する。t(11;14)(q13;q32)転座の染色体異常に基づくcyclin D1タンパクの過剰発現がみられる。cyclin D1は細胞周期にかかわるタンパクで、その過剰発現はマントル細胞リンパ腫の発生に関与している。免疫表現型の特徴はCD5およびcyclin D1陽性を示すことである。しばしば白血化や骨髄浸潤を来たし、治療に抵抗性で予後は比較的不良である。中等度悪性リンパ腫である。

3. 正しい。

ヘアリー細胞白血病hairy cell leukemiaは、小型~中型のB細胞のクローン性増殖であり、その胞体は広く、髪の毛のような細胞突起を有している。この病気は、骨髄、脾臓、肝臓を主として侵す。中年から高齢者に多く男性に多い。骨髄では間質に入り込むように浸潤し、正常造血を障害しにくい。白血病細胞のマーカーでは、B細胞性マーカーが陽性で、CD5、CD10、CD23は陰性である。CD11c、CD25、FMC7、CD103が陽性である。細胞化学や免疫組織化学では酒石酸抵抗性の酸性ホスファターゼがマーカーとなる。

4. 誤り。

菌状息肉症mycosis fungoidesは長い経過を示す皮膚原発のhelper/inducer T細胞の性質をもつリンパ腫で、紅斑期、扁平浸潤器、腫瘍期へと進行する。組織像としては表皮内に異型リンパ球の集合巣であるポートリエ微小膿瘍Pautrier’s microabscessが認められる。

5. 正しい。

バーキットリンパ腫はB細胞性腫瘍で、中等大の円形細胞のびまん性増殖を示し、混在するマクロファージによりしばしばstarry sky(星空)像を呈する。アフリカ大陸の小児悪性リンパ腫の大多数を占めるアフリカ型では、先行するエプステインバー(Epstain Barr:EB)ウイルス感染ののち、下顎骨あるいは腹部腫瘤を認める。アフリカ以外でみられる非アフリカ型は、EBウイルスとの関連性はそれほど高くない。増殖期にある細胞が多く、免疫染色でKi-67(MIB-1)陽性細胞はほぼ100%に近い。腫瘍細胞はCD20陽性、CD79a陽性、CD10陽性、CD5陰性、Bcl-2陰性である。


 
11. 正しいものはどれですか。
1. 相対的エストロゲン過剰が乳腺症の原因の1つである。
2. 線維腺腫は間質成分の増殖のみが見られる。
3. 乳頭腺管癌は細胞質内腺腔の形成が特徴的である。
4. 悪性葉状腫瘍では癌の部分と肉腫の部分とが存在する。
5. 男性乳癌は浸潤性小葉癌が多い。


正解:1

解説:

1. 正しい。

乳腺症mastopathyは成熟期女性の乳腺疾患として多い。相対的なエストロゲンの過剰を基盤とする。ホルモン平衡異常に起因すると考えられている。

2. 誤り。

線維腺腫fibroadenomaは乳管と結合織線維の両成分からなる良性腫瘍である。

3. 誤り。

細胞質内小腺腔intracytoplasmic lumina(ICL)は腫瘍細胞の細胞質にみられる3~12μm大の小さな腺腔様の構造である。良性病変でみられることは稀であり、浸潤性乳管癌のなかでも、硬癌(純型)や浸潤性小葉癌でみられることが多い。

4. 誤り。

葉状腫瘍phyllodes tumorは線維性結合織(間質)と乳管上皮の混合腫瘍であるが線維腺腫と比較し線維性結合織の増殖が著明である。画像でも組織像でも腫瘤が葉状を示す。間質の悪性度より良性、境界病変、悪性に分けるが上皮成分は悪性像を示さない。

5. 誤り。男性でも浸潤性乳管癌が最も多いです。


 
12. 正しいものはどれですか。
1. プロラクチン産生腫瘍は下垂体後葉に発生する。
2. 下垂体のFSH 産生腫瘍はクッシング症の原因である。
3. 頭蓋咽頭腫は下垂体前葉の好酸性細胞由来である。
4. 慢性甲状腺炎では背景に類上皮細胞が見られる。
5. 甲状腺髄様癌は間質にアミロイド沈着が見られる。


