雑記

時間があるときに細胞検査士の筆記試験の過去問を解いています

平成26年度 婦人科 筆記試験 過去問

解説を作っていたら「平成26年度 筆記試験 解答(仮)」の記事の答えが違っていたものもあったので失礼いたしました。婦人科はすでに修正させてもらっています。他のは解説が出来次第修正していこうと思っています。


 
1. 子宮について正しいものはどれですか。
A. 子宮は両側の傍中腎管(ミュラー管)の融合により形成される。
B. 扁平円柱上皮境界(SCJ)は、年齢によって移動する。
C. 子宮頸管腺には線毛は見られない。
D. 子宮頸管粘液は増殖期初期に増加する。
E. 増殖期にはエストロゲン効果はプロゲステロンにより拮抗される。


1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:1

解説:

A. 正しい。

胎生期には中胚葉系の2対の生殖管が存在する。1つは中腎管(Wolff管)で、男性では精巣上体管や精管を形成するが、女性では退縮する。もう1つは中腎傍管(Müller管)で、女性は尾方側が融合して子宮を形成し、頭方側は左右の卵管となる。融合した中腎傍管の尾方端は内胚葉系の尿生殖洞の後壁に達し、この部は隆起して洞膣球となり、これが膣を形成する。

B. 正しい。

子宮頸管の円柱上皮と子宮膣部の重層扁平上皮との接合部を扁平上皮・円柱上皮境界部squamocolumnar junction(SCJ)とよび、子宮頸癌の好発部位として重要である。SCIは年齢によって移動し、この部分が外方に移動すると子宮膣部びらんとして認識され、閉経婦人では子宮頸管内に退縮することが多い。

C. 誤り。

子宮頸部uterine cercixは、子宮の下1/3の部分で、下部は子宮膣部となり膣内に突出し重層扁平上皮で覆われている。その上部の子宮頸部は頸管内膜で覆われており、主に粘液産生性の円柱上皮細胞により、また一部は線毛円柱上皮により構成されている。

D. 誤り。

子宮頸腺endcervical glandの分泌活動はエストロゲンによって制御され、排卵時に最高となる。頸腺の分泌物は性行時に膣を潤滑にし、また最近の子宮腔への親友を阻止するためのバリアとして作用する。排卵時には、頸管粘液は粘性が低下して水溶性になり、精子が移動するのに至適なアルカリ性pHとなる。排卵時にはイオンが多く含まれるために、粘液がシダの葉状の結晶を形成する。この頸管粘液の特徴は、排卵が起こる時期を評価するために臨床的にも利用されている。排卵後、頸管粘液は非常に粘性が増して酸性pHとなり、精子の進入や生存にとっては有害となる。

E. 誤り。


 
2. ヘルペス感染症の所見で正しいものはどれですか。
A. コーヒー豆様の核溝
B. 多核
C. すりガラス様の核
D. 核周囲の明庭
E. 核分裂

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:3

解説:

A. 誤り。

単純疱疹ウイルス感染herpes simplex virus infectionは若い女性に多く、性感染症sexually transmitted disease(STD)の1つである。感染患者の膣内容は、デーデルライン桿菌の見出されない清浄度の低下した人に多い。一般に傍基底細胞または頸管円柱上皮細胞などに感染変化を認める。核の構造はすりガラスground glass様で核内無構造、核辺縁のクロマチン凝集、核内封入体(好酸性、好塩基性)を有するときもあり、多核形成、核の圧排像などが特徴的である。

B. 正しい。
C. 正しい。
D. 誤り。
E. 誤り。


 
3. 子宮頸癌について正しいものはどれですか。
A. 上皮内癌では基底膜の破綻が認められる。
B. ⅠA1期では間質浸潤の深さが基底膜から3~5mmである。
C. ⅡB2期では、癌が頸部をわずかに超えて広がっている。
D. ⅢB期には子宮傍結合組織の癌浸潤による水腎症が含まれる。
E. ⅣA期には膀胱、直腸の粘膜への浸潤を認める。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:5

解説:

A. 誤り。

新FIGO臨床進行期分類(2008年)

I期 癌が子宮頸部に限局するもの(体部浸潤の有無は考慮しない)。
IA期 組織学的にのみ診断できる浸潤癌。肉眼的に明らかな病巣はたとえ表層浸潤であってもIB 期とする。浸潤は、計測による間質浸潤の深さが5mm 以内で、縦軸方向の広がりが7mm をこえないものとする。浸潤の深さは、浸潤がみられる表層上皮の基底膜より計測して5mm をこえないものとする.脈管(静脈またはリンパ管)侵襲があっても進行期は変更しない。
IA1期 間質浸潤の深さが3mm 以内で、広がりが7mm をこえないもの。
IA2期 間質浸潤の深さが3mm をこえるが5mm 以内で、広がりが7mm をこえないもの。
IB期 臨床的に明らかな病巣が子宮頚部に限局するもの、または臨床的に明らかではないがIA 期をこえるもの。
IB1期 病巣が4cm 以下のもの。
IB2期 病巣が4cm をこえるもの。
II期 癌が子宮頸部をこえて広がっているが、骨盤壁または腟壁下1/3 には達していないもの。
IIA期 腟壁浸潤が認められるが、子宮傍組織浸潤は認められないもの。
IIA1期 病巣が4cm 以下のもの。
IIA2期 病巣が4cm をこえるもの。
IIB期 子宮傍組織浸潤の認められるもの。
III 期 癌浸潤が骨盤壁にまで達するもので、腫瘍塊と骨盤壁との間にcancer free space を残さない。または、腟壁浸潤が下1/3 に達するもの。
IIIA 期 腟壁浸潤は下1/3 に達するが、子宮傍組織浸潤は骨盤壁にまでは達していないもの。
IIIB 期 子宮傍組織浸潤が骨盤壁にまで達しているもの。または明らかな水腎症や無機能腎を認めるもの。
IV 期 癌が小骨盤腔をこえて広がるか、膀胱、直腸粘膜を侵すもの。
IVA期 膀胱、直腸粘膜への浸潤があるもの。
IVB期 小骨盤腔をこえて広がるもの。

