雑記

時間があるときに細胞検査士の筆記試験の過去問を解いています

平成25年度 技術 筆記試験 過去問

技術の過去問です。臨床検査技師の国試を思い出すような問題が多いです。


1. 正しいものはどれですか。(3)
A. 分解能とは試料にピントを合わせたとき、同時にはっきり見える上下の距離である。
B. 焦点深度とは離れた二つの点を二つの点として見分けうる最小距離である。
C. 色収差とは波長の屈折率の違いによりもたらされる。
D. 作動距離とはピントが合った時の対物レンズの先端と試料の間の距離である。
E. 視野数とは接眼レンズから見た時の観察できる範囲である。


正解:CDE

解説:

はっきりと識別できる最短距離を分解能といい、分解能δ=0.61・λ/NA(λは使用波長、NAは開口数)で表される。開口数が大きいほどδは小さく、分解能が上がる。

離れた二点をはっきりと識別できる最短距離を分解能といいます。よってAは×。

ピントを標本上の点に合わせたとき、上下方向でピントが合って見える範囲(深さ)を焦点深度という。焦点深度は開口数と総合倍率に反比例する。焦点深度はコンデンサーの開口絞り(NA絞り)でも調節される。

上下方向でピントが合って見える範囲(深さ)を焦点深度といいます。よってBは×。

同じレンズを用いてもレンズの屈折率は光の波長によって異なるため、焦点距離も光の波長によって異なり(色分散)、像の大きさと位置に差が生じる。これをレンズの色収差という。たとえば一般的な光学ガラスであるBK7の屈折率は、656 nm(赤色)と486 nm(水色)の光では、それぞれ1.5143と1.5224と異なる。

よってCは○。

標本から対物レンズ先端までの距離を作動距離という。

よってDは○。

顕微鏡で拡大されてみえる範囲は接眼レンズの視野絞りの直径(mm)で決まる。この数字を接眼レンズの視野数field numberという。視野数は接眼レンズの種類によって決まっている。実際に観察している標本上の直径(mm)で表した数字が実視野である。両者の関係は
実視野(mm)=(接眼レンズ視野数)÷(対物レンズ倍率)
で求められる。例えば、視野数20の接眼レンズと10倍の対物レンズを用いた場合、実際には標本上の直径2mmの円の部分を観察していることになる。当然、対物レンズの倍率が高いと実視野は小さくなる。

よってEは○。



2. Papanicolaou染色標本について正しいものはどれですか。(3)
A. 退行性ヘマトキシリンを使用した場合は分別操作が必要である。
B. 封入剤は高濃度で低粘性が理想的である。
C. 乾燥後の湿固定では、核が膨化しクロマチンが不鮮明になる。
D. 親水系列のアルコールは細胞の剥離が起こりにくい。
E. オレンジGは正に荷電しているので細胞内の負に荷電している物質と結合する。


正解:ABC

解説:

長い時間色素液に浸しておいて、次第に特定の組織成分が染色されてくるような染色を進行性染色という。それに対して、短時間に過剰に染色してから、目的とする成分以外の部分を特定の分別液で脱色する染色を退行性染色という。核染色に用いられるヘマトキシリン液では、マイヤー液、リリー・マイヤー液は進行性染色に、またカラッチ液、ギル液、ハリス液、ベーメル液は退行性染色に使われる。

よってAは○。
Bの選択肢に関する文献は探せませんでしたが、封入剤は粘性が低いほうが封入しやすいし(個人的には粘性が低すぎても封入しづらい)、濃度が高いほうが封入剤が乾いたときに気泡が入りにくいです。よってBは○。

パパニコロウ染色用の標本が湿固定の前に乾燥した場合、本来の形態的特徴をとどめずに次のような変化を示す。
・細胞、核が膨化する。
・異型の指標として最も重要な核クロマチンの観察が困難となる。
・染色性も変化し、本来ライトグリーンに染まる細胞質が薄いピンク色やオレンジ色に染まる。

よってCは○。

固定液とヘマトキシリンまでの系列は少なくとも1日1回は濾過し、contaminationを防止する。最後のキシロールも細胞剥離が激しいから、封入後必ず濾過しておく。

親水系列と透徹の部分では細胞剥離が激しいです。よってDは×。

OG-6液にはorange G、EA-50液にはeosinY、lightgreen SFの酸性色素が含まれている。

パパニコロウ染色で使用する色素のうち塩基性色素はビスマルクブラウンだけで他の色素は酸性色素です。オレンジGは酸性色素なので負に荷電しています。よってEは×。



3. 特殊染色について正しいものはどれですか。(3)
A. PAS反応は酸化されて生じたアルデヒド基がシッフ試薬と反応する。
B. Mucicarmine染色では上皮性粘液が染まる。
C. Oil red O染色の封入は、親水性封入剤を用いる。
D. Benin blue染色ではフェリシアン化カリウム染色液が用いられる。
E. pH2.5のalcian blue染色液ではカルボキシル基と結合しない。


正解:ABC

解説:

糖質を過ヨウ素酸で酸化して、生じたアルデヒド基をシッフ(Schiff)試薬で検出することに基づいている。したがって、本法の染色過程は過ヨウ素酸による酸化反応とシッフ試薬による呈色反応の2つの反応からなっている。シッフ試薬による呈色反応は、シッフ試薬がアルデヒト基と共有結合することに基づいている。最終反応産物の構造は、アルキルスルホネイト誘導体が生成されるという説が有力である。

