雑記

時間があるときに細胞検査士の筆記試験の過去問を解いています

平成25年度 婦人科 筆記試験 過去問

始めの記事を書いてから少々時間が経ちましたが婦人科の解答・解説がやっとできました。婦人科は簡単だからと思って初めに手をつけましたがなかなか手こずりました(笑)

あと答えが3つある問題は①ABC②ABE③ADE④BCD④CDEの5択、答えが2つある問題は①AB②AE③BC④CD⑤DEの5択なので、消去法で答えを出している問題もあります。けっこう調べているんですがそれでも答えが見つからないときもありますので……。


1. 正しいものはどれですか。(3)
A. 子宮内膜腺上皮細胞はエストロゲンによって増殖する。
B. 子宮内模腺上皮細胞の核下空胞はおもに増殖初期に認められる。
C. 子宮内膜腺上皮細胞は分泌期に脱落膜様変化を起こす。
D. 子官頸管腺上皮細胞粘液は酸性粘液である。
E. 子官頸管腺上皮細胞は卵管上皮化生を起こすことがある。


正解:ADE

解説:月経周期と細胞像に関する問題ですね。過去にもよく出題されていると思います。

性成熟期にある腺上皮は月経周期性変化を示し、増殖期と分泌期に分けられる。増殖期はエストロゲンの働きで、上皮の再生、腺の延長および結合組織細胞の増殖を示す。また分泌期はプロゲステロンの働きで、子宮腺を迂曲させ、分泌を盛んにし、結合織の浮腫を起こす。

なのでAは○。
核下空胞が出現するのは排卵3日目、つまり分泌期3日目なのでBは×。

脱落膜細胞とは妊娠黄体から分泌される多量のプロゲステロン作用によって、内膜間質細胞が変化した像である。淡く広い細胞質を有し、核は中心性、クロマチンは細網状に増量を示す。孤立性あるいは散在性に出現する。

なので子宮内膜腺上皮が脱落膜細胞に変化するのではなく、内膜間質細胞が脱落膜細胞に変化するのでCは×。

排卵時には、頸管粘液は粘性が低下して水溶性になり、精子が移動するのに至適なアルカリ性pHとなる。排卵期にはイオン(Na+、K+、Cl-)が多く含まれるために、粘液がシダの葉状の結晶を形成する。この頸管粘液の特徴は、排卵が起こる時期を評価するために臨床的にも利用されている。排卵後、頸管粘液は非常に粘性が増して酸性pHとなり、精子の進入や生存にとっては有害となる。

よくわからないけど頸管腺細胞は月経周期によってpHが変化するようです。よってDは△。
卵管上皮化生は顕微鏡でみててもよく観察されますね。よってEは○。
Dが微妙ですが他の選択肢から消去して、ADEが正解ということになります。


(2017/10/22追記)
2. 子宮頸部細胞診について正しいものはどれですか。(3)
A. 増殖期初期にはexodusが見られることがある。
B. 分泌期中期には表層細胞の折れ曲がりが出現する。
C. 分泌期後期にはデーデルライン桿菌は減少する。
D. 妊娠後期には舟状細胞が増加する。
E. 閉経後には細胞の自己融解がみられることがある。


正解:ADE ABE

解説:これも月経周期と細胞像に関する問題ですね。
エクソダスとは月経期以後12日ごろまでの膣スメア上に、中心部に間質細胞があり、その外側を腺細胞が取り囲んでいる内膜由来の細胞のことをいいます。よってAは○。
分泌期にプロゲステロンによって細胞が折れ曲がってくるのは中層細胞なのでBは× 表層細胞なのでBは○。

黄体後期(第24日頃より第28日頃まで)は変性現象が更に著明、多数の白血球やデーデルライン桿菌が出現し、細胞質融解のため細胞質の変性、裸核がみられる。背景は汚くなる。

むしろ分泌期が終わりになるにつれてデーデルライン桿菌が増えるのでCは×。

膣上皮は妊娠中、周期性変化は停止し肥厚する。大量のエストロゲンプロゲステロンが分泌されるが、プロゲステロンエストロゲン効果を阻止し、プロゲステロン効果のみが著明となる。細胞質の辺縁は折れ曲がり、肥厚し、グリコーゲンを豊富に有する舟状細胞navicular cellが多数出現する。通常、妊娠3か月から妊娠末期まで比較的安定したパターンで持続する。そして分娩予定日になると、舟状細胞は減少し核濃縮を伴う表層細胞が出現してくる。

分娩予定日になるまでは舟状細胞が多数出現するのでDは○。
舟状細胞は「通常、妊娠3ヶ月から妊娠末期まで比較的安定したパターンで持続する」とあるので、妊娠後期(28週以降)になっても増加はしないと考えられ、Dは×。

閉経初期では、エストロゲンの低下により黄体後期の状態に似ており、中層細胞が集団となって出現する。デーデルライン桿菌も多く、細胞融解像もみられる。

よってEは○。


平成28年度1問目と平成25年度の2問目を比べてみてくださいとの指摘がありました。

平成28年度 婦人科
1.子宮頸部細胞診について正しいものはどれですか.
A.幼児期は表層細胞優位である.
B.分泌期中期には表層細胞の折れ曲がりが出現する.
C.妊娠中期には舟状細胞が出現する.
D.増殖期にはデーデルライン桿菌が増加する.
E.排卵期にはexodus がみられることがある.

