雑記

時間があるときに細胞検査士の筆記試験の過去問を解いています

平成24年度 婦人科 筆記試験 過去問

久しぶりの更新です。あと平成24年度の過去問はまとめかたを少し変えてみます。



1. 子宮頸部細胞診について正しいものはどれか。
A. 卵胞期の重層扁平上皮の表層細胞はエオジン好性となる。
B. 黄体期の腟スメアは中層型細胞が主体を占める。
C. 閉経後の腟スメアは表層型細胞が主体を占める。
D. 頸管腺上皮の細胞質内の粘液は黄色調を示す。
E. 出産後や放射線療法後には修復細胞が出現する。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:2

解説:
A. 正しい。

エストロゲン効果は扁平上皮の成熟を促進する。エオシン・オレンジ好性の細胞質を持った表層細胞が大多数を占める。

B. 正しい。

プロゲステロン効果は中層細胞までの増殖を示す。白血球が混在した背景に、集合性の中層細胞が大多数を占める。

C. 誤り。

閉経期はエストロゲンの減少で重層扁平上皮の表層への分化が行われにくくなるため、傍基底細胞の出現が著明となる。

D. 誤り。

頸管内膜は1層の高い円柱上皮細胞からなり、線毛を有する線毛細胞と分泌を営む分泌細胞とがある。スメア中には両者とも出現が分泌細胞のほうが多い。細胞質は半透明でレース状、ライトグリーンに染まる。核は比較的大きく円または楕円形で細胞の中央または基底側に偏在し、クロマチンは細顆粒状である。時には核小体がみられる。

E. 正しい。

扁平上皮あるいは円柱上皮の再生regenerationまたは組織修復tissue repairに際して出現する細胞を再生上皮regenerative cellまたは修復細胞repair cellと呼ぶ。
放射線照射後
・子宮摘出後
・組織切除後
・焼灼または冷凍手術後
・高度頸管炎(主として急性期)
IUD(子宮内避妊装置)使用者
などに出現する。

 


2. 子宮頸部腺癌について正しいものはどれか。
A. 絨毛腺管状腺癌の予後は比較的良い。
B. HPV 18型が陽性となることが多い。
C. 扁平上皮癌に比べ上皮内癌が浸潤癌より少ない。
D. 最小偏倚腺癌の細胞診は他の粘液性腺癌に比べて診断が容易である。
E. 子宮頸部上皮内腺癌がCINと合併して存在することはまれである。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:1

解説:
A. 正しい。

絨毛腺管状粘液性腺癌mucinous adenocarcinoma, villoglandular typeは軽度ないし中等度の異型を示す円柱上皮細胞が絨毛状・管状に外向性発育を示す腺癌である。腸に生じる絨毛管状腺腫に類似した腺癌である。シダの葉様の絨毛状腺管を特徴とし、一部の腫瘍細胞は粘液を有する。核分裂像は散在性にみられ、間質浸潤はないか、あってもわずかに圧排性に認められるのみである。CIN3や上皮内腺癌との合併が稀ではない。他の組織型の頸部腺癌と比して予後良好である。

B. 正しい。

ヒト乳頭腫ウイルスの各型に関する婦人科病変を以下に示す。

主な病変
6、11型 尖圭コンジローマ
16型 頸部扁平上皮癌、CIN、外陰癌、Bowenoid papulosis
18型 頸部腺癌、頸部扁平上皮癌、CIN
31、33、35型 CIN、頸部扁平上皮癌
52、56、58型 CIN、頸部扁平上皮癌

C. たぶん正しいと思います。子宮頸部の腺系悪性腫瘍は進行してから見つかる場合が多いので。
D. 誤り。

最小偏倚型粘液性腺癌mucinous adenocarcinoma, minimal deviation typeは正常の内頸部腺との区別が困難な腺管である。癌の多くの腺管が、非腫瘍性腺管と区別ができないほどの高分化な形態を示すにもかかわらず、強い浸潤性増殖を示す予後不良な腺癌である。前規約の「悪性腺腫adenoma malignum」に相当する。腺の乱雑な配列、正常の深さをこえる深い浸潤性の頸管腺、核分裂像の出現が診断の指標となる。大部分の症例では少なくとも一部に不規則な形状の腺がみられ、腺細胞に核異型が観察される。また、浸潤先端部では反応性線維性間質を伴う個細胞性・クラスター状の間質浸潤をみる場合も多い。脈管および神経周囲浸潤は頻繁で、子宮傍組織や体部筋層を高頻度に侵す。他の内頸部腺増殖性病変(びまん性層状内頸部腺過形成、分葉状内頸部腺過形成、内頸部型腺筋腫など)との鑑別が必要であるが、生検のみでの診断は難しい。

E. 誤り。

上皮内腺癌adenocarcinoma in situは細胞学的に悪性の腺上皮細胞が正常の頸管腺の構造を保持したまま既存の腺上皮を置換して進展するが、間質浸潤を示さない病変である。約半数~2/3の例ではCIN2ないしCIN3と併存している。

 


3. ホルモンとその主な分泌臓器で正しい組み合わせは次のうちどれか。
A. LH-RH―視床下部
B. LH―下垂体前葉
C. FSH―下垂体後葉
D. プロゲステロン―子宮
E. エストロゲン―卵巣

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:2

解説:
A. 正しい。

視床下部には以下のホルモン産生細胞がある。
1)甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)
2)性腺刺激ホルモン放出ホルモン(LHRH)
3)成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)
4)ソマトスタチン
5)副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)
6)プロラクチン放出因子(PRF)