よってAは○。

ムチカルミン染色法は、ムコ物質の組織化学的染色法が確立される以前から経験的に粘液の染色法として用いられてきた。特異性はアルシアン青pH2.5染色に近似するものの、間質組織の構成成分であるムコ物質(酸性ムコ多糖)に対する染色性が弱く、アルシアン青pH2.5染色の出現とともにその利用価値は薄れている。強いて応用面をあげるとすれば、病原真菌のうち莢膜がよく発達したクリプトコッカス、リノスポリジウム、ブラストミセスなどの酵母様真菌が赤色に染色される。

よってBは○。

脂肪染色は脱水透徹に有機溶剤を使用できないため、グリセリンゼラチンなどの水溶性封入剤で封入する。クリスタルマウントなどの水溶性永久封入剤を用いて表面をカバー固化した後に、キシレンを通して通常の封入操作を施すことで、永久標本とすることが可能である。

よってCは○。

ベルリン青染色Berlin blue stainは組織標本において、3価の鉄イオン、またはイオン化しうる状態で存在するヘモジデリン(血色素heamosiderin)を染めることが主な目的である。ヘモジデリンは、ヘモグロビン由来の黄褐色から茶褐色の色素で、出血後の組織や細胞内に認められる。実際には、鉄代謝異常を伴う疾患、ヘモジデローシス(hemosiderosis)、ヘモクロマトーシス(hemochromatosis)の証明として用いられる。3価の鉄イオンが、フェロシアン化カリウム(黄血塩)を欠乏すると、青色のフェロシアン化鉄(ベルリン青)が形成される。この点を利用した検出法である。この反応は、非常に鋭敏で3価の鉄イオンのみに特異的に反応する。

ベルリン青染色ではフェロシアン化カリウム染色液を使用します。よってDは×。

アルシアン青色素は構造分子の中心に銅イオンを配位した塩基性色素で、組織中の陰性荷電と静電結合をする。ただし、この静電結合は銅イオンと組織中の陰性荷電との結合ではなく、分子構造の外側に4個存在するオニウム(グアニジニウム基)のN+との結合である。pH2.5に調整された染色液ではカルボキシル基と硫酸基の両者、pH1.0に調整された染色液では硫酸基のみと静電結合する。

pH2.5のalcian blue染色液ではカルボキシル基と硫酸基が染色されます。よってEは×。



4. 免疫細胞化学染色について正しいものはどれですか。(3)
A. 液状化細胞診検体(LBC)からも染色可能である。
B. 過酸化水素メタノールで抗原賦活化が必要である。
C. 内因性ペルオキシダーゼ活性阻止にはクエン酸緩衝液を用いる。
D. 対比核染色にヘマトキシリンを用いることが多い。
E. 内因性アルカリフォスファターゼ活性阻止にはレバミゾールが用いられる。


正解:ADE

解説:
LBCは免疫染色に応用できます。よってAは○。

抗原性賦活化とはホルマリンによる蛋白架橋反応の過程でマスクされた(抗体分子が反応できなくなった)抗原決定基を何らかの方法で表面に露出させる前処理操作をさす。方法論的には①蛋白分解酵素、②加熱処理、③その他の3種に分類される。前処理による切片の剥離を防止する目的で、シラン処理スライドへの切片添付が必須事項である。 ①蛋白分解酵素(トリプシン、プロナーゼ、ペプシンなど)による前処理は、腎糸球体に沈着した免疫グロブリンや補体を再現性よく検出するのに必須の方法である。②加熱処理では、脱パラフィン切片を10mMクエン酸緩衝液(pH6)、1mM EDTA (pH8)あるいは0.1Mホウ酸(pH7)に浸漬して60℃ないし121℃で加熱する。加熱方法は、孵卵器(60℃一晩)、水槽(90℃)、マイクロウェーブ(100℃)、オートクレーブ(121℃)、圧力鍋(120℃前後)、蒸し器などさまざまである。核内抗原(MIB-1、p53蛋白、エストロゲン受容体)のほか、膜蛋白(細胞表面マーカー、EMA、bcl-2)、細胞骨格蛋白(ケラチン)、分泌蛋白(PTH)の抗原性が賦活化される。この操作により、ホルマリン固定パラフィン包埋標本で新鮮凍結切片と同等の免疫染色結果が得られることが少なくない。 なお、細胞標本でもエストロゲン受容体(ER)などの核内蛋白に対しては加熱処理が抗原性賦活化に働く点は注目に値する。この場合、核染色にはヘマトキシリンが向いている。二本鎖DNA親和性の高いメチル緑は加熱切片(DNAが一本鎖化している)の核を染色しづらい。加熱処理によって、抗原性が減弱・失活する場合もある。MIB-1 (Ki-67)は、加熱後の切片の取扱い方によってその局在性が大きく変化してしまうので注意を要する。加熱後の切片を急速に冷やすと、ゆっくりと常温に戻した場合に比べて染色性が悪いことがある。その他の賦活化法として、脳内に沈着するβ-amyloid蛋白に対する100%ギ酸処理、DNAに人工的に取り込ませたBrdUに対する2~4 N塩酸処理、細胞質内アクチン封入体に対するアルカリ(1% KOH)処理などが知られている。

抗原の賦活化には熱処理や蛋白分解酵素を用います。よってBは×。

内因性ペルオキシダーゼに対しては、ホルマリン固定パラフィン切片の場合、3%過酸化水素水による方法を推奨する。新鮮凍結切片やAMeX切片、及び細胞診標本の場合は、DAB溶液にアジ化ナトリウムを添加する方法、または0.3%過酸化水素メタノールを一次抗体反応後に使用する方法との併用を推奨する。

