雑記

時間があるときに細胞検査士の筆記試験の過去問を解いています

平成26年度 総論 筆記試験 過去問

平成26年度の筆記試験はこれで一通り終わりました。
9月までに仕上げたかったのですが10月にずれ込んでしまいました。なかなか予定通りにはいかないものですね。



 
1. 正しい組み合わせはどれですか。
A. サルコイドーシス―星状小体
B. 顆粒膜細胞腫―アピッツ小体
C. 膀胱マラコプラキア―ラインケ結晶
D. 形質細胞腫―マロリー小体
E. クラミジア―星雲状封入体

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:

A. 正しい。

サルコイドーシスsarcoidosisは原因不明の全身性の肉芽腫症で、胚やリンパ節は特に侵されやすい。類上皮細胞性の肉芽腫で一般に結核結節のような乾酪壊死は伴わない。Langhans型巨細胞の胞体内に星芒体(アステロイド小体asteroid body)やシャウマン小体をみることがある。

B. 誤り。

顆粒膜細胞腫granulosa cellは顆粒膜由来の腫瘍で、境界悪性ないし悪性腫瘍である。エストロゲンやアンドロゲンを産生するものがある。成人型と若年型に分けられる。成人型の定型例では充実性腫瘍巣内にCall-Exner小体と呼ばれる小腔を形成する。

C. 誤り。

ラインケReinke類結晶体(六角形状)はライディッヒ細胞に存在し、パパニコロウ染色ではオレンジないしライトグリーンに染まる。

D. 誤り。

肝細胞癌hepatocellular carcinomaは、組織学的分化度により4型に分かれる。その細胞所見を以下に示す。
・高分化型:正常肝細胞に類似し細胞異型が軽度なため、良性病変、特に肝硬変との鑑別が困難な場合がある。細胞質に好酸性顆粒やマロリーMallory body(PAS染色陰性)、脂肪変性がみられることが多い。
・中分化型:高分化型と比較して核腫大やクロマチンの濃染傾向が強くなるが、N/C比はあまり高くない。細胞集塊内に偽腺管様配列や個々の細胞に胆汁色素や核内細胞質封入体がみられることが多い。
・低分化型:中分化型より核異型が強く、巨細胞、多核細胞が混じる。
・未分化型:肝細胞の特徴を欠く。細胞は小型で類円~紡錘形を示す。N/C比は高く、胆管細胞癌や転移性腺癌との鑑別が難しい。
 なお、球状硝子体globular hyaline body(PAS染色陽性~陰性)は高分化~低分化型にみられ、特に低分化型によく見られるとされている。

E. 正しい。

ヒトに病原性をもつクラミジアはC.trachomatis、C.psittaci、C.pneumoniaeの3種である。C.trachomatisの中でも、血清型D-Kは尿道炎、膣・頸管・卵管炎、副睾丸炎を起こし、代表的な性感染症の1つである。膣・頸管の細胞診検査で感染細胞がみつかることが多く、特徴的な封入体(星雲状小体)がみられる。


 
2. 細胞周期において正しいものはどれですか。
A. S期終了後からM期開始までの期間をG1期と呼ぶ。
B. p 27は細胞周期を正に制御する。
C. 核分裂はS期に行われる。
D. 細胞周期の制御にはCyclinやCDK(cyclin-dependent kinase)が関与する。
E. G1 Cyclin複合体は主にRB タンパク質を標的にする。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:5

解説:

A. 誤り。

細胞分裂を制御している機構を細胞周期と呼ぶ。細胞周期は次の4期に分けられる。
① DNAの複製が行われるS期synthesis phase
核分裂が行われるM期mitosis phase
③ M期からS期までのG1期gap1 phase
④ S期からM期までのG2期gap2 phase
細胞分裂していない休止期の細胞はG0期にあるとされ、G0期の細胞は増殖刺激を受けると再びG1期に移行すると考えられる。細胞周期は周期的に発現レベルの変化するサイクリンcyclinという物質群(cyclin A、B、D、E)とcdk(cyclin-dependent kinase)というキナーゼ群(cdk2、4、6など)によって制御されている。cdkはサイクリンと複合体を形成し、下流の基質をリン酸化することにより細胞周期を進行させる。