B. 正しい。

下垂体前葉には
1)成長ホルモンgrowth hormone(GH)
2)プロラクチンprolactin(PRL)
3)副腎皮質刺激ホルモンadrenocorticotropic hormone(ACTH)
4)黄体形成ホルモンluteinizing hormone(LH
5)卵胞刺激ホルモンfollicle stimulating hormone(FSH)
6)甲状腺刺激ホルモンthyroid stimulating hormone(TSH)
の6種のホルモン産生細胞が知られている。

C. 誤り。
D. 誤り。

卵巣ovaryは、左右1対ある楕円形の器官で、卵細胞をたくわえ、これを成熟させる器官であるとともに、卵胞ホルモンや黄体ホルモンなどの性ホルモンを分泌する内分泌腺である。卵巣実質は、中心部の髄質と表層部の皮質に区分される。卵巣の表面は、卵巣門の部分を除いて、単層の扁平ないし立方上皮で覆われる。

E. 正しい。
 


4. 絨毛性疾患について正しいものはどれか。
A. 絨毛癌は妊娠性と非妊娠性に分けられるが、多くが妊娠性である。
B. 侵入奇胎は子宮筋層内に侵入し、絨毛を認めないものである。
C. 絨毛癌では組織・細胞学的に絨毛構造を認める。
D. 全胞状奇胎と部分胞状奇胎の発生機構は異なる。
E. 絨毛癌は早期から血行性転移をきたしやすい。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:3

解説:
A. 正しい。

絨毛癌choriocarcinomaは妊娠に続発することが多い、胞状奇胎が先行することが一般的であるが、流産や正常分娩後にも生じる。異常妊娠、特に40歳以上の場合には、絨毛癌の発生率が高い傾向がある。発生頻度と民族差は胞状奇胎と平行関係にある。このほか、妊娠とは無関係に多潜能multi-potentialをもつ細胞から絨毛癌が発生することがある。卵巣、精巣、胃、縦隔などから生じるものがその例である。絨毛癌は出血、壊死に富み、浸潤性が顕著で、肺、肝、脳などに転移しやすい。絨毛構造が形成されない点は胞状奇胎や侵入奇胎との決定的な差である。腫瘍組織は細胞異型のきわめて顕著なサイトトロホブラスト(栄養膜細胞)cytotrophoblastとシンチオトロホブラスト(合胞体栄養細胞)syncytiotrophoblastとから構成される。

B. 誤り。

侵入奇胎invasive moleは絨毛構造が子宮筋層の深部にまで及ぶ。このため子宮腔内の掻爬のみでは治癒しないが、化学療法が奏効する。生物学的には、胞状奇胎と絨毛癌の中間的性質を示す。

C. 誤り。
D. 正しい。

胞状奇胎hydatidiform moleは胎児、臍帯、羊膜の欠如する全胞状奇胎total hydatidiform moleと、胎児、臍帯、羊膜をもつ部分胞状奇胎patial hydatidiform mole とがある。奇胎の多くは全胞状奇胎である。核型は46XXのものがほとんどである。部分胞状奇胎は69XXY、69XXXなどの3倍体のものが多い。

E. 正しい。
 


5. 次のうち正しいものはどれか。
A. クラミジア感染症不妊症の原因となる。
B. 性器ヘルペス感染症は小水疱や潰瘍性病変が初発病変のことが多い。
C. 外陰腟真菌症はCandida glabrataによるものが最も多い。
D. トリコモナス腟炎の原因は細菌である。
E. 老人性腟炎では主として傍基底細胞が出現する。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:2

解説:
A. 正しい。クラミジア感染による卵管炎が不妊の原因になります。

ヒトに病原性をもつクラミジアはC.trachomatis、C.psittaci、C.pneumoniaeの3種ある。C.trachomatisの中でも、血清型D-Kは尿道炎、膣・頸管・卵管炎・副睾丸炎を起こし、代表的な性感染症の1つである。血清型A-Cは結膜・角膜炎(トラコーマtrachomaという)の起因菌となる。C.psittaciはオウム病psittacosis、C.pneumoniaeは肺炎の原因となる。

B. 正しい。

単純ヘルペスウイルスherpes simplex virus(HSV-1、HSV-2)は水疱形成を特徴とするウイルスで、神経細胞に潜伏し、細胞性免疫が低下すると再発が起こる。HSV-1は口唇ヘルペスHSV-2は性器ヘルペスとも呼ばれる。

C. 誤り。カンジダ・アルビカンスが最も多いです。
D. 誤り。トリコモナスは原虫です。
E. 正しい。

老人性膣炎senile colpitisはホルモンのはたらきが消失し、重層扁平上皮の萎縮が強く抵抗力が弱くなるので感染症を起こしやすい。傍基底細胞の出現が主体となり、核増大、核萎縮、時に核破砕、核融解を示し、核縁の不整、細胞質のオレンジ好性化、時に裸核の出現をみる。核異型が強くなると老人性変化によるものか、異形成もしくは悪性細胞か、鑑別が非常に困難なことがある。このようなときエストロゲン負荷後再検すると、細胞が分化した状態となり鑑別が容易となる。

 


6. 子宮体癌について正しいのはどれか。
A. 症状は、不正性器出血が多い。
B. 好発年齢のピークは、40歳代である。
C. 肥満、喫煙のいずれも危険因子となる。
D. 乳癌治療に用いるタモキシフェンは危険因子の一つである。
E. プロゲステロンに拮抗されない持続的なエストロゲン刺激は危険因子の一つである。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:3

解説:
A. 正しい。

子宮内膜腺癌endometrial adenocarcinomaは子宮内膜の腺上皮に由来する悪性腫瘍で、その2/3以上は閉経後の発生である。頸癌と対比されることが多いが、内膜癌は子宮癌の約20%を占めている。頸癌に対する比率は年々増加の傾向にある。エストロゲン過剰状態が癌の発生・進展と関連があるとされている。しばしばエストロゲン過剰により生じる子宮内膜増殖症と合併する。主訴は不正出血が多い。

