雑記

時間があるときに細胞検査士の筆記試験の過去問を解いています

平成25年度 呼吸器 筆記試験 過去問

毎度ですが答えが3つある問題は①ABC②ABE③ADE④BCD④CDEの5択、答えが2つある問題は①AB②AE③BC④CD⑤DEの5択です。今回は消去法で答えを出している問題が多いのであまり解説は多くないと思います(笑)



1. 正しいものはどれですか。(3)
A. 肺の軟骨は、すべて硝子軟骨である。
B. クララ細胞には、粘液顆粒と豊富なミトコンドリアが観察される。
C. 肺の内分泌細胞は、嗜銀性細胞と呼ばれている。
D. 肺胞大食細胞は、核内にリボゾームを含んでいる。
E. 気管支内面は、重層扁平上皮で覆われている。


正解:ABC

解説:

ガラス軟骨は鼻、咽頭、気管・気管支の軟骨、および肋軟骨にみられる。滑膜性関節の関節表面(膝・肩)はガラス軟骨であり、軟骨内骨化は起こらない。関節表面は上皮で覆われていない。

よってAは○。

Clara細胞は終末細気管支から呼吸細気管支に分布し、電顕的に粘液顆粒と豊富なミトコンドリアが観察される。

よってBは○。

肺内分泌細胞neurosercretory cellの機能についての詳細は不明であるが、免疫組織学的あるいは電顕などの検索により神経分泌顆粒を有する細胞が確認されている。嗜銀性細胞、Kultschitzky細胞、APUD cellなどと呼ばれている。

よってCは○。

肺胞大食細胞alveolar macrophageは単球由来とされており、細胞質内にリソソームを含み、細菌などを貪食する。健常人でも炭粉を貪食し肺胞腔に存在している。

マクロファージはリボソームではなくリソソームを細胞質内に含んでいます。よってDは×。

気管支bronchusは、気管から二分し主気管支となり、葉(第一次)気管支、区域(第二次)気管支、亜区域(第三次)気管支となり、細気管支に至る。気管支上皮は基本的には気管と同様に多列線毛上皮であるが、葉気管支から亜区域気管支に向かうにつれて上皮細胞の丈が低くなり、杯細胞も少なくなる。葉気管支には、気管支腺とよく似た2種類の腺が存在する。区域、亜区域気管支では、粘液・漿液の混合腺だけが存在し、後者に向かうにつれその腺が減少していく。

気管支上皮は多列線毛上皮です。よってEは×。



2. 肺腺癌細胞の細胞質所見について正しいものはどれですか。(3)
A. 反応性中皮細胞に比べ濃染性である。
B. ライトグリーン好性である。
C. 粘液を有するものもある。
D. 変性空胞を有するものもある。
E. 偽線毛を有するものもある。


正解:BCD

解説:

肺腺癌の細胞像の特徴は、基本的には他臓器と同様である。肺腺癌の細胞学的特徴を以下に示す。
・癌細胞は集塊を形成する。その集塊内には癌細胞の配列の乱れ、極性の乱れ、不規則重積が認められる。
・腺腔様配列がみられることがある。
・癌細胞は円柱状・立方状・類円形を示す。
・細胞質は淡青緑色を示す。レース状に一様に染色されることもあれば、泡沫状で小型空胞が多数認められることがある。
・細胞質内に粘液ないし粘液様空胞が認められることもある。
・核は類円形で偏在し、淡染性を示すことが多い。核形不整が目立つことが多い。
クロマチン粒子は微細であることが多い。
・核小体は目立つことが多く、大型類円形で、核の中心にみられることが多い。

よってBとCとDは○。
反応性中皮細胞は細胞質の肥厚化が特徴的です。細胞質が厚いとライトグリーンも濃染します。よってAは×。

偽線毛pseudociliaをもつ腺癌では卵巣漿液性腺癌に多いが頻度は低い。まれに胃癌、大腸癌、肺癌などにもみられる。孤立性、または乳頭状集塊、八つ頭状集塊で出現する。細胞質はライトグリーン淡染性または好染性で、一部の細胞に核と対側の細胞質遊離縁(内腔面)に偽線毛がみられる。偽線毛は、Papanicolaou染色では、短い場合はライトグリーン淡染性、長い場合にはオレンジGあるいはエオジンで淡く染まる。

肺腺癌が体腔液に出現すると偽線毛を有するものもあるそうですが、ちょっとよくわかりませんね。よってEは△。
消去法でBCDが一番正解である可能性が高いと思います。



3. 誤っているものはどれですか。(3)
A. 塵埃細胞は肺胞内にみられ、異物を細胞内に取り込む。
B. 塵埃細胞は、リンパ球に対する抗原提示能力を有する。
C. 塵埃細胞は、正常な肺の遊離細胞の約半数を占める。
D. 肺における粘液の分泌は、杯細胞によるものが大部分である。
E. 杯細胞はmucicarmine染色陰性である。


正解:CDE

解説:

肺胞マクロファージalveolar macrophageは、肺胞の内腔面に遊走する自由細胞である。この細胞は、吸入した塵埃や細菌で気道内面の粘液層に補足されなかったものを監視する。細菌の代謝物で刺激されると、マクロファージは化学走化性因子を放出し、白血球の血管外への遊走を促す。これによって、マクロファージも侵入する微生物を中和するのに参加する。

