雑記

時間があるときに細胞検査士の筆記試験の過去問を解いています

平成24年度 胸腹水・その他 筆記試験 過去問

1. 体腔液細胞診で正しいものはどれか。
A. 上皮性腫瘍では腺癌の頻度が高い。
B. 非上皮性腫瘍では悪性リンパ腫の頻度が高い。
C. 肝細胞癌が出現することはない。
D. 扁平上皮癌が出現することはない。
E. 尿路上皮癌が出現することはまれである。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:2

解説:
A. 正しい。

体腔液中に出現する悪性細胞のうち腺癌adenocarcinomaは、最も高頻度にみられるものである。

B. 正しい。

悪性リンパ腫malignant lymphomaは非上皮性腫瘍の中では体腔液中に出現しやすい腫瘍であり、体腔液中に出現する非上皮性腫瘍の大部分を占める。タイプによって腫瘍細胞の大きさ、細胞形、異型度がさまざまであり、すべて同じ判定基準で判定できない。また、腫瘍細胞は体腔液中で膨化したり萎縮したりするため、元来の細胞形態を伴っていないことが多い。

C. 誤り。

肝細胞癌hepatocellular carcinomaは肝内で膨張性に発育するため、体腔液中には出現し難い腫瘍の1つである。肝細胞に類似した悪性細胞がみられた場合には判定可能である。細胞質内に、胆汁色素や硝子様小体(パパニコロウ染色で緑色)を認めることができれば判定の一助となる。

D. 誤り。

扁平上皮癌squamous cell carcinomaは、体腔液中に出現する癌の頻度としては少なく、5%以下である。癌細胞の出現細胞数は少ないことが多い。原発巣が角化型であっても、体腔液中に出現する癌細胞は角化を示さないこともある。しかし角化型癌細胞が出現する場合には、多数の腫瘍細胞をみることが多い。

E. 正しい。

尿路上皮癌urothelial carcinomaの体腔液中への出現はきわめてまれである。尿路上皮癌では細胞学的特徴が乏しいため、尿路上皮癌と判定できない場合もある。

 


2. 次のうち正しいものはどれか。
A. バーキットリンパ腫はCD138陽性である。
B. 未分化大細胞型リンパ腫ではCD30陽性である。
C. バーキットリンパ腫では核片を貪食するマクロファージが目立つ。
D. 本邦にみられるバーキットリンパ腫ではEBウイルスとの関連は少ない。
E. 古典的ホジキンリンパ腫のなかで結節硬化型は少ない。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:4

解説:
A. 誤り。

Syndecan-1(SDC1)は、白血球系ではPreB cellや形質細胞にみられ、CD138に分類されているほか上皮細胞、血管平滑筋、神経細胞などの表面にもみられる。

B. 正しい。

未分化型大細胞型リンパ腫anaplastic large cell lymphomaの腫瘍細胞は大型で明瞭な核小体を有し、シート状にびまん性に増殖する。未分化癌や悪性黒色腫との鑑別が困難な場合が少なくない。通常CD30とT細胞関連抗原を発現するが、ときにT細胞関連抗原を欠くものもみられる。本リンパ腫はt(2;5)の転座型染色体異常を示す。ALK陽性例は陰性例に比して比較的予後良好である。

C. 正しい。

バーキットリンパ腫burkitt lymphomaの腫瘍細胞は単調かつびまん性に増殖し、多数の核分裂像を伴う。核片を貪食したマクロファージが多数散在性にみられ、これはstarry sky(星空)像と呼ばれる。腫瘍細胞はほぼ均一な中型細胞からなり、細胞質は狭く、好塩基性を呈する核は類円形で数個の好塩基性の小さな核小体を有する。スタンプ標本では腫瘍細胞の細胞質内に脂肪空胞がみられる。

D. 正しい。

バーキットリンパ腫burkitt lymphomaは赤道アフリカに多発する小児の高悪性度リンパ腫で、1958年Burkittによって初めて臨床学的な報告がなされた。本リンパ腫は赤道アフリカ、ニューギニアに多発するendemic型と欧米、日本などにみられるsporadic型、免疫不全関連型とに分けられる。これらには臨床病態、EBウイルスの感染頻度、染色体の切断点に相違がみられる。EBウイルス感染頻度はendemic型で95%、sporadic型で10~20%、免疫不全関連型で25~40%である。染色体異常は症例の80%にt(8;14)、5%にt(2;8)、15%にt(8;22)がみられる。

E. 誤り。

ホジキンリンパ腫の分類は結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫(NLPHL)と古典的ホジキンリンパ腫(CHL)に大別される。NLPHLが全ホジキンリンパ腫の約5%、CHLは全ホジキンリンパ腫の約95%を占める。CHLはさらにリンパ球豊富型lymphocyte-rich(LR)、結節硬化型nodular sclerosis(NS)、混合細胞型mixed cellularity(MC)、リンパ球減少型lymphocyte depleted(LD)に亜型分類されている。これらの亜型の中で、結節硬化型が最も発生頻度が高い。結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫における特異細胞は通常CD20、CD45、epithelial membranous antigen(EMA)を発現するが、CD15、CD30は発現しない。古典型ホジキンリンパ腫の特異細胞は通常、CD15、CD30を発現し、ときにCD20を発現する。ホジキンリンパ腫の特異細胞はほとんどの例ではB細胞由来であるが、稀にT細胞由来のものもある。

 