B. 誤り。

サイクリン、cdkのほかに、p16、p21、p27などのcdkインヒビタがあって、細胞周期の進行を負に制御している。

C. 誤り。
D. 正しい。

それぞれの周期に特有のサイクリンとcdk分子があり、例えばG1期ではcyclin D-cdk4、cyclin D-cdk6、cyclin E-cdk2複合体が中心的な役割を演じている。これらG1サイクリン複合体の主な標的はRbタンパク質であり、G1期の進行とともにRbタンパク質のリン酸化レベルが亢進する。低リン酸化状態のRbタンパク質はE2Fという転写因子と複合体を形成しているが、Rbタンパク質が高リン酸化状態になるとE2FがRbタンパク質から解離しS期に必要な分枝の転写を誘導する。

E. 正しい。


 
3. 不適切問題のため削除しました。
リンパ球表面マーカーについて問う問題でしたが、試験終了後、正解の中に表面マーカー以外のものが含まれていることが判明したため不適切問題として全員正解にしました。

こんなこともあるんですね。


 
4. 核内細胞質封入体がみられる腫瘍はどれですか。
A. 髄膜腫
B. 皮膚基底細胞癌
C. 横紋筋肉腫
D. 甲状腺濾胞癌
E. 肝細胞癌

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:

A. 正しい。

核内細胞質封入体intranuclear cytoplasmic inclusionは細胞質の一部が核膜に囲まれた状態で核内に存在するもので偽封入体pseudoinclusionとも称される。核内細胞質封入体の同定には、①封入体と核質との境界が明瞭であること、②その境界部の内側が平滑で、外側にはクロマチンの凝集が観察されること、③色調が細胞質の色に類似していること、などの所見が必要である。核内細胞質封入体がみられる腫瘍には以下のようなものがある。

甲状腺乳頭癌 髄膜腫
肺乳頭状腺癌 脂肪肉腫、脂肪腫
肝細胞癌 卵巣粘液腺腫
悪性黒色腫 甲状腺硝子化索状腫瘍

B. 誤り。
C. 誤り。
D. 誤り。
E. 正しい。



5. 正しいものはどれですか。
A. 腫瘍の大きさと悪性度には正の相関がみられる。
B. 高分化な悪性腫瘍は、細胞・組織の異型が強い。
C. 低分化な悪性腫瘍は、通常悪性度が低い。
D. 高分化な悪性腫瘍は、発生母地との組織学的類似性が高い。
E. 未分化な悪性腫瘍は、通常放射線感受性が高い。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:5

解説:

A. 誤り。
B. 誤り。
C. 誤り。
D. 正しい。
E. 正しい。


 
6. 正しいものはどれですか。
A. 肺腺癌ではALK 遺伝子異常を持つものが多い。
B. 多発性骨髄腫では免疫グロブリン遺伝子再構成が見られる。
C. 慢性骨髄性白血病では融合(キメラ)遺伝子BCR-ABLが見られる。
D. 家族性大腸腺腫症では生まれながらにしてk-RAS遺伝子変異を持つ。
E. 肺癌は多段階発癌説に従い、大腸癌は多段階発癌の関与はない。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:3

解説:

A. 誤り。

ALK転座肺癌は非小細胞肺癌全体では2~5%程度である。組織型では圧倒的に腺癌に多く、腺癌での頻度は4~5%程度であり、他の組織型では例外的である。最初に報告された症例は喫煙者であったが、一般には非喫煙者に多いとされる。また、EGFR 遺伝子変異にみられるような人種差はないようである。年齢では若年者に多い傾向にあり ALK 肺癌の平均年齢は50代半ばとするものが多く、ALKを有しない肺癌より10才程度若年である。性差は明らかではないが、非喫煙者の数を反映してかやや女性に多い。

B. 正しい。
C. 正しい。

慢性骨髄性白血病は多能性造血幹細胞に形質転換が起こり、3血球系統が異常増殖する慢性疾患で、慢性骨髄増殖性疾患の一つである。この疾患では9番染色体と22番染色体が相互転座し、22番染色体長腕にあるbcr遺伝子と9番染色体abl遺伝子が融合する。そしてt(9;22)(q34;q11)によって短くなった22番染色体をフィラデルフィア染色体(Ph染色体)と呼んでいる。