1.A.B  2.A.E
3.B.C  4.C.D
5.D.E

確かに似た問題ですね。
幼児期は血液を介して母体からのホルモンの影響がなくなってきて深層細胞主体となるのでAは×。
細胞の折れ曲がりと聞くと舟状細胞を思い出しがちですが(自分もそうでした)、月経周期におけるプロゲステロンによる細胞辺縁の折り返しは表層細胞でみられるのでBは○。
妊娠中期(16~27週)は、舟状細胞は出現するのでCは○。
デーデルライン桿菌は月経周期の分泌期や妊娠・ステロイドホルモン使用時や使用後に出現するとあるのでDは×。
排卵期(月経後14日前後)でエクソダスがみられることがあるといわれると微妙なところですが、月経後12日ごろまで出現とあるのと他の選択肢を考慮してEは×。
よって正解は3になります。



3. 正常子宮内膜細胞について正しいものはどれですか。(3)
A. 分泌期には細胞質が豊富になる。
B. 分泌期には増殖期に比べ核は小さくなる。
C. 分泌期には細胞境界は不明瞭になる。
D. 増殖期には細胞質は乏しく密な集塊を形成する。
E. 増殖期には核分裂像を認めることがある。


正解:ADE

解説:これも月経周期と細胞に関する問題ですね。やはりこのあたりを理解しておくと婦人科は点数を取りやすいということなのでしょうか。

分泌期中期の内膜腺細胞の細胞集団は単層のシート状になって出現することが多い。核は肥大し、淡明となり、核小体明瞭となる。細胞質は豊富でレース状となり、細胞境界は明瞭となるため、蜂巣(honey comb)様構造をとる。

よってAは○。
分泌期の子宮内膜の細胞像は増殖期よりも核・細胞質ともに大きくなります。よってBは×。
上の引用をみたら、分泌期では細胞境界は明瞭となり蜂巣様構造をとるとあるのでCは×。

増殖期初期では内膜腺は狭く真っ直ぐで均等に分布し、腺上皮は単層性で、核は基底側に並ぶ。間質には幼若な間質細胞が密に配列している。腺上皮細胞や間質細胞には核分裂像が散見される。

よってDとEは○。



4. 正しいものはどれですか。(3)
A. 卵巣癌で一番多い組織型は粘液性腺癌である。
B. 子宮頸癌で一番多い組織型は扁平上皮癌である。
C. 子宮体癌で一番多い組織型は類内膜腺癌である。
D. 外陰癌で扁平上皮癌に次いで多い組織型は悪性黒色腫である。
E. 卵管癌で一番多い組織型は明細胞腺癌である。


正解:BCD

解説:婦人科悪性腫瘍の部位別における発生頻度が高い組織型についての設問ですね。一回整理して覚えておけば点数はとりやすいと思います。

卵巣の上皮性・間質性腫瘍の中で最も頻度の高いものは漿液性腺癌である。次いで粘液性腺癌、類内膜腺癌、明細胞腺癌と続く。

よってAは×。ちなみに卵巣の悪性腫瘍は上皮性・間質性悪性腫瘍の上記4型が80%を占めています。
BとCは○。業務をしてたらよくお目にかかる組織型です。
Dは○。外陰癌の約90%が扁平上皮癌です。

卵管癌の組織型は漿液性腺癌が全体の60~80%を占め、次いで類内膜腺癌、移行上皮癌が10~20%を占める。

よってEは×。



5. 絨毛性疾患について正しいものはどれですか。(3)
A. 部分胞状奇胎では3倍体が多い。
B. 侵入奇胎の組織は子官内容除去術で除去できる。
C. 細胞性栄養膜細胞が産生するhCGは診断・治療効果判定に有用である。
D. 病理診断による侵入奇胎と絨毛癌との鑑別点は絨毛構造の有無である。
E. 絨毛癌は肺に転移しやすい。


正解:ADE

解説:絨毛性疾患に関する問題です。

胞状奇胎hydatidiform moleは胎児、臍帯、羊膜の欠如する全胞状奇胎total hydatidiform moleと、胎児、臍帯、羊膜をもつ部分胞状奇胎patial hydatidiform mole とがある。奇胎の多くは全胞状奇胎である。核型は46XXのものがほとんどである。部分胞状奇胎は69XXY、69XXXなどの3倍体のものが多い。

全胞状奇胎は2倍体が多く、部分胞状奇胎は3倍体が多いのでAは○。

侵入奇胎invasive moleは絨毛構造が子宮筋層の深部にまで及ぶ。このため子宮腔内の掻爬のみでは治癒しないが、化学療法が奏効する。生物学的には、胞状奇胎と絨毛癌の中間的性質を示す。

よってBは×。よく出題される問題ですね。

hCGは胎盤から分泌される性腺刺激ホルモンで、約30%の糖を含有する糖蛋白であるが糖鎖の違いにより分子多様性がある。αとβのサブユニットから成り、前者はLH、FSH、TSHのαサブユニットと構造が共通しているので、αサブユニットを含む抗体ではこれらと交差反応を起こす可能性がある。胎盤絨毛では妊娠早期より合胞性Trophoblastに陽性だが Cytotrophoblastには通常陰性である。胎盤機能やMole、Choriocarcinomaなど絨毛性腫瘍、hCG産生腫瘍の確認にホルマリン固定組織が用いられる。