3. 次のうち正しいものはどれか。
A. 尿膜管癌は膀胱三角部に発生することが多い。
B. 膀胱癌に腺癌は認められない。
C. 精嚢上皮細胞にはリポフスチン顆粒がみられる。
D. 前立腺癌は骨に転移しやすい。
E. 膀胱癌のT分類でpTisは上皮内癌である。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:5

解説:
A. 誤り。

尿膜管癌urachal carcinomaの多くは、膀胱頂部の尿膜管の遺残組織より発生してくる腺癌である。尿膜管遺残粘膜の腸上皮化生から発生してくる腸上皮型の粘液産生性の腺癌がその大部分を占める。腺癌は早期に粘膜下浸潤を来たしやすく、また転移しやすいので、悪性度の高い癌と考えられる。

B. 誤り。

膀胱に発生する腺癌は比較的稀であるが、以下のように3つに分類される。
・尿膜管癌urachal carcinoma
・印環細胞癌signet ring cell carcinoma
・中腎癌mesonephric adenocarcinoma

C. 正しい。

精嚢上皮は異型が強くみえ、悪性と鑑別を要する。
・N/C比の比較的高い大型の細胞
・リポフスチン顆粒を含有する(褐色)
精子と共出、量的に少ない

D. 正しい。

骨に転移しやすい腫瘍の大部分は癌腫で、原発臓器としては肺、乳腺、前立腺、腎、甲状腺、消化器(胃、大腸)である。小児では神経芽細胞腫がよく骨に転移する。X線上、溶骨性、造骨性、混合性に分けられるが、大部分は溶骨性である。前立腺、カルチノイド腫瘍、乳腺では造骨性が多くみられる。骨形成、骨融解は骨芽細胞と破骨細胞による作用であり、腫瘍細胞が直接骨の新生や吸収を行っていない。転移は頭蓋骨、脊椎骨、骨盤骨に多くみられ、大腿骨や上腕骨などの長管骨が続き、手足の管状骨への転移は稀である。

E. 正しい。
 


4. 次のうち正しいものはどれか。
A. 横紋筋肉腫は高齢者に好発する。
B. 脂肪肉腫は後腹膜に好発する。
C. 明細胞肉腫はメラニン顆粒を有することがある。
D. 胞巣状軟部肉腫はPAS反応陽性の針状結晶がみられ ことがある。
E. 脊索腫は長管骨に好発する。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:4

解説:
A. 誤り。

横紋筋肉腫rhabdomyosarcomaは統計上若年者に多い。特に乳児期では胎児型が多く、発生部位も鼻咽頭部に集中している。胞巣型は、10~20歳代の頭頸部、上・下肢および体幹に発生し、多形型は高齢者の下肢に好発するといわれている。
B. 正しい。脂肪肉腫liposarcomaは軟部肉腫の中では悪性線維性組織球腫に次いで多い悪性腫瘍である。脂肪芽細胞の存在を確認することが診断で重要である。中高年者の大腿、殿部、後腹膜に好発する。

C. 正しい。

明細胞肉腫clear cell sarcomaは若年成人の膝、足関節など四肢の大関節近傍に好発し、腱および腱膜に強く付着した腫瘍を作る。末期には全身へ転移する。密に増殖する類円形ないし紡錘形の腫瘍細胞は、淡明ないし好酸性の細胞質と大型で明瞭な核小体を有する胞状核からなり、線維性間質で分葉状に区画される。少量のメラニン色素顆粒が見出されたり、免疫染色でS-100タンパク陽性の例が多いことより、軟部悪性黒色腫malignant melanoma of soft partsとも呼ばれる。

D. 正しい。

胞巣状軟部肉腫alveolar soft part sarcomaの腫瘍細胞は大型で、ライトグリーン好性の淡明な類円形ないし多辺形の豊富な細胞質を有するが、裸核状となりやすい。核は円形で濃染し、核小体の腫大が顕著である。出現態度は平面的な疎結合か孤立散在性であるが、その上皮様配列から癌の転移(腎癌)と誤ることがある。ジアスターゼ抵抗性のPAS反応陽性顆粒(針状結晶)を有する。副所見としてまれに砂粒小体を認めることがある。

E. 誤り。

脊索腫chordomaは仙骨部、脊椎、後頭蝶形骨癒合部に発生するまれな腫瘍である。酸性粘液多糖類を含む細胞間物質(アルシアンブルー染色陽性)を背景に、淡明で空胞状の細胞質を持つ腫瘍細胞(physaliphorous cell)が上皮様結合して集塊状に出現する。腫瘍細胞の細胞質内にはグリコーゲンが豊富に含まれており、PAS染色で好染する。

 


5. 中枢神経系腫瘍について正しいものはどれか。
A. 多形膠芽腫は壊死が目立つ。
B. 退形成性星細胞腫では細胞結合性に乏しい。
C. 髄芽腫ではHomer-Wright型偽ロゼットを認める。
D. 悪性リンパ腫ではホジキンリンパ腫が多い。
E. 髄膜腫は小脳テントに好発する。

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:1

解説:
A. 正しい。

膠芽腫glioblastomaは多形膠芽腫ともよばれる悪性の膠腫で、膠腫の30~40%を占め、40~60代の大脳半球(特に前頭葉と側頭葉)に好発する。肉眼的に出血、壊死が著明でそのため多彩色調を示す。組織学的には大小不同性、多形性の著明な異形細胞の密な増殖よりなり、多核の巨細胞も多数出現する。核分裂像も目立つ。短紡錘形の腫瘍細胞が壊死巣を取り囲んで柵状に配列する偽柵状配列(pseudopalisading pattern)や、血管の増殖、血管内皮細胞の腫大・増生は本腫瘍に特徴的な所見である。