内因性ペルオキシダーゼ活性阻止には過酸化水素水やアジ化ナトリウムを用います。よってCは×。
免疫染色の核染色にはメチル緑やヘマトキシリンを用います。加熱処理を行った場合、核の染色性が低下するため、メチル緑よりヘマトキシリンで核染色をおこなったほうがよいです。よってDは○。

内因性アルカリフォスファターゼ活性はホルマリン固定パラフィン切片においては固定時に失活するため問題とはならない。新鮮凍結切片やAMeX切片、及び細胞診標本などで内因性アルカリフォスファターゼ活性が残存することがある。5mMレバミゾールを加えることで大部分の内因性アルカリフォスファターゼ活性は除去できるが、小腸上皮微絨毛の内因性アルカリフォスファターゼ活性は除去されない(市販の標識抗体に使用されているアルカリフォスファターゼはウシ小腸由来アルカリフォスファターゼであり、レバミゾールによる活性除去が少ない)。また、体腔液中の腺癌細胞にレバミゾール耐性のアルカリフォスファターゼ活性が証明される場合があるとの報告がある。小腸上皮微絨毛の内因性アルカリフォスファターゼ活性除去には、20%酢酸水溶液(または20%酢酸100%エタノール溶液)による切片の前処理(4℃、15秒)、あるいはPBS溶液による加温処理(65℃)が有効だが時間調整が難しく、更に抗原性の変質効果が高い。染色対象が小腸あるいは体腔液中の腺癌細胞の場合は、内因性アルカリフォスファターゼ活性の影響を考慮し、ペルオキシダーゼによる免疫染色法を行うことを推奨する。

よってEは○。



5. 医薬用外劇物どれですか。(3)
A. エタノール
B. メタノール
C. クロロホルム
D. ホルムアルデヒド
E. イソプロピルアルコール


正解:BCD

解説:下記のサイトを参照してください。
http://rcwww.kek.jp/chem/gyomu/gekibutu.html



6. 誤っているものはどれですか。(3)
A. 標識酵素ポリマー法は内因性ビオチンによる非特異的反応が生じる。
B. 免疫組織化学染色では悪性度評価はできない。
C. 細胞診標本の免疫染色は細胞転写法が有用である。
D. 細胞診標本で核内抗原の検索には加熱処理による抗原賦活化が有効である。
E. 発色基質にアミノエチルカルバゾール(AEC)を用いた場合は非水溶性封入剤を使用する。


正解:ABE

解説:

ポリマー法は、デキストランのアミノ酸ポリマー骨格に多数の二次抗体とHRP(西洋わさびペルオキシダーゼhorseradish peroxidase)を標識した試薬である。ストレプトアビジン・ビオチン化抗体法(SABまたはLSAB法)より高感度であり、内因ビオチンの影響を受けない。

ポリマー法は内因性ビオチンの影響を受けません。よってAは×。
LBCでもKi-67(MIB-1)やp53で免疫染色をして悪性度の判定をすることがあります。よってBは×。

細胞転写法とは、スライドガラス上に塗抹された材料をマリノールなどで硬め、1枚のシートとして剝離し、免疫染色など種々の染色を行うために、標本上の検体を分離して別のスライドガラス上へと再貼付する方法である。

よってCは○。

細胞標本でもエストロゲン受容体(ER)などの核内蛋白に対しては加熱処理が抗原性賦活化に働く点は注目に値する。

よってDは○。

発色基質の種類により封入剤の選択が必要な場合や染色標本の安定性が劣るものもあり、発色系の選択に際しては、これらの点にも考慮する必要がある。ジアミノベンチジン(DAB)は疎水性封入剤、アミノエチルカルバゾール(AEC)は水溶性封入剤を使用する。

DABやAECはペルオキシダーゼ染色の発色基質であり、AECは水溶性封入剤を使用します。よってEは×。



7. FISH(fluorescence in situ hybridization)法について誤っているものはどれですか。(3)
A. 染色体転座の検出に有用である。
B. 判定には位相差顕微鏡を用いる。
C. 蛍光色素を組み合わせて多重染色することはできない。
D. 肺癌のEGFR遺伝子変異の検出に用いられる。
E. 蛍光顕微鏡を用いない方法としてCISH(chromogenic in situ hybridization)法がある。


正解:BCD

解説:

FISH法はおもにDNAプローブを用い、DNAをターゲットとし、遺伝子マッピングや遺伝子異常(染色体異数性、増幅、欠失、転座等)の検出に優れている。

よってAは○。

FISH法の細胞像を観察するときは暗室で行わなければいけないため、シグナル遺伝子は蛍光を発して見やすいが、背景の細胞形態は暗くわかりづらい。また、鏡検に蛍光顕微鏡を使用しなくてはならない点や、退色という宿命を背負っているが、陽性部位の識別が容易なことや二重染色(マルチカラー)が簡単に行えるなどの利点を有している。

FISH法で判定するときは蛍光顕微鏡を用います。よってBは×。
FISH法は退色してしまいますが、陽性部位の識別が容易なことや二重染色が簡単に行えるなどの利点を有しています。よってCは×。
肺癌のEGFR遺伝子変異の検出には一般的にPCR法が用いられます。よってDは×。

Chromogenic in situ Hybridization (CISH)法は、DABなどの色素(chromogen)を用いて、組織標本上でDNAやmRNAを検出するin situ hybridization(ISH)である。FISHのように蛍光色素を用いないので蛍光顕微鏡下で行う必要がなく、光学顕微鏡下で観察できる。