引用文のcytotrophoblastは細胞性栄養膜細胞のことです。hCGを産生するのはジンチジウム型トロホブラスト(合胞性トロホブラスト)のほうなのでCは×。

絨毛癌choriocarcinomaは出血、壊死に富み、浸潤性が顕著で、肺、肝、脳などに転移しやすい。絨毛構造が形成されない点は胞状奇胎や侵入奇胎との決定的な差である。腫瘍組織は細胞異型のきわめて顕著なサイトトロホブラスト(栄養膜細胞)cytotrophoblastとシンチオトロホブラスト(合胞体栄養細胞)syncytiotrophoblastとから構成される。

よってDとEは○。



6. ベセスダシステムの判定と運用について正しいものはどれですか。(3)
A. ASC-Hは要精密検査とする。
B. ASC-USはHPV検査または細胞診(6ケ月後)とする。
C. コイロサイトーシスがあれば核異型を問わずLSILとする。
D. 不適正な検体は異型細胞が確認できても判定しない。
E. 不適正と判定するには、その理由の記載が必要である。


正解:ABE

解説:ベセスダシステムに関する問題です。あまり細かいことは聞かれないので参考書等でわかりやすくまとまっているものを一読しておけばいいと思います。

ベセスダシステムでは、細胞診断報告から臨床における運用方針のガイドラインも記載されている。意義不明な扁平上皮細胞(ASC-US)では、HPV検査による判定または6か月以内の細胞診検査を行うことを、ASC-HやSIL以上の病変においてはコルポスコピーや生検を行うことが望ましいとしている。腺系病変においてもAGC以上はコルポスコピー、生検、頸管および内膜細胞診または組織診が望ましいとしている。

よってAとBは○。ASC-USでHPV検査が陽性になった場合は生検になります。

コイロサイトーシスはHPV感染細胞の代表的所見である。しかし、ベセスダシステムでは、核異型の伴わない細胞質の核周囲明暈をもつ細胞のみの場合はLSILとみなすべきではないとし、このような細胞はASC-USと判断することとされている。これは、LSILと判定することで、過剰な検査が行われることを防止する意味がある。

よってCは×。

ベセスダシステムの特徴は、標本の適正評価を導入したことである。不適正の場合にはその旨を記載することになっている。不適正には2通りあり、検体にラベルがない、標本が破損しているなどの鏡検以前における不適正を検体不合格、扁平上皮細胞数が規定以下しか認められない、標本の乾燥や血液成分などによる細胞の不明瞭な場合を検体不適正としている。出現扁平上皮細胞数の規定は、従来法では8000~12000個程度、液状検体法では5000個以上となっているが、これは個数をカウントするのではなくあくまで目安である。乾燥や血液成分などによる不明瞭さは標本75%以上の場合であり、その様な標本状態でも異型細胞らしきものが確認されたときには標本適正として「さらなる高度の病変は否定できない。」と付記することになっている。

不適正標本でも異型細胞が確認できたら適正にしないといけないのでDは×。
不適正の場合は理由を記載して、その理由には検体不合格と検体不適正の2種類あります。よってEは○。



7. 子官頸部病変の組織診断に関し、正しいものはどれですか。(3)
A. コイロサイトーシスが認められるだけでもCIN1と診断される。
B. 高度異形成はCIN 2に含まれる。
C. 扁平上皮癌で浸潤の深さが5mmを超えるものはIA2期とする。
D. 非角化型扁平上皮癌でも単一細胞角化などの角化傾向が認められる。
E. すりガラス細胞癌は低分化な腺扁平上皮癌として位置付けられている。


正解:ADE

解説:この問題は結構難しいです。取扱い規約や治療ガイドラインをみて勉強しておかないとわからないと思います。

CIN1(軽度異形成mild dysplasia)は扁平上皮の層形成や極性の乱れが上皮下層1/3に限局する扁平上皮内異型病変である。コイロサイトーシスが認められるだけでもCIN1と判定される。HPV感染による細胞異型であるコイロサイトーシスは、CINの診断において見逃してはならない重要な所見である。ただし、コイロサイトーシスが認められても尖圭コンジローマはCINとはしない。核分裂像は下層1/3に限局して認められる。

子宮頸癌取扱い規約から抜粋。同じ文章がそのままあるのでAは○。

CIN2の異型細胞や核分裂像の出現は被覆上皮の基底側2/3にとどまり、層構造は保たれている。コイロサイトーシスを伴うことも少なくない。中等度異形成とよばれていたものに相当する。
CIN3の異型細胞や核分裂像の出現は被覆上皮の全層ないしほぼ全層におよぶものである。層形成が多少は残されているものは高度異形成とよばれていたものに相当する。また、異型の出現が全層にわたるものは上皮内癌(CIS)とよばれていたものに相当する。コイロサイトーシスを伴いこともある。異型細胞が頸管腺内におよぶ腺侵襲glandular involvementがみとめることも少なくないが、間質浸潤はみとめられない。

高度異形成はCIN3なのでBは×。

CIN3に属する上皮内癌の所見を呈する病変の一部に基底膜を破った指状ないし舌状の間質内浸潤がみられるが、浸潤最先端部が表層基底膜から5mm以内でかつ水平方向の広がりが7mm以内にとどまるものを微小浸潤扁平上皮癌とよぶ。臨床病気Ⅰa期(atageⅠa)に相当する。浸潤の深さが3mm以内の場合はⅠa1期、それをこえる場合はⅠa2期に分けられる。微小浸潤の域を超えるものは、Ⅰb期とされる。