正解:5

解説:

1. 誤り。

下垂体前葉には
1)成長ホルモンgrowth hormone(GH)
2)プロラクチンprolactin(PRL)
3)副腎皮質刺激ホルモンadrenocorticotropic hormone(ACTH)
4)黄体形成ホルモンluteinizing hormone(LH
5)卵胞刺激ホルモンfollicle stimulating hormone(FSH)
6)甲状腺刺激ホルモンthyroid stimulating hormone(TSH)
の6種のホルモン産生細胞が知られている。
PRL産生腫瘍は最も多い下垂体腺腫であり、古典的には嫌色素性腺腫である。女性患者では、無月経、不妊、ガラクトレア(乳汁漏出)を来たしForbes-Albright症候群と呼ばれる。男性にも頻度は低いが発生し、女性化乳房、勃起障害などを呈する。腫瘍細胞は小型類円形の核をもち、淡明な細胞質をもつ。免疫組織学的にPRLがほぼ全細胞に陽性を示す。

2. 誤り。

ACTH産生腫瘍はクッシングCushing病の原因となる下垂体腺腫で、血中ACTH高値、腫瘍細胞にACTHを証明できる。糖質コルチコイドの長期に及ぶ過剰が引き起こす全身の病態をクッシング症候群と呼ぶ。クッシング症候群では、満月様顔貌、中心性肥満と呼ばれる体幹部の肥満が患者にみられ、多毛、伸展性皮膚線条などが皮膚にみられる。高血圧。糖尿病、骨粗鬆症、低カリウム血症を合併し、筋力の低下、精神症状など多彩な症状を呈する。クッシング症候群の約50%は副腎皮質腺腫が原因であり、約40%が下垂体ACTH産生腺腫を原因とする。残りの5%程度は、異所性ACTH産生腫瘍(肺癌など)が原因疾患である。

3. 誤り。

頭蓋咽頭腫はラトケ嚢から発生する良性の腫瘍で全頭蓋内腫瘍の約5%を占める。小児に多い良性腫瘍で、過誤腫的腫瘍であり、上皮成分は扁平上皮がみられ、ホルモンの産生はなく、前葉ホルモンの過剰症は起こらない。下垂体、視床下部の圧迫により、下垂体機能低下症(低身長症、性器発育不全など)を来たし、視床下部機能異常としては、尿崩症、体温・食欲の異常、思春期早発などを示すことがある。

4. 誤り。

橋本病の細胞像は成熟リンパ球を主体に各段階の幼若型のリンパ球が認められる。背景に、異型を伴った濾胞上皮細胞の集団を認める。出現している濾胞上皮細胞のなかには、核の大小不同、クロマチンの粗く濃くみえ、肥大した核小体が目立つものもある。細胞質の境界は不明瞭で広く豊富なものが多く、好酸性である。

5. 正しい。

髄様癌medullary carcinomaはC細胞由来の癌である。カルシトニンを産生するのが特徴で、セロトニン、ACTH、CEAなどを産生する例もある。細胞質内に神経内分泌顆粒があり、グリメリウス染色陽性を示す。髄溶癌は家族性に発症することもあり、シップル症候群Sipple syndrome(髄様癌に副腎の褐色細胞腫が合併する)も稀にみられる。腫瘍細胞は結合性が弱く、集塊を作らず孤立散在性に出現する。細胞の大小不同は強くはなく軽度であるが、所々に細胞質が広く大型核を有する異型細胞が孤立性に散見される。核は円形から卵円形が多く偏在傾向があり、クロマチンは粗顆粒状で1~2個の核小体を有する。それぞれの腫瘍細胞のクロマチン態度は皆同様で単調な感じがする所見である。背景に、ライトグリーンで染まる薄い無構造物質のアミロイドが認められれば、診断は容易である。


 
13. 正しいものはどれですか。
1. 成人T細胞性白血病HTLV-Ⅲの感染が原因である。
2. 多発性骨髄腫は、骨髄造血細胞の腫瘍である。
3. 形質細胞はB細胞が分化した細胞である。
4. 主にT 細胞は骨髄、B細胞は胸腺で作られる。
5. セザリー細胞はB細胞由来である。