D. 誤り。

家族性大腸腺腫症familial adenomatousis coliは消化管、特に大腸全域に腺腫がびまん性に発生する遺伝性のポリポーシスで、放置すれば100%癌化する。従来は、家族性大腸ポリポーシスfamilial adenomatous polyposis(FAP)と呼ばれていた疾患でGardner症候群(骨・軟部腫瘍の合併)と呼ばれていたものも含まれる。常染色体優性遺伝形式をとり、第5染色体長碗に局在するadenomatous polyposis coli(APC)遺伝子が原因遺伝子である。

E. 誤り。

腺腫を経て癌が発生する大腸発癌の場合は、APCの変異(不活性化)により初期(低異型度)の腺腫が発生する。そこにK-rasの変異(活性化)が加わり後期(高異型度)の腺腫が生じ、さらにp53の変異(不活性化)が加わり癌となる。癌はさらにDPCの変異(不活性化)などが加わり、より悪性の癌へと進行する。また、大腸発癌では、腺腫を経ない発癌、de novo発癌もみられ、その際は初期よりAPC、p53の不活化が生じると考えられている。


 
7. ラングハンス(Langhans)型巨細胞の出現を特徴とするものはどれですか。
A. 伝染性単核球症
B. ネコひっかき病
C. サルコイドーシス
D. 壊死性リンパ節炎
E. 皮膚病性リンパ節症

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:3

解説:

A. 誤り。

伝染性単核球症infectious mononucleosisはEpstein-Barr virus(EBV)感染による急性疾患で、15~25歳の若年者に好発する。発熱とリンパ節腫脹、脾腫を主症状とし、末梢血中に異型リンパ球の出現をみる。異型リンパ球の大部分は細胞障害性T細胞cytotoxic T cellである。

B. 正しい。

ネコひっかき病cat scratch diseaseはネコにひっかかれた後、発熱とともに急激に腋下リンパ節が腫大する。腋下のほか、頸部や鼠径部のリンパ節に病変を来たすことがある。原因菌はグラム陰性桿菌のBartnella henselaeである。病変の中心に膿瘍、壊死巣がみられ、その周囲にラングハンス型巨細胞を含む類上皮細胞からなる肉芽腫が形成される。類上皮細胞は柵状に配列する。ときに単球様B細胞monocytoid B cellの集簇巣がみられるが、トキソプラズマ症とは異なり、リンパ濾胞内に類上皮細胞の肉芽腫をみることはない。

C. 正しい。

サルコイドーシスsarcoidosisは原因不明の全身性の肉芽腫症で、肺やリンパ節は特に侵されやすい。類上皮細胞性の肉芽腫で一般に結核結節のような乾酪壊死は伴わない。Langhans型巨細胞の胞体内に星芒体(アステロイド小体asteroid body)やシャウマン小体をみることがある。

D. 誤り。

亜急性壊死性リンパ節炎は組織球性壊死性リンパ節炎histiocytic necrotizing lymphadenitis(別名:菊池・藤本病)と呼ばれ、わが国に比較的多くみられるリンパ節炎で、10~30代までの比較的若い人に好発し、やや女性に多い。本症は感冒様症状で始まり、発熱後比較的急速にリンパ節の腫大をみる。リンパ節の腫大は一般に限局性で頸部にみられることが多い。白血球減少がみられることも本症の特徴の1つで、4000/mm3以下を示すことが多い。その他LDHの上昇をみる。病変部では大型リンパ球様細胞、形質細胞様単球および組織球が増殖し、アポトーシスとみなされる細胞壊死核崩壊物がみられる。組織球の一部は、核崩壊物や赤血球を貪食している。本病変では好中球の浸潤がみられないことが組織学的特徴の1つである。大型リンパ球様細胞の増殖が著しい場合は悪性リンパ腫との鑑別が必要である。

E. 誤り。

皮膚病性リンパ節症dermatopathic lymphadenopathyは種々の皮膚疾患、特に剝脱性皮膚炎の際、表在性のリンパ節が腫大する。リンパ節の正常構造は保持されているが、傍皮質領域の著明な拡大が特徴である。病巣には組織球、ラングハンス細胞Langerhans cell(LC)あるいは指状嵌入細胞interdigitating cell(IDC)の増殖がみられる。組織球の多くはメラニンを貪食している。その他、リンパ濾胞の過形成、形質細胞あるいは好酸球の浸潤をみることがある。