B. 誤り。
C. 誤り。上の分類の中にⅡB2期がないですが、旧分類にあったのでしょうか。よくわかりません。
D. 正しい。
E. 正しい。


 
4. 正しいものはどれですか。
A. 内膜細胞診において、漿液性腺癌ではときに砂粒体が認められる。
B. 子宮体癌において、腹水細胞診または腹腔内洗浄細胞診陽性の場合手術進行期分類はⅢA期となる。
C. 内膜細胞診による内膜増殖症の検出率は80% 以上である。
D. 内膜細胞診において、不規則増殖内膜と単純型子宮内膜増殖症との鑑別には嚢胞状腺管の存在が参考となる。
E. 内膜細胞診において、異型内膜増殖症複雑型とG1類内膜腺癌との鑑別にはクラスター辺縁の結合性低下(ほつれ)の所見が参考となる。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:

A. 正しい。

漿液性腺癌serous adenocarcinomaは閉経後症例が多く、予後の極めて悪い腫瘍である。間質茎を中心に乳頭状増殖を呈する大きな集塊や、やや小さな集塊および散在性に出現する。核異型はかなり強い像が多い。核は円から類円形一部不整で増大し、大小不同、時に多核化を伴う。クロマチンはやや不均一な分布を示し、核縁肥厚を認める。核小体は腫大することが多い。砂粒小体を認めることが多く、特徴的な所見の1つである。

B. 誤り。

陽性腹腔洗浄細胞診の予後因子としての重要性については一貫した報告がないので、ⅢA 期から細胞診は除外されたが、将来再び進行期決定に際し必要な推奨検査として含まれる可能性があり、すべての症例でその結果は登録の際に記録することとした。

C. 誤り。
D. 誤り。不規則増殖内膜という言葉が出てきたのが少し驚きです。

不規則増殖内膜disordered proliferative phaseは増殖期内膜を背景に、一部の腺に極性の乱れや密在、嚢胞状拡張等がみられる。単純型子宮内膜増殖症との鑑別において、病変の広がりが局所的か(不規則増殖内膜)、びまん性か(単純型子宮内膜増殖症)が最も重要である。検体採取部位によっては、単純型子宮内膜増殖症と過剰診断される可能性がある。

E. 正しい。

子宮内膜異型増殖症atypical endometrial hyperplasiaの細胞像は重積異常、核密度の高い乳頭状、樹枝状集塊が出現する。結合性は保持されており、核の飛び出しやほつれはみられない。構成する細胞は、核の肥大や大小不同、核縁肥厚、クロマチンの増量、核小体の腫大等を伴っている。foamy cellの出現がみられれば、子宮内膜増殖症との鑑別に有用である。類内膜腺癌G1との鑑別は困難である。


 
5. 誤っているものはどれですか。
A. 閉経後の不正性器出血は、子宮体癌を疑う。
B. 乳癌術後のタモキシフェンの使用は、子宮体癌と関係がある。
C. 閉経後の超音波検査での子宮内膜肥厚は、子宮体癌を疑う。
D. 卵巣癌で内膜細胞診陽性の場合は、卵巣癌と子宮体癌の重複癌である。
E. 子宮頸癌で内膜細胞診陽性の場合は、子宮頸癌と子宮体癌の重複癌である。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:5

解説:

A. 正しい。

子宮内膜腺癌endometrial adenocacinomaはエストロゲン過剰状態が癌の発生・進展と関連があるとされている。しばしばエストロゲン過剰により生じる子宮内膜増殖症と合併する。主訴は不正出血が多い。

B. 正しい。
C. 正しい。
D. 誤り。
E. 誤り。


 
6. 誤っているものはどれですか。
A. 月経周期とは月経終了日より起算して、次回の月経開始前日までのことである。
B. 基礎体温は、プロゲステロンの作用によって分泌期に上昇する。
C. 経口避妊薬エストロゲンプロゲステロンの合剤で、子宮内膜の増殖を抑制する。
D. 卵管癌に特徴的な所見として水様性帯下がみられる。
E. 子宮内膜症は無症状で発見される場合が多い。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:

A. 誤り。月経周期は月経開始日から起算して月経終了日までです。
B. 正しい。

低温期(卵胞期)は約2週間、排卵をはさんだ高温期(黄体期)が約2週間と、低温と高温がはっきりしているのが正常な基礎体温である。

C. 正しい。
D. 正しい。

卵管癌tubal cancerの好発年齢は40~65歳(平均55歳)で約半数が閉経後である。症状のトリアスは水様帯下または性器出血、下腹痛、腹部腫瘤である.なかでも多量の水様帯下はhydrops tubae profluens として最も特徴的な臨床症状とされる。これは、水腫状になった卵管の内腔に漿液性の液体が貯留し、これが卵管平滑筋の収縮によって間歇的に子宮内腔・腟を通じて体外に排出されるものである。これに血液が混ずることも多い。典型的な水様帯下の頻度は15%未満と多くないが卵管癌を疑うべき重要な症状であり、水様帯下や不正性器出血を訴える患者では卵管癌も必ず念頭に置く必要がある。

E. 誤り。

子宮内膜症endometriosisは子宮内膜と同様の組織が子宮以外の部位に異所的に見出される病態で、主として卵巣や付属器などの骨盤腔内やリンパ節に認められるが、横隔膜や胸膜、さらに鼻腔や上腕の筋肉内に発生することがある。本症は30~40代に好発する。症状は病変の分布域や拡がりの程度によって異なるが、主なものは不妊、月経困難症、骨盤痛である。


 
7. 誤っているものはどれですか。
A. 思春期や更年期では月経不順が高頻度にみられる。
B. 更年期ではFSH は上昇傾向を示すことが多い。
C. エストロゲンは子宮内膜の分泌期変化に関与する。
D. 顆粒膜細胞腫は子宮頸癌の罹患リスクを上昇させる。
E. 多嚢胞性卵巣症候群は不妊の原因となる。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:4

解説:

A. 正しい。
B. 正しい。

更年期障害の症状は熱感、のぼせ、心悸亢進、発汗、不眠などを中心とした自律神経失 調症状と不安感、抑鬱、恐怖感、疲労感などが中心の精神神経症状の2つに分けられる。エストロゲン欠乏はいずれの症状にも関与するが、自律神経失調症状の出現との関連性が 強く、精神神経症状はホルモンの変化以外にも心理的、環境的要因が強く関与する。更年期障害の発症機序の詳細はいまだ明確ではないが、卵巣機能の低下、すなわち内因性エストロゲン濃度の低下により、negative feedback機構が作動するため、視床下部-下垂体-卵巣系に変化を生じ、視床下部は持続的な機能亢進状態となる。このため、視床下部からはLuteining hormone-Releasing hormone(LH-RH)を、下垂体からはゴナドトロピンの過剰放出を促す。したがって、その機能亢進状態は視床下部に存在する自律神経中枢へも影響を及ぼし、自律神経失調の状態となる。

C. 誤り。
D. 消去法で誤り。
E. 正しい。

多囊胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome:PCOS)は、特有の臨床症状(排卵 障害に起因する月経異常、不妊、多毛、肥満)、卵巣の特徴的形態変化(多囊胞性変化)、 内分泌異常(血中LH≧FSH、高アンドロゲン血症)を主徴とし、産婦人科臨床上比較的よく遭遇する疾患である。PCOSの臨床像は、正常に近い症例から Stein-Leventhal Syndromeのような典型例まで多岐にわたり、広範かつ多彩なスペクトラムを呈する疾患といえる。


 
8. 誤っているものはどれですか。
A. ベセスダシステムでは、CIN1~3相当の病変を2 段階に分類している。
B. LSILではCIN1とCIN2を、HSILではCIN3を推定する。
C. 細胞診では、異型腺細胞を内頸部由来か内膜由来かを判別することはできない。
D. CIN 3 以上の病変が認められた際には、子宮頸部円錐切除術や子宮摘出術を行う。
E. ASC-USと判定された際には、積極的にヒトパピローマウイルス(HPV)DNA検査を行う。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:3

解説:

A. 正しい。

ベセスダシステム2001は、扁平上皮内病変(SIL:squamous intraepithelial lesion)という細胞診断に重きを置いた概念を用いて、これまでの診断体系を再構築した。従来、軽度異形成、中等度異形成、高度異形成、上皮内癌の4段階に分けられていたものを、軽度異型扁平上皮内病変(LSIL:low grade SIL)と高度異型上皮内病変(HSIL:high grade SIL)の2段階とした。LSILにはHPV感染(コイロサイトーシス)と軽度異形成、HSILには中等度異形成、高度異形成、上皮内癌が含まれる。

B. 誤り。CIN1は軽度異形成、CIN2は中等度異形成、CIN3は高度異形成~上皮内癌に相当します。
C. 誤り。
D. 正しい。

臨床進行期分類(日本産科婦人科学会1997年)では、“0 期:上皮内癌”と規定されているが、FIGO(International Federation of Gynecology and Obstetrics)進行期分類(1993年)の0期には上皮内癌とCIN3が併記されている。CIN(cervical intraepithelial neoplasia)とは、異形成~上皮内癌を連続した病変としてとらえる考え方から付けられた名称であり、程度に応じて3 段階に分けられてきた。CIN1は軽度異形成、CIN2は中等度異形成、CIN3は高度異形成~上皮内癌に相当する。0期と診断され、円錐切除術を行った結果、浸潤がなく温存子宮に病変の遺残がない場合は円錐切除術で治療を終了とする。しかし、妊孕性温存を望まない症例には単純子宮全摘出術も考慮される。