正解:3

解説:

1. 誤り。

ヒトTリンパ球向性ウイルスhuman T-lymphotropic virusにはHTLV-1、-2があり、西日本、特に九州・沖縄に多い成人T細胞白血病adult T-cell leukemia/lymphoma(ATL)を起こすHTLV-1が重要である。ATLの多くは母乳によって感染し、40歳以上で発症する。ATLでは、腫瘍細胞の浸潤を伴う皮疹やリンパ節腫脹がみられ、末梢血にはクビレの目立つ花弁状細胞が出現する。稀に、痙性脊髄麻痺(HTLV-1関連脊髄症HTLV-1 associated myelopathy:HAM)を起こす。

2. 消去法で誤り。
3. 正しい。

骨髄外で活性化されると、Bリンパ球は抗体を産生する形質細胞に分化する。

4. 誤り。

リンパ球系前駆細胞は、骨髄でB細胞前駆細胞を、胸腺でT細胞前駆細胞を作る。

5. 誤り。

セザリー症候群Sézary syndromeは皮膚に菌状息肉症と同様の細胞が浸潤し、紅皮症、表在リンパ節腫脹、末梢血中での異型リンパ球(Sézary細胞)の出現を認めるものをいう。


 
14. 正しい組み合わせはどれですか。
1. 副甲状腺腫瘍―血中カルシウム低下
2. 甲状腺髄様癌―血中カルシトニン低下
3. 副腎皮質腫瘍―血中のACTH 低下
4. 褐色細胞腫―血中の17-OHCS 上昇
5. 神経芽細胞腫―血中のバニリルマンデル酸(VMA)上昇


正解:3

解説:

1. 誤り。

副甲状腺機能亢進症副甲状腺ホルモンparathyroid hormone(PTH)の過剰状態を呼ぶ。高カルシウム血症、尿中カルシウム排泄増加による腎盂尿管結石、骨粗鬆症などを呈する。原因疾患としては、副甲状腺過形成、腺腫、癌などがあるが、癌は稀である。過形成と腫瘍の区別は他臓器ほど明瞭、厳密ではなく、複数の腺が腫大した時は過形成、1腺のみ腫大した時は腫瘍(腺腫)と診断される。

2. 誤り。

髄様癌medullary carcinomaは、充実性、髄様増生と、間質のアミロイド沈着を組織学的特色とする甲状腺の神経内分泌腫瘍である。肉眼的には神経内分泌腫瘍の特色である拡大増生(一般に被膜は作らないが境界は明瞭)、割面は帯黄色、充実性である。甲状腺C細胞(傍濾胞細胞)由来腫瘍であり、カルシトニンを産生する。カルシトニンとCEA(癌胎児抗原)が腫瘍マーカーであり、診断と再発の検出に血中カルシトニンとCEAの測定が用いられる。

3. 正しい。

副腎皮質腺腫によるものは、ネガティブフィードバックのためACTHは低値となり、下垂体ACTH産生細胞は変性に陥り、対側副腎は萎縮する。副腎癌によるものは稀である。

4. 誤り。

17-ヒドロキシコルチコイド(17-OHCS)の主成分は副腎コルチゾールの尿中代謝物である。

5. 誤り。

バニリルマンデル酸(VMA)はカテコラミンの代謝産物で、尿中に排泄される。カテコラミンはアドレナリン、ノルアドレナリンドーパミンの総称で、交感神経、副腎髄質のクロム親和性細胞においてチロシンから産生され、心血管系の調節機構に重要な役割を担っている。神経芽細胞腫や副腎髄質のクロム親和性細胞に由来する褐色細胞腫では、カテコラミンが過剰に産生され、その代謝産物であるVMAが尿中に大量に排泄される。


 
15. 髄膜腫の組織亜型について誤っているものはどれですか。
1. 髄膜皮性髄膜腫
2. 線維性髄膜腫
3. 粘液産生性髄膜腫
4. 分泌性髄膜腫
5. 退形成性髄膜腫