よってEは○。



8. 正しいものはどれですか。(2)
A. オートスメア処理の遠心は、3000 rpm 5分で細胞変性が少ない。
B. 乳腺穿刺細胞診は腫瘍の中心部より辺縁から穿刺したほうがよい。
C. 脳脊髄液は浸透圧が低いので、遠沈および塗抹操作によって細胞が破壊されやすい。
D. 早朝尿は変性の少ない細胞成分が多く細胞診に適している。
E. 体腔液を採取する場合は細胞成分が体位下方に沈降していることが多いので仰臥位で採取するとよい。


正解:BC

解説:

スライドガラスとチャンバーの間に濾紙フィルターを使用した場合、遠心時間が1分間および3分間では、細胞は乾燥による影響をほとんど受けないが、5分間では明らかに乾燥による細胞変性が起こり、遠心時間は3分間以内にとどめることが必要である。500rpmで3分間処理した標本では、ゴム板・濾紙フィルターいずれを使用した場合も、共にスライドガラスへ塗抹される細胞数が著しく少なく、全体的に細胞がスライドガラスから浮いた感じの標本になる。1500rpmおよび2500rpmでは、適正な細胞量が得られ、良好な標本の作製が可能である。ただし、2500rpmで濾紙フィルター使用の場合には、水分の抜けが早く、細胞の乾燥を防ぐために遠心時間を調整する必要がある。一般的には、1500rpm前後の回転数による塗抹が推奨される。

オートスメアで検体処理する場合、1500rpm前後で3分以内が目安のようです。よってAは×。

線維化、壊死を起こしている可能性の高い腫瘤では中心部を避け、辺縁部を穿刺すると細胞が採取されやすい。

よってBは○。

脳脊髄液は、採取後直ちに800~1000回転で5分間遠沈し、沈渣をスライドガラスに塗抹する。検体の液量が少なすぎて遠沈できない場合は、生理的食塩水を加えて遠沈する。また、脳脊髄液は腹水あるいは胸水よりも細胞成分が乏しいため、遠沈法では診断に必要な細胞数が塗抹されないことが多く、この場合にはオートスメア法や膜濾過法を行う。さらに脳脊髄液は蛋白含有量が少なく、細胞の膨化あるいは濃縮、固定液中で細胞がガラスから剝離する可能性があり、これらを防ぐために、少量のウシアルブミンやウシ胎児血清を加えることがある。

よってCは○。

早朝尿は膀胱内の停留時間が長く細胞の変性が強いため、起床時の尿は細胞診には不適切であり、早朝排尿後3~4時間程度経過してからの尿が適している。

早朝尿は細胞の変性が強いため細胞診材料には不適切です。よってDは×。

胸水、腹水は直接穿刺あるいはドレナージによって採取される。穿刺は18ゲージの穿刺針で行われるが、長期間の仰臥位の患者では胸腹水中の癌細胞の多くが背側に沈降しているため、穿刺前に可能な限り患者の体位変換を行う必要がある。最終検体量が少ないと十分な細胞成分が得られないため、通常は100~200ml程度必要である。

穿刺で体腔液を採取する前に可能な限り患者の体位変換を行う必要があります。よってEは×。



9. Papanicolaou染色について正しいものはどれですか。(2)
A. 核小体はエオジンやライトグリーンに染まることがある。
B. 腺細胞や中皮細胞は、青緑色に染まる。
C. EA-50に含まれるビスマルクブラウンは粘液を染まる。
D. ヘマトキシリンは負荷電で、正荷電の核酸と結合する。
E. 分子量の大きさは、エオジンY<オレンジG<ライトグリーンSF yellowishの順である。B.


正解:AB

解説:

核小体の塩基性蛋白質は正に荷電しており、エオジンやライトグリーンに染色される。

よってAは○。
腺細胞や中皮細胞はライトグリーンに染まりますね。よってBは○。

EAに含まれるビスマルクブラウンBismarck brownは類脂質を染め、細胞質染色には関与しない。

ビスマルクブラウンは類脂質を染めます。よってCは×。

ヘマテイン・アルミニウムレーキは生体成分の負荷電を有する部位にはリン酸基を有する細胞核やカルボキシル基を有する細胞質等があり、ヘマテイン・アルミニウムレーキはその部位とイオン結合し、中和され最終的に青色に着色する。

ヘマテイン・アルミニウムレーキは正に荷電しています。よってDは×。

細胞質は、分子量の異なる3種類の色素(オレンジG、エオジンY、ライト緑SF)の細胞への拡散度の相違によって染め分けられる。いずれも酸性色素である3種類の色素のなかで最も分子量の小さいオレンジGが、構築が密で間隙の狭い細胞質(扁平上皮細胞の表層細胞、扁平上皮癌の角化細胞など)に入り込み染める。オレンジGの染まりの強さは角質化の程度を示す。大きな分子量のライト緑は、細胞質密度の疎の部分へ入り込み強く結合する(扁平上皮細胞の深層細胞、非角化型扁平上皮癌細胞など)。分子の大きさが中間のエオジンYは中間のものを染める(角化程度の弱い中層型に近い表層型扁平上皮細胞など)。細胞質構築の疎な部位には小分子のオレンジGも入り込むが、分子活動が活発なため疎な部分とは安定した結合が生じにくい。リンタングステン酸は、染色液のpH値調整と選択的染色に関与すると考えられている。

分子量はオレンジG<エオジンY<ライトグリーンSFの順です。よってEは×。



10. 誤っているものはどれですか。(2)
A. 光学顕微鏡には励起フィルターが付いている。
B. 油浸対物レンズは検鏡のたびにキシレンで清掃する。
C. 対物レンズに記載されている0.17はカバーガラスの厚さを意味している。
D. 補正環付き対物レンズはカバーガラスの厚さの誤差を補正する機構である。
E. 高倍率の対物レンズほど開口数は大きい。