B. 正しい。
C. 正しい。

ホーマー・ライト型偽ロゼットHomer Wright pseudorosetteは中心部に微細線維状の物質を有し、その回りを腫瘍細胞が放射状に取り囲むことによって形成される。髄芽腫などに認められる。

D. 誤り。

脳にも原発性のリンパ腫が発生する。頭蓋内腫瘍の約1%を占め、中高年の男性に多い。大脳半球、基底核、小脳、脳幹などに境界不鮮明な腫瘤を形成する。軟化病巣のようにみえることもある。組織学的には大部分が非ホジキンリンパ腫で、B細胞性である。腫瘍辺部では、血管周囲のVirchow-Robin腔に浸潤する傾向が強い。

E. 誤り。

髄膜腫meningiomaは髄膜に発生する良性腫瘍で、頭蓋内腫瘍としては膠腫に次いで多くみられ、脊髄でもシュワン細胞腫と並んで頻度が高い。中年もしくはそれ以後に発生し、大脳鎌、傍矢状部、大脳円蓋部などに好発する。腫瘍は淡赤色で半球状の硬い結節を作り、硬膜内面に強く癒着する。組織学的に髄膜皮型、線維型、移行型、砂粒腫型など多数の亜型に分類されている。髄膜皮型は境界不明瞭な細胞の合胞状、充実性の細胞巣からなり、線維型は細長い紡錘形細胞が主体をなす。移行型は前2者の混在したもので、毛細血管の周囲に同心円状の渦巻を形成する傾向がある。砂粒小体psammoma bodyの出現が著明にみられるものは砂粒腫型と呼ばれている。

 


6. 乳び様腹水を呈する病態として誤っているものはどれか。
A. 腸リンパ管拡張症
B. うっ血性心不全
C. メイグス症候群
D. 肝硬変症
E. フィラリア

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:4

解説:
A. 正しい。
B. 誤り。

臨床的に重要な腹水の原因を以下に示す。
・門脈圧亢進によるもの
肝前性:門脈の狭窄、閉塞、門脈血栓症、腫瘍による圧迫
肝内性:肝硬変症、慢性肝炎、肝腫瘍、アミロイドーシス、バンチ病、日本住血吸虫症
肝後性:肝静脈または下大静脈の閉塞、Budd-Chiari症候群、腫瘍による圧迫
・うっ血性心不全によるもの:弁膜症、心筋症など
・リンパ流のうっ滞によるもの:フィラリア症など
・腹膜炎によるもの:腹膜炎など
血漿コロイド浸透圧の低下によるもの:低栄養、吸収不良症候群、ネフローゼ症候群

C. 誤り。

卵巣良性腫瘍(卵巣線維腫が多い)による胸水および腹水が貯留する状態をMeigs症候群という。腫瘍の摘出により劇的に軽快する。

D. 消去法で誤り。
E. 正しい。

糸状虫症filariasisは蚊によって媒介され、リンパ管・リンパ節に寄生する線虫で、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫が有名である。炎症によるリンパ管閉塞のため、リンパ浮腫、象皮病、陰嚢水腫を起こす。

 


7. 次の組み合わせのうち誤っているものはどれか。
A. 前立腺癌―Gleason分類
B. 淡明細胞型腎細胞癌―アルシアン青染色陽性
C. 尿路上皮乳頭腫―ヒトパピローマウイルス
D. 前立腺癌―ベンチジン
E. マラコプラキア―ミカエリス・ガットマン小体

1. A. B. C.  2. A. B. E.
3. A. D. E.  4. B. C. D.
5. C. D. E.


正解:4

解説:
A. 正しい。

前立腺に発生する悪性腫瘍のほとんどは腺癌 (adenocarcinoma)であり、前立腺固有の腺房細胞由来であるためWHO分類ではacinar adenocarcinomaと記載されている。通常、日本においては、腺癌の病理組織学的分類として癌細胞の分化の程度に応じて高分化腺癌、中分化腺癌、低分化腺癌に分ける方法が採用されてきた。グリソン分類では腫瘍細胞の分化度、細胞異型を考慮せず、浸潤パターンや構造異型のみに着目して前立腺癌の形態をパターン1~5の5段階に階層化する。さらに画期的なことは、前立腺癌の組織像の多様性を考慮して量的に最も優位なパターンとそれより劣勢なパターンの数の合計をグリソンスコアとして表現する方法を導入したことである。

B. 誤り。

淡明細胞癌は、広く明るい細胞質が特徴的である。核は類円形で核小体が目立つ、核縁の肥厚は目立たない。細胞質にはグリコーゲンと脂肪が含まれている。細胞質は機械的刺激に弱く、標本作製時に強くこすったり、押しつぶされることによって細胞質が壊れやすい。この傾向は、リンパ節転移例などで一層著明であり、この腫瘍細胞の特徴的所見の1つであるといえる。

C. 消去法で誤り。
D. 誤り。

特定の職業に従事しているものに特定の癌が発生する。特定の集団における特定の物質への暴露と癌の発生を疫学的に調査し、さらに実験的に検証することで、ヒト癌の発生過程が明らかになってきた。発癌物質への暴露量と癌発生との間に用量反応関係がみられ、曝露量が少ない場合には癌発生までの潜伏期が長い傾向がみられる。