よってAは○。

マクロファージは抗原を取り込み、食胞に貯める。リソソームが食胞に融合し、抗原が小さなペプチドに分解される。そしてそれらが主要組織適合複合体(MHC)とよばれる受容体に結合する。食胞は細胞膜と融合し、抗原がリンパ球(胸腺由来のT細胞)に提示される。

よってBは○。
CとDの選択肢は文献が探せませんでした。よってCとDは△。
杯細胞は上皮性粘液をもっているのでムチカルミン染色陽性です。よってEは×。
消去法でCDEが誤っている選択肢として正解にしました。



4. 正しい組み合わせはどれですか。(2)
A. アスベスト小体―悪性胸膜中皮腫
B. シャルコー・ライデン結晶―気管支中心性肉芽腫症
C. シャウマン小体―絨毛性腫瘍
D. ラングハンス巨細胞―肺吸虫症
E. クルシュマン螺旋体―サルコイドーシス


正解:AB

解説:

アスベスト小体(含鉄小体)asbest bodyは鉄亜鈴状の形の物質で、パパニコロウ染色で黄褐色または黄緑色に染まる。石綿工場などの環境で吸引した石綿繊維が肺胞内において、鉄を含有しムコポリサッカライドを主成分とした蛋白物質に周囲を覆われた物質である。中皮腫、扁平上皮癌発生に関与している発癌物質と考えられている。

よってAは○。

シャルコー・ライデン結晶Charcot-Leyden crystalは菱形八面体の結晶物質でオレンジG、エオシンに染まるが、まれにライトグリーンにも染まる。好酸球の細胞質内顆粒が再結晶したものである。喘息、肺吸虫症(肺ジストマ症)などでみられる。

気管支中心性肉芽腫症はアレルギー性肺アルペルギルス症の肺病理像の一つである。アレルギー性気管支肺アスペルギルス症では気管支内で発育する菌に対するⅠ型過敏反応により喘息症状を認める。

よってBは○。

サルコイドーシスsarcoidosisは原因不明の全身性の肉芽腫症で、胚やリンパ節は特に侵されやすい。類上皮細胞性の肉芽腫で一般に結核結節のような乾酪壊死は伴わない。Langhans型巨細胞の胞体内に星芒体(アステロイド小体asteroid body)やシャウマン小体をみることがある。

シャウマン小体はサルコイドーシスでみられます。よってCは×。

わが国ではウェステルマン肺吸虫症と宮崎肺吸虫症がある。ウェステルマン肺吸虫症はモクズガニ・サワガニがもつメタセルカリア、幼虫をもったイノシシ肉の生食で起こる。腸管内の幼虫は腸壁を穿破し、腹腔、横隔膜、胸膜を破って肺に達し、好酸球浸潤を伴う線維性肉芽腫からなる虫嚢を形成する。稀に、脳などに迷入して異所性病変を作る場所もある。宮崎肺吸虫は胸腔内を徘徊するため、しばしば胸水や気胸を起こす。

ラングハンス型巨細胞は結核やサルコイドーシスで出現します。よってDは×。

クルシュマンらせん体Curschmann spiralは中心部がヘマトキシリンに濃く染まる螺旋状の細長い粘液物質である。喘息、気管支炎、肺結核、肺癌などにみられる。特異性はない。

クルシュマン螺旋体に特異性はありませんが喘息や気管支炎でよくみられます。よってEは×。



5. 肺癌について正しいものはどれですか。(2)
A. 最も多い組織型は、扁平上皮癌である。
B. 非小細胞肺癌の場合、化学療法が適応になるのはⅣ期のみである。
C. 分子標的薬の治療において、非小細胞癌を扁平上皮癌と非扁平上皮癌に分けることは意味がない。
D. 切除不能な進行・再発の非小細胞癌においても有効な薬剤が開発されている。
E. 小細胞肺癌と扁平上皮癌は特に喫煙との関係が濃厚である。


正解:DE

解説:

腺癌adenocarcinomaは肺癌の中で最も頻度が高く、全体の約50%を占め、女性に多い。喫煙との関係は他の組織型より低いとされる。

原発悪性腫瘍は腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌、大細胞癌の順に発生頻度が高いです。よってAは×。

一般的に小細胞肺癌は抗がん剤が効きやすい特徴を活かして、化学療法を主体に治療する。限局型では化学療法に放射線療法を組み合わせることが多く、進展型では化学療法がまず選択されるが、転移部位に放射線治療を追加することもある。一方、非小細胞肺癌は、ステージⅠ期・Ⅱ期では手術療法、Ⅲ期では化学療法と放射線療法を組み合わせた治療、Ⅳ期では化学療法が基本になる。

小細胞癌は化学療法主体、非小細胞癌はⅢ期以上だと化学療法になります。よってBは×。
Cの選択肢は分子標的薬のことについて聞かれているので、組織型に分けることに意味はあると思います。よってCは×。
切除不能な進行・再発の非小細胞癌で特にALK遺伝子に変異があるものにはALK阻害剤が奏効する例があるそうですね。よってDは○。