E. 正しい。積極的という言葉がひっかかります。

ベセスダシステムでは、細胞診断報告から臨床における運用方針のガイドラインも記載されている。意義不明な扁平上皮細胞(ASC-US)では、HPV検査による判定または6か月以内の細胞診検査を行うことを、ASC-HやSIL以上の病変においてはコルポスコピーや生検を行うことが望ましいとしている。腺系病変においてもAGC以上はコルポスコピー、生検、頸管および内膜細胞診または組織診が望ましいとしている。


 
9. 正しいものはどれですか。
1. 結核エクソダス
2. クラミジア感染症―ウインナー状菌糸
3. カンジダ腟炎―クルー・セル
4. 尖圭コンジローマ―ツートーンカラー
5. トリコモナス腟炎―キャノンボール


正解:5

解説:

1. 誤り。

エクソダスexodusは月経期以後12日ごろまでの膣スメア上に、中心部に間質細胞があり、その外側を腺細胞が取り囲んでいる内膜由来の細胞をいう。

2. 誤り。ウインナー状菌糸はカンジダの仮性菌糸のことです。確かにソーセージが繋がっているようにみえます。

クラミジア症chlamydiosisは女性性器では、Chlamydia trachomatisが病原となり、膣炎、子宮頸管炎、卵管炎、子宮内膜炎などを起こし、性感染症の1つである。クラミジアは他の生物の細胞内に寄生し特有な増殖サイクルを持ち、細胞質内封入体intracyto-plasmic inclusionを形成し、核を圧排するのが特徴である。封入体内部にはヘマトキシリンに染まる小顆粒が均等ないし不均等に分布し、中心部に標的形成target formationがみられるものもある。また背景には、反応性リンパ球の出現を伴う。円柱上皮細胞、修復細胞、扁平上皮化生細胞、傍基底細胞などに感染変化を認める。

3. 誤り。

膣コリネバクテリア(Corynebacterium vaginale、Hemophilus vaginalis、Gardnerella vaginalis)は小桿菌でこれが存在するとスメア中、デーデルライン桿菌が消失する。糸玉状細胞clue cellの像を呈するのが特徴で、一般に妊娠可能年齢女性にみられる。

4. 誤り。

尖圭コンジローマcondyloma acuminatumは乳頭状発育を示し、間質は線維と血管からなる良性腫瘍である。表層の扁平上皮には通常、コイロサイトーシスなどのHPV感染の所見がみられる。

5. 正しい。

トリコモナス原虫は大きさ10~25μm大で、西洋梨状の形態を呈し、虫体はライトグリーンに淡染する。保存がいいと虫体内に赤い顆粒がみられる。核は偏在性である。通常は孤立散在性にみられるが、ときに扁平上皮細胞に群がるようにみられることがある。多数の好中球と壊死物質で汚く、好中球が球状集塊(キャノンボール)でみられる。上皮細胞は、核周明庭、細胞質の多染性(ツートンカラー)、細胞質の不明瞭化(虫食い状、核の膨化、濃染、崩壊)などがみられる。


 
10. 正常子宮内膜腺細胞について誤っているものはどれですか。
1. 増殖期には核の偽重層化がみられる。
2. 増殖期には核分裂像を認める。
3. 分泌中期には増殖期に比べ核は円形で小さくなる。
4. 分泌期初期には内膜腺核下にグリコーゲンを含んだ空胞がみられる。
5. 閉経後には萎縮し、細胞診では平面的なシート状や、短導管状、短筒状で認められる。


正解:3

解説:

1. 正しい。

増殖期は月経によって剝脱した機能層が再生する時期である。腺上皮の核は偽重層を示し、各分裂像も散見される。

2. 正しい。
3. 誤り。

分泌期中期の細胞集団は単層のシート状になって出現することが多い。核は肥大し、淡明となり、核小体明瞭となる。細胞質は豊富でレース状となり、細胞境界は明瞭となるため、蜂巣(honey comb)様構造となる。

4. 正しい。

分泌期になると、腺管は菊花側に配列する。分泌早期に、排卵が起こったことの最初の組織学的証拠は核下空胞の出現で、排卵後3日目に最も顕著になり、ピアノの鍵盤のような様相を呈する。

5. 正しい。

閉経後の細胞集団はシート状として、あるいは短導管状・短筒状を呈する。核密度は比較的高く、一見すると増殖期の内膜腺細胞に類似しているが、核は小型化し均一で核内構造は均質・無構造様である。また、増殖期の内膜腺のように核内にクロモセンターをみることはない。


 
11. 子宮頸部扁平上皮病変の組織学的所見について誤っているものはどれですか。
1. コイロサイトーシスが認められるのみでもCIN1と判定する。
2. CIN3はしばしば腺侵襲を伴うが、間質浸潤とは判定しない。
3. 単一細胞角化が認められれば角化型扁平上皮癌とする。
4. コンジローマ様癌は、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染に特徴的な所見を有する扁平上皮癌である。
5. 疣いぼ状癌は、間質浸潤部の先端が膨張性の上皮突起を形成する高度に分化した扁平上皮癌である。