正解:3

解説:

1. 正しい。

髄膜腫の組織亜型を以下に示す。
WHO gradeⅠ
・髄膜皮性髄膜腫Meningothelial meningioma
・線維性髄膜腫Fibrous meningioma
・移行性髄膜腫Transitional meningioma
・砂粒腫性髄膜腫Psammomatous meningioma
血管腫性髄膜腫Angiomatous meningioma
・微小嚢胞性髄膜腫Microcystic meningioma
・分泌性髄膜腫Secretory meningioma
・リンパ球・形質細胞に富む髄膜腫Lymphoplasmacyte-rich meningioma
・化生性髄膜腫Metaplastic meningioma
WHO gradeⅡ
・異型性髄膜腫Atypical meningioma
・明細胞髄膜腫Clear cell meningioma
・脊索腫様髄膜腫Chordoid meningioma
WHO gradeⅢ
・ラブドイド髄膜腫Rhabdoid meningioma
・乳頭状髄膜腫Papillary meningioma
・退形成性(悪性)髄膜腫Anaplastic (malignant) meningioma

2. 正しい。
3. 誤り。
4. 正しい。
5. 正しい。


 
16. 上皮型中皮腫と腺癌の鑑別に有用なマーカーとして誤っているものはどれですか。
1. Calretinin
2. D2-40
3. CEA
4. Ber-EP4
5. Cytokeratin AE1/AE3


正解:5

解説:

1. 正しい。

これまで多くの抗体やマーカーが体腔液細胞診における細胞鑑別の目的で試みられてきたが、現在ではいくつかのマーカーの組み合わせが、抗体パネルとして利用されている。

抗体名
腺癌マーカー(上皮マーカー) CEA、BerEP4、LeuM1、MOC31、TTF1、Napsin A、PE10
中皮関連マーカー Calretinin、D2-40、WT1、Cytokeratin 5/6
共通マーカー CK(AE1/AE3)、CK(CAM5.2)、CA125
反応性中皮との鑑別マーカー EMA(m-EMA)、Desmin、GLUT-1、CD146

2. 正しい。
3. 正しい。
4. 正しい。
5. 誤り。


 
17. 誤っているものはどれですか。
1. 膀胱原発の扁平上皮癌は角化型が多い。
2. 尿膜管由来の悪性腫瘍は尿路上皮癌が多い。
3. BCG治療中の尿では類上皮細胞が増加する。
4. 回腸導管尿では変性した円柱上皮細胞が出現する。
5. カテーテル尿細胞診は腫瘍発生部位の検索に有用である。


正解:2

解説:

1. 正しい。

尿路の扁平上皮癌の多くは高分化で、尿細胞診標本で角化した癌細胞は細胞質が類円形あるいは細長く伸びた紡錘状で、細胞質はOrange Gやeosinの色を取り、反射するような光沢を示し、しばしば分厚い細胞質と表現される。平面的な集塊を形成することが多い。非角化型の腫瘍細胞は細胞質に特徴があり、核を中心に同心円状の光沢のある厚いライトグリーンに染色された細胞質が特徴的である。

2. 誤り。

尿路の腺癌には腫瘍の発生部位が重要である。尿膜管癌は種々の組織型を示すことがあるが、腺癌の頻度が最も高い。尿膜管腺癌は膀胱頂部、前壁に好発する。

3. 正しい。

BCG膀胱腔内注入療法はウシ型結核菌より得られた結核予防ワクチンを用いて、表在性膀胱癌の治療あるいは腔内再発の予防に用いる。この療法後の尿細胞診では、しばしばラングハンス型巨細胞や、類上皮細胞をみる。

4. 正しい。

膀胱の悪性腫瘍に対して、膀胱全摘出後に回腸の一部を尿路として用いる手術法が行われることがあり、これを回腸導管造設術という。術後の経過観察に回腸導管を経由した尿、回腸導管尿が供される。このときの尿は特徴的な粘稠性を示す。これは回腸上皮の杯細胞より分泌される粘液が混じることによる。良性の細胞成分として回腸由来の円柱上皮細胞がみられることがあるが、多くは核濃縮、核崩壊、細胞質内好酸性封入体などいわゆる細胞の変性所見を示す。非細胞性成分として、無晶性リン酸塩、リン酸アンモニウムマグネシウムの粗大結晶がみられることが多い。また感染によって、細菌、真菌がみられることが少なくない。