肺癌の組織型別(扁平上皮癌、小細胞癌、腺癌、大細胞癌)に検討してもそれぞれ喫煙と関連が認められるが、特に扁平上皮癌と小細胞癌は喫煙との関連が強い。

よってEは○。



6. 小細胞癌について正しいものはどれですか。(2)
A. 異所性の肉種成分が混在する場合、癌肉腫とする。
B. すべてが高悪性度ではない。
C. 確定診断には、免疫組織化学による神経内分泌への分化の証明が必要である。
D. 免疫組織化学では、高分子ケラチンが陽性となる。
E. Cushing症候群などの腫瘍随伴症状を伴うことがある。


正解:E

解説:正しい選択肢が1つしかないので解なしと思われる問題です。細胞診の過去問を解いていたらたまに正解がない問題があります(笑)

多形、肉腫様あるいは肉腫成分を含む癌とは肉腫あるいは肉腫様成分を含む低分化な非小細胞癌である。以前に多形癌、単相型および二相型肉腫様癌、紡錘細胞癌、巨細胞癌、癌肉腫および肺芽腫の名称が用いられていた腫瘍を含む。上皮と間葉への分化を示す腫瘍で、その分化の程度には連続性があると考えられる。肉腫様成分を含む小細胞癌は、混合型小細胞癌と分類される。

癌腫や肉腫に関わらず小細胞癌成分があると混合型小細胞癌に分類されます。よってAは×。

小細胞癌のすべては悪性度が高く、小細胞癌の中での悪性度分類は不適切である。

小細胞癌は限局型と進展型に分けられますが、ステージ分類はありません。よってBは×。

小細胞癌の診断は光学顕微鏡によるものである。電子顕微鏡や免疫組織化学による神経内分泌への分化の証明は必ずしも必要とされない。

よってCは×。

免疫組織化学的には神経内分泌マーカーであるCD56(NCAM)、クロモグラニンA、シナプトフィジンなどが陽性となる。

よってDは×。

全肺癌患者の10%以下で腫瘍からホルモン様物質を産生する腫瘍随伴症候群paraneoplastic syndromeがみられる。小細胞癌で最も頻度が高く、ACTHの分泌によるクッシング症候群、カルシトニンの分泌による低カルシウム血症、ADHの分泌による低ナトリウム血症がある。扁平上皮癌ではPTHの分泌による高カルシウム血症を起こす。カルチノイドではセロトニン分泌によるカルチノイド症候群を起こす。

よってEは○。



7. 転移性肺腫瘍において、原発巣を推定する細胞の特徴として正しい組み合わせはどれですか。(2)
A. 胃癌―印環細胞
B. 大腸癌―細胞質内球状硝子体
C. 腎癌―柵状配列
D. 甲状腺癌―核周囲明庭
E. 乳癌―細胞質内小腺腔(ICL)


正解:AE

解説:

細胞質のほとんどを占めるような大型単一空胞と極端に偏在した核を有する類円形細胞を印環型細胞signet ring cellという。印環型細胞の空胞には粘液、脂肪、ホルモン、免疫グロブリン、変性空胞などさまざまな種類がある。粘液を有する印環細胞型腺癌で最も一般的なのは胃と乳腺である。

よってAは○。

ライトグリーンに染まる均一で硝子様の滴状構造物は硝子滴とよばれる。時に、肝細胞癌や腺癌の細胞質内に観察されるが、他の多くの腫瘍でもみられ特異的ではない。その成分は産生する細胞の種類により異なる。肉腫にみられる場合は肉腫小体sarcoma body、形質細胞腫にみられる場合はラッセル小体Russell bodyとよばれる。

細胞質内硝子体は肝細胞癌でよくみられます。よってBは×。

大腸高分化型腺癌の肺転移では背景に壊死物質を伴い、高円柱状の悪性細胞が結合性の強い大型集塊として出現する。集塊内には柵状配列や管腔様配列が目立つ。核偏在性を示し核は濃染性で、クロマチンは細~粗顆粒状を示し、核小体は目立つことが多い。

柵状配列は大腸癌の転移で特徴的な所見です。腎細胞癌が肺に転移すると細胞質が明るい淡明細胞が出現します。よってCは×。

偏在性の核と細胞質に不明瞭な明庭を有する小型類円形細胞が孤立散在性に出現する場合は形質細胞様細胞と表現される。形質細胞に類似した血液細胞関連以外の腫瘍として、神経内分泌癌、低分化型腺癌、筋上皮細胞や骨芽細胞由来の腫瘍、悪性黒色腫などがある。

核周囲明庭は形質細胞腫などでみられます。甲状腺癌(特に乳頭癌)は核内細胞質封入体や核溝が特徴的とされています。よってDは×。

細胞質内小腺腔とは細胞質内に見られる境界明瞭な3~12μm大の空胞Hecter’s holeである。空胞の接した部の細胞質がやや濃く染色されているのが特徴であり、電顕的に微絨毛が内腔面に存在することに起因する。小腺腔内には濃縮した粘液が滴状物として観察される。この滴状物はパパニコロウ染色ではオレンジG、エオジン、ギムザ染色にて異染性を示すことからマジェンタ小体magenta bodyと呼ばれている。細胞質内小腺腔は細胞質の非定型的な分化を意味し、腺由来の悪性腫瘍を示唆する重要な所見である。特に乳腺の小葉癌や硬癌では効率に観察される。