化学物質 癌の発生臓器
ベンチジン 膀胱
β-ナフチラミン 膀胱
4-アミノビフェニール 膀胱
マスタードガス
塩化ビニール 肝血管肉腫
ヒ素 肺、皮膚
ベンゼン 白血病
ベリリウム 肺肉芽腫
クロム
ニッケル 副鼻腔
アスベスト 中皮腫、肺

E. 正しい。

マラコプラキアは膀胱の肉芽腫性炎で、ミカエリス・グッドマンMichaelis-Gutmann小体と呼ばれる多核のマクロファージの細胞質内封入体が特徴的である。石灰と鉄からなる同心円状の封入体で、ヘマトキシリンに好染する。尿検体への出現はまれである。

 


8. 骨腫瘍の好発年齢の組合せで正しいものはどれか。
A. 骨肉腫―10歳代
B. Ewing肉腫―60歳
C. 軟骨肉腫―10~20歳代
D. 軟骨腫―60歳代
E. 骨巨細胞腫―20歳代

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:
A. 正しい。

骨肉腫osteosarcomaは10代の大腿骨、脛骨、上腕骨に好発する。老人の骨肉腫はまれである。血行性に肺転移を起こしやすい。本腫瘍は骨原発の腫瘍で、類骨osteoid形成が診断の決め手となる。

B. 誤り。

ユーイング肉腫Ewing sarcomaは10~30歳に発生し、男性に多い。大腿骨、脛骨、上腕骨、骨盤などに好発する。組織学的にはN/C比の高い小円形細胞からなる。PAS反応強陽性となる例がほとんどであるので、診断の参考となる。

C. 誤り。

軟骨肉腫chondrosarcomaは軟骨形成性の悪性腫瘍で、中高齢者の骨盤、大腿骨、上腕骨、肩甲骨に好発する。骨肉腫と比較して発育は緩徐で、局所再発は多いが、遠隔転移は稀である。X線所見では骨破壊性に軟骨基質が点状石灰化像および軟骨辺縁の骨化によるO型リング状陰影がみられる。

D. 誤り。

骨軟骨腫osteochondromaは軟骨帽cartilage-capで覆われた良性隆起性病変で、10代に好発する。単発性あるいは多発性にみられる。症状は腫瘤と周囲組織への圧迫によるものが多いが、中高齢まで無症状に経過して偶然発見されることもある。長管骨骨幹端に有茎性あるいは広基性に皮質骨は隆起し、中に骨内と連続した海綿骨と骨髄を入れる。有茎性では骨幹部に向かって発育を示す。

E. 正しい。

骨巨細胞腫giant cell tumor of boneは20代の四肢に好発する。頭蓋骨や手足の骨はまれである。紡錘形の間質細胞stroma cellと多数の多核巨細胞とからなる病変である。

 


9. 甲状腺癌について正しいものはどれか。
A. 濾胞癌は乳頭癌よりも血行性転移をおこしやすい。
B. 乳頭癌では細胞質に封入体がみられることが多い。
C. 甲状腺悪性リンパ腫はT細胞性が多い。
D. 未分化癌では血中カルシトニンが高値となる。
E. 髄様癌は褐色細胞腫を合併することがある。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:
A. 正しい。

甲状腺濾胞癌の好発年齢はやや高く、40~60代である。血行性転移を示し、肺などへの遠隔転移が多い。このために予後は乳頭癌と比して不良であるが、進行は同様に緩徐であるので、10年生存率は50%を超えている。

B. 誤り。

乳頭癌papillary carcinomaは、高分化の濾胞細胞由来腫瘍であり、乳頭癌の核所見のあるものを呼ぶ。乳頭癌の核所見とは、核内細胞質封入体、核溝、スリガラス状核である。乳頭構造がなくとも、これらの核所見があれば濾胞型乳頭癌と呼ぶ。リンパ節転移が高頻度にあり、再発様式も乳頭癌に近く、臨床的には乳頭癌として治療することが勧められている。乳頭癌は、わが国では最も頻度の高い甲状腺癌であり、甲状腺悪性腫瘍の90%以上を占める。乳頭癌は甲状腺内に多発する例が50%程度あり、甲状腺内転移も多く、甲状腺を全摘することが勧められている。リンパ節転移は80%以上にあり、頸部リンパ節廓清が行われる。リンパ節転移があっても、根治的に治療が可能な例では、予後は大変よく、10年生存率は90%以上である。

C. 誤り。

甲状腺非上皮性腫瘍で最も発生頻度が高いのが悪性リンパ腫である。そのなかで多くを占めるのが非ホジキンリンパ腫である。甲状腺悪性リンパ腫の多くは、橋本病すなわちリンパ濾胞を伴う自己免疫性甲状腺炎が発生母地であるといわれている。高齢女性に多い。甲状腺悪性リンパ腫は他臓器における細胞像と変わりはない。組織型の多くは非ホジキン型B細胞性であり、MALTリンパ腫とびまん性大細胞型Bリンパ腫が最も多いといわれている。

D. 誤り。
E. 正しい。

髄様癌medullary carcinomaはC細胞由来の癌である。カルシトニンを産生するのが特徴で、セロトニン、ACTH、CEAなどを産生する例もある。細胞質内に神経内分泌顆粒があり、グリメリウス染色陽性を示す。髄様癌は家族性に発症することもあり、シップル症候群Sipple syndrome(髄様癌に副腎の褐色細胞腫が合併する)も稀にみられる。