B. 誤り。
C. 消去法で誤り。肥満は子宮体癌のリスクですが、喫煙はどうなんでしょう...。
D. 正しい。

タモキシフェン(Tamoxifen:TAM)は原発乳癌の術後補助療法および閉経後再発乳癌の内分泌療法剤として最も汎用されているが、近年、TAMの長期服用により、子宮体癌の発生頻度が増加することが報告され、問題視されている。

E. 正しい。
 


7. 子宮体癌について正しい組み合わせはどれか。
A. Ⅰ型(typeⅠ)癌としては、類内膜腺癌が挙げられる。
B. Ⅱ型(typeⅡ)癌としては、明細胞腺癌が挙げられる。
C. 漿液性腺癌の背景は萎縮内膜である。
D. 類内膜腺癌は異型内膜増殖症を伴わない。
E. 類内膜腺癌のGrade 3には、腺管構造はみられない。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:1

解説:
A. 正しい。

子宮内膜癌endometrial adenocarcinomaは子宮内膜から発生する癌腫で、エストロゲンに依存性を示すⅠ型とエストロゲン非依存性のⅡ型に分けられる。Ⅰ型の大半が類内膜腺癌で占められる。Ⅱ型には漿液性腺癌や明細胞腺癌などがあり、多くが萎縮性内膜を背景に発生する。Ⅰ型に比べてⅡ型は好発年齢が高く予後不良である。

B. 正しい。
C. 正しい。
D. 誤り。

類内膜腺癌endometrioid adenocarcinomaは増殖期内膜腺上皮に類似性を示す腺癌である。多くは管状構造を特徴とし、高分化なものでは内膜腺上皮に類似した円柱状の腫瘍細胞が単層ないし重層化を示して基底膜に垂直に配列し、表層に向かって極性がみられる。子宮内膜異型増殖症(複雑型)とは間質浸潤の有無で区別される。

E. 誤り。

類内膜腺癌は構造異型と細胞異型(主として核異型)によって3つのGradeに分けられる。充実性胞巣の割合が増すに従ってGradeが上がるが、扁平上皮への分化や桑実胚様細胞morulaの形成はGradeには影響を与えない。核異型の程度が高度であればGradeが上がることに留意をする必要がある。すなわち、構造的にGrade1(G1)の定義を満たしても核異型が顕著であればGrade2(G2)に、同様にGrade2がGrade3(G3)になる。なお、管状構造が明瞭な癌でも強い核異型を示すものは、漿液性腺癌や明細胞腺癌などのⅡ型体癌との鑑別を要する。
Grade1:明瞭な腺管構造が大半を占め、充実性胞巣からなる領域5%以下。
Grade2:充実性胞巣からなる領域が5%をこえるが50%以下。ただし、充実性成分が5%以下でも核異型が強い場合。
Grade3:充実性胞巣からなる領域が50%をこえる。ただし、充実性成分が50%以下でも核異型が強い場合。

 


8. 高エストロゲン状態の細胞像を示さないものはどれか。
A. 睾丸性女性化症
B. 神経性食思不振症
C. 卵巣顆粒膜細胞腫
D. 多嚢胞性卵巣
E. 高プロラクチン血症

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:2

解説:
A. 正しい。

精巣性女性化症testicular feminizationは男性半陰陽の1つで、アンドロゲン不応性が原因の男性化異常である。性腺の精巣化が正常に進みアンドロゲンも分泌されるが、標的臓器のアンドロゲンレセプタが先天的に欠損しているためにホルモン作用が発現されず、女性ホルモン優位の母体内環境により表現型が女性となる。染色体好性は46XYであり、性染色質は陰性である。家族性発生があり、その場合X染色体関連劣性遺伝である。精巣は腹腔、鼠径管または大陰唇内に存在するが、テストステロンによって誘導されるウォルフ管由来の精巣上体、精管、精嚢、射精管は欠如する。さらにジヒロドステロンによって誘導される前立腺も欠如し、男性外性器も形成されず、恥毛の発育もきわめて悪い。外性器は女性型を示すが、膣は短く盲端に終わり、子宮および卵管は欠如する。精巣性エストロゲンが正常男性に比べ増加しているため、乳房の発育は悪くない。思春期以降無月経を訴えることによって発見されることが多く、腫瘍化の危険がある精巣は摘出し、通常女性として扱う。

B. 正しい。

摂食障害(eating disorder:ED)は、体重や体型への顕著なこだわりと肥満への強い恐怖のために食行動に異常をきたす疾患で、思春期に好発する。おもに神経性食欲不振症(anorexia nervosa:AN)と神経性過食症(bulimia nervosa:BN)に大別される。ANでは、エストロゲンの欠乏や体重、体脂肪の減少に加え、低栄養(カルシウムやビタミン D の摂取不足)が骨密度の増加を妨げ、骨代謝動態を負に導いて骨量の減少をきたす。さらにグルココルチコイドの増加により骨吸収が亢進すること、激しい運動も骨量減少の要因となっている。

C. 誤り。

顆粒膜細胞腫granulosa cell tumorは顆粒膜由来の腫瘍で、境界悪性ないし悪性腫瘍である。エストロゲンやアンドロゲンを産生するものがある。成人型と若年型に分けられる。成人型の定型例では充実性腫瘍巣内にCall-Exner小体とよばれる小腔を形成する。

D. 誤り。

シュタイン・レーベンタール症候群Stein-Leventhal syndromeは初潮開始後の若年女性に発生するもので、両側の卵巣は正常の2倍程度に腫大し、多数の小嚢胞を形成する。そのためアンドロゲンやエストロゲンの過剰産生が生じ、過小月経、不妊、多毛性早熟などを来たす。下垂体のFSH、LHの分泌の異常が原因とされている。アンドロゲン過剰のほか、LH値上昇、FSH値低下を示す。卵巣の皮質は厚い線維化巣で覆われているが、この部分を含めて卵巣を部分切除すると不妊症は改善する。これは卵巣の容量が物理的に減少するためにホルモン異常に対する反応も低下するのであろうと考えられている。