正解:AB

解説:
励起フィルターは蛍光顕微鏡についています。よってAは×。

油浸対物レンズを使用後は必ず石油ベンジン、エーテル・アルコール(7:3)、キシロールなどでレンズと標本上のオイルを十分に拭き取る。ただしキシロールは乾燥しにくく、レンズの接着剤などを溶かすといわれており、使用は控えたほうがよい。使用する場合には、払拭後に乾いた紙で吸い取る必要がある。

シレンを使ってレンズを清掃するのはあまり好ましくないです。よってBは×。

通常カバーガラスの厚さは0.17mmに規定されているが、多少の誤差があり、この誤差によって像の劣化が起こる。この誤差を補正するのが補正環である。補正環は、NA0.65以上の高性能乾燥系高倍率レンズ(通常40倍以上)に装備されている。補正環部分に記載されている数値範囲(通常0.11~0.23mm)の補正が可能である。実際にはカバーガラスにさほどの差はないので、補正環の数値0.17(カバーガラスの規定値)を中心に前後1~3目盛り動かして、最も鮮明に見える部で観察する。

よってCとDは○。

物点Oから対物レンズに入射する光線の最大角度の半分(A)の正弦に、物体(実際にはカバーガラス)と対物レンズの間の媒質の屈折率(n)を乗じた値を開口数numerical aperture(NA)という。高倍率レンズほど開口数は大きい。
NA=n・sin A
(油浸系:イマージョン・オイル n=1.52、乾燥系:空気 n=1.0)

よってEは○。



11. EUS-FNA(endoscopic ultrasound guided-fine needle aspiration)について次のうち誤っているものはどれですか。 (2)
A. 超音波内視鏡下穿刺吸引法のことで保険適用外の検査である。
B. 採取された細胞診検体は新鮮材料であるため良悪の鑑別は容易である。
C. 膵腫瘍の検体では胃粘膜や十二指腸粘膜が混入することがある。
D. 病変の性状や部位によって穿刺針を使い分ける。
E. 消化管粘膜下腫瘍に有効である。


正解:AB

解説:
EUS-FNAは日本でも2010年に保険適用になりました。よってAは×。
いくら新鮮材料でも良悪の鑑別が難しいものは難しいです(笑) よってBは×。

患者には十分な麻酔と鎮静を行い、呼吸循環動態モニタリング下に施行する。まず、膵臓の描出のためには内視鏡を胃内に挿入すると、胃体上部から膵体尾部が、十二指腸球部と下行脚からは膵頭部が描出される。目的とする病変が描出された後にはEUSにより病変を超音波画像でリアルタイムに観察しながら穿刺を行う。

膵体尾部から検体採取するときは胃粘膜、膵頭部から検体採取するときは十二指腸粘膜が混入することがあるみたいです。よってCは○。

EUS-FNAに用いる超音波内視鏡はコンベックス(リニア)型である。穿刺針は、19G、22G、25Gのものが市販されており病変の性状や部位によって使い分ける。EUSのBモード画像で病変を描出して穿刺針を病変内に刺入することにより検体を得る。得られた検体で細胞診や組織診を行うことができる。

よってDは○。

EUS-FNAの適応病変は、①膵・膵周囲腫瘤性病変、②消化管粘膜下腫瘍、③消化管周囲のリンパ節、④後縦隔腫瘤性病変、⑤EUSでしか描出されない少量の腹水や胸水、⑥消化管の上皮性腫瘍でありながら粘膜下の要素が強く通常の内視鏡下生検では診断が困難な病変、⑧副腎病変(褐色細胞腫に注意)、⑨EUSで描出される肝左葉の占拠性病変、⑩経大腸的な観察が可能な骨盤内腫瘤、などである。適応疾患に関しては本手技の普及と相まって拡大の傾向にある。

よってEは○。



12. 術中迅速細胞診について誤っているものはどれですか。(2)
A. 検体塗抹後、冷風乾燥し、直ちにPapanicolaou染色をするのがよい。
B. Papanicolaou染色では、染色時間を短縮したプロトコールで染色し、迅速性を高める。
C. PAS反応は乾燥標本を用いると細胞の剥離を防止できる.。
D. 胸腔・腹腔内洗浄細胞診では、中皮細胞は大型のシート状集塊で出現することがある。
E. 迅速Giemsa染色は、迅速性を高めるため検体採取後の乾燥は省略できる。


正解:AE

解説:
パパニコロウ染色するときは乾燥固定をしてはいけません。よってAは×。

迅速パパニコロウ染色は迅速診断用に改良されたパパニコロウ染色である。パパニコロウ染色は最も一般的な細胞診の染色法であるが、通常のパパニコロウ染色は染色に時間がかかるため、迅速診断には適さない。そこで迅速細胞診では、迅速パパニコロウ染色、サイトカラー染色などが用いられている。サイトカラー染色液は迅速パパニコロウ染色用の専用試薬として市販されているもので、染色液Ⅰ(改良ヘマトキシリン液)、染色液Ⅱ(改良ポリクローム液)、プロパノールGR液、キシレンGR液の4種類からなり、染色時間は3分程度と通常の迅速パパニコロウ染色よりも短くて済む。