基底膜から3mm以内の浸潤ならⅠA1期、3mmから5mm以内であればⅠA2期、5mmを超える場合はⅠB期になります。よってCは×。

非角化型扁平上皮癌squamous cell carcinoma, nonkeratinizing typeは単一細胞核化individual cell keratinizationの出現を認めることはあるが、一部にとどまり、かつ角化真珠の形成を欠く扁平上皮癌である。扁平上皮癌のなかで最も頻度が高い。角化真珠の形成は欠くものの、少なくともどこかに単一細胞角化などの角化傾向を認めることが多い。細胞は比較的均一で細胞質に乏しく、細胞境界は不明瞭である。核クロマチンは粗で増加を示す。核分裂像が目立つ。

子宮頸癌取扱い規約から抜粋。同じ文章がそのままあるのでDは○。ちょっといやらしい問題ですね(笑)

すりガラス細胞癌glassy cell carsinomaは淡好酸性~微最顆粒状のすりガラス様細胞質を示す細胞から構成される癌である。間質には著明なリンパ球あるいは好酸球浸潤を伴う。核は明るく大型で、単一の明瞭な核小体を伴う。胞巣状充実性増殖を特徴とし、腺管構造、細胞間橋および角化細胞はみられない。極めて低分化な腺扁平上皮癌として位置付けられ、典型的な腺扁平上皮癌成分を伴うこともある。

よってEは○。



8. 子宮体癌について正しいものはどれですか。(3)
A. 好発年齢は30~40歳代である。
B. プロゲステロン優位な内分泌環境が影響している。
C. 組織型で最も多いのが類内膜腺癌である。
D. 肥満・不妊症は危険因子である。
E. 癌肉腫は内腔へ突出するポリープ状発育が特徴である。


正解:CDE

解説:子宮体癌の好発年齢と危険因子に関する問題です。
子宮体癌は50歳以降の閉経後に多いのでAは×。

エストロゲン過剰状態が癌の発生・進展と関連があるとされている。しばしばエストロゲン過剰により生じる子宮内膜増殖症と合併する。主訴は不正出血が多い。

プロゲステロンではなくエストロゲンに暴露されると子宮体癌発生の危険因子になるのでBは×。
Cは○。類内膜腺癌は子宮内膜腺癌の約90%以上を占めます。
肥満・不妊症も子宮体癌発生の危険因子です。エストロゲンに長期間曝露されやすいほど子宮体癌になりやすいのでDは○。

癌肉腫carcinosarcomaは癌腫成分と肉腫成分からなる悪性腫瘍である。上皮性・間葉性混合腫瘍の中では、最も頻度の高い腫瘍である。癌腫成分は、類内膜腺癌などの腺癌の場合が多い。肉腫成分として平滑筋肉腫、子宮内膜間質肉腫、未分化肉腫が単独で、またはさまざまな割合で混在しているものは同所性癌肉腫homologous carcinosarcomaとよばれる。肉腫成分として横紋筋肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫などの異所性成分が含まれものは異所性癌肉腫heterologous carcinosarcomaとよばれる。癌肉腫の肉眼像は特徴的である。すなわち、壊死・出血をともなう外向性、隆起性増殖を示し、子宮内腔に塊状の腫瘤を形成する。

よってEは○。



9. 子宮体癌の進行期分類について正しいものはどれですか。(3)
A. 癌が子宮体部に限局し、筋層浸潤が1/2未満であればⅠA期である。
B. 子宮頸部において頸管腺浸潤のみはⅡ期ではなく、Ⅰ期とする。
C. 腹腹腔洗浄細胞診の結果は進行期分類のⅢA期から除外された。
D. 悪性ミュラー管混合腫瘍(癌肉腫)は進行期分類が適用されない。
E. 癌が膀胱ならびにあるいは腸粘膜浸潤のあるものはⅣB期である。


正解:ABC

解説:子宮体癌の進行期分類に関する問題です。

平成24年4月に子宮頸癌、子宮体癌取扱い規約、ともに第3版(日本産科婦人科学会、日本病学会、日本医学放射線学会、日本放射線腫瘍学会編)が発行された。それに伴い、子宮頸癌と子宮体癌については、平成24年1月1日の症例より新進行期分類に沿って、治療ならびに症例登録を行うこととする。

という通達があって平成24年1月1日から新進行期分類に従うことになっています。

Ⅰ期は癌が子宮体部に限局するものとし、ⅠA期は浸潤が子宮筋層1/2以内のもの、ⅠB期は浸潤が子宮筋層1/2を超えるものとする。

よってAは○。

Ⅱ期は癌が頸部間質に浸潤するが、子宮を超えていないものとする。ただし、頸管腺浸潤のみはⅡ期ではなくⅠ期とする。

よってBは○。

陽性腹腔洗浄細胞診の予後因子としての重要性については一貫した報告がないので、ⅢA 期から細胞診は除外されたが、将来再び進行期決定に際し必要な推奨検査として含まれる可能性があり、すべての症例でその結果は登録の際に記録することとした。

腹腔洗浄細胞診は進行期決定には利用されてないが結果は記録するようになっています。よってCは○。

子宮体癌の進行期分類は悪性ミュラー管混合腫瘍(癌肉腫)にも適用される。癌肉腫、明細胞腺癌、漿液性乳頭状腺癌においては横行結腸下の大網の十分なサンプリングが推奨される。

よってDは×。

Ⅳ期は癌が小骨盤腔をこえているか、明らかに膀胱ならびに/あるいは腸粘膜を侵すもの、ならびに/あるいは遠隔転移のあるものとし、ⅣA期は膀胱ならびに/あるいは腸粘膜浸潤のあるもの、ⅣB期は腹腔ならびに/あるいは鼠径リンパ節転移を含む遠隔転移のあるものとする。