E. 正しい。

PRL分泌異常症とは、下垂体PRLの分泌過剰または分泌不足による病的状態をいう。PRL分泌過剰症とPRL分泌低下症とに分けられる。PRL分泌過剰の女性では乳汁漏出-無月経を伴うことが多く、無月経-乳汁漏出症候群amenorrhea-galactorrhea syndromeと呼ばれることがある。これらの症状が分娩後に引き続き生じた場合にはChiari-Frommel症候群、下垂体腫瘍に伴う場合はForbes-Albright症候群、いずれにも属さない特発性の場合は Argonz-del Castillo 症候群と呼ばれてきたが、現在では高PRL血症hyperprolactinemiaと総称される。男性のPRL分泌過剰では、エストロゲンが低いため乳汁分泌を伴わない場合も多い。

 


9. 子宮頸部上皮内癌について誤っているものはどれか。
A. HSILに相当する。
B. 子宮頸部円錐切除の適応となる。
C. 細胞診では腫瘍性背景を示す。
D. 腫瘍細胞のN/C比は80%を超えない。
E. コルポスコピー所見では異型血管が多い。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:5

解説:
A. 正しい。

ベセスダシステム2001は、扁平上皮内病変(SIL:squamous intraepithelial lesion)という細胞診断に重きを置いた概念を用いて、これまでの診断体系を再構築した。従来、軽度異形成、中等度異形成、高度異形成、上皮内癌の4段階に分けられていたものを、軽度異型扁平上皮内病変(LSIL:low grade SIL)と高度異型上皮内病変(HSIL:high grade SIL)の2段階とした。LSILにはHPV感染(コイロサイトーシス)と軽度異形成、HSILには中等度異形成、高度異形成、上皮内癌が含まれる。

B. 正しい。

上皮内癌に対して推奨される治療は、子宮頸部円錐切除術が推奨される(グレードB)。

C. 誤り。
D. 誤り。

上皮内癌carcinoma in situ(CIS)に相当する定型的な細胞は、傍基底型悪性細胞が主体を占め、ほぼ均一な細胞初見を呈する。N/C比は高く80%以上のことが多い。ライトグリーン好性の狭小な細胞質、クロマチンは細顆粒状から顆粒状で核内に密に充満し、核型は円から卵円形で緊満感がある。時に非常に小型で、細胞異型の弱い上皮内癌細胞像もある。

E. 誤り。

コルポスコープによる異常所見の細分類を行い、その組織像とを対比し、以下の成績を得た。コルポ異常所見は病変の進行に伴い多彩化し、単独出現は扁平上皮化生・異型上皮・上皮内癌に、二者合併は上皮内癌・微小浸潤癌に、三者合併は微小浸潤癌・浸潤癌に、異型血管は浸潤癌に高頻度であった。

 


10. 次のうち正しいものはどれか。
A. 舟状細胞は高エストロゲン効果を反映している。
B. 非授乳産褥婦では早期に中層細胞が減少する。
C. 妊娠中の腟細胞診ではDderlein桿菌が増加する。
D. 妊娠すると高プロゲステロン型の中層細胞像を呈する。
E. エオジン好性指数(E. I.)が左方移動すると流産が予知される。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:4

解説:
A. 誤り。

膣上皮は妊娠中、周期性変化は停止し肥厚する。大量のエストロゲンプロゲステロンが分泌されるが、プロゲステロンエストロゲン効果を阻止し、プロゲステロン効果のみが著明となる。細胞質の辺縁は折れ曲がり、肥厚し、グリコーゲンを豊富に有する舟状細胞navicular cellが多数出現する。通常、妊娠3か月から妊娠末期まで比較的安定したパターンで持続する。そして分娩予定日になると、舟状細胞は減少し核濃縮を伴う表層細胞が出現してくる。

B. 誤り。授乳産褥婦のほうが産褥期は短いといわれていますが、中層細胞が減少する早さは授乳産褥婦と非授乳産褥婦で変わらないと思います。

妊娠分娩によって起こった母体の変化が、妊娠前の状態に戻るまでの期間を産褥期といい、約6~8週間かかる。産褥期には妊娠中に分泌されていたエストロゲンプロゲステロンは消失し、成熟指数M.I.は左方移動を示す。大きさは種々で細胞辺縁は肥厚し、一部にグリコーゲンを有する分娩後細胞post-partum cellが出現する。そして個人差はあるが徐々に卵巣機能が再現され、周期性変化を示すようになる。

C. 正しい。

デーデルライン桿菌は生理的に膣内に常在する細菌で、グラム陽性でパパニコロウ染色で淡青色に染まる。この細菌は扁平上皮に含まれるグリコーゲンの存在下に生存し乳酸を産生する。したがって膣内のpHを酸性に保ち、雑菌の繁殖を防ぎ膣の自浄作用に役立っている。デーデルライン桿菌による細胞融解は主として中層細胞に限られる。月経周期の分泌期や妊娠・ステロイドホルモン使用時や使用後に出現する。

D. 正しい。
E. 誤り。

正常妊娠において認められた舟状細胞の出現が失われ、濃縮核を有するエオジン好性細胞が出現、すなわちM.I.が右方移動を示すと流産が予想される。プロゲステロン負荷を行い細胞像が中層型に回復するときは予後良好であり、負荷後も表層型、あるいは分散型が続くときは予後不良であろうと判断できる。

 