 
8. 一般的にホルモン療法が有効とされる癌はどれですか。
A. 卵巣癌
B. 胆嚢癌
C. 甲状腺髄様癌
D. 乳癌
E. 子宮内膜癌

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:5

解説:

A. 誤り。
B. 誤り。
C. 誤り。
D. 正しい。

乳癌の進行症例に対する分子標的治療(トラスツズマブ)やホルモン療法の適応を決めるためには、生検にて採取した検体のHER2、ホルモン受容体(エストロゲンプロゲステロン)の検査が行われる。その結果(陽性・陰性)の組み合わせによって、治療方法が選択される。HER2、ホルモン受容体ともに陽性であれば分子標的治療薬ホルモン療法の効果が期待できる。反対に双方共陰性の場合は化学療法が主体となる。

E. 正しい。

子宮体癌はその臨床病理学因子、発症過程からエストロゲン依存性の typeⅠ、非依存性のtypeⅡに分類されている。typeⅠは比較的若年に発症し、 高分化型類内膜腺癌(G1)で周囲に子宮内膜増殖症を伴うことが多く、その予後は比較的良好であるが、typeⅡは高齢者に多く、低分化型類内膜腺癌(G3)、漿液性腺癌、明細胞腺癌などで予後不良である。typeⅠは持続的なエストロゲン過剰刺激により子宮内膜増殖症を経て類内膜腺癌へ移行し、ホルモン依存性であることから黄体ホルモンが有効である。


 
9. 筋上皮細胞を持たないものはどれですか。
A. 汗腺
B. 乳腺
C. 甲状腺
D. 前立腺
E. 唾液腺

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:4

解説:

A. 誤り。
B. 誤り。
C. 正しい。
D. 正しい。
E. 誤り。


 
10. 細胞内小器官について誤っているものはどれですか。
A. 粗面小胞体ではタンパク合成を行う。
B. ライソゾーム(リソゾーム)は加水分解酵素を含んでいる。
C. 滑面小胞体アポトーシスに深く関与している。
D. 核小体にはDNA が多く含まれる。
E. ミトコンドリアは細胞内エネルギー産生に関与している。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:4

解説:

A. 正しい。

小胞体endoplasmic reticulumは、表面にリボソームが付着する粗面小胞体rough endoplasmic reticulum(rER)とリボソームのない滑面小胞体smooth endoplasmic reticulum(sER)の2種類に分類されている。粗面小胞体では蛋白の合成が、滑面小胞体では脂質やステロイドホルモンの合成が行われている。さらに、生体に有害な物質の解毒も滑面小胞体で行われるとされている。

B. 正しい。

ライソソーム(水解小体)lysosomeはゴルジ体から分離した小胞で、加水分解酵素を含んでいる。この酵素蛋白は粗面小胞体で合成され、ゴルジ体に送られ、一次ライソソームを形成する。細胞外から取り込んだ異物や、細胞内の異物(変性に陥った小胞体や糸粒体)が、一次ライソソームと融合してできたものを二次ライソソームとよぶ。加水分解酵素により、その内容は分解され利用される。消化されない異物は残渣小体(レジュアルボディー)residual bodyとよばれる。その代表的なものは消耗色素(リポフスチン)lipofustinである。

C. 誤り。
D. 誤り。

核には、核小体nucleolusと呼ばれる部分があり、RNAで構成されている。核小体の機能は不明な点が多いが、成長期の細胞や、機能の活発な細胞によく発達しており、細胞内の蛋白質合成に大きな役割を演ずると考えられている。腫瘍細胞でも核小体の数や大きさの増しているものが多く、診断の手がかりとされている。

E. 正しい。


 
11. 誤っている組み合わせはどれですか。
A. ムコール症―細菌感染―肺炎
B. クリプトコッカス症―真菌感染―肉芽腫性病変
C. アメーバ赤痢―原虫症―肝膿瘍
D. クロイツフェルト・ヤコブ病プリオン―海綿状脳症
E. 伝染性単核症―原虫症―異型リンパ球

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:

A. 誤り。

ムコール症mucormycosisは糸状菌としてみられ、糖尿病患者の鼻腔・副鼻腔に感染し、中枢神経に進展する鼻脳型が有名である。炎症反応はさまざまであるが、血管親和性が強いため真菌性塞栓による出血・梗塞を起こしやすい。ムコールはアスペルギルスよりも幅広く(6~50μm)、中隔を欠き、直角ないしは不規則に分岐する。