 


10. びまん性大細胞型B細胞リンパ腫について正しいものはどれか。
A. 頻度の高いリンパ腫である。
B. 腫瘍細胞は免疫染色でCD20陰性である。
C. 20歳以下の若年者に好発する。
D. 節外性臓器からは発生しない。
E. 腫瘍細胞の胞体はギムザ染色で好塩基性を呈する。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:
A. 正しい。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫diffuse large B-cell lymphomaは非ホジキンリンパ腫の中では最も頻度の高い組織型で、成人の非ホジキンリンパ腫の40~50%を占める。腫瘍細胞は小型リンパ球の2倍以上の大きさの核、あるいは組織球の核と同等大ないしそれ以上の核を有する。中等度悪性リンパ腫で、予後は比較的不良である。びまん性大細胞型Bリンパ腫には、腫瘍細胞が血管内に増殖する血管内大細胞型B細胞リンパ腫intravascular large B-cell lymphomaがある。

B. 誤り。
C. 誤り。
D. 誤り。

びまん性大細胞性B細胞型リンパ腫は全身のいかなる臓器からも発生する。

E. 正しい。
 


11. 膵内分泌について正しいものはどれか。
A. グルカゴンはA細胞から分泌される。
B. インスリンはB細胞から分泌される。
C. ソマトスタチンはC細胞から分泌される。
D. インスリンは血糖値が下がると分泌される。
D. グルカゴンは血糖の上昇を防ぐ。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:1

解説:
A. 正しい。

ランゲルハンス島のA細胞はグルカゴンglucagonを、B細胞はインスリンinsulin、D細胞はソマトスタチンsomatostatin、そしてPP細胞は膵ポリペプチドpancreatic polypeptideを産生・分泌している。

B. 正しい。
C. 誤り。
D. 誤り。

血中のグルコース濃度が上昇すると、分泌顆粒中に蓄えられていたインスリンとCペプチドはともに放出される。

E. 誤り。

グルカゴンは、29個のアミノ酸残基からなるポリペプチドで、分泌顆粒に蓄えられており、血漿中のグルコース濃度が低下すると開口放出によって分泌される。

 


12. 次のうち誤っているものはどれか。
A. 多発性骨髄腫は低カルシウム血症をきたす。
B. 慢性骨髄性白血病は汎血球減少をきたす。
C. 成人T細胞性白血病は日本の南西地域に多くみられる。
D. 骨髄腫は単クローン性免疫グロブリン(M蛋白)を産生する。
E. 原発性マクログロブリン血症では血中IgMが高値である。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:1

解説:
A. 誤り。

形質細胞性骨髄腫は骨髄での形質細胞性腫瘍性細胞増殖を基盤として、血清Mタンパクと骨融解性病変による骨破壊、骨折、骨痛、高カルシウム血症および貧血を伴う悪性腫瘍である。

B. 誤り。

慢性骨髄性白血病は多能性造血幹細胞に形質転換が起こり、3血球系統が異常増殖する慢性疾患で、慢性骨髄増殖性疾患の一つである。この疾患では9番染色体と22番染色体が相互転座し、22番染色体長腕にあるbcr遺伝子と9番染色体abl遺伝子が融合する。そしてt(9;22)(q34;q11)によって短くなった22番染色体をフィラデルフィア染色体(Ph染色体)と呼んでいる。

C. 正しい。

ヒトTリンパ球向性ウイルスhuman T-lymphotropic virusにはHTLV-1、-2があり、西日本、特に九州・沖縄に多い成人T細胞白血病adult T-cell leukemia/lymphoma(ATL)を起こすHTLV-1が重要である。ATLの多くは母乳によって感染し、40歳以上で発症する。ATLでは、腫瘍細胞の浸潤を伴う皮疹やリンパ節腫脹がみられ、末梢血にはクビレの目立つ花弁状細胞が出現する。稀に、痙性脊髄麻痺(HTLV-1関連脊髄症HTLV-1 associated myelopathy:HAM)を起こす。

D. 正しい。
E. 正しい。
 


13 体腔液細胞診で誤っているものはどれか。
A. 扁平上皮癌細胞の細胞質はPAS反応陰性である。
B. 腹膜偽粘液腫の粘液はPAS反応陽性である。
C. 中皮腫の胸腹水は粘稠である。
D. 胞質内粘液の判定にはギムザ染色が有用である。
E. 体腔液細胞診は免疫染色の対象とならない。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:5

解説:
A. 正しい。
B. 正しい。

PAS反応は粘液、グリコーゲンの染色を目的に行われる。さらに粘液かグリコーゲンかを区別するためにジアスターゼ消化試験を追加する場合もあり、ジアスターゼ消化試験が陽性の場合はグリコーゲン、陰性の場合は粘液と判定する。これらの存在(PAS陽性)の有無および局在部位は細胞判定の重要なポイントとなる。

C. 正しい。

中皮腫の体腔液は特徴的な粘稠性を示すことがある。これは中皮腫の産生する、酸性粘液多糖類(ヒアルロン酸)によるものであり、特にアルシアンブルーに好染する。腹膜偽粘液腫も粘稠性の腹水を特徴とするが、それよりは粘稠度が低い。ヒアルロニダーゼ消化法にてヒアルロン酸を証明することは中皮腫の診断のうえの一助となる。