11. ヒトパピローマウイルス(HPV)について誤っているものはどれか。
A. サブタイプは100種類以上である。
B. コイロサイトの多くは癌化する。
C. 尖圭コンジローマはHPV 16、18型感染が関与している。
D. がん抑制遺伝子に作用することで発がんに関与している。
E. HPVは直径50~55、環状構造の二本鎖DNAウイルスである。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:3

解説:
A. 正しい。

HPV は上皮(皮膚および粘膜)に感染するDNA ウイルスである。現在、HPV には100 以上の型があるが、これは発見順に番号がつけられている。

B. 誤り。

大多数のHPV 感染は一過性で症状を伴わず、臨床的な問題には至らない。新規HPV 感染の70%が1年以内に消失し、約90%が2年以内に消失する。

C. 誤り。
D. 正しい。

ハイリスク型HPV のE6 遺伝子およびE7 遺伝子には不死化機能と形質転換機能が備わっている。ハイリスク型HPV のE6 およびE7 蛋白は、主要ながん蛋白であり、細胞周期調節因子を操作して染色体異常を誘発し、アポトーシスを阻害する。基底細胞から中層細胞まではE6 およびE7 といわれる初期遺伝子領域が増幅され、表層細胞ではL1 およびL2 の後期遺伝子領域が発現する。E6 およびE7 は癌遺伝子としての性格を有し、それぞれ癌抑制遺伝子p53 およびRb の発現蛋白に結合しその機能を不活化する。また、テロメラーゼの機能を賦活化する。その結果、HPV 感染細胞では癌化への契機となる変異遺伝子を有する細胞をみつけ、修復し、あるいは不死化する機能が損なわれるので、「ブレーキ」の壊れた細胞が増殖の道を暴走することになる。L1 およびL2 遺伝子はHPV の蛋白質の殻をコードしている。金平糖のような形態をとるHPV の表面蛋白質をL1 が、凹みの部分の蛋白質をL2 が発現している。これらL1・L2 遺伝子の発現によりウイルス粒子は完成し、子宮頸部表層細胞でHPV は次の感染機会を待つこととなる。

E. 正しい。

HPV はエンベロープをもたない直径52~55μmの正二十面体粒子であり、ヒストン様蛋白質に結合した1分子の環状二重鎖DNAをキャプシド蛋白質であるL1、L2 両蛋白質が包んでいる。

 


12. 卵巣明細胞腺癌について誤っているものはどれか。
A. 子宮内膜症と関連がある。
B. Hobnail cellがみられることが多い。
C. 化学療法が有効である。
D. 卵巣癌のうち、最も多い組織型である。
E. 我が国では、欧米よりも発生頻度が高い。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:4

解説:
A. 正しい。

卵巣癌に合併する各種卵巣子宮内膜症の合併頻度を組織型別に検討したところ、明細胞腺癌や類内膜腺癌でその合併率は高率であった。また、子宮内膜症の癌化の所見としてとくに重要と思われる移行像の有無について検討したところ、卵巣子宮内膜症から癌への移行像は漿液性腺癌や粘液性腺癌ではほとんど認められなかったが、明細胞腺癌および類内膜腺癌では半数以上に移行像が認められた。

B. 正しい。

明細胞腺癌clear cell adenocarcinomaは腎細胞癌にみられるようなグリコーゲンに富む明調の細胞質をもつ明細胞clear cellや管腔内に核が飛び出したようにみえる独特の形状を示すホブネイルhobnail細胞から構成される。これに類内膜腺癌と漿液性嚢胞腺癌と粘液性嚢胞腺癌を加えた4型で全卵巣癌の80%強を占める。

C. 誤り。

組織型別の化学療法の個別化は必要であるが、明細胞腺癌や粘液性腺癌に対して、上皮性卵巣腫瘍に対する標準治療を差し替えるだけの十分なエビデンスはまだ得られていない。明細胞腺癌と粘液性腺癌は漿液性腺癌や類内膜腺癌に比べて抗がん剤による奏効率が明らかに低いことが報告されている。明細胞腺癌は本邦では24%を占めるとされ漿液性腺癌に次ぐ頻度を占めているが、欧米の臨床試験における明細胞腺癌の頻度は約8%程度と低く、標準療法がすべての組織型において最も有効であるか不明である。

D. 誤り。

卵巣癌のうち最も多い組織型は漿液性腺癌である。明細胞腺癌は欧米に比べ、本邦で高頻度にみられる。

E. 正しい。
 


13. 次の癌の発生部位と最も多い組織型の組み合わせのうち正しいものを1つ選びなさい。
1. 外陰―移行上皮癌
2. 子宮頸部―粘液性腺癌
3. 子宮体部―明細胞腺癌
4. 卵巣―漿液性腺癌
5. 卵管―扁平上皮癌


正解:4

解説:
1. 誤り。

外陰癌は、女性性器の外陰部に発生する癌で、婦人科の悪性腫瘍の中では約3%を占める稀な病気である。外陰癌の多くは50歳以上であるが、40歳以下の女性でも次第に多くみられるようになってきている。外陰癌では扁平上皮癌が最も多く、5割以上を占める。

2. 誤り。

扁平上皮癌は頸部原発の全悪性腫瘍(浸潤癌)の90%以上を占める。

3. 誤り。

子宮内膜腺癌endometrioid adenocarcinomaのなかで類内膜腺癌が最も頻度が高い。

4. 正しい。

卵巣癌のうち最も多い組織型は漿液性腺癌である。

5. 誤り。

卵管癌の組織型は漿液性腺癌が全体の60~80%を占め、次いで類内膜腺癌、移行上皮癌が10~20%を占める。

 