B. 正しい。

クリプトコッカス症cryptococcosisは酵母様真菌の一つであるCryptococcus neoformansの感染によって起こる。ハトの糞便中で増殖することはよく知られている。侵襲臓器は主に肺であるが、細胞性免疫の低下した患者(特に、AIDS患者)にみられるクリプトコッカス性髄膜脳炎も重要である。本菌は粘液染色陽性の厚い莢膜を有する5~10μm径の透明な球状真菌で、肉芽腫性病変では多核巨細胞内に貪食されてみられる。ステロイド使用患者では無反応の場合もある。髄膜脳炎の場合、採取した髄液を遠沈して墨汁を垂らすと、暗い背景に菌体が浮かび上がってみえる(墨汁法)。

C. 正しい。

アメーバ性肝膿瘍amebic liver abscessは赤痢アメーバの感染によるもので、腸管から門脈を経て肝臓に至る経路が最も多い。近年、汚染地帯への海外旅行の増加により稀なものではなくなっている。また、AIDSなどの免疫不全が基礎にあり発症してくる例も報告されている。肝内、特に右葉に単発性の大きな膿瘍を形成するが、高度の融解壊死のため空洞化する。

D. 正しい。

プリオンは核酸をもたない感染性タンパク粒子で、ウイルスでもない。立体構造の異なる正常型と異常型プリオンがあり、異常型はきわめて安定した不溶性タンパクである。異常型は正常型を連鎖反応的に異常型に転換し、中枢神経にアミロイド沈着と海綿状変性を起こす。ヒトのプリオン病としては、クロイツフェルト・ヤコブ病Creutzfeldt-Jakob disease(CDJ)、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー症候群、致死性家族性不眠症、クールーがある。

E. 誤り。

伝染性単核球症infectious mononucleosisはEpstein-Barr virus(EBV)感染による急性疾患で、15~25歳の若年者に好発する。発熱とリンパ節腫脹、脾腫を主症状とし、末梢血中に異型リンパ球の出現をみる。異型リンパ球の大部分は細胞障害性T細胞cytotoxic T cellである。


 
12. 誤っているものはどれですか。
A. 空胞変性における細胞内空胞は通常PAS反応陽性である。
B. 肝細胞のアルコール硝子体はサイトケラチンと考えられている。
C. 粘液変性は子宮平滑筋腫に見られる。
D. 脂肪変性は肝細胞に見られる。
E. ALアミロイドーシスは免疫グロブリン軽鎖の細胞内蓄積により起こる。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:

A. 誤り。
B. 正しい。

アルコール性肝炎では、肝細胞の変性・壊死、肝細胞の風船様変性、アルコール硝子体alcoholic hyaline(マロリー小体Mallory body)の出現と、同部位の好中球主体の炎症細胞浸潤などが種々の程度の小葉中心性(zone 3)にみられることが多い。アルコール硝子体は、肝細胞の胞体内にみられるイモムシ状、好酸性の無構造物で、細胞骨格に関与する中間型フィラメントの変性による。

C. 正しい。

子宮筋腫は血液供給の減少により変性が始まり、ヒアリン変性、粘液腫性変性、石灰化変性、嚢胞変性、脂肪変性、赤色変性(通常は妊娠中のみ)、壊死変性と表現される。患者は筋腫の癌をしばしば心配するが、肉腫変性は非常にまれである。

D. 正しい。
E. 誤り。

アミロイドーシスAmyloidosisとはアミロイドと呼ばれる蛋白が全身の臓器の細胞外に沈着する疾患である。ALアミロイドーシスは異常形質細胞によって産出されるモノクローナ免疫グロブリン(M蛋白)の軽鎖(L鎖)由来のアミロイドALが全身諸臓器(心臓、腎臓、消化管、肝臓、末梢神経など)に沈着する。


 
13. 誤っているものはどれですか。
A. 上皮性悪性腫瘍は癌腫である。
B. 非上皮性悪性腫瘍は肉腫である。
C. 悪性腫瘍の特徴として遠隔転移があげられる。
D. 良性腫瘍であれば再発はしない。
E. 腫瘍で細胞異型が軽度であれば良性としてよい。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:5

解説:

A. 正しい。

腫瘍は発生母組織の違いにより上皮性腫瘍と非上皮性腫瘍に大別される。悪性腫瘍は癌cancerともよばれる。なお、悪性上皮性腫瘍は癌腫carcinoma、悪性非上皮性腫瘍は肉腫sarcomaとよばれている。