よってEは○。



8. 誤っているものはどれですか。(2)
A. 肺は外胚葉由来である。
B. 臓側胸膜は結合組織層と重層扁平上皮で構成されている。
C. 右肺は3葉、左肺は2葉に分かれている。
D. 肺は臓側胸膜に覆われている。
E. 肺癌は、肺実質の肺胞細胞や気管支粘膜から発生する。


正解:AB

解説:

外胚葉系は体表に存在する表皮とその付属感覚器が主要をなし、発生の初期に外側に存在した神経系もこれに相当する。内胚葉は消化・呼吸器系(肺、肝、胃、膵など)の上皮細胞であり、中胚葉は骨格や間質系の大部分と心臓、血管、副腎皮質などがある。

呼吸器は内胚葉から発生します。よってAは×。

胸膜pleuraは臓側胸膜(肺胸膜)visceral layerと壁側胸膜parietal layerの2つからなる。臓側胸膜は、肺に密着している。中皮mesotheliumとよばれる単層扁平上皮に覆われ、頂部には微絨毛を有し、基底膜の下に弾性線維に富む結合組織がある。この結合組織は、肺の葉間および小葉間結合組織と連続している。壁側胸膜も中皮に覆われている。臓側胸膜は、胸腔内に空気が漏れないように肺表面を封じている。壁側胸膜は、より厚く脂肪組織を伴う。

胸膜は中皮細胞で覆われています。よってBは×。

肺実質に入ると、気管支は肺内二次気管支(葉気管支)に分かれる。右肺は3本、左肺は2本の二次器官を受ける。

よってCは○。
Bの選択肢の解説で「臓側胸膜は、肺に密着している。……臓側胸膜は、胸腔内に空気が漏れないように肺表面を封じている。」とあります。よってDは○。
Eの選択肢はごもっともな文章だと思います。よってEは○。



9. 気管支の扁平上皮化生について誤っているものはどれですか。(2)
A. 基底細胞が分化した細胞である。
B. 高度な炎症(肺結核など)では典型的な扁平上皮化生が起きる。
C. 細胞質の肥厚が著明で、角化傾向も強く、細胞質が扁平上皮癌に類似してくる。
D. 気管支上皮細胞から扁平上皮癌になる過程で、扁平上皮化生から過形成に進む。
E. 腺細胞と扁平上皮細胞の中間的な性状が形態的にみられる。

正解:CD

解説:

扁平上皮化生細胞squamous metaplastic cellは基底細胞が増生し、最表層の細胞が扁平化を示す。細胞像は、平面的または敷石状に出現する。大きさは扁平上皮細胞の傍基底型~小型の中層型大、細胞質は多辺形でライトグリーンやエオシンに染まり、核は小型で円形~類円形のN/C比の低い細胞である。

よってAは○。

化生metaplasiaとは、元来存在しない部位に正常の形態を示す細胞、組織が出現すること言う。円柱上皮、立方上皮はびらんの繰り返しにより再生の過程で扁平上皮に置き換えられることがある。これは扁平上皮化生squamous metaplasia, epidermizationと呼ばれるもので、気管支粘膜や子宮頸部被覆上皮にしばしばみられる。

よってBは○。
扁平上皮化生細胞の細胞質は肥厚しているのでライトグリーンやエオシンで濃染(暗い感じ)しますが、扁平上皮癌のように鮮やかなに染色されることはないです。よってCは×。
化生細胞は可逆的な変化で、原因がなくなれば元の上皮が再生します。よってDは×。
腺細胞が化生を起こして扁平上皮細胞になるので、両者の中間的な性状がみられることはあります。よってEは○。



10. 肺癌集検について誤っているものはどれですか。(2)
A. 日本肺癌学会では、集団検診における喀痰細胞診の判定基準、指導区分を定めている。
B. 蓄痰法は固定液に各種の粘液融解剤を工夫し、ホモジナイズの操作を省略した方法である。
C. 対物20倍で鏡検し、細胞の重なりがなく細胞数が約100個観察されるように塗沫する。
D. 高危険群には50歳以上の男女で喫煙指数が400以上の者、6カ月以内に血痰のあった者等がある。
E. 指導区分にある追加検査とは、C判定の場合に喀痰検査を追加して行うことを意味する。


正解:CD

解説:

集団検診における判定は、判定基準に基づきABCDEの5つの区分を用いて分類し、それぞれに指導区分に従って、適切な指示をする。

よってAは○。

蓄痰法は検診目的で用いられる。数日分の喀痰を保存液の中に採取、混和したものから一部を取り塗抹する。ミキサーなどでホモジナイズする方法のほかに、保存液に粘液溶解剤が含まれているものがあり、容器を手で振盪させそのまま放置または遠沈して塗抹する方法がある。

よってBは○。
Cの選択肢に関する文献はみつけられませんでした。でも対物20倍で細胞数が約100個も観察されるように塗抹すると鏡検にすごく時間がかかりそう(笑)。よってCは△。