癌が膀胱ならびにあるいは腸粘膜浸潤のあるものはⅣA期なのでEは×。
進行期分類について詳しく勉強したい方は「子宮頸癌、子宮体癌進行期分類の改定」で検索してみてください。



10. ホルモン産生腫瘍はどれですか。(3)
A. 顆粒膜細胞腫
B. Sertoli-Leydig cell tumor(セルトリ・ライデッヒ細胞腫)
C. Yolk sac tumor(卵黄嚢腫瘍)
D. 未熟奇形腫
E. 莢膜細胞腫


正解:ABE

解説:卵巣腫瘍で腫瘍細胞が産生する物質に関する問題。ホルモンを産生するのは性索間質性腫瘍(顆粒膜細胞腫、莢膜細胞腫、セルトリ・ライデッヒ腫瘍など)なので、表層上皮性・間質性腫瘍や胚細胞腫瘍を除外すればいいですね。

顆粒膜細胞腫granulosa cellは顆粒膜由来の腫瘍で、境界悪性ないし悪性腫瘍である。エストロゲンやアンドロゲンを産生するものがある。成人型と若年型に分けられる。成人型の定型例では充実性腫瘍巣内にCall-Exner小体と呼ばれる小腔を形成する。

よってAは○。顆粒膜細胞腫は核溝とCall-Exner小体が重要です。

セルトリ・ライデッヒ腫瘍Sertoli-Leydig tumorはセルトリ細胞、ライデッヒ細胞の両成分が混在している腫瘍で、多くはアンドロゲンを産生する。高・中・低分化型に分けられ、予後はそれぞれ、良性、境界悪性、悪性に相当する。高分化型ではエストロゲン活性を示すものがある。

よってBは○。

卵黄嚢腫瘍yolk sac tumorは10~20代に好発する悪性腫瘍で、α-フェトプロテインを産生する。このほか、CEA、CA-125も陽性となる。組織学的には糸球体類似構造(Schiller-Duval小体)や特有な網状構造などを示す。好酸性の硝子化小体hyaline body(globule)が認められ、α-フェトプロテイン免疫染色で陽性を示す。予後は極めて不良である。

α-フェトプロテインはホルモンではなく文字通り普通の蛋白質なのでCは×。卵黄嚢腫瘍は胚細胞腫瘍に分類され、Schiller-Duval小体と前述のα-フェトプロテインが重要です。
奇形腫も胚細胞腫瘍も分類され、ホルモンは何も産生しないのでDは×。

莢膜細胞腫thecomaは莢膜(卵胞膜)から発生する腫瘍で、良性である。腫瘍は充実性で硬く、割面は黄色がかっており、肉眼で組織型推定が可能である。エストロゲン産生性であり、組織標本では脂肪染色(SudanⅢ染色、オイル・レッド染色など)で陽性所見を得る。本腫瘍には線維腫fibroma成分が混在することも稀ではない。

よってEは○。莢膜細胞腫は脂肪染色(SudanⅢ染色、オイル・レッド染色など)で陽性を示すのが重要です。



11. 子宮頸癌における放射線治療による細胞の変化として正しいものはどれですか。(3)
A. 空胞変性
B. Ghost cellの出現
C. 円滑な核縁
D. N/C比の増加
E. 両染性細胞の出現


正解:ABE

解説:放射線照射による細胞変化に関する問題です。

意義
放射線感受性の早期診断と治療法の選択
・治療完了時の治療効果の判定
核の変化
・核肥大 ・核周囲haloの形成
・多核形成 ・核小体の肥大
・核破砕 ・染色性の異常(赤色)
・核融解
細胞質の変化
・染色性の異常two-tone colors
・細胞質内空胞
・貪食作用
・細胞質融解
標本全体での変化
・N/C比の照射前の維持
・奇形細胞の出現
・巨細胞形成

よってAとBとEは○。
放射線による変化は核が最も影響を受けやすく円滑な核縁になることはないと思われるのでCは×。
N/C比は放射線照射前と変わらないのでDは×。



12. 誤っているものはどれですか。(3)
A. 卵管癌由来の癌細胞は内膜細胞診に出現しない。
B. 子宮頸部と腟壁に連続した癌があれば腟癌とする。
C. 腟癌の組織型は腺癌が多い。
D. 卵管癌で水様性帯下を認めることがある。
E. 外陰癌は高齢者に好発する。


正解:ABC

解説:

細胞診が陽性となる頻度は高くないが、腺系悪性細胞が検出されたにもかかわらず、子宮頸管および内膜ともに病変が認められない場合は卵管癌を考慮する必要がある。

卵管と子宮体部はつながっているので悪性細胞が体部に落ちてくることはあります。よってAは×。

米国がん合同委員会(AJCC)の病期分類システムは、子宮が損なわれていない女性の子宮頸部に及ぶ膣の腫瘍は子宮頸がんに分類するように指示している。したがって、実際には膣先端部に発生した可能性があるものの、子宮頸部にまで進展した腫瘍は、子宮頸がんに分類される。

よってBは×。
膣癌で最も多いものは扁平上皮癌であるのでCは×。

卵管癌の臨床症状に特有のものはないが、卵巣癌に比し下腹痛や不正出血、水様性帯下などが有症状であることが多い。

よってDは○。

外陰癌は、女性性器の外陰部に発生する癌で、婦人科の悪性腫瘍の中では約3%を占める稀な病気である。外陰癌の多くは50歳以上であるが、40歳以下の女性でも次第に多くみられるようになってきている。