B. 正しい。
C. 正しい。

悪性腫瘍は膨張性、浸潤性のいずれかの増殖様式をもとりうる腫瘍である。言い換えると、浸潤性増殖を示すものはすべて悪性腫瘍である。ただし、初期の段階の悪性腫瘍は、浸潤性増殖をしていない場合があるが、将来は浸潤性に増殖している潜在能をもっていると考えられている。悪性腫瘍は浸潤性増殖によって、全身のさまざまな部位に腫瘍細胞を拡散させ、しばしば患者の生命を奪う。

D. 誤り。
E. 誤り。


 
14. 誤っているものはどれですか。
A. 壊死は生理的要因でおこる。
B. 壊死により細胞の構造が崩壊し、炎症反応が引き起こされる。
C. アポトーシスは、核の凝縮から始まる。
D. アポトーシスは生理的要因、病的要因の両方でおこる。
E. 老化細胞は壊死により脱落する。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:

A. 誤り。

壊死は細胞傷害が高度で細胞死に至る場合、一般的には壊死と呼ばれる細胞死の形態像を示す。壊死に陥った細胞では、細胞内の分解酵素の活性化によって、タンパク質の分解あるいは変性、凝固が生じる。

B. 正しい。
C. 正しい。

壊死では、細胞内小器官の腫大、膨化と膜障害が起こる。アポトーシスでは、核クロマチンの凝縮、断片化がまず起き、細胞内小器官や膜は比較的保たれる。アポトーシスに陥った細胞は周囲の細胞や食細胞に貪食される。

D. 正しい。
E. 誤り。

アポトーシスは発生や成体の恒常状態を維持するうえで重要な働きをしている。脳の発生過程では、一度細胞分裂によって生じた神経細胞のうちシナプス形成した細胞のみが生存することができ、その他の過剰な神経細胞はアポトーシスにより除去される。成体の腸上皮では、腺窩底部の細胞の増殖と表層でのアポトーシスによる細胞脱落のバランスによって一定の細胞数が保たれている。


 
15. 腫瘍マーカーについて正しい組み合わせはどれですか。
1. AFP―前立腺癌
2. CA19-9―卵巣癌
3. CA125―膵癌
4. ProGRP―肺小細胞癌
5. PSA―肝細胞癌


正解:4

解説:

1. 誤り。

AFPは肝細胞癌(40%程度)、肝芽腫(70%程度)、卵黄嚢腫瘍、未熟奇形腫のneuroepithelial component、Sertoli-Leydig細胞腫や明細胞腺癌の一部、肝様腺癌、AFP産生胃癌などで陽性になる。

2. 誤り。

CA19-9は胃・腸および膵臓の腺癌を含む消化管腫瘍の大部分で陽性、膀胱の移行上皮癌・子宮内膜腺癌・甲状腺乳頭癌・胆嚢癌・肺腺癌・気管支肺胞上皮癌・扁平上皮癌・小細胞癌を含む肺腫瘍全般においても陽性になる。

3. 誤り。

CA125は大腸癌、乳癌、子宮乳頭漿液腺癌、子宮類腺腫、卵巣類内膜癌、卵巣漿液腺癌、甲状腺乳頭腫など多くの腫瘍で陽性になる。

4. 正しい。

肺癌の特徴は組織多様性であり、CEA は全肺癌で陽性率が高い。SLXは腺癌、SCC抗原・シフラは扁平上皮癌で、NSE、ProGRPは小細胞癌に特異性が高い。

5. 誤り。

PSA(Prostate Specific Antigen)は、プロテアーゼ活性を有し精液の粘性を低下させる33-34kDaの分泌型糖蛋白で、Semenogelase、Seminin、γ-seminoprotein、Kallikein-3、P-30などとも呼ばれる。PAP(Prostatic Acid Phosphatase)と共に前立腺の腺細胞の細胞質に存在し、ほとんどの前立腺癌に陽性で、その他の組織に由来する腺癌ではまず認められない。また、ホルマリン固定や多少の脱灰操作に対しても抗原性が安定であり前立腺癌の診断に有用性が高い。


 
16. 退行性病変はどれですか。
1. Hyperplasia
2. Regeneration
3. Hypertrophy
4. Necrosis
5. Metaplasia