肺癌の集団検診では。胸部X線撮影と喀痰細胞診が行われる。喀痰細胞診はX線写真にて発見困難な肺門部早期癌、主に扁平上皮癌の発見を目的とする。すなわち、ハイリスク・グループとされる①50歳以上で喫煙係数(1日の喫煙本数×年数)が600以上のもの、あるいは②6か月以内に血痰があったもの、が対象となる。

ハイリスクグループは50歳以上で、喫煙係数が600以上、6ヶ月以内に血痰があったものが対象です。よってDは×。

追加検査とはC判定の場合に喀痰検査を追加して行うことを意味する。

よってEは○。



11. 誤っているものはどれですか。(2)
A. 肺扁平上皮癌では、原発性か転移性かの鑑別に有用な免疫染色のマーカーはない。
B. 肺扁平上皮癌では、壊死性あるいは炎症性背景がみられることが少なくない。
C. 類基底細胞型扁平上皮癌は小型で、小細胞癌との鑑別が難しいことがある。
D. 奇怪な細胞をみた場合には低分化型扁平上皮癌を推定する。
E. 扁平上皮癌でみられる相互封入像とは、腫瘍細胞内に好中球が入り込んでいる像をさす。


正解:DE

解説:
Aの選択肢に関する文献はみつけられませんでした。よってAは△。

肺扁平上皮癌は組織学的に角化あるいは細胞間橋を示す悪性上皮性腫瘍と定義される。扁平上皮癌は類円形ないし乳頭状の不規則な胞巣を形成し、その中心部には角化や壊死が認められる。癌細胞の配列は、重層扁平上皮に類似した求心性の分化勾配を示す。

よってBは○。

腫瘍細胞胞巣の辺縁に顕著な核の索状配列をみる扁平上皮癌は、扁平上皮癌の類基底細胞型と呼ばれる。広汎に基底細胞癌に似たパターンを示し扁平上皮への分化を欠く低分化型は、大細胞癌の特殊型とみなされる。

類基底細胞型の腫瘍細胞の周りに核の索状配列がみられるところが小細胞癌の木目込み細工様配列と類似して鑑別が困難ということでしょうね。よってCは○。

広汎な角化、細胞間橋あるいは癌真珠形成を示す扁平上皮癌を高分化とする。これらの特徴が容易にみられるが、広汎でない場合は中分化とする。低分化扁平上皮癌は、扁平上皮への分化の形態学的特徴はごく部分的で、残る大部分は通常、大細胞癌の所見を示す。核分裂像の数は低分化腫瘍のほうが多い。

奇怪な細胞は線維型とかオタマジャクシ型とかいわれている高分化型の扁平上皮癌で出現する細胞形態です。よってDは×。

相互封入像cannibalismは癌細胞同士が貪食しあっているようにみえる。

よってEは×。
結果としてDEが間違いなのでAは正しいことになります。扁平系だと原発性か転移性かの鑑別に有用な免疫染色のマーカーはないんですね。



12. カルチノイド腫瘍について誤っているものはどれですか。(2)
A. 中枢発生の場合はポリープ状を示すことがある。
B. 末梢発生の場合は被膜形成を伴わないことが多い。
C. 組織学的に定型的、非定型的、特殊型がある。
D. いずれの型も核分裂像は乏しい。
E. 電子顕微鏡的に細胞質内に高電子密度芯状顆粒をみる。


正解:CD

解説:
AとBの選択肢に関する文献はみつけられませんでした。よってAとBは△。

定型的カルチノイドは2mm2(10高倍視野)あたり核分裂像が2個未満で、壊死を欠くカルチノイドである。細胞異型や高細胞密度、リンパ管侵襲をみることもある。
非定型的カルチノイドは2mm2(10高倍視野)あたり2個から10個の核分裂像を呈するか、あるいは壊死巣を有するカルチノイドである。

カルチノイド腫瘍に特殊型はないですね。非定型的カルチノイドは定型的カルチノイドより核分裂像が多く観察されます。よってCとDは×。

免疫組織化学では神経内分泌マーカーであるchromogranin、synaptophysin、NCAM(CD56)が陽性である。電子顕微鏡では細胞質に神経内分泌顆粒がみられる。

よってEは○。
これも結果としてCDが間違いなのでABが正しいことになります。カルチノイド腫瘍に関する問題はよく出るので覚えておくといいかもしれないですね。



13. 経気管支穿刺吸引細抱診にて莢膜を有する酵母様真菌が認められた。最も考えられる疾患はどれですか。(1)
1. ムコール症
2. アスペルギルス症
3. カンジダ
4. クリプトコッカス症
5. トリコスポロン症


正解:4

解説:

肺ムコール症pulmonary mucormycosisは糖尿病などの基礎疾患に合併して発症する日和見感染症で、血管壁への侵襲が強く、出血性梗塞や大出血を起こしやすい。菌糸は幅が広いが隔壁はなく、ほぼ直角に分岐している。