正解:3

解説:組織分類と診断基準に関する問題はよく出題されています。

1. 正しい。

CIN1(軽度異形成mild dysplasia)は扁平上皮の層形成や極性の乱れが上皮下層1/3に限局する扁平上皮内異型病変である。コイロサイトーシスが認められるだけでもCIN1と判定される。HPV感染による細胞異型であるコイロサイトーシスは、CINの診断において見逃してはならない重要な所見である。ただし、コイロサイトーシスが認められても尖圭コンジローマはCINとはしない。核分裂像は下層1/3に限局して認められる。

2. 正しい。

CIN3は異型細胞や核分裂像の出現が被覆上皮の全層ないしほぼ全層におよぶものである。層形成が多少は残されているものは高度異形成とよばれていたものに相当する。また、異型の出現が全層にわたるものは上皮内癌(CIS)とよばれていたものに相当する。コイロサイトーシスを伴いこともある。異型細胞が頸管腺内におよぶ腺侵襲glandular involvementがみとめることも少なくないが、間質浸潤はみとめられない。

3. 誤り。

非角化型扁平上皮癌squamous cell carcinoma, nonkeratinizing typeは単一細胞核化individual cell keratinizationの出現を認めることはあるが、一部にとどまり、かつ角化真珠の形成を欠く扁平上皮癌である。扁平上皮癌のなかで最も頻度が高い。角化真珠の形成は欠くものの、少なくともどこかに単一細胞角化などの角化傾向を認めることが多い。細胞は比較的均一で細胞質に乏しく、細胞境界は不明瞭である。核クロマチンは粗で増加を示す。核分裂像が目立つ。

4. 正しい。

コンジローマ様癌condylomatous carcinomaは腫瘍の表層部にヒト乳頭腫ウイルスhuman papilloma virus(HPV)感染に特徴的な組織所見を呈する扁平上皮癌である。腫瘍の表層部に疣贅様変化、癌細胞の多核化、コイロサイトーシス、錯角化などのHPV感染に特徴的な組織所見を有するのが特徴である。疣状癌と異なり、浸潤部では通常の非角化型扁平上皮癌の組織像を示す。

5. 正しい。

疣(いぼ)状癌verrucous carcinomaは乳頭状外向性に発育を示し、間質浸潤部の先端が膨張性の上皮突起を形成する高分化に分化した扁平上皮癌である。乳頭状突起部の中心に血管結合織を伴わないことが特徴的であり、深部への浸潤は膨張性、圧排性である。癌細胞の異型は極めて軽度である。核分裂像も極めて少なく、あっても基底側に少数認めるに過ぎない。


 
12. 誤っているものはどれですか。
1. 舟状細胞は低エストロゲン効果を反映している。
2. エオジン好性指数(E. I.)が右方移動すると流産が危惧される。
3. 妊娠中の腟細胞診ではデーデルライン桿菌が増加する。
4. 産褥期には細胞成熟指数(M. I.)は右方移動を示す。
5. 妊娠すると高プロゲステロン型の中層細胞像を呈する。


正解:4

解説:

1. 正しい。効果という言葉がポイントですね。

膣上皮は妊娠中、周期性変化は停止し肥厚する。大量のエストロゲンプロゲステロンが分泌されるが、プロゲステロンエストロゲン効果を阻止し、プロゲステロン効果のみが著明となる。細胞質の辺縁は折れ曲がり、肥厚し、グリコーゲンを豊富に有する舟状細胞navicular cellが多数出現する。通常、妊娠3か月から妊娠末期まで比較的安定したパターンで持続する。そして分娩予定日になると、舟状細胞は減少し核濃縮を伴う表層細胞が出現してくる。

2. 消去法で正しい。「エオジン好性指数=エオシン好性細胞/ライトグリーン好性細胞」で表されますが、単純に右方移動と考えると誤った選択肢になります。エストロゲン効果を右方移動と考えると問題はないですが……。

正常妊娠において認められた舟状細胞の出現が失われ、濃縮核を有するエオジン好性細胞が出現、すなわちM.I.が右方移動を示すと流産が予想される。プロゲステロン負荷を行い細胞像が中層型に回復するときは予後良好であり、負荷後も表層型、あるいは分散型が続くときは予後不良であろうと判断できる。

3. 正しい。

デーデルライン桿菌は生理的に膣内に常在する細菌で、グラム陽性でパパニコロウ染色で淡青色に染まる。この細菌は扁平上皮に含まれるグリコーゲンの存在下に生存し乳酸を産生する。したがって膣内のpHを酸性に保ち、雑菌の繁殖を防ぎ膣の自浄作用に役立っている。デーデルライン桿菌による細胞融解は主として中層細胞に限られる。月経周期の分泌期や妊娠・ステロイドホルモン使用時や使用後に出現する。