正解:4

解説:

1. 誤り。

細胞、組織、臓器が何からの障害を受けた後にどのような形で適応していくかは、①進行性病変としての増生、②退行性病変としての萎縮に大別される。一般に、プラス方向には肥大hypertrophy、過形成hyperplasiaといった現象が生じ、マイナス方向には退行性の適応現象になり、変性degeneration、壊死necrosis、萎縮atrophyを生じる。

2. 誤り。
3. 誤り。
4. 正しい。
5. 誤り。



17. 成人に多く発生する腫瘍はどれですか。
1. 肝芽腫
2. 骨肉腫
3. 横紋筋肉腫
4. 形質細胞腫
5. 上衣腫


正解:4

解説:

1. 誤り。

肝芽腫は、網膜芽細胞腫、神経芽細胞腫、腎芽腫などとともに代表的な小児腫瘍の1つで、新生児期から乳幼児期までにみられる肝臓原発悪性腫瘍である。組織学的には肝細胞類似の腫瘍細胞は類洞様構造を伴い、索状配列を示す分化のよいものから、小円形ないし短紡錘形の腫瘍細胞が一定の配列を示さず充実性に増殖する低分化あるいは未分化なものまでさまざまで、いずれも部分的に軟骨や類骨を主体とする間葉組織の混在をみることが多い。

2. 誤り。

骨肉腫osteosarcomaは10代の大腿骨、脛骨、上腕骨に好発する。老人の骨肉腫はまれである。血行性に肺転移を起こしやすい。本腫瘍は骨原発の腫瘍で、類骨osteoid形成が診断の決め手となる。

3. 誤り。

横紋筋肉腫rhabdomyosarcomaは統計上若年者に多い。特に乳児期では胎児型が多く、発生部位も鼻咽頭部に集中している。胞巣型は、10~20歳代の頭頸部、上・下肢および体幹に発生し、多形型は高齢者の下肢に好発するといわれている。

4. 正しい。

多発性骨髄腫multiple myeloma(形質細胞腫plasmacytoma)は形質細胞が腫瘍性増殖をきたす悪性疾患であり、腫瘍細胞は特有な免疫グロブリンを産生する。本腫瘍の多くは、多発性に骨を侵すがまれには単発性である。40~60代の男性に多い。全身の骨が侵されるが、頭蓋骨、脊椎、骨盤、肋骨、上腕骨、大腿骨が好発部位である。X線所見として頭蓋骨や骨盤のような扁平骨では、0.5~2cm位の境界鮮明な多発性円形明巣punched out lesionとして描き出される。

5. 誤り。

上衣腫ependymomaは、膠腫の5~6%で小児期に多く見られ、好発部位は第四脳室底部、脊髄、側脳室、第三脳室の順である。組織学的には腫瘍は脳室を取り囲む上衣細胞の形態と配列を模倣し、血管周囲偽ロゼット、およびときには真性ロゼットが認められる。


 
18. 転移性脳腫瘍の原発巣で最も多いものはどれですか。
1. 肺
2. 胃
3. 大腸
4. 腎臓
5. 前立腺


正解:1

解説:

1. 正しい。

転移性脳腫瘍の原発巣として肺が最も多く、次いで乳腺、消化管などが多く、まれに腎癌、黒色腫などの転移が認められる。癌細胞は膠腫より大型で、一般に細胞境界もはっきりしており、集塊をつくる傾向がある。組織型では腺癌の転移が多いため、腺房状配列や乳頭状配列をとりやすい。

2. 誤り。
3. 誤り。
4. 誤り。
5. 誤り。


 
19. 誤っている組み合わせはどれですか。
1. 柵状配列―神経鞘
2. 索状配列―肝細胞癌
3. ロゼット配列―上衣腫
4. リボン状配列―カルチノイド
5. ニシンの骨状配列―骨肉腫


正解:5

解説:

1. 正しい。

シュワン鞘腫schwannomaはシュワン細胞から発生する腫瘍で、頭蓋内腫瘍の約10%を占めている。成人の女性に多い。第8脳神経が好発部位であり、小脳橋角部腫瘍として発生する。第5、10脳神経、脊髄神経にみられることもある。組織学的には細長い核と繊細な双極性細胞突起をもつ腫瘍細胞が緻密な束を作って増殖しており、核が横に並ぶ柵状配列nuclear palisadingが特徴である。