よってEは○。
誤っている選択肢が答えなのでABCが正解ですね。



13. 正常の子宮腟部細胞について正しいのはどれですか。(2)
A. 幼年期の腟スメアでは傍基底細胞が多くを占める。
B. 妊娠中は表層細胞が多い。
C. 排卵期にはプロゲステロンの影響でエオジン好性の細胞が多く出現する。
D. 月経期では表層細胞が多く出現する。
E. 閉経後期では傍基底細胞が優勢となり、細胞質はオレンジG好性を示す。


正解:AE

解説:月経周期と細胞像に関する問題です。

内分泌細胞診は、表層細胞、中層細胞、時に傍基底細胞の割合であらわす。標本の中から比較的均等な細胞分布のところ5か所を任意に選び、表層、中層、時に傍基底細胞に分けて、その合計が1か所20個になるまでとし、5か所の合計100個の比であらわす。幼児期の細胞成熟指数は90/10/0を示す。

細胞成熟指数は傍基底細胞/中層細胞/表層細胞で示されます。新生児期だと胎盤から母親のホルモンの影響を受けるため細胞成熟指数は0/95/5と中層細胞主体となりますが、幼児期になると母親からのホルモンの影響はなくなるので傍基底細胞主体になります。よってAは○。
妊娠時はプロゲステロン効果が優勢となるので中層細胞主体になります。よってBは×。
排卵期にはエストロゲンの影響で表層細胞が多く出現します。よってCは×。

月経期(月経出血第1日より第6日頃まで)は血性背景の中に強い変性を示す中層細胞が主に出現する。

よってDは×。

閉経後期では、エストロゲン活動消失、他のすべてのホルモン活動が消失してしまう時期のため、傍基底細胞が主である。白血球、多核のマクロファージの多い背景に、ライトグリーン好性で細胞質辺縁の分厚くなった細胞や、核濃縮を伴い細胞質はエオシン・オレンジ好性を示す細胞が出現したりする。これは粘液分泌能も失われて膣内は乾燥性となり、細胞の保存が悪く変性によるためである。塗抹標本の背景は汚く、裸核は核線も出現する。デーデルライン桿菌はみられない。

オレンジ好性の傍基底細胞も出現するのでEは○。



14. 高度異形成について正しいものはどれですか。(2)
A. 上皮内癌に比べて核の緊満感がある。
B. ベセスダシステム2001ではHSILに相当する。
C. 傍基底型の異型細胞が出現する。
D. 大きな核小体が出現する。
E. 核は増大し、通常N/C比は80%以上である。


正解:BC

解説:高度異形成に関する問題です。ピンポイントですがこういう問題が本試験で出てもらえると点が取りやすいですね。

高度異形成severe dysplasiaに相当するものとしては傍基底型の異型細胞が出現する。核は増大(N/C比60~70%程度)し、クロマチンの分布は不規則になり、核縁はしばしばしわ状を呈し、核に張りのない感じを与える。
上皮内癌carcinoma in situ(CIS)に相当する定型的な細胞は、傍基底型悪性細胞が主体を占め、ほぼ均一な細胞初見を呈する。ライトグリーン好性の狭小な細胞質、クロマチンは細顆粒状から顆粒状で核内に密に充満し、核型は円から卵円形で緊満感がある。時に非常に小型で、細胞異型の弱い上皮内癌細胞像もある。

よってBとCは○。
上皮内癌のほうが核に緊満感があるのでAは×。
大きな核小体が出現するのは修復細胞や腺癌なのでDは×。
N/C比が80%以上になるのは上皮内癌なのでEは×。



15. ヒトパピローマウイルス(HPV)について誤っているものはどれですか。(2)
A. HPV検出方法にはhybridization法やPCR法が有用である。
B. HPVワクチンは治療に用いられる。
C. 感染者の約10%が子宮頸癌に至る。
D. 子宮頸癌の95%以上にHPV感染が関与している。
E. 高危険群にはHPV16、18、31、33型が含まれる。


正解:BC

解説:HPVに関する問題です。
詳しくは調べてないですがAは○。子宮頸部から採取された細胞から核酸増幅によってHPVを検出します。有名な方法はハイブリットキャプチャーⅡやインベーダー法などです。他にも方法があるので興味のある方は調べてみてください。

子宮頸癌制圧のために期待されるHPVワクチンには予防ワクチンprophylactic vaccine(HPV に感染していない女性に接種してHPV 感染を予防することによって子宮頸癌の発症率の低下を目指す)と治療ワクチンtherapeutic vaccine(すでに子宮頸癌や前癌病変を発症している患者に対する免疫治療としてのワクチン)に大別される。現在、海外の多くの国々で実用化されているHPV ワクチンは予防ワクチンである。残念ながら、治療ワクチンは依然として実用化の目途が立っていない。

巷で話題のHPVワクチンは予防ワクチンです。治療ワクチンはあるそうですが実用化にいたっていないのでBは×。
多くの場合は感染しても自然に治り、がんに進行するのは1%程度なのでCは×。ただし中等度異形成では約10%、高度異形成では約20%がんに進行するといわれています。

ハイリスク型HPVの持続感染が、子宮頸癌の発生に深く関与している。ハイリスク型HPVの陽性率は、軽度異形成75~85%、中等度および高度異形成80~100%、上皮内癌および浸潤癌:ほぼ100%である。子宮頸部腺癌でも93%に検出される。