よって1は×。

アスペルギルス症pulmonary aspergillosはカンジダ症と同様発生率の高い日和見感染症を起こす深在性真菌症である。通常空中に浮遊する菌の吸引による経気道的な感染が起こる。代表的なものにアスペルギローマ、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、侵襲性アスペルギルス症の3型があげられる。アスペルギローマでは肺結核症などの遺残空洞や気管支拡張腔で発育して菌球fungus ballを作る。アレルギー性気管支肺アスペルギルス症では気管支内で発育する菌に対するⅠ型過敏反応により喘息症状を認める。侵襲性アスペルギルス症は稀であるが急激に発症し、血管壁を侵襲し血管の壊死や肺梗塞を認めるため最も重篤である。組織学的に菌糸は直径2~5μmの隔壁を有し、Y字型の二分岐で分岐角は45度である。

よって2は×。

カンジダ症pulmonary candidasisは皮膚粘膜に常在するカンジダによる代表的な日和見感染症であり、易感染状態の患者に発症しやすい。特に好中球減少症や経静脈栄養法intravanous hyperalimentation(IVH)は最大の危険因子であり、Candida albicansによるものが多い。膿瘍形成性肺炎や敗血症による全身感染を起こす。

よって3は×。

肺クリプトコッカス症pulmonary cryptococcosisは土壌やハトの糞などに存在するCryptococcus neoformansの経気道的な感染により起こる。免疫抑制患者に発症する続発性では日和見感染症の形をとり、菌は毛細血管内や粘液内、組織球内に認められる。また健常者に発症する原発性では、健診時に胸部X線検査で偶然に単発性の境界明瞭なcoin lesionとして発見され、臨床的に肺癌との鑑別が問題となる。直径5~10μm の大きさで円形を示す菌体は多数の組織球や異物型多核巨細胞に貪食され、クリプトコッカス肉芽腫を形成する。アルシアン・ブルー染色やムチカルミン染色などの粘液染色では、莢膜が濃く染まるため菌体を確認しやすくなる。播種が起こると中枢神経への親和性が高いため、脳や髄膜に病巣を作りやすい。

よって4は○。

トリコスポロンは自然界に広く分布し、ヒトの咽頭や皮膚からもときに分離される酵母様真菌である。好中球減少に患者では、予後不良な深在性真菌症の原因真菌となることがある。トリコスポロンは担子菌系酵母の1属であり、30菌種以上が含まれている。本邦における深在性トリコスポロン症の原因菌種のほとんどはT.asahiiである。トリコスポロンの外膜にはクリプトコックスの莢膜と同じ抗原性を有する多糖体があるため、トリコスポロン症では、クリプトコックス抗原検査が陽性になることがある。

よって5は×。トリコスポロンとクリプトコッカスは似てるのかなと思ってしまいそうな解説ですが、画像検索でトリコスポロンを調べると形態的に全然違うことがわかります。



14. 誤っているものを1つ選びなさい。(1)
1. Ⅰ型肺胞上皮細胞は、扁平肺胞細胞と呼ばれる。
2. Ⅰ型肺胞上皮細胞は、肺胞表面の大部分を占めている。
3. Ⅱ型肺胞上皮細胞は、ガス交換作用に関与する。
4. Ⅱ型肺胞上皮細胞は、肺胞表面活性物質を分泌する。
5. Ⅱ型肺胞上皮細胞は、明瞭な核小体を持っている。


正解:3

解説:

肺胞alveolusを構成している上皮は2種類ある。肺胞表面の大部分はⅠ型肺胞上皮細胞(扁平肺胞細胞)とよばれ、小型で扁平な細胞で細胞質が極めて薄くのびて肺胞内腔を覆っている。他方、Ⅱ型肺胞上皮細胞(大肺胞細胞)は分泌細胞ともよばれ、細胞質は泡沫状、大型で円形の核と明瞭な核小体をもっている。Ⅰ型肺胞上皮細胞はガス交換作用に関与し、Ⅱ型肺胞上皮細胞は表面活性物質を分泌し、肺胞内の表面張力を減じさせる作用に関与している。

よって1は○。

肺胞上皮alveolar epitheliumは2種類の細胞からなる。Ⅰ型肺胞細胞の数は上皮細胞数の約40%であるが、面積は肺胞表面の90%を占める。Ⅱ型肺胞細胞は細胞数の約60%を占めるが、面積は肺胞の10%に過ぎない。

よって2は○。
選択肢1の解説をみるとⅠ型肺胞上皮細胞はガス交換作用に関与するとあります。よって3は×。

Ⅱ型肺胞細胞の自由表面には、短い微絨毛がある。細胞質には電子密度の高い限界膜をもった層板小体lamellar bodyがあり、肺サーファクタントを含む分泌顆粒である。

よって4は○。
Ⅱ型肺胞上皮細胞は核小体が目立ちます。よって5は○。



15. ALK陽性肺癌で誤っているものを1つ選びなさい。(1)
1、非小細胞肺癌全体の2-5%前後である。
2. 組織型では腺癌が多い。
3. 若年者に多く、平均年齢は50代半ばである。
4. 診断にはFISH法や免疫組織化学的染色を用いる。
5. 喫煙者に多く、やや女性が多い。