14. 次のうち正しいものを1つ選びなさい。
1. 放射線照射の影響により正常細胞はN/C比が上昇する。
2. 放射線照射後の核や細胞質の変化は治療後約6カ月で消失する。
3. 円錐切除後の細胞診では修復細胞が出現する.
4. 修復細胞は核クロマチンが増量する。
5. 修復細胞はASC-Hに分類する。


正解:3

解説:
1. 誤り。

放射線照射による細胞変化(急性効果)は次のものである。
〔急性効果〕(照射後ただちに表れる初期変化)
意義
放射線感受性の早期診断と治療法の選択
・治療完了時の治療効果の判定
核の変化
・核肥大 ・核周囲haloの形成
・多核形成 ・核小体の肥大
・核破砕 ・染色性の異常(赤色)
・核融解
細胞質の変化
・染色性の異常two-tone colors
・細胞質内空胞
・貪食作用
・細胞質融解
標本全体での変化
・N/C比の照射前の維持
・奇形細胞の出現
・巨細胞形成

2. 誤り
3. 正しい。

円錐切除術の術後管理について、術後4~6週には創傷部は扁平上皮に覆われ治癒する。それまでの期間、術後の感染や出血に注意しながら1週おきに観察、消毒を行う。術後2週ごろに出血することもあるので注意が必要である。術後8週後には創傷部が完全に治癒しているので細胞診にて病変の遺残を検査しなければならない。

4. 誤り。

扁平上皮あるいは円柱上皮の再生または組織の修復に際して出現する細胞を再生細胞regenerative cellまたは修復細胞repair cellとよぶ。組織領域では通常再生上皮、細胞診では修復細胞といわれることが多い。細胞質は豊富で小空胞状で薄くライトグリーン好性、結合性があり、敷石状配列、リボン様配列を呈することが多い。核は肥大し大小不同に富み、著明な核小体の肥大を認めるが、クロマチンは細顆粒状である。しかし、変化を伴ったものはクロマチンの粗大凝集化がみられ、悪性細胞とまぎらわしくなることもある。期間を置いて再検することが望ましい。

5. 誤り。修復細胞自体は異型細胞ではないのでASC-Hと判定しません。しかし修復細胞に核異型がみられた場合はASC-Hと判定することがあります。要は陰性で報告するにはリスクが高そうな細胞は再検を指示したりして、経過観察・精密検査することが大切です。

ASC-Hは核の大きさ、核クロマチンの濃さ・粗さ・分布、核縁の肥厚、核の立体感などHSILの基準を満たさない細胞である。多くは変性所見を伴っている場合や乾燥、挫滅、染色不良などにより、HSILとするには質的不足な場合である。また、問題となる細胞が標本中に少ない場合には質的不足としてASC-Hと判定する。ASC-Hは細胞の出現形態からN/C比の高い小型細胞(未熟化生細胞)と密在するシート・パターンとに分けられる。異型を伴う予備細胞や明瞭な核小体を有する修復細胞に核異型がみられればASC-Hとする判断が望ましい。

 


15. 子宮頸部の扁平上皮病変でHPV感染の細胞像として、誤っているものを1つ選びなさい。
1. 不明瞭なクロマチン(スマッジ核)
2. コイロサイト
3. 核小体の肥大
4. 異角化
5. 二核


正解:3

解説:
1. 正しい。

スマッジsmudged核はクロマチンの無構造化、濃染性の核、一種の核変性所見と考えられる。コイロサイト、異型細胞の核にみられることが多く、核内にウイルス粒子が証明される。HPV感染での出現率は高くないが、特異性は高い。

2. 正しい。

コイロサイトkoilocyteは核の周囲が広く抜けた細胞質をもつ細胞。主に表層型、中層型の扁平上皮細胞にみられる。2核細胞も認める。電子顕微鏡で核内にウイルス粒子を証明できる。HPV感染にみられる最も特徴的で、直接ウイルス感染を示唆する細胞所見である。

3. 誤り。
4. 正しい。

パラケラトサイトparakeratocyteは小型の扁平上皮細胞で、ライトグリーンないしオレンジに好染する細胞。核は小型で、時に濃縮状である。HPV感染での出現率が高い細胞所見である。

5. 正しい。
 


16. 子宮頸部病変について、誤っているものを1つ選びなさい。
1. CIN3では、しばしば腺侵襲を伴う。
2. 微小浸潤扁平上皮癌の縦軸方向の広がりは7mm以内である。
3. 非角化型扁平上皮癌では、一部には単一細胞角化を認めても良い。
4. 扁平上皮乳頭腫を構成する重層扁平上皮には異型がみられない。
5. 粘液性腺癌は、50%以上の細胞が粘液を有するものである。


正解:5

解説:
1. 正しい。

CIN3の異型細胞や核分裂像の出現は被覆上皮の全層ないしほぼ全層におよぶものである。層形成が多少は残されているものは高度異形成とよばれていたものに相当する。また、異型の出現が全層にわたるものは上皮内癌(CIS)とよばれていたものに相当する。コイロサイトーシスを伴いこともある。異型細胞が頸管腺内におよぶ腺侵襲glandular involvementがみとめることも少なくないが、間質浸潤はみとめられない。

2. 正しい。

微小浸潤扁平上皮癌microinvasive squamous cell carcinomaは微小浸潤を示す扁平上皮癌である。微小浸潤とは癌細胞の間質内浸潤を組織学的に確認することができ、かつ浸潤の深さが表層基底膜より計測して5mm以内、またその縦軸方向への広がりが7mm以内のものと定義される。

3. 正しい。

非角化型扁平上皮癌squamous cell carcinoma, nonkeratinizing typeは単一細胞核化individual cell keratinizationの出現を認めることはあるが、一部にとどまり、かつ角化真珠の形成を欠く扁平上皮癌である。扁平上皮癌のなかで最も頻度が高い。角化真珠の形成は欠くものの、少なくともどこかに単一細胞角化などの角化傾向を認めることが多い。細胞は比較的均一で細胞質に乏しく、細胞境界は不明瞭である。核クロマチンは粗で増加を示す。核分裂像が目立つ。