よってDは○。

主な病変
6、11型 尖圭コンジローマ
16型 頸部扁平上皮癌、CIN、外陰癌、Bowenoid papulosis
18型 頸部腺癌、頸部扁平上皮癌、CIN
31、33、35型 CIN、頸部扁平上皮癌
52、56、58型 CIN、頸部扁平上皮癌

上の表の6、11型以外は高危険度群とされています。よってEは○。



16. 子宮体部病変に関して誤っているものはどれですか。(2)
A. 子宮内膜増殖症は、規則型と不規則型に分類される。
B. 内膜腺癌では線毛を有する腫瘍細胞が見られることがある。
C. エストロゲンに非依存性のⅡ型癌には漿液性腺癌や明細胞腺癌が含まれる。
D. 漿液性腺癌ではp53遺伝子変異が見られることが多い。
E. 類内膜腺癌では粘液を産生する腫瘍細胞は見られない。


正解:AE

解説:子宮体部の良性・悪性腫瘍に関する問題です。

子宮内膜増殖症endometrial hyperplasiaは構築によって単純simple型と複雑complex型に分けられる。

規則型、不規則型という名前では聞かないし、取扱い規約でもそんな記述はなかった思います。ちょっと微妙なのでAは△。

類内膜腺癌endometrioid adenocarcinomaの変異型として、腺癌細胞の大半に線毛がみられる線毛細胞型類内膜腺癌endometrioid adenocarcinoma, ciliated cell variantなどがある。

よってBは○。

子宮内膜癌endometrial carcinomaは子宮内膜から発生する癌腫で、エストロゲンに依存性を示すⅠ型とエストロゲンに非依存性のⅡ型に分けられる。Ⅰ型の大半が類内膜腺癌で占められる。Ⅱ型には漿液性腺癌や明細胞腺癌などがあり、多くが萎縮性内膜を背景に発生する。Ⅰ型に比べてⅡ型は好発年齢が高く予後不良である。

よってCは○。
漿液性腺癌ではp53遺伝子変異が約90%にみられるのでDは○。余談ですが低分化型類内膜腺癌(G3)においてp53遺伝子変異が約50%にみられ、G1にはほとんど関与しないそうです。
「類内膜腺癌では粘液を産生する腫瘍細胞は見られない」と言い切られると間違いのような気がします。この設問に関する文献がみつからなかったのでEは△。
問題16は消去法でAEを正解としました。



17. 子宮頸部腺癌について正しいものを1つ選びなさい。
1. HPV 16型が陽性になることが多い。
2. 子宮頸癌の50%を占める。
3. 最小偏倚腺癌は極めて分化の低い粘液性腺癌である。
4. 子宮頸部腺初期病変の診断にはコルポスコープが有効である。
5. 微小浸潤腺癌は浸潤の深さが5mm以内である。


正解:5

解説:子宮頸部腺癌に関する問題です。
問題15のEの解説にある表をみると18型に多いので1は×。
頸部腺癌は頸癌の5~10%を占めるので2は×。

最小偏倚型粘液性腺癌mucinous adenocarcinoma, minimal deviation typeは正常の内頸部腺との区別が困難な腺管である。癌の多くの腺管が、非腫瘍性腺管と区別ができないほどの高分化な形態を示すにもかかわらず、強い浸潤性増殖を示す予後不良な腺癌である。前規約の「悪性腺腫adenoma malignum」に相当する。腺の乱雑な配列、正常の深さをこえる深い浸潤性の頸管腺、核分裂像の出現が診断の指標となる。大部分の症例では少なくとも一部に不規則な形状の腺がみられ、腺細胞に核異型が観察される。

最小偏倚粘液性腺癌(悪性腺腫)は極めて高分化な腺癌なので3は×。

腺癌のコルポスコピー所見は,扁平上皮系異常所見とはかなり様相を異にする。すなわち、後者の大部分を占める初期異常所見の白色上皮、赤点斑、モザイク、白斑が腺癌・扁平上皮癌共存型(旧分類)には観察されるものの、純腺癌では全く認められないことである。

よって4は×。腺扁平上皮癌ではコルポスコピーによる異常所見が得られるが、純粋な腺癌では全く異常所見は認められないということですね。

微小浸潤腺癌microinvasive adenocarcinomaは微小浸潤を示す腺癌である。微小浸潤とは癌細胞の間質内浸潤を組織学的に確認することができ、かつ浸潤の深さが表層基底膜より計測して5mm以内、またその縦軸の広がりが7mm以内のものである。

よって5は○。



18. 卵巣明細胞腺癌について誤っているものを1つ選びなさい。
1. Alcian blue染色で染まるtype Ⅳ collagenの出現を認めることがある。
2. 明瞭な核小体を認める。
3. 核形不整が著明で核溝がみられる。
4. Hobnail細胞は腺腔内に突出する像がみられる。
5. 豊富な細胞質にグリコーゲンを有し、PAS反応陽性である。


正解:1or3

解説:この問題は答えが出なかったです。難しい……。

明細胞腺癌clear cell adenocarcinomaは腎細胞癌にみられるようなグリコーゲンに富む明調の細胞質をもつ明細胞clear cellや管腔内に核が飛び出したようにみえる独特の形状を示すホブネイルhobnail細胞から構成される。核は中心性で著明な核小体を認める。

よって2と4と5は○。
一般的に明細胞腺癌はそんなに核異型は強くないし、核溝は顆粒膜細胞腫やブレンナー腫瘍に特徴的とされているし……。よって3は△。

アルシアン青染色法は、上皮性粘液細胞の分泌するムチン(シアロムチンやスルホムチン)あるいは間質組織の構成成分であるプロテオグリカン(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸)などの酸性ムコ物質を検出する最も一般的な方法である。