よってBは○。

乾燥固定はギムザ染色、ペルオキシダーゼ染色などのための固定法であるが、PAS染色にも行われ、湿固定標本と並行して行う必要がある。液状検体、穿刺吸引物、捺印標本などの検体を塗抹後、塗抹面を直ちに扇風機、冷風ドライヤーなどで急速に乾燥させる。自然乾燥は乾燥に時間がかかり、乾燥むらが生じるため避ける必要がある。乾燥固定は短時間で乾燥が完了することが重要であり、乾燥が遅れると、細胞の凝集、核の濃染などが生じ、詳細な所見の観察に支障が生じる。

細胞の剥離を抑えることができるのは乾燥固定の特徴です。よってCは○。

手術時の体腔洗浄液では中皮細胞がシート状でみられることがある。

よってDは○。

ディフ・クイック染色ではメイ・ギムザ染色と同様に風乾(乾燥固定)した標本を用いる。染色液には固定液、染色液Ⅰ、染色液Ⅱの3種類の溶液が用いられる。染色時間は固定液から染色液Ⅰ、染色液Ⅱまで20~40秒程度と非常に短時間である。したがって、風乾や水洗を含めても1分程度で鏡検が可能である。染色後、水洗を終えた標本はスライドガラスの裏側に付いた水分をティッシュペーパーなどで拭き取りカバーガラスをかけずに直ちに顕微鏡で鏡検することができる。ディフ・クイック染色の染め上がりはメイ・ギムザ染色とほぼ同様である。

迅速ギムザ染色でも乾燥固定を省略することはできません。よってEは×。



13. 緩衝液について誤っているものはどれですか。(2)
A. 強酸とその塩を共存させた水溶液が一般的である。
B. 多少の濃度変化でもpHが大きく変動する。
C. pHは酸と共役塩基による平衡によって決定づけられている。
D. 目的に応じて様々なものが考案されている。
E. 化学物質の単離や細胞培養などに用いられている。


正解:AB

解説:

緩衝溶液には、弱酸とその共役塩基あるいは弱塩基とその共役酸との一定濃度の混合溶液を用いる。

よってAは×、Cは○。

pH緩衝溶液では、少量の酸ないし塩基が添加されても、あるいは溶液が希釈されても、pHが基本的に変化しない。

よってBは×。
トリスバッファーやリン酸緩衝生理食塩水など様々な緩衝液が目的によって使い分けられています、よってDとEは○。



14. Giemsa染色で正しいものを1つ選びなさい。(1)
1. 塗抹後、急速に乾燥させてはいけない。
2. Papanicolaou染色に比べて透過性が高い。
3. 染めすぎた時は塩酸水で脱色すると良い。
4. 染色液のpHが低いと赤味が強くなる。
5. 上皮性粘液は明瞭なメタクロマジーをおこす。


正解:4

解説:

乾燥固定は短時間で乾燥が完了することが重要であり、乾燥が遅れると、細胞の凝集、核の濃染などが生じ、詳細な所見の観察に支障が生じる。

乾燥固定はなるべく短時間で完了しましょう。よって1は×。

パパニコロウ染色はパパニコロウがショールの染色法を改良した方法を発表したことにはじまり、種々の改良法がなされてきた。要は、核の明瞭な染色であること、角化などの細胞質の状態をうまく染め分けること、重なった細胞集団でもよい透徹性で観察できることなどの目的と特徴をもっている。

ギムザ染色は重積のある細胞集塊の染色性は悪いです。よって2は×。

ギムザ希釈液の染色は、鏡検しながら染めること。染めすぎても、水を盛っておけば脱色されるので、適当なところで止める。

脱色に塩酸水なんて使うと標本が真っ赤になります(笑) よって3は×。

水洗水のpHには注意するべきである。pHが高い場合は赤色のエオジンYが溶出され、標本全体の青色が強くなる。一方、pHが低い場合は青色のアズール系色素が溶出され、標本全体に赤色が強調される。

よって4は○。

細胞診におけるギムザ染色は、①核クロマチン増量の観察に優れているため多くの臓器での悪性細胞の推定に用いられる。特に核網構造の染色性は、悪性リンパ腫を代表とする造血器腫瘍の診断とその他の悪性細胞の鑑別に必須である。また、②パパニコロウ染色で観察困難な基底膜物質や間質性粘液は異染色性(メタクロマジー)を示し同定が容易である。③乾燥標本のため高い細胞保持率を有し体腔液や脳脊髄液など液状検体には第一の染色法となる。さらに、④簡便な染色法である迅速ギムザ染色法としてはヘマカラー染色、ディフクイック染色法があり、迅速診断として威力を発揮する。

上皮性粘液ではなく間質性粘液がメタクロマジーをおこします。よって5は×。



15. 粘稠性のある検体について正しいものを1つ選びなさい。(1)
1. 細胞成分が少ないので厚く塗抹する。
2. 細胞変性する為、粘液融解剤を入れてはいけない。
3. 角度を立てて、引きガラス法で塗抹する。
4. 均等に塗抹する為、擦り合わせ回数を多くする。
5. 生理食塩水などで希釈すると良い。


正解:5

解説:

引きガラス法(Wedge 法)はスライドガラスの一端に適量を落し、引きガラスで塗抹する。引きガラス法では大型細胞集塊が引き終わりに集まりやすい。沈渣の性状と量によりスライドガラスと引きガラスの角度、スピードを調整する。細胞が多い検体や粘稠度ある検体では角度を低く、ゆっくり引く。粘稠度のない検体では、角度を高く早く引く。塗抹が厚すぎたり、赤血球が多い塗抹標本では染色中に塗抹した細胞が剥離しやすいため、塗抹は「薄すぎず厚すぎず」が鉄則である。

塗抹は薄すぎず厚すぎずが鉄則です。よって1は×。
粘性が強くてどうしようもないときは粘液融解剤も考慮しないといけないです。よって2は×。
粘稠度ある検体では角度を低くゆっくり引きましょう。よって3は×。