2. 正しい。

原発性肝癌取扱い規約第5版では早期肝細胞癌を以下の様に定義しているが最新の国際基準と同様の内容である。「細胞密度の増大に加え、腺房様あるいは偽腺管構造、索状配列の断裂、不規則化などの構造異型が領域性をもってみられるもの、あるいは間質への浸潤を有するもので、細胞個々の異型は乏しいが、一般に細胞は小型化して、核胞体(N/C)比が増大する。細胞質では好酸性ないし好塩基性が増強する。通常、細胞密度の増大は周囲肝組織の約2倍以上である。しばしば脂肪化、淡明細胞化を伴う。癌細胞は膨張性に増殖するにいたっていないため、周囲肝組織との境界で癌細胞は隣接する肝細胞を置換するように増殖し、境界は不明瞭なことが多い。肉眼的には、小結節境界不明瞭型に相当する」

3. 正しい。

上衣腫ependymomaは、膠腫の5~6%で小児期に多く見られ、好発部位は第四脳室底部、脊髄、側脳室、第三脳室の順である。組織学的には腫瘍は脳室を取り囲む上衣細胞の形態と配列を模倣し、血管周囲偽ロゼット、およびときには真性ロゼットが認められる。

4. 正しい。
5. 誤り。ニシンの骨状配列herring bone patternは杉綾様配列とも表現されます。

線維肉腫fibrosarcomaは各年齢層にみられ、やや男性に多い。四肢、肩のほか体幹、頸部にも発生する。組織学的には異型性をもつ紡錘形の繊維芽細胞からなり、配列は杉綾様herring bone patternを示す。


 
20. 誤っているものはどれですか。
1. 閉経が遅いほど乳癌発生率が高くなる。
2. エストロゲン製剤は乳癌発生の外因である。
3. 欧米人に比べ胃癌の発生が日本人で高いのは遺伝的要素が大きい。
4. 子宮頸癌の発生原因は外因によることが多い。
5. リンチ症候群患者には大腸癌、子宮内膜癌が高率に発生する。


正解:3

解説:

1. 正しい。

乳癌の成因に関連する因子としては、エストロゲンの作用と遺伝的背景が従来より指摘されている。月経周期における増殖期では、内因性エストロゲンが高値になるが、増殖期を迎える機会が多い女性ほど、つまり初潮が早い女性、未経産女性、高齢出産者などには乳癌が発生しやすい。一方、若年で両側卵巣を摘出された女性には乳癌発生はごく稀であることも明らかな事実である。

2. 正しい。

病因は従来より患者に内在する内因と、外来因子である外因とに分けられ論じられている。多くの病的状態はこれらの因子の複合である場合が少なくない。内因・外因の具体的内容は表に示した。

内因 素因、遺伝子・染色体異常、内分泌障害、免疫異常、アレルギー
外因 物理的因子:機械的因子・放射線など、化学的因子:腐食剤・有毒ガスなど、生物的因子:細菌・ウイルス・寄生虫など、栄養障害

3. 誤り。遺伝的要素ではなくピロリ菌の感染です。
4. 正しい。
5. 正しい。

遺伝性非ポリポーシス大腸癌hereditary non-polyposis colorectal cancer(HNPCC)は、消化管ポリポーシスは伴わないが、遺伝的に癌が多発する疾患として遺伝性非ポリポーシス大腸癌、Lynch syndromeが知られている。HNPCCの原因遺伝子として1993年から1995年までにhMSH2、hMLH1、hPMS1、hPMS2、CTBPなどのDNAのミスマッチ修復遺伝子が同定された。修復遺伝子の異常は、マイクロサテライト領域での異常に反映され、ミスマッチが修復されずにDNA複製エラーが蓄積されて、発癌に至ると考えられている。最近、TGF-βR-Ⅱ遺伝子が標的遺伝子であることが明らかにされた。HNPCCの診断基準はAmsterdamの診断基準Ⅱを用いるのが望ましい。HNPCCでみられる大腸癌は組織学的に、低分化腺癌、印環細胞癌、粘液癌の割合が高く、また、flat adenomaや結節性集簇様病変が好発するが、意義づけは明らかでない。HNPCC関連癌は大腸癌、子宮内膜癌、小腸癌、腎盂尿管癌である。