4型コラーゲンがalcian blueで陽性を示すのかどうかというと、正直なところわからないです。個人的にはコラーゲン自体はalcian blueで検出できないと思いますが……。よって1は△。ちなみに粘液性嚢胞腺腫や粘液性嚢胞腺癌の産生する粘液はムチンなのでalcian blue染色で陽性になります。



19. 卵巣腫瘍について誤っているものを1つ選びなさい。
1. 粘液性境界悪性腫瘍は腸型と内頸部様に分類される。
2. 明細胞腺癌は通常の化学療法には抵抗性を示す。
3. 類内膜腺癌は卵巣子宮内膜症に関連する。
4. 顆粒膜細胞腫はエストロゲン産生をきたすことがある。
5. ディスジャーミノーマは閉経後に好発する。


正解:5

解説:卵巣腫瘍に関する問題です。

粘液性境界悪性腫瘍は、粘液性腫瘍の6%を占め、腸上皮型粘液性境界悪性腫瘍mucinous borderline tumor of intestinal typeと内頸部型粘液性境界悪性腫瘍mucinous borderline tumor of endocervical typeに分類される。本邦の報告では、45歳以下が65%を占める。組織分類別頻度では、腸上皮型が38%、内頸部型が36%、腸上皮・内頸部型の混合型が26%であった。

よって1は○。

組織型別の化学療法の個別化は必要であるが、明細胞腺癌や粘液性腺癌に対して、上皮性卵巣腫瘍に対する標準治療を差し替えるだけの十分なエビデンスはまだ得られていない。明細胞腺癌と粘液性腺癌は漿液性腺癌や類内膜腺癌に比べて抗がん剤による奏効率が明らかに低いことが報告されている。明細胞腺癌は本邦では24%を占めるとされ漿液性腺癌に次ぐ頻度を占めているが、欧米の臨床試験における明細胞腺癌の頻度は約8%程度と低く、標準療法がすべての組織型において最も有効であるか不明である。

よって2は○。卵巣上皮性悪性腫瘍の中で漿液性腺癌と類内膜腺癌は化学療法が効くみたいですね。

子宮内膜症endometriosisは組織学的には、子宮内膜の上皮成分と間質とが組み合わさり、島状に種々の部位に点在している。これらは機能性子宮内膜であり、しばしば周期性出血を引き起こすので、ヘモジデリンを貪食したマクロファージが認められることが多い。出血により出血性嚢胞を形成することがあり、内膜症性嚢胞endometriotic cystと呼ばれる卵巣に生じたものは内容物の性状からチョコレート嚢胞chocolate cystとも呼ばれる。チョコレート嚢胞が悪性化した場合、その病理組織型は明細胞腺癌と類内膜腺癌が大半を占める。

よって3は○。
問題10のAの設問を参考にすると4は○。

ディスジャーミノーマdysgerminomaは精巣のセミノーマ(精上皮腫)seminomaと同一の組織像を示す悪性腫瘍で、20~30歳を中心に発生する。腫瘍細胞は大型で核小体が明瞭であり、ほぼ充実性増殖を示す。リンパ球浸潤を伴う。通常は片側性である。hCG高値を示す症例がある。放射線感受性が大で、放射線療法が有効である。

よって5は×。



20. 本邦における基本的治療について誤っている組み合わせを1つ選びなさい。
1. 外陰癌Ⅰ期―手術療法
2. CIN l―円錐切除術
3. 子宮頸癌ⅠB期― 広汎子宮全摘術
4. 子宮頸癌ⅢB期―同時化学放射線療法
5. 子宮体癌ⅠB期― 手術療法


正解:2

解説:婦人科悪性腫瘍の治療に関する問題です。あまり勉強する機会がないし、参考書にも詳しい記述がないところですね。

外陰癌ⅠA期に対して根治的外陰部分切除が推奨される。

よって1は○。
CIN1では円錐切除はやらないので2は×。

ⅠB1・ⅡA1 期(扁平上皮癌)に対して推奨される治療は広汎子宮全摘出術あるいは根治的放射線治療が推奨される(グレードB)。ⅠB2・ⅡA2期(扁平上皮癌)に対して推奨される治療は広汎子宮全摘出術(+補助療法)あるいは同時化学放射線療法(CCRT)が推奨される(グレードB)。

よって3は○。腫瘍径が予後に影響するため、ⅠB1・ⅡA1 期(腫瘍径4cm以下)とⅠB2・ⅡA2期(腫瘍径4cmをこえる)で治療法を分けているそうです。

Ⅲ・ⅣA 期に対して放射線治療を施行する場合、放射線治療単独よりも同時化学放射線療法(CCRT)が推奨される(グレードB)。またⅢ・ⅣA 期に対して手術療法は推奨されない(グレードC2)。

よって4は○。

1988年にInternational Federation of Gynecology and Obstetrics(FIGO)は子宮体癌の手術進行期分類を採用し、進行期決定のためには後腹膜リンパ節の検索を含めた手術術式を選択することが必要となった。また、子宮頸癌に比べ放射線感受性が低いと考えられることや、卵巣癌に比べ抗がん剤の標準治療の確立が遅れていることなどの点から、子宮体癌では外科手術が治療法の第一選択である。しかし、高齢や合併症などの理由による手術不能例に対しては放射線療法が選択される。

よって5は○。



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