正解:5

解説:ALK陽性肺癌は学会等でも盛んに発表されています。今年も出題されるかもしれませんね。

ALK転座肺癌は非小細胞肺癌全体では2~5%程度である。組織型では圧倒的に腺癌に多く、腺癌での頻度は4~5%程度であり、他の組織型では例外的である。最初に報告された症例は喫煙者であったが、一般には非喫煙者に多いとされる。また、EGFR 遺伝子変異にみられるような人種差はないようである。年齢では若年者に多い傾向にあり ALK 肺癌の平均年齢は50代半ばとするものが多く、ALKを有しない肺癌より10才程度若年である。性差は明らかではないが、非喫煙者の数を反映してかやや女性に多い。
ALK の異常を検出する方法としてImmunohistochemistry(IHC)免疫染色法、Fluorescence in situ hybridization(FISH)法、RT-PCR 法(塩基配列決定を含む)がある

よって1と2と3と4は○。
ALK陽性肺癌は非喫煙者に多いです。よって5は×。



16. 異型腺腫様過形成の細胞について誤っているものはどれですか。(1)
1. 末梢肺に5mm以下の小型の病変を形成する。
2. 核内封入体が目立つ。
3. 肺切除標本に偶発病変として発見されることが多い。
4. 核の切れ込みが目立つ。
5. 小型の平面的な細胞集塊で出現する。


正解:4

解説:

異型腺腫様過形成atypical adenomatous hyperplasia(AAH)は、通常5mm以下の大きさの限局性病変で、均一で軽度に異型を有する立方状から低円柱状の上皮細胞が、既存の肺胞や呼吸細気管支を置換して増殖する病変であり、肺癌取扱い規約の中では「前浸潤性病変」に含まれ、粘液非産生性細気管支肺胞上皮癌の前癌性病変と位置付けられている。腫瘤の捺印では、出現細胞は平面上に配列し、重積性は殆ど認めない。核は類円形であり、軽度腫大した核小体を伴うものもある。クロマチンは均等分布している。時に核内封入体や核溝を伴うものもある。粘液非産生性細気管支肺胞上皮癌と比較すると、核異型は低い。

よって1と5は○。

異型腺腫様過形成は、出現細胞が少なく、小型の集団で平面的配列、細胞の結合は疎、核は類円形で大小不同に乏しく、クロマチンの増量はない。核の切れ込みは稀である。2核細胞や核内封入体が目立つ。

よって2は○。

この診断名(異型腺腫様過形成)は当初、肺癌で切除された肺に偶然に発見された病変に付けられていたので、この病変の悪性化の可能性についてはほとんど知られていない。いくつかの報告によれば、たとえ多発性の病変であったとしても悪性化の危険性は大変低いとされている。

よって3は○。

高分化乳頭型腺癌(主としてクララ細胞型ないしⅡ型肺胞上皮細胞型)は、平面的でシート状ないし軽度に重積した乳頭状の集団を形成し、細胞質内に粘液は認めない。核は類円形で独特の切れ込みないし「しわ」を有することが多い。クロマチンは軽度に増量し、細顆粒状でやや不均等に分布するが、核異型に乏しい。ときに核内封入体がみられる。

核の切れ込みは高分化乳頭型腺癌でよくみられます。よって4は×。



17. 肺小細胞癌について誤っているものを1つ選びなさい。(1)
1. 木目込み細工様配列を認める。
2. ロゼット様構造を認める。
3. 核線を認める。
4. 核小体が目立つ。
5. 核分裂像を認める。


正解:4

解説:

典型的な小細胞癌の細胞像を以下に示す。
・背景に壊死物質を伴うことが多い。
・細胞結合性が緩く、小集団として認められることが多い。
・細胞が相互に圧排するような特徴的配列(鋳型様配列)を示す。
・ロゼット様配列を示すことがある。
・腫瘍細胞の大きさは小型で小型リンパ球の1.5~2倍程度(リンパ球よりもやや大型)である。
・N/C比が非常に高い。細胞質は狭小であるが、裸核様の場合もある。
・核は類円形~短紡錘形で、濃染性で示す。
クロマチンは微細顆粒状で、核内に密に充満している。
・核小体は認められないことが多いが、あっても目立たない。
・核が挫滅して引き延ばされた像である核線を認めることが多い。

よって1と2と3と5は○。
小細胞癌では核小体は通常目立ちません。よって4は×。



18. 肺大細胞癌特殊型として誤っているものはどれですか。(1)
1. 大細胞神経内分泌癌
2. 類基底細胞癌
3. 淡明細胞癌
4. 巨細胞癌
5. リンパ上皮腫様癌


正解:4

解説:

大細胞癌の特殊型は大細胞神経内分泌癌、類基底細胞癌、リンパ上皮腫様癌、淡明細胞癌、ラブドイド形質を伴う大細胞癌に分類されている。

よって1と2と3と5は○。

多形、肉腫様あるいは肉腫成分を含む癌は紡錘細胞あるいは巨細胞を含む癌、癌肉腫、肺芽腫、その他に分類される。さらに紡錘細胞あるいは巨細胞を含む癌は多形癌、紡錘細胞癌、巨細胞癌に分類される。