4. 正しい。

扁平上皮乳頭腫sqamous papillomaは扁平上皮に異型がなく、線維と血管からなる茎をもつ良性の乳頭状腫瘍である。扁平上皮乳頭腫は通常単発性で、子宮膣部あるいは扁平上皮・円柱上皮境界部squamocolumnar junction(SCJ)に好発する。コイロサイトーシスなどのHPV感染の所見は認められない。

5. 誤り。

粘液性腺癌mucinous adenocarcinomaは細胞質内粘液を有する細胞が少数でも認められる腺癌である。粘液の多寡は問わない。浸潤性子宮頸部腺癌のうち最も多い型である。

 


17. 内膜細胞診について誤っているものを1つ選びなさい。
1. 子宮外妊娠時にはArias-Stella反応が認められる.
2. 3分岐以上の多分岐集塊の存在は、内膜増殖性病変を示唆する。
3. 類内膜腺癌G1と異型内膜増殖症との鑑別は比較的容易である。
4. 癌肉腫では、重積性を示す腺癌成分と孤立散在性に出現する間質成分からなる、いわゆるtwo-cell patternを示す。
5. 卵巣癌、卵管癌由来の癌細胞が出現することがある。


正解:3

解説:
1. 正しい。

妊娠時の子宮内膜所見は特徴的であり、内膜腺は分泌像を示し、間質は浮腫状で、しばしば脱落膜様の変化を示す。さらに特徴的な所見としてArias-Stella現象と呼ばれる腺上皮の変化がある。血液中のヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)増加に対する組織反応で、正常妊娠以外にも流産や子宮外妊娠の症例でも認められる。上皮の核重積、グリコーゲン蓄積による胞体の空胞化、ならびに核腫大、核クロマチン増量などの異型を示す。

2. 正しい。

①3分岐以上の多分岐集塊の存在は腺の過剰増殖を示唆し、子宮内膜増殖症(EH)と診断できる。
②組織像を温存する集塊として採取された場合、組織類似の所見から内膜腺の過剰増殖が容易に判別され、EHと診断できることがある。
③2分岐集塊を含む有端型の増加(全腺管の30%以上)は腺の過剰増殖を示唆し、EHと診断できる。
④大型の拡張腺(大型円形集塊、バスケットボール集塊)の存在はsimple EHと診断できる。
⑤背景に出現する腺細胞は増殖期内膜腺細胞が主体をなし、分泌期内膜腺細胞の混在はまれである。
⑥上記の細胞には核異型は認められない。

3. 誤り。

子宮内膜異型増殖症atypical endometrial hyperplasiaは重積異常、核密度の高い乳頭状、樹枝状集塊が出現する。核の肥大、核の大小不同、核縁肥厚、クロマチンの増量、核小体の肥大などを伴っている。類内膜腺癌Grade1との鑑別は困難である。

4. 正しい。

癌肉腫carcinosarcomaは癌腫成分と肉腫成分からなる悪性腫瘍である。上皮性・間葉性混合腫瘍の中では、最も頻度の高い腫瘍である。癌腫成分は、類内膜腺癌などの腺癌の場合が多い。肉腫成分として平滑筋肉腫、子宮内膜間質肉腫、未分化肉腫が単独で、またはさまざまな割合で混在しているものは同所性癌肉腫homologous carcinosarcomaとよばれる。肉腫成分として横紋筋肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫などの異所性成分が含まれものは異所性癌肉腫heterologous carcinosarcomaとよばれる。癌肉腫の肉眼像は特徴的である。すなわち、壊死・出血をともなう外向性、隆起性増殖を示し、子宮内腔に塊状の腫瘤を形成する。

5. 正しい。
 


18. 卵巣腫瘍について誤っているものを1つ選びなさい。
1. 漿液性腫瘍では、間質浸潤を示しても微小浸潤の範囲内にあるものは漿液性腺癌とはしない。
2. 粘液性境界悪性腫瘍は、腸型および内頸部型に亜分類される。
3. 類内膜腺癌は、漿液性腺癌に比べ、子宮内膜症を合併することが多い。
4. 成人型顆粒膜細胞腫でエストロゲン産生がみられるのは稀である。
5. 未熟奇形腫の組織学的異型度判定は未熟な神経上皮成分の含まれる割合による。


正解:4

解説:
1. 正しい。

漿液性境界悪性腫瘍serous borderline tumorは軽度から中等度の異型のある上皮が良性に比べて旺盛な増殖態度を示す。間質浸潤を示しても、微小浸潤の範囲にあるものは境界悪性腫瘍として扱い、漿液性腺癌としない。上皮細胞が多層化し、乳頭状に増殖した部分は、嚢胞内腔に細胞集塊が分離(分離増殖)あるいは浮遊(浮遊増殖)するような像を呈する。軽度ないし中等度の核異型を示し、通常、核分裂像は少ない。漿液性腺癌とは、微小浸潤の域を超える間質浸潤がないことで区別される。

2. 正しい。

粘液性境界悪性腫瘍mucinous borderline tumorは粘液性上皮が腺腫の場合に比べてより顕著な増殖を示すが、間質浸潤を欠くものをいう。腸型と内頸部様の2つに大別される。

3. 正しい。

卵巣癌に合併する各種卵巣子宮内膜症の合併頻度を組織型別に検討したところ、明細胞腺癌や類内膜腺癌でその合併率は高率であった。

4. 誤り。

顆粒膜細胞腫granulosa cell tumorは顆粒膜由来の腫瘍で、境界悪性ないし悪性腫瘍である。エストロゲンやアンドロゲンを産生するものがある。成人型と若年型に分けられる。成人型の定型例では充実性腫瘍巣内にCall-Exner小体とよばれる小腔を形成する。