すり合わせ塗抹法は粘稠性の分泌物、穿刺材料、特に喀痰に適している。少量の検体を2枚のスライドガラスに挟み、検体を軽く圧迫しながら前後左右にすり合わせ、均等に塗抹する。塗抹を何度も繰り返すと細胞が破壊されて核線が形成されたり、気泡が混入したりすることがあるので注意が必要である。

すり合わせを何度も繰り返すと細胞が破壊されて核線が形成されたり、気泡が混入したりするので3回までにするといいそうです。よって4は×。
粘性が強いときは生理食塩水や低濃度のアルコールで希釈するといいそうです。よって5は○。



16. 誤っているものを1つ選びなさい。(1)
1. 位相差顕微鏡は培養細胞や液状検体中の細胞を生きた状態で観察できる。
2. 偏光顕微鏡はアミロイドの観察などに用いられる.
3. 暗視野顕微鏡は観察試料の透過光を観察する。
4. 蛍光顕微鏡はFISH(fluorescence in situ hybridization)法の判定にも用いられる.
5. 共焦点レーザー顕微鏡はスライスした断面像を観察し、三次元画像が得られる。


正解:3

解説:

位相差顕微鏡は光が厚さ・屈折率の違う物体を通過する際にできる波長のズレ(位相差)を利用する。無色透明な物質(細胞)内を光が通るときの位相差を位相差装置で明暗の差に置き換えて観察可能にした顕微鏡である。染色の必要がないので培養細胞は体腔液中の細胞を生きた状態で観察できる。コントラストを上げるため、写真撮影には緑色フィルター(主に白黒写真)ないしは青色フィルター(主にカラー写真)を用いることが多い。

よって1は○。

偏光顕微鏡は偏光装置(ポラライザーpolarizerとアナライザーanalyzer)を備えた顕微鏡で、組織・細胞診分野では複屈折性のある結晶やアミロイドの観察などに用いられる。簡易偏光装置がよく使われており、アナライザーを中間鏡筒に設置し、フィルター受けに置いたポラライザーを最も偏光効果がよい位置まで回転させて観察する。

よって2は○。

暗視野検鏡Dark field microscopyとは、顕微鏡を用いた観察において、観察試料による散乱光を観察することにより、高コントラスト・超微細構造の観察を行う技術のことで、光学顕微鏡や電子顕微鏡に用いられる手法である。暗視野検鏡を行うことを目的としている光学顕微鏡のことを暗視野顕微鏡とよぶ。

暗視野顕微鏡は観察試料の散乱光を観察します。よって3は×。

蛍光顕微鏡は蛍光装置を用いて標本上の蛍光物質を観察する顕微鏡で、蛍光物質は暗い背景に輝いて見える。自己蛍光の観察や蛍光抗体法、fluorescence in situ hybridization(FISH)法の判定に用いられる。

よって4は○。

共焦点レーザー顕微鏡は蛍光染色標本を光学的にスライスし、断層像を観察できる。コンピュータ制御で連続画像を取り込み、三次元画像が得られる。装置が高価なので、研究目的で使用されることが多いが、応用範囲は広くFISH法の判定にも用いられている。

よって5は○。



17. 誤っているものを1つ選びなさい。(1)
1. エタノール固定は細胞質の水分子と置換することにより蛋白質を凝固させる固定法である。
2. 尿検体を噴霧固定する際、その量が少ないと尿路上皮細胞の細胞質は好酸性化がみられる。
3. 固定前乾燥標本では腺上皮細胞集塊は合胞状に見えることがある。
4. 乾燥固定標本を再水和処理後に固定すると良好な標本となることがある。
5. 核内微細構造の観察は湿固定より乾燥固定のほうが適している。


正解:5

解説:

アルコール、アセトン、クロロホルム系の固定液は強力な脱水と脂質溶解により蛋白を凝固させる。剥離細胞や培養細胞などを短時間で固定する際や、水溶液であるホルムアルデヒド系固定液では組織外に溶出するような水溶性物質の保存に優れているが、脂質分析には適さない。蛋白分子に与える化学的変化は乏しいものの、組織の強い収縮硬化をもたらすため組織用の固定液としては粘液の分析や血液細胞の膜表面抗原の検出など特殊な用途に使用されることが多い。なお、気化しやすい引火性薬品を使用するので火気に注意する。

よって1は○。
固定液の量が少ないと検体が乾燥することがあるので細胞の好酸性化がみられることがあります。よって2は○。
固定前に乾燥すると細胞が膨化するので合胞状にみえることがあるかもしれません。よって3は○。

固定前に乾燥した場合は、再水和処理した後に固定すると、細胞質および核の染色性が良好になって判定しやすくなる。ただし、乾燥後アルコール固定した標本では、再水和処理を行っても染色性の改善は望めない。塗抹後乾燥してから再水和処理を施す時間が早いほど、良好な染色性が得られる。遅くても2日以内に再水和処理を行う。なお、細胞成分が非常に少ない標本では効果が少ない。方法は以下の通りである。
1)未固定で乾燥した標本の上に生理食塩水、または血清を満載し30秒~5分間おく。
2)軽く水洗した後、95%アルコールで30分以上固定し、染色する。

よって4は○。

湿固定法では、細胞の核内、細胞質内の有形物質は液相の中で浮遊しているが、固定液が浸透すると液相の脱水とともに核のクロマチンなどの一部は核膜に向かい、他は互いに凝集しあって粗大な凝集顆粒となって出現する。これらはヘマトキシリンによって鮮明に染まるようになり、核内構造が克明にみえてくるのがこの固定法の特徴であり、悪性を特徴づける核の変化を見極めるのに好都合である。また、低濃度のエタノールでは浸透力が弱いため、核の染色性が低下する。