巨細胞癌は多形、肉腫様あるいは肉腫成分を含む癌の紡錘細胞あるいは巨細胞を含む癌に分類されます。よって4は×。



19. 肺大細胞神経内分泌癌について誤っているものはどれですか。(1)
1. 類器官構造、索状、ロゼット様、柵状配列など、神経内分泌分化を示唆する特徴をもつ。
2. 一般に比較的豊富な細胞質を有し、核小体はしばしば目立つ。
3. しばしば広い範囲で壊死巣を認める。
4. 高倍率10視野中、平均75個の核分裂像が見られる。
5. 非定型カルチノイドとの鑑別は容易である。


正解:5

解説:

大細胞神経内分泌癌は、類器官構造organoid nesting、索状trabecular、ロゼット様rosette-like、柵状配列palisadingなど、神経内分泌分化を示唆する組織学的特徴をもつ大細胞癌である。その分化は、免疫組織化学的染色あるいは電子顕微鏡的観察で確認される。一般に腫瘍細胞は大きく、中等量から豊かな細胞質を有し、核クロマチンは淡明から微細顆粒状のものまである。核小体はしばしばみられ、ときに目立ち、その存在で小細胞癌との区別できることがある。しかし、核小体を欠く細胞からなる集団でも、細胞の大きさや細胞質の豊富さなどの他の形態学的特徴で、非小細胞癌の基準を満たすものがある。壊死を伴わない腫瘍部分の2mm2(高倍視野)中11個以上の核分裂像が存在することを基準とするが、平均では2mm2中75個の分裂像をみる。広い範囲の壊死巣をみるのが普通である。同様の組織像でも、神経内分泌マーカーが陰性の場合は神経内分泌形態をもつ大細胞癌large cell carcinoma with neuroendocrine morphologyとする。

よって1と2と3と4は○。
「~~との鑑別は容易である」という文章は大体間違いのことが多いです。よって5は×。



20. 胸腺関連腫瘍について誤っているものはどれですか。(1)
1. 胸腺腫には被膜がある。
2. 胸腺腫の診断には、ハッサル小体が重要である。
3. 胸腺腫には、幼若リンパ球がしばしば認められる。
4. 胸腺からは、扁平上皮癌は発生しない。
5. 胸腺からは、種々の悪性リンパ腫が発生する。


正解:4

解説:

胸腺腫thymomaは胸腺上皮由来で、上皮内に未熟なTリンパ球が種々の割合で混在するものをいう。胸腺腫は前縦隔に好発し大部分は成人に発生するが、小児でも稀にみられる。成因は不明である。胸腺腫には重症筋無力症、赤芽球癆、低ガンマグロブリン血症などが合併する。胸腺腫の多くは数cm以上と大きいものが多く巨大腫瘍の場合もある。肉眼的には腫瘍は被膜を有することが多く、割面では嚢胞化、出血、壊死を認める。WHO分類では、形態像に加えて機能的分化も考慮してA型(紡錘細胞型、髄質型)、AB型(混合型)、B1型(リンパ球優位型、皮質型)、B2型(上皮・リンパ球混合型)、B3型(上皮優位型、高分化胸腺癌)と分類されている。胸腺腫に特徴的な所見として組織所見として血管周囲腔、ハッサル小体様構造、ロゼットや腺腔様構造、線維性隔壁による小葉構造、リンパ球優位型にみられる髄質様分化mudullary differentiationなどがある。早期の胸腺腫では被膜内に限局(正岡病期分類Ⅰ期)あるいは被膜外の脂肪組織浸潤(Ⅱ期)を示しているが、進行すると心外膜、大血管、肺へ浸潤する(Ⅲ期)する。稀に胸膜播種や遠隔転移(Ⅳ期)を起こす。Ⅰ期とⅡ期は予後良好であることが多いが、Ⅲ期とⅣ期では悪性の経過をとる。WHO分類ではA型、AB型、B1型、B2型、B3型の順に悪性度は高くなる。一般的にA型、AB型、B1型胸腺腫は良性の経過をとり、B2型とB3型では悪性の経過をとることが多い。

よって1と2と3は○。

胸腺癌thymic carcinomaは胸腺上皮細胞由来で、胸腺腫と比較して悪性度が高く上皮細胞の細胞異型が強い。胸腺腫と比較して重症筋無力症などの腫瘍随伴症候群の合併は少なく、胸腺腫に特徴的な血管周囲腔、髄質様分化、ハッサル小体様構造、未熟なTリンパ球の混在はみられない。組織学的に胸腺癌では扁平上皮癌が多いが、被膜形成は乏しく間質はしばしば硝子化を示す。免疫組織化学で腫瘍細胞はCD5が陽性である。浸潤しているリンパ球は成熟したTリンパ球あるいはBリンパ球である。ほかの稀な組織型として類基底細胞癌、粘表皮癌、リンパ上皮腫様癌、肉腫様癌、淡明細胞癌、乳頭癌などがある。

胸腺癌で最も頻度が高い組織型は扁平上皮癌です。よって4は×。
選択肢5に関する文献はみつけられませんでしたが、選択肢4が確実に間違いなので5は正しいということなのでしょう。よって5は○とします。



呼吸器もけっこう難しかったですね。いかがでしたでしょうか。