5. 正しい。

未熟奇形腫immature teratomaは未熟な、あるいは種々の成熟度を示す3胚葉組織の混在からなる腫瘍で、未熟な組織、特に神経外胚葉組織を豊富にもつほど悪性度が高い。分化度により3群に分類する。
grade1:未熟な成分はわずかで、核分裂像に乏しい。
grade2:未熟な成分が中等度で、核分裂像が散見される。
grade3:未熟な成分が広範囲で、核分裂像が目立つ。

 


19. 卵巣粘液性境界悪性腫瘍のうち腸型について誤っているものを1つ選びなさい。
1. 片側に発生することが多い。
2. 腫瘍上皮細胞に杯細胞がみられる。
3. 粘液性腺腫成分が混在して出現することがある。
4. 腹水に腫瘍細胞が出現することがある。
5. 粘液性悪性腫瘍との鑑別は壊死の有無である。


正解:5

解説:
1. 正しい。

欧米の多数例の解析では、腸上皮型が粘液性境界悪性腫瘍の85~90%を占め、巨大腫瘤(平均長径18cm)を形成しやすく、40~50歳代に多く発生(平均45歳)し、片側性で多房性のことが多く、5%の原癌死が報告されている。一方、内頸部型は粘液性境界悪性腫瘍の10~15%を占め、30歳代に多く(平均33歳)みられ、両側性(35~40%)で、単房性ないし2房性までのことが多く、腹膜やリンパ節病変が15%くらいにみられ、子宮内膜症と合併(23%)しやすい。また、微小浸潤を伴ったり、進行期が進行していても予後は極めて良好といわれている。

2. 正しい。

腸型intestinal typeは杯細胞や吸収上皮細胞、パネート細胞などの形態をとる上皮で構成され、複雑な腺管構造をなす。腫瘍細胞は多層化するものがあり、通常、核異型は軽度から中等度で、核分裂像も散見される程度である。高度の核異型が認められる場合も、間質浸潤の所見がないときは「上皮内癌intraepithelial carcinomaを伴う粘液性境界悪性腫瘍」として、粘液性腺癌とは区別する。内頸部様Endocervical-likeは嚢胞内に漿液性境界悪性腫瘍を思わせるような乳頭状増殖を示す。腫瘍は細胞内粘液を有する円柱細胞や好酸性の細胞質を有する円形細胞からなる。好酸性円形細胞はしばしば多層化し、分離細胞集塊をつくる。多数の好中球が間質や嚢胞内にみられるのも特徴の一つである。細胞異型は軽度である。本腫瘍は子宮内膜症と伴うことが多く、両側発生も多い。

3. 消去法で正しい。
4. 正しい。

腹膜偽粘液腫を伴う粘液性腫瘍mucinous tumor associated with pseudomyxoma peritoneiは粘液産生の旺盛な腫瘍細胞が腹腔内に散布されて、腹腔にゼリー状の粘液が貯留する状態をいう。ただし、粘液中には腫瘍細胞をほとんど認めえないこともある。通常は腸型の境界悪性腫瘍や腺腫に起こりやすいため、消化管原発、とりわけ虫垂腫瘍由来の腹膜偽粘液腫との鑑別がしばしば問題となる。虫垂原発の場合、肉眼的に虫垂が腫大しているとは限らず、組織学的には腺腫の像を示すことが多い。したがって、原発臓器の特定には十分な検索が必要である。

5. 誤り。粘液性悪性腫瘍との鑑別は壊死ではなく間質浸潤の有無です。
 


20. 卵巣腫瘍の細胞像について誤っているものを1つ選びなさい。
1. ブレンナー腫瘍の腫瘍細胞の核には縦溝がみられる。
2. 類内膜腺癌では壊死性背景を示す事が多い。
3. 漿液性腺癌では細胞重積が著明である。
4. 粘液性腺癌は核小体の肥大がみられる。
5. 明細胞腺癌はロゼット形成を示す。


正解:5

解説:
1. 正しい。

ブレンナー腫瘍の大部分は良性腫瘍である。通常は充実性であるが嚢胞を伴うこともある。良性の充実部の細胞は、核は類円から楕円形、コーヒー豆様の核coffee-bran nucleiに、核の縦溝nuclear grooveを伴う。嚢胞部は粘液性嚢胞腺腫様の細胞像を呈する。良性ブレンナー腫瘍は腫瘍組織が固く細胞が得られ難い。悪性は移行上皮癌細胞、扁平上皮癌細胞、腺癌に類似した細胞が出現する。壊死を伴うこともある。

2. たぶん正しいと思いますが、あまり自信がないです。
3. 正しい。

漿液性腺癌は小型腺癌細胞が乳頭状の細胞集塊で出現する場合が多い(漿液性乳頭状腺癌)が、細胞異型が目立ち明細胞腺癌と鑑別を要する場合もある。石粒小体を伴うことが多い。PAS反応は基本的には陰性である。

4. 正しい。
5. たぶん誤りだと思います。明細胞腺癌でロゼット形成とは聞かない気がします。どちらかというと明細胞腺癌はのこぎりの歯(鋸歯)状と表現されます。

明細胞腺癌clear cell adenocarcinomaは腎細胞癌にみられるようなグリコーゲンに富む明調の細胞質をもつ明細胞clear cellや管腔内に核が飛び出したようにみえる独特の形状を示すホブネイルhobnail細胞から構成される。

 


婦人科は点数が取れやすそうでなかなか取れないところです。取扱い規約や治療ガイドラインからの出題も多いので、細胞診のテキストだけをみて勉強しているだけでは難しいかもしれないです。