D. 誤り。
E. 誤り。
 


14. 次のうち誤っているものはどれか。
A. p63遺伝子産物は乳腺筋上皮細胞の細胞膜に陽性となる。
B. 乳腺症はエストロゲンの相対的過剰が原因と考えられている。
C. 面疱型非浸潤性乳管癌は乳管内進展が強い癌である。
D. 浸潤性小葉癌では、細胞質内小腺腔を認める頻度が高い。
E. 管状癌の集塊は境界不明瞭である。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:2

解説:
A. 誤り。

筋上皮マーカーとして、アルファ平滑筋アクチン、ミオシン(SM-MHC)、CD10、カルポニン、p63などが用いられる。このうちp63のみ核が陽性、他は細胞質に染色性を見る。

B. 正しい。

乳腺症mastopathyは成熟期女性の乳腺疾患として多い。相対的なエストロゲンの過剰を基盤とする。ホルモン平衡異常に起因すると考えられている。

C. 消去法で正しい。
D. 正しい。

浸潤性小葉癌invasive lobular carcinomaは均一小型癌細胞が、一列に並びまた散在性に浸潤を示す。間質結合織が多い。癌細胞が充実性増殖を示すことはあるが、腺腔を形成することはまれである。粘液癌の1つであり、細胞質に粘液を有し印環細胞の様相を示すことがある。腫瘍細胞は遍在性の核を有することが多く、核クロマチンは繊細で細かく核縁肥厚のない繊細な様子が特徴的ともいえる。細胞質内小腺腔は細胞質の非定型的な分化を意味し、腺由来の悪性腫瘍を示唆する重要な所見である。特に乳腺の小葉癌や硬癌では効率に観察される。

E. 誤り。

管状癌tubular carcinomaは高分化な管腔形成性浸潤癌で、癌細胞は一層に並びやや不規則で、明瞭な管腔を作る。豊富な線維性間質を伴う。細胞異型は軽度である。小型で細胞異型の目立たない腫瘍細胞がシート状の細胞集塊や管腔構造を含む細胞集塊として出現する。筋上皮細胞との二相性は示さないが、周囲の線維性間質由来の細胞が筋上皮細胞様にみえたり、線維腺腫様の細胞像を示すことがある。

 


15. 次のうち誤っているものはどれか。
A. 乳管腺腫とアポクリン癌との鑑別は難しい。
B. 穿刺吸引細胞診で乳腺症は診断が容易である。
C. 穿刺吸引細胞診で壊死物質が認められれば悪性としてよい。
D. Triple negative breast cancerは予後不良である。
E. 穿刺吸引細胞診で判定困難な場合は、組織診をすべきである。

1. A. B.  2. A. E.
3. B. C.  4. C. D.
5. D. E.


正解:3

解説:
A. 正しい。

乳管腺腫ductal adenoma(硬化性乳管内乳頭腫 sclerotic intraductal papilloma)は乳管内発生の良性上皮細胞増殖性病変であり、病変の中心部に瘢痕状の線維化を伴うことがある。病巣が乳管外へ浸潤性に広がることや、細胞異型を伴ったアポクリン化生がみられることがある。画像診断、組織診断、細胞診断ともに癌との鑑別が必要となる。乳管上皮が細胞集塊で出現している場合は乳管上皮に二相性が確認できる。乳管上皮細胞には通常細胞異型は目立たない。細胞異型を伴ったアポクリン化生細胞が出現することがある。アポクリン化生細胞のみに目を奪われるのではなく、周囲に出現している乳管上皮は細胞との関係に注意した判断が必要である。

B. 誤り。

本症は増殖、化生、退行性変化などが複雑にからみあう。乳管、小葉内乳管上皮の増殖、腺管の増殖、線維化、嚢胞化、乳管上皮のアポクリン化生などが起こり多彩な組織像と細胞像を示す。乳管上皮の増殖の盛んな例では癌との鑑別が問題となることがある。

C. 誤り。

壊死物質には周囲の正常組織が腫瘍に冒されたことにより壊死を起こしたものと、腫瘍細胞自体が壊死に陥ったものがある。いずれも癌でみられることが多い所見であるが、良性腫瘍が閉塞壊死などを起こした場合にもみられることがあるので絶対的な所見ではない。

D. 正しい。

乳癌診療において、ホルモン感受性(ER/PgR)と上皮増殖因子のHER2 発現状況により
・ホルモン陽性乳癌
・HER2 陽性乳癌
・すべてのマーカーが陰性のtriple negative breast cancer(TNBC)
の3 型に分類し、各々の治療体系を構築することが要求されている。TNBCは原発性乳癌の約15%を占める。一般的に、他のサブタイプに比べ、再発高危険群つまり予後不良である。

E. 正しい。
 


16. 小児に好発する脳腫瘍を1つ選びなさい。
1. 下垂体腺腫
2. 髄膜腫
3. 中枢神経系原発悪性リンパ腫
4. 膠芽腫
5. 髄芽腫


正解:5

解説:
1. 誤り。

下垂体腺腫pituitary adenomaは下垂体前葉ら発生する腫瘍で、頭蓋内腫瘍の約10%を占める、40歳前後に最も多く、トルコ鞍内に発育する。しばしば嚢胞を形成する。組織学的には腫瘍細胞の配列様式としてはびまん性に増殖するもの、血管周囲に乳頭状に配列するものなどがある。免疫染色で産生ホルモンが細胞質に陽性となる。腫瘍細胞の細胞形態からは産生ホルモンの種類を区別することは難しい。