5. 正しい。

尿管カテーテル尿(分腎尿)は尿管や腎盂の病変が疑われる場合に、異型細胞を的確に採取することと、採取部位を明確にするために、膀胱鏡で尿管口を確認して、尿管内にカテーテルを挿入し、左右を確認して採取する。尿管、腎盂は膀胱と異なり、内視鏡で病変を直接観察できないことが多いため、カテーテル尿による細胞診の意義が大きい。


 
18. 甲状腺副甲状腺の細胞診について誤っているものはどれですか。
1. 甲状腺濾胞性腫瘍と副甲状腺腺腫との鑑別はときに困難である。
2. 甲状腺濾胞性腫瘍ではクロモグラニンAは陽性である。
3. 副甲状腺機能亢進では副甲状腺細胞内の脂質が減少する。
4. 副甲状腺腺腫と副甲状腺過形成との鑑別は困難である。
5. 甲状腺細胞診の報告様式にはベセスダシステムがある。


正解:2

解説:

1. 正しい。

副甲状腺の主細胞では、①核は円形で中心に位置している、②胞体はごく淡い好酸性を示し、グリコーゲンや脂肪を含む、③通常は充実性あるいは索状構造を示す、といった特徴からHE染色のみで多くは同定可能であるが、時に(特に副甲状腺が腺腫や過形成といった増殖性病変であるとき)あたかも甲状腺のような濾胞構造を示し、診断に迷う例がある。

2. 誤り。

Chromogranin Aは神経内分泌顆粒に存在する酸性タンパクで、最も基本的な神経内分泌系マーカーである。腸管などの神経内分泌細胞、膵臓島細胞、副甲状腺、副腎髄質、下垂体前葉、甲状腺C細胞、気管Kulchitsky細胞などが陽性となる。

3. 正しい。

正常副甲状腺組織は明るく抜けた脂肪細胞が30~40%を占め、残りの部分が明るい細胞質をもった実質細胞(主細胞)である。副甲状腺原発性過形成では、脂肪組織の減少と実質細胞の比率の増加がみられる。

4. 正しい。

副甲状腺機能亢進症副甲状腺ホルモンparathyroid hormone(PTH)の過剰状態を呼ぶ。高カルシウム血症、尿中カルシウム排泄増加による腎盂尿管結石、骨粗鬆症などを呈する。原因疾患としては、副甲状腺過形成、腺腫、癌などがあるが、癌は稀である。過形成と腫瘍の区別は他臓器ほど明瞭、厳密ではなく、複数の腺が腫大した時は過形成、1腺のみ腫大した時は腫瘍(腺腫)と診断される。

5. 正しい。


 
19. 誤っているものはどれですか。
1. 髄芽腫は小児の小脳に好発する。
2. 髄芽腫の細胞は細胞質が豊富である。
3. 神経鞘腫は小脳橋角部腫瘍の代表的疾患である。
4. 下垂体腺腫は小型類円形核が特徴的である。
5. 下垂体腺腫は下垂体前葉の腺細胞由来である。


正解:2

解説:

1. 正しい。

髄芽腫medulloblastomaは神経上皮性腫瘍の5~10%を占め、6~10歳の小児に好発する。発生部位は低年齢児では小脳虫部、年長児および成人では小脳半球に偏在するのもが多い。組織学的には濃染する円形ないし楕円形の核をもつ小型の細胞がびまん性に増殖し、高い密度を示している。ところによって短紡錘形の腫瘍細胞が細胞質突起からなる小野を放射状に囲むHomer-Wright型偽ロゼットが形成される。

2. 誤り。

髄芽腫の細胞は小型で細胞質に乏しく、裸核のものも少なくない。核は濃染し、軽い大小不同性を呈する。

3. 正しい。

シュワン細胞腫schwannomaは頭蓋内腫瘍全体の8~10%、脊髄腫瘍中では最も高頻度にみられ、20~50歳の成人に多い。脳神経では聴神経束に好発し、小脳橋角部腫瘍とよばれる。脊髄では神経後根に発生しやすい。