4. 誤り。

妊娠分娩によって起こった母体の変化が、妊娠前の状態に戻るまでの期間を産褥期といい、約6~8週間かかる。産褥期には妊娠中に分泌されていたエストロゲンプロゲステロンは消失し、成熟指数M.I.は左方移動を示す。大きさは種々で細胞辺縁は肥厚し、一部にグリコーゲンを有する分娩後細胞post-partum cellが出現する。そして個人差はあるが徐々に卵巣機能が再現され、周期性変化を示すようになる。

5. 正しい。


 
13. 全胞状奇胎について誤っているものはどれですか。
1. 欧米に比して東南アジアでは少ない。
2. 染色体の核型は46、XX が多い。
3. 妊娠を契機に発生する。
4. 血清hCG 値が高い。
5. 絨毛癌への移行は稀である。


正解:1

解説:

1. 誤り。

胞状奇胎の発生は東南アジアなどの開発途上国に多く、白人に少ない。わが国での発生頻度は両者の中間である。近年減少しつつある。

2. 正しい。

胞状奇胎hydatidiform moleは胎児、臍帯、羊膜の欠如する全胞状奇胎total hydatidiform moleと、胎児、臍帯、羊膜をもつ部分胞状奇胎patial hydatidiform mole とがある。奇胎の多くは全胞状奇胎である。核型は46XXのものがほとんどである。部分胞状奇胎は69XXY、69XXXなどの3倍体のものが多い。

3. 正しい。

全胞状奇胎は精子と核の消失した卵子が受精するために生じるもので、卵子由来のゲノムは欠損しており、精子由来の遺伝子のみを保有している(雄核発生)。部分胞状奇胎は、異常のない卵子と2個の精子とが受精して生じる。

4. 正しい。
5. 正しい。

胞状奇胎は子宮内腔の掻爬によって治癒するが、数%の確率で絨毛癌が発生する。また侵入奇胎の発生はそれよりも効率である。したがって胞状奇胎は治療後も経過観察が必要とされる。通常は掻把後3年間は妊娠を避け、血中、尿中のhCGの検査すると同時に胸部X線撮影を行い、絨毛癌や侵入奇胎の発生や拡がりを監視する。


 
14. 誤っているものはどれですか。
1. クラミジア症は卵管炎の原因となる。
2. 性器ヘルペスは性器に潰瘍性または水疱性病変を形成する。
3. 腟カンジダ症を引き起こす真菌の約80~90%がCandida albicans である.
4. 尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルス(HPV)31、33型の感染が関与している。
5. 放線菌は子宮内避妊器具(IUD)との関連性がある。


正解:4

解説:

1. 正しい。

クラミジア症chlamydiosisは女性性器では、Chlamydia trachomatisが病原となり、膣炎、子宮頸管炎、卵管炎、子宮内膜炎などを起こし、性感染症の1つである。クラミジアは他の生物の細胞内に寄生し特有な増殖サイクルを持ち、細胞質内封入体intracyto-plasmic inclusionを形成し、核を圧排するのが特徴である。封入体内部にはヘマトキシリンに染まる小顆粒が均等ないし不均等に分布し、中心部に標的形成target formationがみられるものもある。また背景には、反応性リンパ球の出現を伴う。円柱上皮細胞、修復細胞、扁平上皮化生細胞、傍基底細胞などに感染変化を認める。

2. 正しい。

単純疱疹ウイルス感染herpes simplex virus infectionは若い女性に多く、性感染症sexually transmitted disease(STD)の1つである。感染患者の膣内容は、デーデルライン桿菌の見出されない清浄度の低下した人に多い。一般に傍基底細胞または頸管円柱上皮細胞などに感染変化を認める。核の構造はすりガラスground glass様で核内無構造、核辺縁のクロマチン凝集、核内封入体(好酸性、好塩基性)を有するときもあり、多核形成、核の圧排像などが特徴的である。

3. 正しい。
4. 誤り。

ヒト乳頭腫ウイルスの各型に関する婦人科病変を以下に示す。

主な病変
6、11型 尖圭コンジローマ
16型 頸部扁平上皮癌、CIN、外陰癌、Bowenoid papulosis
18型 頸部腺癌、頸部扁平上皮癌、CIN
31、33、35型 CIN、頸部扁平上皮癌
52、56、58型 CIN、頸部扁平上皮癌

5. 正しい。


 
15. 誤っているものはどれですか。
1. 分葉状内頸腺過形成の病巣の主座は、扁平円柱上皮境界(SCJ)よりも内頸部側にあることが多い。
2. コスモスサインは、最小偏倚型粘液性腺癌における特徴的な画像所見である。
3. 子宮頸部上皮内腺癌は、扁平円柱上皮境界(SCJ)付近から発生する。
4. 子宮頸部上皮内腺癌の患者平均年齢は浸潤性腺癌よりも低い。
5. 子宮頸部上皮内腺癌の発生には、ヒトパピローマウイルス(HPV)18型が大きく関与している。


正解:2

解説:

1. 正しい。
2. 誤り。

平成18~19年にかけて、日本産婦人科学会による婦人科腫瘍委員会研究として、子宮頸部悪性腺腫(adenoma malignum)とその類縁疾患についての研究が行われた。その結果、分葉状子宮頸部腺過形成(Lobular endocervical glandular hyperplasia:LEGH)診断のためのMRIの意義は大きいことが判明した。LEGHの特徴的所見としてコスモスサインと称される周辺に比較的大型の嚢胞、内部に充実性の高信号部位が存在する小型の嚢胞の存在が、頸部の比較的高位に位置して見られた。MRIの良・悪性の判定の正診率は90%異常と有用であることが判明した。しかし、LEGHの一部に癌、悪性腺腫が存在する場合は判断困難であった。

3. 正しい。
4. 正しい。
5. 正しい。


 
16. 子宮内膜症について誤っているものはどれですか。
1. 骨盤内外に発生する。
2. 不妊症の原因となる。
3. 腫瘍マーカーCA 125 値が診断に有用である。
4. 確定診断は子宮内膜全面掻爬術により行う。
5. 卵巣に発生した場合は悪性腫瘍の原因となる。


正解:4

解説:

1. 正しい。

子宮内膜症endometriosisは子宮内膜と同様の組織が子宮以外の部位に異所的に見出される病態で、主として卵巣や付属器などの骨盤腔内やリンパ節に認められるが、横隔膜や胸膜、さらに鼻腔や上腕の筋肉内に発生することがある。本症は30~40代に好発する。症状は病変の分布域や拡がりの程度によって異なるが、主なものは不妊、月経困難症、骨盤痛である。

2. 正しい。
3. 正しい。

CA-125値は子宮内膜症で高値になることもあるが、腹腔鏡と比べて子宮内膜症の診断には無効である。

4. 誤り。子宮内膜症は子宮内膜と同様の組織が子宮以外の部位に異所的に見出される病態なので、子宮体部の内膜を掻把しても意味がないです。

疾患が膣や他の場所で直視できる場合を除き、腹腔鏡で腹腔内を視診するのがゴールド・スタンダードである。

5. 正しい。

子宮内膜症endometriosisは組織学的には、子宮内膜の上皮成分と間質とが組み合わさり、島状に種々の部位に点在している。これらは機能性子宮内膜であり、しばしば周期性出血を引き起こすので、ヘモジデリンを貪食したマクロファージが認められることが多い。出血により出血性嚢胞を形成することがあり、内膜症性嚢胞endometriotic cystと呼ばれる卵巣に生じたものは内容物の性状からチョコレート嚢胞chocolate cystとも呼ばれる。チョコレート嚢胞が悪性化した場合、その病理組織型は明細胞腺癌と類内膜腺癌が大半を占める。


 
17. 子宮体癌について誤っているものはどれですか。
1. エストロゲンに依存性を示すものはⅠ型である。
2. Ⅰ型は、Ⅱ型に比して予後良好である。
3. 複雑型子宮内膜異型増殖症は、類内膜腺癌の前駆病変となる。
4. 扁平上皮への分化は、予後に影響を与えない。
5. 類内膜腺癌におけるGrade 分類には、細胞異型は考慮されない。


正解:5

解説:

1. 正しい。

子宮内膜癌endometrial adenocarcinomaは子宮内膜から発生する癌腫で、エストロゲンに依存性を示すⅠ型とエストロゲン非依存性のⅡ型に分けられる。Ⅰ型の大半が類内膜腺癌で占められる。Ⅱ型には漿液性腺癌や明細胞腺癌などがあり、多くが萎縮性内膜を背景に発生する。Ⅰ型に比べてⅡ型は好発年齢が高く予後不良である。
2. 正しい。

3. 正しい。

子宮内膜異型増殖症atypical endometrial hyperplasiaは細胞異型を伴う子宮内膜腺の過剰増殖である。細胞異型とは、主として核の腫大と円形化、空胞化、核小体の明瞭化、極性の乱れ、核の重積等をいう。単純型子宮内膜異型増殖症は日常診断上きわめて稀で、多くは複雑型である。間質浸潤を示さないことで腺癌と区別されており、すなわち非浸潤性類内膜腺癌の概念も含まれている病態である。

4. 正しい。

扁平上皮への分化を類内膜腺癌endometrioid adenocarcinoma with squamous differntiationは良性または悪性の形態を示す扁平上皮への分化が顕著な類内膜腺癌である。扁平上皮の性格を示す撃細胞には以下のような特徴がある。細胞境界が明瞭で比較的広い細胞質は好酸性あるいは淡好酸性を呈し、すりガラス状のこともある。著明な角化を伴ったり、細胞間橋が確認できる場合がある。腺管を形成する癌の成分と移行してシート状に配列する。なお。扁平上皮への分化は予後に影響を与えないことから、Gradeの決定因子である充実性胞巣とはみなされない。扁平上皮成分の異型が強くない場合は腺棘細胞癌adenoacanthoma、異型が明らかな場合は腺扁平上皮癌adenosquamous carcinomaとよばれていた。