2. 誤り。

髄膜腫meningiomaは髄膜に発生する良性腫瘍で、頭蓋内腫瘍としては膠腫に次いで多くみられ、脊髄でもシュワン細胞腫と並んで頻度が高い。中年もしくはそれ以後に発生し、大脳鎌、傍矢状部、大脳円蓋部などに好発する。腫瘍は淡赤色で半球状の硬い結節を作り、硬膜内面に強く癒着する。組織学的に髄膜皮型、線維型、移行型、砂粒腫型など多数の亜型に分類されている。髄膜皮型は境界不明瞭な細胞の合胞状、充実性の細胞巣からなり、線維型は細長い紡錘形細胞が主体をなす。移行型は前2者の混在したもので、毛細血管の周囲に同心円状の渦巻を形成する傾向がある。砂粒小体psammoma bodyの出現が著明にみられるものは砂粒腫型と呼ばれている。

3. 誤り。

脳にも原発性のリンパ腫が発生する。頭蓋内腫瘍の約1%を占め、中高年の男性に多い。大脳半球、基底核、小脳、脳幹などに境界不鮮明な腫瘤を形成する。軟化病巣のようにみえることもある。組織学的には大部分が非ホジキンリンパ腫で、B細胞性である。腫瘍辺部では、血管周囲のVirchow-Robin腔に浸潤する傾向が強い。

4. 誤り。

膠芽腫glioblastomaは膠腫の30~40%を占め、40~60代の大脳半球(特に前頭葉と側頭葉)に好発する。肉眼的に出血、壊死が著名でそのため多彩色調を示す。組織学的には大小不同性、多形性の著明な異形細胞の密な増殖よりなり、多核の巨細胞も多数出現する。核分裂像も目立つ。短紡錘形の腫瘍細胞が壊死巣を取り囲んで柵状に配列する偽柵状配列や、血管の増殖、血管内皮細胞の腫大・増生は本腫瘍に特徴的な所見である。

5. 正しい。

髄芽腫medulloblastomaは神経上皮性腫瘍の5~10%を占め、6~10歳の小児に好発する。発生部位は低年齢児では小脳虫部、年長児および成人では小脳半球に偏在するのもが多い。組織学的には濃染する円形ないし楕円形の核をもつ小型の細胞がびまん性に増殖し、高い密度を示している。ところによって短紡錘形の腫瘍細胞が細胞質突起からなる小野を放射状に囲むHomer-Wright型偽ロゼットが形成される。

 


17. 次のうち正しいものを1つ選びなさい。
l. 多形膠芽腫では核分裂像はみられない。
2. 上衣腫は脳実質内には発生しない。
3. 毛様細胞性星細胞腫は高齢者に多い。
4. 乏突起膠腫の好発部位は小脳である。
5. 神経鞘腫は聴神経に好発する。


正解:5

解説:
1. 誤り。
2. 誤り。
3. 誤り。

毛様細胞性星細胞腫pilocytic astrocytomaは毛髪様の細長い突起をもつ紡錘形細胞からなる星細胞性腫瘍で、主に小児に発生し、小脳、脳幹部、視神経、視床下部に好発するgradeⅠの腫瘍である。細胞診では、毛細血管の周囲に異型の弱い腫瘍細胞が放射状に配列し、紡錘形の核を持つ細胞から双極性に線維状の突起が伸びている。

4. 誤り。

乏突起膠腫oligodendrogliomaは突起の乏しい小型の細胞が増殖した腫瘍である。成人の大脳半球、特に前頭葉が好発部位で、組織学的には円形の核と明るい細胞質をもつ類円形の腫瘍細胞が比較的密に増殖している。核周囲にハローがあるようにみえる像は乏突起膠腫に特徴的な所見であり、蜂の巣構造honey-comb structureあるいは目玉焼き像fried-egg appearanceと呼ばれている。免疫組織化学的に腫瘍細胞はOlig2が陽性である。腫瘍細胞に異型性が現れたものが退形成性乏突起膠腫anaplastic oligodendrogliomaである。

5. 正しい。

シュワン鞘腫schwannomaはシュワン細胞から発生する腫瘍で、頭蓋内腫瘍の約10%を占めている。成人の女性に多い。第8脳神経が好発部位であり、小脳橋角部腫瘍として発生する。第5、10脳神経、脊髄神経にみられることもある。組織学的には細長い核と繊細な双極性細胞突起をもつ腫瘍細胞が緻密な束を作って増殖しており、核が横に並ぶ柵状配列nuclear palisadingが特徴である。

 


18. 次のうち正しいものを1つ選びなさい。
1. 有痛性頸部リンパ節腫大は悪性リンパ腫を第一に考える。
2. 亜急性壊死性リンパ節炎では好中球が目立つ。
3. MALTリンパ腫は穿刺吸引細胞診で容易に診断できる。
4. 非ホジキンリンパ腫ではB細胞性がT/NK細胞性よりも多い。
5. マントル細胞リンパ腫は予後良好である。