4. 正しい。

下垂体腺腫の腫瘍細胞は円形から卵円形で、集合性に小グループを形成している。核は類円形で軽度に腫大しているが、クロマチンは微細である。

5. 正しい。

下垂体腺腫pituitary adenomaは下垂体前葉の腺細胞から発生する腫瘍で、頭蓋内腫瘍の約10%を占める。40歳前後に最も多く、トルコ鞍内に発育する。しばしば嚢胞を形成する。組織学的には腫瘍細胞の配列様式としてはびまん性に増生するもの、細血管あるいは血管洞のまわりに並ぶもの、血管周囲に乳頭状に配列するものなどがある。


 
20. 誤っている組み合わせはどれですか。
1. 乳汁漏出症―プロラクチン高値
2. 尿崩症―抗利尿ホルモン高値
3. 悪性貧血―ガストリン高値
4. クレチン症―トリヨードサイロニン低値
5. アジソン病―コルチゾール低値


正解:2

解説:

1. 正しい。

PRL分泌異常症とは、下垂体PRLの分泌過剰または分泌不足による病的状態をいう。PRL分泌過剰症とPRL分泌低下症とに分けられる。PRL分泌過剰の女性では乳汁漏出-無月経を伴うことが多く、無月経-乳汁漏出症候群amenorrhea-galactorrhea syndromeと呼ばれることがある。これらの症状が分娩後に引き続き生じた場合にはChiari-Frommel症候群、下垂体腫瘍に伴う場合はForbes-Albright症候群、いずれにも属さない特発性の場合は Argonz-del Castillo 症候群と呼ばれてきたが、現在では高PRL血症hyperprolactinemiaと総称される。男性のPRL分泌過剰では、エストロゲンが低いため乳汁分泌を伴わない場合も多い。

2. 誤り。

下垂体後葉ホルモンarginine vasopressin(AVP)分泌が障害されているものを中枢性尿崩症、腎臓のAVPに対する反応性に障害のあるものを腎性尿崩症という。多尿、低浸透圧尿、高浸透圧血症を示す。1日尿量2.5l以上を多尿というが、尿崩症では1日3~5lを超える。病因は、視床下部・下垂体近傍の腫瘍、炎症、外傷であるが、病因を特定できない特発性尿崩症もある。

3. 正しい。

ガストリン高値になる疾患にはゾリンジャー・エリソン症候群(難治性の消化器潰瘍、大量の胃液分泌、膵ラ島腫瘍)、悪性貧血、副甲状腺機能亢進症、胃・十二指腸潰瘍などがある。

4. 正しい。

クレチン病cretinismは先天性甲状腺ホルモン合成障害などのため、新生児期に発症する甲状腺機能低下症は精神・知能・身体発達に重大な障害を来たす。早期にこれを発見し、甲状腺ホルモンの補充療法を行わないと、不可逆的変化を来たす。

5. 正しい。

慢性の副腎皮質機能不全をアジソン病と呼ぶ。フィードバック機構により下垂体からACTH分泌が増加し、同時にメラトニンやプロホルモンも増加するため、皮膚の色素沈着が時間と共に増加する。原因としては不明(特発性)のことが多い。下垂体の障害によりACTHの分泌が減ると、二次的に副腎皮質機能不全を来たす。Sheehan症候群、下垂体腺腫、下垂体炎、ACTH単独欠損症などが原因となる。副腎皮質機能は3種類のホルモンが重要であり、アルドステロン、テストステロンの不足でも多様な症状(低ナトリウム血症、月経異常、不妊)を呈するが、生命維持のために最も重要なのは糖質コルチコイドである。この不足が、主要な臨床症状(全身倦怠感、疲労感、無気力、体重減少、心の拍動微弱、低血圧、貧血、下痢、嘔吐、脱水、低血糖、皮膚色素沈着など)を形成する。治療は副腎皮質ホルモンの補充療法である。