核内の微細構造の観察はパパニコロウ染色のほうが優れています。よって5は×。



18. 液状化細胞診検体(LBC:Liquid-based cytology)について誤っているものを1つ選びなさい。(1)
1. 乾燥による不適正標本が減る。
2. 細胞の重なりの少ない、均一に塗抹された標本が作製 できる。
3. 穿刺吸引細胞診の穿刺針洗浄液にも有効である。
4. Giemsa染色にも応用できる。
5. 限られた範囲に塗抹されるためスクリーニングの効率があがる。


正解:4

解説:

直接塗抹標本、特に子宮頸部を主体とした婦人科細胞診では、綿球あるいはブラシで細胞を採取し、直接スライドガラスへ塗抹する方法が一般的であるが、直接塗抹標本では、塗抹の手技によっては乾燥による固定不良、不均一な塗抹などの鏡検に不適切な検体があったが、液状化細胞診では、ブラシなどで細胞を採取後、ブラシの先端ごと液状固定液バイアル中で固定し、thinlayer標本を作製するため、検体採取、塗抹時が原因となる不適切標本を減らすことができる。

よって1は○。

液状化細胞診liquid-based cytology(LBC法)では、採取した細胞を専用の保存液中に浮遊させた後、細胞を単層mononlayerあるいは薄層thinlayer状態で塗抹した標本を作製する方法であり、thinlayer法ともよばれる。

よって2は○。
穿刺針の中の材料もLBCの固定液で洗浄すればきれいに回収することができます。よって3は○。
アルコールベースの固定液で固定した場合Giemsa染色には適さないといわれています。よって4は×。
商品によって塗抹面積は違いますが直径13~20mm程度に塗抹されるのでスクリーニング効率は格段にあがります。よって5は○。



19. ホルムアルデヒドについて誤っているものを1つ選びなさい。(1)
1. 作業環境測定は、6ヶ月に1回定期的に測定し、記録は30年間保存する。
2. ホルムアルデヒドは、ヒトに対して発がん性があり接触性皮膚炎の一因である。
3. 労働安全衛生法の特定化学物質障害予防規則の第2類物質に指定されている。
4. 病理検査室内のホルマリン管理濃度は、0. 01 ppm以下にすることが望ましい。
5. 管理区分の第3管理区分は、作業環境が適切でないと判断される状態である。


正解:4

解説:

ホルムアルデヒドを扱う作業場は特定化学物質(第1類物質または第2類物質)を製造し、または取り扱う屋内作業場等に分類される。測定回数は6月以内ごとに1回とする。作業の保存年数は3年とするが、特別管理物質が対象の場合は30年間とする。特別管理物質は人体に対する発癌性疫学調査の結果明らかになった物質等のことをいう。

ホルムアルデヒド発癌性があるので定期測定の記録は30年間保存しなければいけません。よって1は○。
「接触皮膚炎診療ガイドライン」の中でホルムアルデヒドはアレルギー性接触皮膚炎の原因物質に挙げられています。よって2は○。
ホルムアルデヒドは特定化学物質の第2類物質に指定されています。よって3は○。下記のサイトを参照してください。
http://rcwww.kek.jp/chem/gyomu/tokkabutu.html
ホルムアルデヒドの管理濃度は0.1ppmです。よって4は×。下記のサイトを参照してください。
作業環境測定とは | JAWE -日本作業環境測定協会-

作業環境測定による管理区分は以下のように分類される。

第一管理区分 当該単位作業場所のほとんど(95%以上)の場所で気中有害物質の濃度の平均が管理濃度を超えない状態であり、作業環境管理が適切であると判断される状態である。
第二管理区分 当該単位作業場所の気中有害物質の濃度の平均が管理濃度を超えない状態であるが、第一管理区分に比べ、作業環境管理に改善の余地があると判断される状態である。
第三管理区分 当該単位作業場所の気中有害物質の濃度の平均が管理濃度を超える状態であり、作業環境管理が適切でないと判断される状態である。

よって5は○。



20. キシレンについて誤っているものを1つ選びなさい。(1)
1. 女性労働基準規則の対象物質に含まれる。
2. 第2種有機溶媒である。
3. 管理濃度は0.1ppmである。
4. 作業環境測定記録保存は3年である。
5. 暴露量を知るには、尿中のメチル馬尿酸を測定する。


正解:3

解説:
シレンは女性労働基準規則の対象物質に含まれています。よって1は○。以下のサイトを参照してください。
母性保護のための「女性労働基準規則」を改正〜生殖機能などに有害な物質が発散する場所での女性の就業を禁止、平成24年10月施行〜 |厚生労働省
シレンは第2種有機溶媒に含まれます。よって2は○。以下のサイトを参照してください。
http://rcwww.kek.jp/chem/gyomu/yuuki.html
シレンの管理濃度は50ppmです。よって3は×。以下のサイトを参照してください。
作業環境測定とは | JAWE -日本作業環境測定協会-
シレンホルムアルデヒドと同じ作業場に分類されますが発癌性が確認されていないので定期測定の保存は3年間です。よって4は○。
シレンは体内で代謝されてメチル馬尿酸として尿中に排泄されます。よって5は○。



技術の範囲はあまり傾向が変わらないので対策しやすいと思います。でも最近キシレンホルムアルデヒドに関する問題が多いような気がするので関連事項をまとめておくといいかもしれません。