5. 誤り。

類内膜腺癌endometrioid adenocarcinomaは増殖期内膜腺上皮に類似性を示す腺癌である。多くは管状構造を特徴とし、高分化なものでは内膜腺上皮に類似した円柱状の腫瘍細胞が単層ないし重層化を示して基底膜に垂直に配列し、表層に向かって極性がみられる。子宮内膜異型増殖症(複雑型)とは間質浸潤の有無で区別される。構造異型と細胞異型(主として核異型)によって3つのGradeに分けられる。充実性胞巣の割合が増すに従ってGradeが上がるが、扁平上皮への分化や桑実胚様細胞morulaの形成はGradeには影響を与えない。核異型の程度が高度であればGradeが上がることに留意をする必要がある。すなわち、構造的にGrade1(G1)の定義を満たしても核異型が顕著であればGrade2(G2)に、同様にGrade2がGrade3(G3)になる。なお、管状構造が明瞭な癌でも強い核異型を示すものは、漿液性腺癌や明細胞腺癌などのⅡ型体癌との鑑別を要する。
Grade1:明瞭な腺管構造が大半を占め、充実性胞巣からなる領域5%以下。
Grade2:充実性胞巣からなる領域が5%をこえるが50%以下。ただし、充実性成分が5%以下でも核異型が強い場合。
Grade3:充実性胞巣からなる領域が50%をこえる。ただし、充実性成分が50%以下でも核異型が強い場合。


 
18. 卵巣腫瘍について誤っているものはどれですか。
1. 胚細胞性腫瘍は若年者に多い。
2. 悪性転化を伴う成熟奇形腫は高齢者に多い。
3. Krukenberg 腫瘍は転移性卵巣腫瘍である。
4. 漿液性腺癌は進行癌のことが多い。
5. 子宮内膜症性嚢胞から発生する卵巣腫瘍は顆粒膜細胞腫が多い。


正解:5

解説:

1. 正しい。

胚細胞腫瘍germ cell tumorは全卵巣腫瘍の20%程度を占める。良性腫瘍が大半であるが、きわめて増殖能の旺盛な悪性度の高い腫瘍も含まれる。患者の多くは若年者である。

2. 正しい。
3. 正しい。

卵巣は多臓器からの転移を生じやすい臓器の1つである。腹腔内にあるために胃癌の転移が最も多い。わが国では転移性卵巣腫瘍の1/3は胃癌の転移巣である。その他の原発臓器としては、対側卵巣、乳腺、大腸・結腸、膵臓などがあげられる。転移は通常両側性に生じ、転移巣が腫大している場合は腹水貯留を招く。体表から触れるほどに大きくなった両側性卵巣転移巣で、クルーケンベルクKrukenberg腫瘍と呼ばれる。胃癌の転移であることが多い。

4. 消去法で正しい。
5. 誤り。

チョコレート嚢胞が悪性化した場合、その病理組織型は明細胞腺癌と類内膜腺癌が大半を占める。


 
19. 誤っているものはどれですか。
1. 腟癌では扁平上皮癌が多い。
2. 卵管癌では漿液性腺癌が多い。
3. 卵管癌では内膜細胞診は有用である。
4. 外陰癌は高齢者に好発する。
5. 子宮頸部と腟に連続した癌は腟癌と診断する。


正解:5

解説:

1. 正しい。

外陰癌は、女性性器の外陰部に発生する癌で、婦人科の悪性腫瘍の中では約3%を占める稀な病気である。外陰癌の多くは50歳以上であるが、40歳以下の女性でも次第に多くみられるようになってきている。外陰癌では扁平上皮癌が最も多く、5割以上を占める。

2. 正しい。

卵管癌の組織型は漿液性腺癌が全体の60~80%を占め、次いで類内膜腺癌、移行上皮癌が10~20%を占める。

3. 正しい。

細胞診が陽性となる頻度は高くないが、腺系悪性細胞が検出されたにもかかわらず、子宮頸管および内膜ともに病変が認められない場合は卵管癌を考慮する必要がある。

4. 正しい。
5. 誤り、

米国がん合同委員会(AJCC)の病期分類システムは、子宮が損なわれていない女性の子宮頸部に及ぶ膣の腫瘍は子宮頸がんに分類するように指示している。したがって、実際には膣先端部に発生した可能性があるものの、子宮頸部にまで進展した腫瘍は、子宮頸がんに分類される。


 
20. 子宮および卵巣悪性腫瘍の治療法として誤っているものはどれですか。
1. 子宮頸癌の放射線治療では、外部照射と腔内照射が行われる。
2. 大量腹水や胸水を認める卵巣癌は、術前化学療法の適応となる。
3. 子宮頸がんワクチンは、予防と治療に有効である。
4. 子宮頸部上皮内癌は子宮頸部円錐切除術の適応となる。
5. 子宮および卵巣悪性腫瘍の化学療法ではプラチナ製剤を第1 選択とする。


正解:3

解説:

1. 消去法で正しい。
2. 消去法で正しい。
3. 誤り。

子宮頸癌制圧のために期待されるHPVワクチンには予防ワクチンprophylactic vaccine(HPV に感染していない女性に接種してHPV 感染を予防することによって子宮頸癌の発症率の低下を目指す)と治療ワクチンtherapeutic vaccine(すでに子宮頸癌や前癌病変を発症している患者に対する免疫治療としてのワクチン)に大別される。現在、海外の多くの国々で実用化されているHPV ワクチンは予防ワクチンである。残念ながら、治療ワクチンは依然として実用化の目途が立っていない。

4. 正しい。
5. 消去法で正しい。