正解:4

解説:
1. 消去法で誤り。
2. 誤り。

亜急性壊死性リンパ節炎は組織球性壊死性リンパ節炎histiocytic necrotizing lymphadenitis(別名:菊池・藤本病)と呼ばれ、わが国に比較的多くみられるリンパ節炎で、10~30代までの比較的若い人に好発し、やや女性に多い。本症は感冒様症状で始まり、発熱後比較的急速にリンパ節の腫大をみる。リンパ節の腫大は一般に限局性で頸部にみられることが多い。白血球減少がみられることも本症の特徴の1つで、4000/mm3以下を示すことが多い。その他LDHの上昇をみる。病変部では大型リンパ球様細胞、形質細胞様単球および組織球が増殖し、アポトーシスとみなされる細胞壊死核崩壊物がみられる。組織球の一部は、核崩壊物や赤血球を貪食している。本病変では好中球の浸潤がみられないことが組織学的特徴の1つである。

3. 消去法で誤り。
4. 正しい。
5. 誤り。

マントル細胞リンパ腫mantle cell lymphomaはリンパ濾胞のマントル層B細胞由来の腫瘍とみなされ、中型の腫瘍細胞がびまん性あるいは結節性に増殖する。t(11;14)(q13;q32)転座の染色体異常に基づくcyclin D1タンパクの過剰発現がみられる。cyclin D1は細胞周期にかかわるタンパクで、その過剰発現はマントル細胞リンパ腫の発生に関与している。免疫表現型の特徴はCD5およびcyclin D1陽性を示すことである。しばしば白血化や骨髄浸潤を来たし、治療に抵抗性で予後は比較的不良である。中等度悪性リンパ腫である。

 


19. 精巣腫瘍について誤っているものを1つ選びなさい。
1. 精上皮腫(セミノーマ)はリンパ球の浸潤を伴うことが多い。
2. 精上皮腫は高齢者に多くみられる。
3. 精上皮腫は放射線感受性が高い。
4. 胎児性癌は他の組織型と混在することが多い。
5. 精巣原発絨毛癌はゴナドトロピンを産生する。


正解:2

解説:
1. 正しい。

精上皮腫seminomaは胚細胞腫瘍中最も多く、40~50%を占めている。特に定型的セミノーマは20~50歳に好発し、停留精巣からの発生率も高い。灰白色ないし黄白色の充実性腫瘍で、大きなものでは分葉状で壊死も認める。明瞭な核小体を伴う大型の核と、円形で明るく豊富な細胞質をもつ未熟な生殖細胞類似の腫瘍細胞が集団を作り、しばしばリンパ球浸潤を伴う薄い結合織により境界される。耐熱性である生殖細胞型アルカリホスファターゼを有すること、放射線感受性が高いことなど、未熟生殖細胞の性質をそのまま保持し、前者は腫瘍マーカーとなり、後者は放射線治療により予後良好であることの理由となっている。40歳以降、稀に精母細胞類似の腫瘍細胞からなる精母細胞性セミノーマが発生することがある。予後は定型的セミノーマよりさらに良好である。セミノーマの約20%は複合組織型の一成分として出現するが、セミノーマ自体には多分化能はないと考えられている。

2. 誤り。
3. 正しい。
4. 正しい。

胎児性癌embryonal carcinomaは黄白色充実性腫瘍であるが、出血および壊死を伴う。未熟な腺上皮様腫瘍細胞で、管状、乳頭状あるいは充実胞巣状の増殖形態を示す。胎児性癌の約80%は複合組織型として存在する。

5. 正しい。

絨毛癌choriocarcinomaは20~30代に好発し、複合組織型の一成分として発生することが多く、単一組織型は稀である。著しく出血性の腫瘍で、細胞性栄養芽細胞様細胞と合胞性栄養芽細胞様細胞の2種類の細胞からなる。正常胎盤を模倣して種々の胎盤性タンパクを産生するが、特にヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)は腫瘍マーカーとして重要である。

 


20. 神経芽腫について誤っているものを1つ選びなさい。
1. 小児の副腎に好発する。
2. 尿中のバニリルマンデル酸(VMA)が高値を示す。
3. 血清中の神経特異エノラーゼ(NSE)が高値を示す。
4. 腫瘍細胞はロゼット形成を伴う。
5. 皮膚にカフェオレ斑を伴う。


正解:5

解説:
1. 正しい。

神経芽腫neuroblastomaは小児の固形腫瘍としては最も頻度が高く、交感神経節や副腎髄質に発生する。後腹膜や後縦隔に腫瘤を作り、70~80%の症例では尿中にカテコールアミン代謝産物であるvanillyl mandelic acidやhomovanillinic acidの排泄が増加する。腫瘤は灰白色で軟らかく、出血や壊死を伴っている。小型の類円形核と狭い細胞質をもつ未分化な神経芽細胞が充実性に増殖する。細胞間に細線維性基質を認めることや、腫瘍細胞が花冠状の配列neuroblastic rosetteを示すこともある。

2. 正しい。
3. 正しい。
4. 正しい。
5. 誤り。

神経線維腫症neurofibromatosisは皮膚に多発性の神経線維腫が形成される疾患である。遺伝形式は常染色体優性遺伝であり、遺伝子解析の結果、8つの病型に分類されている。このうちⅠ型(NF-1)は古典的なフォン・レックリングハウゼン病von Recklinghausen diseaseである。皮膚病変としてはカフェオレ斑と呼ばれる色素沈着がみられ、皮下には多発性に神経線維腫が形成される。神経系の腫瘍としては、聴神経腫瘍、髄膜腫、膠腫など、奇形としては、皮質の形成障害である異所性神経細胞、多小脳回症、水頭症などがみられる。